さんさんと照りつける太陽――
ここ・北海道千歳市も、暑い日が続く文字通りの「盛夏」である。
そんな暑さに誘われて、大自然の生命力が沸き立つ季節。
空の青さと緑の眩しさ、夏ならではのエネルギッシュな空気に誘われては
誰も彼も、じっとしていられるはずもない。
だが、そんな真夏の太陽にさえ照らしきれないほどの深淵……
千歳市の地底において、悪の野望は着々と進行中なのであった!
論より証拠、まずはこちらをご覧いただきたい。
……おお、何ということであろう!?
千歳市民の未だ誰にも気づかれぬうち、これほどの地底基地が
密かに建設を進められていたとは!
そして、その実行部隊として現地での作業に励んでいたのが彼、
怪獣軍団の一員である甲虫怪獣・タガヌラーなのであった。
タガヌラー「ギャボボボ……えっちら、おっちら、ふぅ忙しい!
この猛暑の中での肉体労働、いくら怪獣でも堪えるがね!」
スライ「んー、ふふふ……まぁまぁタガヌラー君、そうぼやかない。
この使命を完遂したその暁には……
魔王様のお褒めとともに、特別賞与も支給されますからして!」
イフ「うむうむ、そうだぞタガヌラー!」
イフ「ワシら怪獣軍団の悲願、地球上への前線基地建設……
タガヌラーよ、お前の働き如何にかかっておる!」
タガヌラー「ギャ~ゴゴゴ……ほうでっか!?
いンや~、魔王様にそう言ってもらえると……(頭かきかき)」
スライ「んふふふ、なればこそですよ、タガヌラー君。
君の使命遂行において、何を置いても大事なのは……」
タガヌラー「(頷き)人知れず秘密裏に、じゃな!
任しとけィや、そんなもん軽い軽い……」
タガヌラー「(ハッとして)……むむっ、何やら怪しい気配!」
スライ「(も驚き)何ですとっ!?」
タガヌラーが敏感に察知した気配。
それは、アウトドア・ライフを楽しむために千歳の山へやって来た
毎度お馴染み、宙マンファミリーとコロポックル姉妹であった。
みくるん「うふふ、いいお天気で本当によかったですねぇ!」
ビーコン「良すぎて、逆にメッチャ暑かったりもするんスけど……」
落合さん「なんの、これこそ夏場の醍醐味と言うものですわ」
ビーコン「(頷き)っスねぇ!」
イフ「何と、宙マンたちではないかッ」
スライ「落ち着いて下さいねぇ、タガヌラー君……
彼らに気取られないよう、あくまで……密かにっ!」
タガヌラー「(こくこく頷き)……わーっちょるわい!」
ながもん「こんな、日こそ……絶好の、アウトドア……日和」
宙マン「山で遊ぶもよし、川で遊ぶもよし……
そして、パーッと楽しく、美味しいバーベキューもよし!」
みくるん「みんなで食べると、何でも美味しいですよね!」
落合さん「アウトドアならではの解放感、と言うのもありますかしら」
ビーコン「こんな暑さだからこそ、がっつり食って……
思いっきり盛り上がってスカッとしなきゃ、っスよね!」
ピグモン「はうはう~、ピグちゃんも異議なしなの~♪」
宙マン「よーしよし、善は急げだ。
そうと決まれば早速、炭を熾して料理の支度をだね……」
タガヌラー「(わなわな震えて)……ぐ、ぐぬぬぬぬ……っ!」
タガヌラー「……あ、あいつらァァッ、言うに事欠いて!
こっちが真夏の地底で、せっせと労働に精出してるって時に……
呑気にアウトドアだと、バーベキューだとぉっ……!?」
スライ「(慌てて)だーっ、待った待った待ったっ!
タガヌラー君、落ち着いて落ち着いて、クールダウンを……」
タガヌラー「……ねーい、せからしかっ!
それが出来りゃ、苦労せんのじゃ~っ!!」
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラっ!
突如として、千歳の山を揺るがす大地震。
怒りの咆哮とともに地底から現れたのは、勿論……!
「ギュゴゴボぉぉ~ンっ!!」
みくるん「ああっ、またまた怪獣さんですぅ!」
ピグモン「えう~、こんな時に出ないで欲しかったの~(涙目)」
ながもん「嫌がらせと、したら……かなり、悪質」
タガヌラー「ギャゴゴゴ~、悪質な嫌がらせだぁ?
せからしかっ、それは俺の言う台詞じゃいっ!」
宙マン「待った待った、どういうことだね!?」
タガヌラー「理由もへったくれもあるかいな!
猛暑の中、地底基地建設に勤しんでる俺の横で飯の話題。
これ以上の嫌がらせ、あるって言うなら言ってみぃや!」
ピグモン「はわわ、その気持ち、分かる気もするけどぉ……」
ビーコン「でも、結局はただの逆恨みじゃないっスか!?」
落合さん「全くですわ、堪ったものじゃありませんっ!」
宙マン「……うぬっ!」
スライ「(頭を抱え)だーっ、全くもう、どうしてくれるんですかっ!
……地底基地建設計画、これで何もかも台無しですよ!」
イフ「全く、仕方のないやつめ……
こうなったらタガヌラーよ、何が何でも宙マンを倒せ!」
タガヌラー「ギョゴボボボ……殺らいでか~ッ!」
怪獣魔王の命を受け、進撃開始するタガヌラー。
その一本角に、膨大なるエネルギーが集中・凝縮し……
次の瞬間、凄まじい熱量の破壊光線として放たれた!
みくるん「きゃああんあ、あっついですぅ~!(涙目)」
ビーコン「どひ~っ、シャレんなってねーっス!(汗)」
ビーコン「アニキ~、もうアニキだけが頼みの綱っス!」
ピグモン「宙マン、宙マン、何とかしてなの~」
宙マン「(頷き)ああ、分かってるさ、任せとけ!
宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、タガヌラーの前に舞い降りる!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
千歳の山の平和を乱す奴は、この私が許さん!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「いえっふ~、待ってましたっス、千両役者!」
落合さん「頼みましたわ、お殿様!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
タガヌラー「ギョボゴゴゴ、あてつけがましく楽しみゃがって!
断じて許さんぞな、おみゃーさんら!」
宙マン「何の、その僻み根性ごと叩きのめしてやる!」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ!
タガヌラー「ギョボゴゴゴ、勝負だ宙マン!」
宙マン「来るなら来てみろ、お化け虫!」
激突、宙マン対タガヌラー!
落合さんたちが見守る中、巨大な攻防戦は早くもヒートアップ。
自慢の鎌で宙マンを斬り倒さんと、接近戦を挑むタガヌラー。
だが、そんなタガヌラーの思惑が読めない宙マンではない――
タガヌラーの連撃を時に受け止め、また時に受け流しながら、
冷静かつ大胆に相手の隙を伺っていく。
宙マン「どうした、自慢の鎌はただのお飾りかね!?」
タガヌラー「ギョボゴゴゴ、せからしかっ!」
挑発されてカッとなり、いよいよムキになって……
嵐のような斬撃の激しさで、宙マンめがけて迫るタガヌラー。
一撃でもまともに食らえば、そこで終わりになること必至――
宙マン「だが、当たらなければどうと言うことはない!」
タガヌラー「ニャロ~、どこかで聞いたような台詞じゃねぇかっ!」
宙マン「さぁて、そろそろお返しさせてもらおうか!
くらえ――宙マン・閃光波!」
ピッキュイィィーン!
高らかな音とともに、宙マンの手にストロボ状の発光が生じ……
次の瞬間、タガヌラーのボディで激しい爆発が起こる。
宙マン「――どうだっ!?」
タガヌラー「このこのこのぉっ……もう猛烈に、怒ったぞ~っ!」
怒り狂い、角から破壊光線を放つタガヌラー。
だが宙マンは、その攻撃を冷静に見切って大空へとジャンプ!
タガヌラー「(目をパチクリ)な、何ですとっ!?」
宙マン「エイヤぁぁぁーっ!
宙マン・ミラクル・キック!!」
出た、電光石火の必殺キック!
痛烈な一撃を食らって、タガヌラーがブッ倒れたところへ――
宙マン「とどめだ!
宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、タガヌラーを直撃!!
タガヌラー「こ、これじゃまるっきり、骨折り損だがやぁ~っ!」
必殺光線の威力の前には、凶悪甲虫怪獣とてひとたまりもない。
ビーコン「いえっふ~! やったっスね、さすがアニキ!」
落合さん「ですが、さっきのあの怪獣さん……
建設中の地底基地がどうとか仰ってましたわよね」
落合さん「と言うことは、お殿様、つまり……」
宙マン「(頷き)もう一手間、掃除の必要があるってことだね。
それっ、宙マン・ブリットフィンガー!」
ズバババババッ!
まっすぐに伸ばした宙マンの指先から連射される曳光弾!
その威力が、建造中だった地底基地を跡形もなく粉砕していく。
やったぞ宙マン、大勝利!
みくるん「わぁっ、やっぱり宙マンさんは強いですぅ!」
ながもん「やっぱり、宙マン……安心感が……段違い」
ピグモン「はうはう~、宙マン、ありがとうなの~♪」
イフ「ぐ、ぐばばばばばっ……おのれおのれ、よくもやってくれたな!
だが覚えておれよ、ワシら怪獣軍団の威力には限りがないのだ。
宙マンよ、この次こそは、お前にそれを思い知らせてやる!」
……などと言う、怪獣魔王のいつもの負け惜しみはさて置いて。
我らが宙マンの活躍により、大怪獣タガヌラーは撃退され……
怪獣軍団の地底基地建設計画は、今度も未然に防がれた。
みくるん「うふふっ、宙マンさん、どうもお疲れ様でした!」
宙マン「思わぬ「一仕事」のおかげで……
私ゃもう、どうしようもないほどに腹がペコちゃんさぁ。
何はなくとも昼ご飯にしよう、バーベキュー!」
ピグモン「はうはう~、ピグちゃんもお腹すいちゃったの~♪」
落合さん「抜かりはございませんわ、お殿様。
しっかりと炭は熾り、食材への熱の通りも頃合い……
えぇ、もう、あとは美味しく頂くのみですとも!」
宙マン「おお! 抜かりのない仕事ぶりだねぇ、落合さん!」
ながもん「(ボソッと)……流石」
落合さん「うふふ、メイドたるもの当然ですわ♪」
ビーコン「ヒヒヒ、やっぱそうじゃなきゃっスよねぇ!
そして食後には、オイラが抜群の「仕事」を魅せる時……
いえっふ~、落合さんとオイラの「愛の共同作業」っスよ!」
げ し っ !
落合さん「ねーいっ、まずはこの世の大掃除ですっ!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、落合パンチは今日も激アツっスぅぅ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
今日も本当にありがとう、宙マン……
だが、未だ怪獣軍団の野望は尽きない。
さて、次回はどんな冒険が待っているのかな?