遊びをせんとや生まれけり

全ての「面白がりやさん」へ――千歳より、愛をこめて。

荒れるぜ怪獣肉食系の巻

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待ちに待ってた春が来た、北海道にもやって来た!

長い長い、永遠に続くかのような厳しい冬を耐え忍んできたからこそ

その喜びと開放感も、またひとしおである。

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そんな4月の北海道千歳市、中心部から離れた郊外の山の中に……

民間企業と地方自治体の合同出資による、新たな測候所が建築されていた。

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最新鋭のレーダーを備えたこの測候所は、従来の施設よりも更にきめ細かく、

高精度の気象観測が可能となっている……と言う触れこみのもと、ここ数年の

相次ぐ異常気象や自然災害などをいち早く察知し、適切に対処していくための

市民生活に密着した防災施設として、その成果が大いに期待されていた。

 

 

 

だが……

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地球征服の野望に燃え、その為の第一歩として千歳市を執拗に狙い続けている

暗黒星雲の怪獣軍団にとって、この施設の存在が面白かろうわけがない。

 

イフ「うむむむっ……何が防災だ、何が気象予測だ!

 地球人どもの浅知恵と小細工の産物なぞ、ワシらの手で叩き潰してやる!」

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イフ「ダークネスファイブ、“魔導の”スライよ!

 既にそのための準備は、抜かりなく整っておろうな……!?」

スライ「んーふふふ……当然でしょう魔王様、抜かりはございませんとも!」

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スライ「と、言う訳ですので……ダイゲルン君、カモーンっ♪

 

ゴゴゴゴ……グラグラグラグラっ!

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おお、見よ! 驚愕せよ!

スライの呼びかけに応じて激しく揺れ、メリメリと割れ裂ける北の大地。

土煙と岩石を巻き上げ、地底からその恐るべき姿を現した者とは!?

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「がっふっふっふぅぅ~っ!!」

野太いその絶叫とともに、千歳市の原生林へと姿を現わす影ひとつ。

怪獣軍団の一員、肉食地底怪獣ダイゲルンだ!

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ダイゲルン「がっふっふ……呼ばれて飛び出て、即・参上だぜ!」

スライ「おおっ、元気いっぱいですねェダイゲルン君、実に結構!」

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ダイゲルン「ああ、任しといてくれや、“魔導”の兄さん――

 兄さんに奢ってもらったステーキのおかげで、この通り元気120%だぜ!」

スライ「そのようですねェ、ますます結構♪」

 

肉食地底怪獣」と異名をとるだけあり、肉料理に目がないダイゲルン。

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このたび、そんなダイゲルンに最大のパワーを発揮させるため……

“魔導の”スライは自らのポケットマネーをはたいて、出撃前のダイゲルンに対し

最高級の分厚いステーキ・50人前を惜しげもなく振る舞ったのであった。

 

スライ「ですが、だからと言って食べ逃げは感心致しませんねぇ。

 食べたステーキの分だけ、君にはしっかりと働いてもらわねば――」

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ダイゲルン「がっふっふっふ……わかっちょる、わかっちょるから皆まで言うな!

 あんなチンケな測候所、今の俺様の手にかかれば一撃で――」

 

 

「おおっと、そうは問屋が卸さんよ!?」

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ダイゲルン「(ギョッとして)がふぁっ! だ、誰だ!?」

 

不意に響いてきた凛たる声に、驚いて振り返るダイゲルン。

次の瞬間、華麗な空中回転とともに舞い降りてきたのは……もちろん、この男だ!

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宙マン「トゥアーッ! 宙マン、参上!

 またまた怪獣軍団の悪企みとあっては、私も黙って見過ごせんな!」

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ダイゲルン「ゲゲぇっ、宙マン――ど、どうしてお前がここに?」

宙マン「いや、どうしてもこうしても……

 ここの測候所の署長さんとは、昔からの将棋仲間でね。

 散歩の途中で近くへ寄ったんで、御挨拶がてら軽く世間話をしてたのさ」

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宙マン「美味しいお茶菓子も頂いて、いい気分で家まで帰れるかと思ってみたら……

 こらっ、測候所の破壊などやめて、今すぐ引き返したまえ!」

ダイゲルン「がっふ~、ほざくな宙マン!

 こっちも最高級ステーキを50枚もおごってもらって、ぜんぶ食っちまった手前

 大人しくこのまま帰る、なんてワケにはいかんのじゃい!」

宙マン「あくまでやる気か……ならば、やむを得ん!」

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ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――

さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ!

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まずはじりじりと間合いを詰め、相手の隙を探りあう両者。

そして、超人VS怪獣の緊張の高まりが頂点に達した瞬間……

でっぷりした体躯に似合わぬ身軽さで、ダイゲルンが躍りかかった!

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宙マン「むっ!?」

ダイゲルン「がっふっふぅぅ~、行くぜ行くぜ、行くぜ宙マン!」

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思い切りの良いダイゲルンの先制に、一瞬たじろいだ宙マンであったが……

すぐに冷静な判断を取り戻し、襲い来る怪獣へと果敢に立ち向かっていく。

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激闘、宙マン対ダイゲルン!

巨大な口の一面にびっしり生えた鋭い牙を光らせながら襲う大怪獣に

得意の格闘技で互角以上の渡り合いを見せる宙マン。

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力と力、技と技。

正邪の意地と闘志が真っ向から激突し、ビシッ! バシッ! と鋭い打撃音が

普段は静かな原生林いっぱいに響き渡る。

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宙マン「むうっ、なかなかやるな!」

ダイゲルン「がっふっふぅぅ~、ステーキ肉50枚分のパワー、思い知ったか!」

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持ち前の腕力で、しゃにむに押しまくっていくダイゲルン!

その勢いの前に、さすがの宙マンもじりじりっと後退を余儀なくされてしまう。

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ダイゲルン「がっふっふ、どうしたどうした、お前の力はそんなモンか!?」

宙マン「なんの――負けて、たまるかッ!」

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ダイゲルンめがけて、真正面から繰り出す宙マンのストレート・パンチ!

充分に勢いの乗った一発が、ダイゲルンの顎めがけて見事にヒットする――

……が、不敵なダイゲルンは全く怯まない。

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宙マン「な、何っ!?」

ダイゲルン「がっふがっふ~、今度は俺様の番だな!」

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唸りをあげるダイゲルンの剛腕パンチが、宙マンめがけて炸裂!

たまらず宙マンが吹っ飛んだところへ、更にダイゲルン火炎のダメ押しである。

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「う、うわぁぁぁぁ……っ!!」

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たちまち巻き起こる大爆発、叩きつける爆風!

その衝撃波に大きく吹っ飛ばされ、したたかに地面へ叩きつけられる宙マン。

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宙マン「(苦悶)……う……うう……っ!」

ダイゲルン「がっふっふ、お前のカラダをズタズタに喰いちぎっちゃるぜィ!」

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宙マンにのしかかり、自慢の大顎で食らいつこうとしてくるダイゲルン。

涎を滴らせながら、ヒーローの首筋めがけて迫り来る鋭い無数の牙、牙、牙!

 

宙マン「なんの……そうやすやすと、やられはせんぞ!」

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激しく地面を転がり、もみ合う両者――

やがて、その泥臭い攻防で、宙マンとダイゲルンの攻守が鮮やかに逆転し

マウントをとった宙マンが、ダイゲルンめがけてパンチの連打。

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ダイゲルン「ががががっ……し、しまったぁ!(汗)」

宙マン「そぉれっ――こいつが宙マン・リフターだ!」

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大怪獣を軽々と持ち上げ、そのまま一気に投げ落とす宙マン・リフター!

勢いよく地面に叩きつけられて、ダイゲルンが大ダメージを受けたところへ――

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宙マン「とどめだ!

 宙マン・エクシードフラッシュ!!

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全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……

エクシードフラッシュの一閃が、ダイゲルンを直撃!!

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ダイゲルン「あぎゃぎゃぎゃっ……や、や、やられたぁぁ~っ!

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力尽き、巨木が崩れ落ちるかのようにドドーッと倒れ……

口からブクブクと泡を吹き、そのまま目を回して昏倒してしまうダイゲルン。

やったぞ宙マン、大勝利!

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今、輝ける太陽と青空の下――

千歳のヒーロー・宙マンは、天を仰いで颯爽の勝ちどきをあげたのであった。

 

で、その一方、怪獣軍団においては……。

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スライ「オー・マイ・ゴッド! 何てことだ、ダイゲルン君が負けてしまうなんて!

 最高級ステーキ50枚分の料金が……これじゃ私、大赤字ですよ~っ!(涙目)」

ヴィラニアス「だーっ、何だそのザマは、子どもじゃあるまいし!(呆)」

ジャタール「気持ちは分かるっ、分かるから落ち着け、スライ!(汗)」

イフ「えぇい、おのれおのれ、またしても宙マンめが……

 この仕返しは必ずしてやるからな、今に……今に見ておれよっ!!」

 

……以上、怪獣軍団のいつも通りの負け惜しみでした。ちゃんちゃん。

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地域の平和と、みんなの笑顔を護るため……

これからも頼むぞ、頑張れ宙マン!

さて、次回はどんな冒険が待っているのかな?