

怪獣魔王の命を受け、暗黒星雲から北海道を急襲する悪の群れ。
次から次へと押し寄せてくる強敵に敢然と立ち向かっていくのは
もちろん我らが地域のヒーロー、千歳市在住の宙マンである。

ボーグ星人の放つ破壊光線を、華麗な回転戦法でかわす宙マン。
次の瞬間、彼の必殺技が炸裂したならば……
もはや正義の勝利は決まったようなものである。

ボーグ星人「ちょ、何か私が負けるみたいな感じなんですけど!?」

宙マン「ああ、そうとも、正義は必ず勝つのさ!」

宙マン「セイヤァァーっ!
宙マン・トルネード・キック!!」

空中で全身を高速回転させながら、敵めがけて突っ込む必殺技……
トルネードキックの一撃が、星人の胸板を抉るように炸裂!!
ボーグ星人「うぎゃああっ、こ、これには参ったぁぁ~っ!」

やったぞ宙マン、今日も今日とて絶好調!
かくして宙マンの活躍により、千歳を襲ったボーグ星人は撃退され
怪獣軍団の野望は、またしてもその出鼻を挫かれたのであった。

だが、そうなると……
並居る荒くれどもを束ねる悪の総元締、怪獣魔王・イフにしてみれば
毎度毎度のこの状況が、面白かろうはずもない。

ほら、耳を澄ませてみれば今日もまた聞こえて来たぞ?
他でもない怪獣魔王の、歯ぎしり込みでの怨嗟の声が。

イフ「ぐぬぬぬっ……まただ、またしてもだ、忌々しい宙マンの奴め!
宇宙に冠たる実力の持ち主、いずれ劣らぬ強者が揃っているというのに
どうして、どうして奴に勝てんのだ!?」
「戦う前のリサーチ不足……その一点に尽きるかと」

イフ「ムム、誰だ!?」
「これはご無礼を――私でございます、魔王様」
そう言って、怪獣魔王の前に進み出てきたのは……
怪獣軍団の中でも、情報処理と分析力に関しては一、二を争うと噂される
軍団屈指の名プランナー、ナックル星人グレイである。

イフ「おお、グレイよ、お前であったか!
だが、そう言うがな、宙マンの分析ならこれまでに何度も……」
グレイ「彼を知り、己を知れば百戦危うからず。
宙マンめの戦力分析、やってやり過ぎるという事はございません」

グレイ「現役を退いて久しい身とは言いながら、その自称ロートルが
次から次に新しい技や武器、戦法を繰り出して、現役顔負けの戦いぶり
我が怪獣軍団の同志たちを幾度も痛い目にあわせてきた、ということ……
それは他でもない魔王様が、一番よくご存知のはずではないですか」
イフ「ううむっ……確かに!」

グレイ「昨日までの宙マンは、もはや今日の宙マンに非ず。
現在進行形で強くなり続けている自称・隠居を相手にし、勝利するには
一刻も早い最新データの取得と、その解析が必要不可欠です」

イフ「うむ、うむっ、よくぞ申したナックル星人グレイよ!
ならば早急に、宙マンの戦力分析を……」

グレイ「抜かりはございません、魔王様!
既に私のコンピューターが、それに最も適した二頭の怪獣を選出して
地球へと向かわせたところでございます」
イフ「おおっ、それはますますもって感心、感心!」

グレイ「奴の能力を分析し尽くし、それを上回る作戦で臨めば……
ふふ、もはや怪獣軍団は地球を征服したも同然でございます!」

密かに動き始めていたナックル星人グレイの謀略。
またしても恐るべき侵略の魔手が、僕らの地球に迫るのだ!
が、ひとまずそれはそれとして――。

ちょうど今、お馴染み・みくるん&ながもんのコロポックル姉妹が
買い物のために訪れていたところであった。

みくるん「あ~、よかったぁ!
チラシに載ってた格安サービス品のオーブントースター、
売り切れてなくてほんとによかったねぇ、ながもん!」
ながもん「現品限り、早いもの勝ち……
開店前から、店の前に……並んだ……かいが、あった」
みくるん「うふふっ、そうだね‘~♪」

みくるん「そっちの方は、あとで業者さんが配達してくれるからいいとして。
……せっかく苫小牧まで来たんだし、なにか美味しいものでも食べてく?」
ながもん「オウ、だったら……苫小牧には……評判の、ラーメン屋さんが。
……いや、でも……煮込みハンバーグも……捨て難い?」
みくるん「(くすくす)迷っちゃうよね~、何食べよっか?」
姉妹揃っての、何気ない会話を交わしながらの道すがら……
ふと、ながもんの足がピタリと止まった。

みくるん「どうしたの? ながもん」
ながもん「(ボソッと)……来てる……なにか……近づいてる。
……来た……!」
人一倍鋭敏な、ながもんの勘が察知した「迫り来る危機」。
それは不気味な海面の泡立ち、飛び散る波飛沫とともに現れた!

「ぐおぉぉぉ~んっ!!」

みくるん「ああっ、あれは!?」
ながもん「竜巻怪獣、シーゴラス……身長62メートル 、体重5万2000トン」
みくるん「あのね、そういう事を言いたいんじゃなくて……(汗)」

荒々しく野太い咆哮をあげ、苫小牧港から上陸を果たすシーゴラス。
力強い足取りで、ズンズンと内陸部へと向かって突き進んでいく。

みくるん「あの方向……もしかして、千歳に!?」
ながもん「……まず、間違いない」
みくるん「ほにゃ~、大変!
早く宙マンさんに知らせなくちゃ!(汗)」
ながもん「……(コックリ頷き、スマートフォンを取り出す)」

そう、まさに!
コロポックル姉妹の懸念通り、上陸したシーゴラスは、千歳へ向けて
傍若無人に突き進み、今まさに市街地に達したところであった!

逃げ惑う人々をあざ笑うかのような竜巻怪獣の進撃。
と、そこへ駆けつけたのは、毎度お馴染みの宙マンファミリー。

ビーコン「どひ~っ、またヤバそうなのが出て来たっスねぇ!」
落合さん「と、申しますか……
こういう現れ方の怪獣さんで、ヤバげでなかった試しがございませんわ」
ビーコン「……う~ん、確かにっス!」
シーゴラス「ぐおぉぉぉ~んっ、そうとも、俺のヤバさはギガトン級よ!
今度という今度こそ、宙マン、お前をギッタギタにしてやるぜ!」
宙マン「……もし、この私が相手を断ったら?」

シーゴラス「その時には代わりに、この街を徹底的にブッ壊してやるまでよ!」
ビーコン「どひ~っ、なんつー二択! 問答無用っスか!?」
宙マン「う~ん、これはどうやら、やるしかないのかな!?」
ビーコン「むしろガンガンやっちゃって下さいっスよ、アニキ!」
落合さん「こうなるともう、お殿様だけが頼みの綱ですわ」
宙マン「むうっ……そういう事なら、よし、やろう!
宙マン・ファイト・ゴー!!」

閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
さぁ、今日もまた正義の味方のお出ましだ!

シーゴラス「ぐおぉぉぉ~んっ、出たな宙マン!」
宙マン「ああ、お望みどおりに只今参上だ!」

ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日もまた、世紀のビッグファイト開幕だ。

シーゴラス「ぐわおぉ~っ、ブッ潰してやる! ブッ潰れろ!」
宙マン「さぁ来いっ、怪獣シーゴラス!」

真っ向激突、宙マン対シーゴラス!
落合さんたちが見守る中、巨人と巨獣がしのぎを削る。

落合さん「お殿様、頑張って下さいませ!
この落合がついておりますわ!」
ビーコン「アニキ~、ファイトっスよ~、ファイトぉ!」
宙マン「ああ、勿論さ、頑張るとも!」

一本角をふりかざし、しゃにむに突進してくるシーゴラス。
その猛然たる野獣の攻めを、右に左に受け流しながら……
宙マンもまた、果敢に敵の懐へと飛び込んでいく。
宙マン「それっ! どうだ、これでもか!」
シーゴラス「ぐわおぉ~っ、ナメんじゃねぇ!」

シーゴラスの豪腕が勢いよく振り下ろされる!
その痛烈な一撃に、たまらずドドーッと地面に倒れ伏す宙マン。
更に、宙マンに反撃の隙を与えてなるものかとばかり――
バリバリバリバリッ!

怪獣の怒りそのもののように、鼻先の一本角から迸る稲妻放電!
凄まじいエネルギーが地上で炸裂し、宙マンを大きくよろめかせる。

ビーコン「……ど、どひ~っ!?」
落合さん「おっ、お殿様……大丈夫ですか、お殿様!?」
宙マン「(苦悶)う……ううっ……!」

シーゴラス「大丈夫なわけないだろう、このザマを見てみろ!
それに、まだまだこんなモンじゃ許してやらねぇ――
俺には、いや俺たちには、とっておきの更なる一手があるんだからな!」

落合さん「(息を呑み)とっておきの……一手ですって!?」
シーゴラス「(ニヤリ)すぐに判るさ。空を見てみな!」
ビーコン「へっ!?」

そう、まさにシーゴラスの言葉通り……
暗黒星雲からの次なる殺意は、宇宙より地球へ達せんとしていた。

「ピギャオォ~ンっ!!」

甲高い鳴き声とともに、地上へ舞い降りた五角形の異形。

ビーコン「ひょえぇ、ベムスターまで現れたっス!」
落合さん「まるでお殿様を狙い撃ちにしてるようですわね……」
ビーコン「“まるで”どころか、狙い撃ちそのものっスよ!(汗)」

ベムスター「ピギャオォォ~ン、お待たせぇ!
俺様ちゃん、到着~っ!」
シーゴラス「ぐおぉぉ~んっ、待ってたよぉ!
お前と俺が力を合わせりゃ、この宇宙に怖いもんなしだぜ!」

シーゴラス「お前には、万に一つの勝ち目もなくなったぜィ!」
ベムスター「ピギャオォォ~ン、なんたって二対一だからな!」
宙マン「(よろめきつつ)……む、むむむっ……!」

先程のダメージから回復しきっていない宙マンを、二大怪獣が挟み撃ち。
果たして一体、この次はどのような手で攻めてくると言うのか!?
見守るビーコンと落合さんも、その危機的状況に手に汗握り、息を呑む。
シーゴラス「ぐおぉぉ~んっ、死ねィ! 宙マン!」

シーゴラスの角から迸る稲妻放電!
その一撃が宙マンの体をなめ回し、更なるダメージを叩き込む……
……かと、思いきや!?
ベムスター「ピギャオ~! キタキタキターッ、ごちそうさ~ん!」

……おお、いったい誰がこのような事態を想像し得たであろうか?
稲妻放電は宙マンを直撃することなく、あらゆるエネルギーを吸収する
ベムスター腹部の「口」で、残らず吸い取られたではないか。

落合さん「(目がテン)……へっ?」
ビーコン「お、おろろっ?」
ベムスター「ふぃ~、ごっつぁんでした~、俺様ちゃん大満足~!
……って、あれっ? どったのシーゴラス?」

シーゴラス「(ワナワナ)ど、どったのじゃねェ~っ!
せっかくの俺の攻撃、お前が吸い取ってどうすんだよ~!?」
ベムスター「いや~、メンゴメンゴ、ついうっかり弾みでさぁ……。
てへぺろっ☆」
シーゴラス「がーっ! てへぺろで済むか、このスカポンタンっ!」

シーゴラス「てめぇ、さてはこの俺をナメてるな!?
いくら俺が、昨日パチンコで15万スッたたからって……!(涙目)」
ベムスター「何と言う言いがかり! いいから落ち着け、なっ!?」
シーゴラス「うるせ~コノっ、なめやがって、なめやがって!」
ベムスター「あ、そう来る? そう来ちゃう!?
……だったら俺様ちゃんだって、いつまでも黙ってないよ!?」

なにしろ両者とも、血の気の多さでは定評のあるものだから……
ヒーローそっちのけで、仲間割れの大喧嘩。
……宙マンにとっては、千載一遇の大チャンス到来であった!
宙マン「ようし、今だっ!」

シーゴラス「ぐおぉぉぉ~んっ、コンニャロ、コンニャロ!」
ベムスター「わーっ! バカバカ、やってる場合じゃ……(汗)」
「どりゃぁぁーっ! 宙マン・ショット!」

裂帛の気合と共に放つ、不可視の衝撃波……
宙マン・ショットが炸裂して、シーゴラスをよろめかす!
宙マン「とどめだ!
宙マン・エクシードフラッシュ!!」

全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、シーゴラスを直撃!!

シーゴラス「こ、この次は嫁のシーモンスと逆襲してやる~っ!」
ベムスター「ピギャオォォ~ン! よくもシーゴラスをっ!」

ベムスターの鼻使い光線を、ひらりとかわして空に舞い……
宙マンは遂に、伝説のスーパー剣を抜き放った!

宙マン「正義の刃、受けてみろ!
秘剣・スーパー滝落とし!!」

ザシュウッ!!

スーパー剣を抜き放ち、刀身にエネルギーを集中させ……
豪快な空中回転とともに、真っ向から振り降ろされる光の刃!
宙マンの「滝落とし」が、ベムスターを唐竹割りに切り裂いた。

ベムスター「Oh、キョーレツぅぅ~っ!!」
やったぞ宙マン、大勝利!

落合さん「お殿様、いつもながら流石の一語ですわ!」
ビーコン「アニキ、どうもお疲れ様っした!」
宙マン「いやぁ、はっはっはっはっ」

かくして、またまた宙マンの活躍により……
シーゴラスとベムスターの二大怪獣は撃破され、平和は守られた。
だが、賢明なる読者諸氏は、既にお気づきのことであろう――

このたび千歳を襲った二大怪獣こそ、宙マンの最新データを収集して
その能力を徹底的に分析するため、ナックル星人グレイが送りこんだ
「テスト用」としての存在だったということに!

イフ「うぐぐぐっ……なんたることだ!
あと一息のところだったのに、またもしてやられるとは!」
ゾネンゲ博士「魔王様、魔王様、どうか落ち着いて下さい!
シーゴラスとベムスターは、立派にその使命を果たしたのです――
宙マンと戦い、最新の戦闘データを引き出すという大きな使命を!」

イフ「……おお、そうであったな!
して、ナックル星人グレイよ、データの解析は進んでおるのか?」
グレイ「……(無言)」
イフ「……なあ、グレイよ」
グレイ「……(無言)」
イフ「えぇい、聞いておるのかグレイ!?」
ゾネンゲ博士「(慌てて)こ、これ、グレイっ!
魔王様がお呼びだ、ちゃんと返事ぐらいはせんか!」

グレイ「あー、悪いんですけどねぇ。……
お二人とも、少しお静かにしててもらえませんかぁ?」
イフ「(小声で)……そ、そうであったな、済まぬ!
ワシとしたことが、仕事の邪魔をしてしまって――うンッ!?」

「今、めっちゃイイところなんですからァ。
……でへへへ、オレンジペコちゃぁ~ん♡♡」
ナックル星人グレイ、真面目に仕事をしているとばかり思っていたら……
分析そっちのけで、自前のノートPCにてアニメ配信視聴の真っ最中。
勿論、これを黙って見過ごせる怪獣魔王であるはずもなく――
……ぶ ち っ !

「……こ、この大馬鹿者が~っ!!」

イフ「さんざん大口を叩いて、期待させておきながら……
仕事をサボってそのザマはなんだ、そのザマはっ!
えぇい、うんと厳しい仕置きだ、覚悟しておけィッ!!」
グレイ「ひぇぇぇ、ゴメンなさぁい、どうかお許しを~!(汗)」
宙マンの戦闘データを全て解析し、その上で立てられる必殺の作戦。
……が、それもまだまだう~んと先のことになりそうではあった。

今日も平和だ、我が街・千歳……
明日も頼むぞ、我らが宙マン!





