のどかな、のどかな、午後のひととき。
穏やかな時間の中にある、ここは北海道千歳市・ほんわか町。
こちら、ご存じ千歳の「宙マンハウス」。
血相変えて訪ねてきたのは、これまたお馴染みの……。
「ふぇぇん……宙マンさん、宙マンさ~んっ!」
宙マン「やぁやぁ、いらっしゃい、みくるんちゃんにながもんちゃん!」
落合さん「どうか致しましたか、そんなに慌てたご様子で?」
みくるん「たっ、大変なんです、事件なんですぅ!」
ながもん「こんなこと、今まで……ありえ、なかった」
ビーコン「事件? そ~んな、またオーバーっスねぇ☆」
みくるん「ほ、ホントなんですってばぁ!」
宙マン「まぁまぁ、みくるんちゃん。……
まずは落ち着いて、何が起こったのかを説明してもらえるかな」
みくるん「(頷き)は……はい」
みくるん「実は今朝から、私とながもんとで……
千歳の原生林の中に、足を運んでたんですよね」
宙マン「ああ……近くに沼地も広がってる、あそこかな?」
ながもん「(頷き)そこで、採れる葉が……良い、煎じ薬の……元に、なる」
みくるん「で、その葉っぱを探してた途中なんですけどーー」
みくるん「急に、地面から煙が噴き出したかと思ったら……
沼の水が、ぶくぶく泡を吹いて沸き立ちはじめたんですぅ」
ながもん「そう、まるで……温泉……みたいに」
ビーコン「(目を輝かせて)温泉!?」
ビーコン「うひょひょ、だったらオイラは混浴きぼんぬっス!」
げ し っ !
落合さん「真面目な話の流れをブチ壊すんじゃありませんっ!(怒)」
ビーコン「ハンニャラ、ヒ~っ……」
落合さん「ビーコンさんの世迷言はさておき……
お殿様、いかが思われますか?」
宙マン「う~ん、あのあたりに温泉が湧くなんて……
そんな話は、今まで聞いたこともないからねぇ。
もしも何かの異変の前兆だとしたら、確かに一大事だけれど」
ビーコン「……今のところは、そうだって確証もないっスもんねぇ」
宙マン「う~ん……」
と、一同がそれぞれの思案顔を見合わせた頃である。
ちょうど、それと時を同じくして……
ピグモン「あ! 見て見て、防衛隊のヒコーキなの!」
落合さん「あの方角は、確か……」
みくるん「さっき私たちがいた、原生林の方ですぅ!」
ビーコン「ひぇぇ、ってコトは、もしかして……」
ながもん「もしか、すると……」
宙マン「……もしかするかもしれないぞっ、本当にコレは!(汗)」
そう、正に宙マンたちの推察通り!
防衛隊の優秀な地底探索用センサーは、千歳市郊外の原生林において
膨大な熱量を帯びた、未知の生体反応をキャッチし……
これを千歳の地底に潜伏した巨大怪獣のものと判断し、先制攻撃のため
航空防衛隊に出撃命令が下された、と言う次第であった。
ズドドドド! ババババババっ!
怪獣が潜伏していると思しき、千歳郊外の原生林へと向けて……
戦闘機からの掃討攻撃が、実際の戦争を思わせる激しさを伴って
雨あられと叩きこまれていく。
それは、息を呑むばかりの凄絶な光景であった。
ゾネンゲ博士「お、おおうっ……ま、魔王様、地球人の攻撃が!
さては、「奴」の存在を勘付かれましたかな!?」
イフ「わははは、うろたえるなゾネンゲ博士……
気取られたところで、地球人どもに何が出来ようものか。
いでよゴルゴス、あの蚊トンボどもを少し脅かしてやれ!」
暗黒星雲からの、怪獣魔王の声に応え……
原生林の一角が爆発を起こし、そこから無数の岩石が飛び出して
さながらレミングの大群のごとく空中を移動していく。
「(目を見張り)おおっ……こ、こいつは……!?」
おお、見よ! 驚愕せよ!
パイロットらの見守る前で、飛び散った岩石群は地上へ舞い降り
一箇所に集合・合体して、ひとつの「カタチ」を成していくではないか。
「ぐおぉぉ~んっ!!」
赤い発光体を中心に、無数の岩で形成された重量級のボディ。
その名を岩石怪獣ゴルゴス、もちろん怪獣軍団の一員である!
「思った通りだ、やっぱり怪獣だったのか……
ようし、全機・一斉攻撃開始っ!!」
姿を見せたゴルゴスめがけて、怒濤のような猛攻撃!
だが、その凄まじいばかりの弾着にも、岩獣ゴルゴスの巨体は
ひるむどころか小揺るぎもしない。
ゴルゴス「ぐおぉぉ~、やめとけ、やめとけ~いっ!」
「ど、どわぁぁぁぁ~っ!?」
ゴルゴスの口から吐き出される、超高圧・超高温の蒸気!
その熱波をまともに食らってしまい、戦闘機隊は次から次に撃墜され
あっという間に総崩れとなってしまう。
ゴルゴス「ぐおぉぉ~、ど~んな、もんだ~いっ!」
イフ「うむうむ、上出来だ、素晴らしいぞゴルゴス!
千歳の地底で蓄えたお前のパワー、存分に奮う時は今ぞ。
徹底的に街を破壊して、地球侵略の拠点とするのだ!」
ゴルゴス「ま~かしといて、下さいよ、魔王様!」
ゴルゴス「待ちに待ってた、オイラの出番……
このゴルゴス様の威力、魔王様にとくとご覧頂きましょう!
ぐおぉぉ、千歳の街などひとたまりもなく……」
「待った待った、そうはいかないぞ!?」
凛として響いた声に、ゴルゴスがびっくりして足元を見やれば……
そこには異変を察して駆けつけた、ご存じ・宙マンの雄姿が!
ゴルゴス「ぐおぉぉ~、そのツラ……お前が噂の宙マンだなぁ!?」
宙マン「そう言う君は、富士山生まれの岩石怪獣・ゴルゴスだったね。
悪い事は言わない、バカな考えは今すぐ捨てて……
さっさと暗黒星雲に帰るがいい!」
ゴルゴス「ぐおぉぉ~、そう言うワケには、いかんのじゃぁぁ~っ!」
宙マンを踏み潰さんと、猛然と迫ってくるゴルゴス!
我らがヒーローは、間一髪でその巨大な足をかわして――
宙マン「おおっと、危ない! 宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、岩獣ゴルゴスの前に舞い降りる!
宙マン「まずはこいつが、名刺代わりの挨拶だ――
エイヤァァーっ! 宙マン・ミラクル・キック!」
いきなり出ました、電光石火の必殺技!
ミラクルキックの先制打に、不意を突かれて倒れるゴルゴス。
ゴルゴス「ぐおぉぉ~、やってくれたな、くれちゃったな~!」
宙マン「どうだ、悪事をやめる気になったかね!?」
ゴルゴス「コンニャロ~、ナメやがって!」
宙マン「むむっ……あくまでやると?」
ゴルゴス「(鼻で笑い)そう言うのをな、「愚問」ってんだァ!」
宙マン「聞く耳持たずか……ならば、やむを得ん!」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ!
ゴルゴス「ぐおぉぉ~んっ、行くぞ行くぞ、行くぞぉぉ~っ!」
宙マン「どこからでもかかって来い!」
激突、宙マン対ゴルゴス!
巨大超人と巨大怪獣との死闘が、原生林狭しと展開される。
宙マン「えい、やぁっ――どうだ、これでもか!?」
ゴルゴス「ぐおぉぉ~、屁ぬるいわぁ~っ!」
鉄面皮ならぬ「岩面皮」が売りの、不敵な岩獣ゴルゴス。
宙マンの繰り出すパンチの連打にも、全く動じない。
宙マン「くっ……ほとほと頑丈に出来てるんだな、君は!」
ゴルゴス「ぐおぉぉ~、ここからがお楽しみだぜェ~っ!」
ゴルゴスの吐き出す高熱蒸気!
その威力が、宙マンの周囲に激しい爆発を生じさせる。
「う、うわあぁぁぁ……っ!!」
宙マン「(苦悶)う……うう……っ!」
ゴルゴス「ぐおぉぉ~、金星はオイラが頂いちゃうぜぇ~っ!」
重量級のボディにものを言わせ、のしかかってくるゴルゴス。
そのまま宙マンを押し潰し、とどめを刺すつもりなのだ。
危うし、宙マン――
さしもの彼も、今度ばかりは命運尽きたであろうか!?
宙マン「なんの、これしき……負けて、たまるかッ!」
「怒れ稲妻! 宙マン・ボルトサンダー!!」
ピカッ、ゴロゴロドドーンっ!
宙マンの気合とともに、念動波で発生させる正義の稲妻!
眩い閃光とともに、ゴルゴスの急所を直撃したボルトサンダーが
岩獣の全身を猛然と駆け巡り、容赦なく痛めつけて――
ゴルゴス「(フラフラ)こ、こりゃまたシビれちまったよぉぉ~!」
宙マン「とどめだ! 宙マン・レインボーフィニッシュ!!」
胸の宝石に集中させたエネルギーを、一気に解き放つ必殺技。
レインボーフィニッシュの輝きが、ゴルゴスめがけて炸裂!!
ゴルゴス「グハぁぁっ、まぶしすぎて痛すぎるぅぅ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
イフ「ぐがぁぁぁっ……おのれぇ、またしても!
いいか、覚えておけ、忘れるでないぞ宙マンよ……
お前の悪運にも「次」は、決して「次」などないからな~っ!」
……などと言う、もはや毎度の負け惜しみはさて置いて。
かくして、我らが宙マンの活躍により……
千歳襲撃を目論んでいた、岩石怪獣ゴルゴスは倒された。
ピグモン「はうはう~、やったの、宙マンが勝ったの~!」
ながもん「これで、このあたりも……どうにか……やれやれ」
みくるん「これでまた安心して、煎じ薬の葉っぱ探しが出来るね~。
……ありがとうですぅ、みんな宙マンさんのおかげです!」
宙マン「はっはっはっ、みんなも来ていたんだねぇ」
落合さん「えぇ、それはもう――」
落合さん「お殿様の雄姿、しっかり目に焼きつけましたわ!」
ビーコン「いえっふ~、アニキ、サイコーっス!」
宙マン「はっはっはっはっ」
今日も本当にお疲れ様、宙マン。
だが、未だ怪獣軍団の野望は尽きない……
さて、次回はどんな冒険が待っているのかな?