地球から遥か彼方の暗黒星雲……
そこは、全宇宙のあらゆる場所から来た怪獣・宇宙人らの集う、
いわば全宇宙の悪の総本山である。
そして、荒くれ者らの頂点に立つ存在として、「怪獣魔王」イフが
強大な超能力と恐怖のもと、絶対の支配者として君臨していた。
イフ「怪獣どもよ、よく聞け!
ワシは汝らの総帥、全宇宙に冠たる怪獣魔王・イフである」
イフ「にっくき宙マンを倒せ! 地球を攻め落とせ!
新たなる破壊の使者よ、今こそ出撃の時が来たぞ!」
今日も配下の怪獣たちへ向けて、怪獣魔王の檄が飛ぶ。
またも恐るべき侵略の魔手が、我らの地球へ向けて伸びるのだ!
イフ「今こそ戦いの幕を上げる時。
そうだ、そなたらの咆哮とともに、地上を徹底的に蹂躙し
かの星の支配者として、怪獣が人類にとって代わる時だ!」
イフ「まずは手始めに、北海道千歳市を宙マンもろとも血祭だ!
……さぁ出て来い、勇猛なる怪獣軍団の戦士よ!」
またしても迫る巨大な危機。
危うし地球、危うし宙マン!
……が、ひとまずそれはそれとして。
毎度おなじみ、宙マンファミリー。
今日はみんなで連れ立って、支笏湖畔へ遊びに来ていたぞ。
宙マン「いや~、実に清々しい青空だねぇ!」
落合さん「えぇ、晴れてくれて本当にようございましたわ」
ビーコン「ヒヒヒ、こういうのを行楽日和って言うんスね!」
ピグモン「はうはう~、ピグちゃんウキウキしてきたの~♪」
宙マン「豊かな自然、綺麗な湖水に澄んだ空気……
そして、そんな環境の中だからこそ、当地の食べ物屋さんで頂く
いろんな料理の数々も、ひときわ美味しく感じられるってものさ」
ビーコン「そうそう、それそれ、それっスよ!」
ビーコン「チップ漁の解禁こそ、まだもうちょっと先っスけど……
そんな時期こそ、他の旨い料理屋を開拓するチャンスってもんス。
近場に欧風カレーの旨い店があるらしいン「スよ、そこどうっスか!?」
落合さん「(苦笑)あらあら、まぁまぁ……。
本当に「そういう」情報収集はマメで抜かりないんですから、ビーコンさんは!」
ピグモン「はうはう~、ピグちゃんは興味シンシンなの、食べたいの~♪」
……と、その時である!
ピカッ、ゴロゴロドドーンっ!
宙マン「(ハッとして)!?」
ピグモン「えう~、急にカミナリなんて、ピグちゃんびっくりなの~」
落合さん「このタイミングで、不自然な雷……まさか!」
宙マン「(頷き)……これは何だか、嫌な予感がしてきたぞ」
ビーコン「だーっ! 待った待った待った、タンマっスよアニキ!」
ビーコン「オイラたちゃ、あくまで「遊び」に来たんスから。
……だから、ね?
ここはもう、見なかったことにしてシカト決め込んじまっても
別に、誰からもとやかく言われる筋合いもないんじゃあ……」
宙マン「んー、まぁ、確かにねぇ。
私ももう、とっくの昔に現役引退してる身なわけだし……」
ビーコン「ねっねっ、でしょでしょ!?」
宙マン「……あァ、ダメだダメだ、やっぱりダメだ。
黙って見過ごしちゃ、それこそご飯が不味くなる!!」
落合さん「あっ……ちょっ、お殿様っ!?」
ビーコン「(頭を抱えて)だーっ、アニキのお節介にも参るっス……
結局は今回も、こうなっちまうんスもんねぇぇ~っ!」
時ならぬ不自然な……不吉な落雷。
そこに「何か」を感じて、猛ダッシュで現場に急行する宙マン!
そして、不幸にも……彼の予感は正しかった。
支笏湖畔における、先ほどの唐突な落雷。
……それは、暗黒星雲の怪獣魔王が、地底で暗躍する配下へと
招集をかける合図だったのである。
では、少しだけ時間を巻き戻して……
落雷が地上に直撃したあたりから、もう一度見てみよう。
ピカッ、ゴロゴロドドーンっ!
一天、にわかに掻き曇り、地上に炸裂する鋭い落雷。
その噴煙の中から、岩を砕いて恐るべき姿を現したのは!?
野太い咆哮とともに、地上に這い出てきた一頭の怪獣。
重量級のファットなボディに、イチヂクの実のような鰭……
怪獣軍団の一員、ウラン怪獣ガボラである!
イフ「おおっ、ガボラよ、相変わらずやっとるな!」
地底でたっぷりエネルギーを蓄え、英気を養い……
全身にパワーが漲り、すぐにでも暴れたくてムズムズしておりますッ」
イフ「うむ、それでよいのだ、頼もしいヤツよ!」
魔王イフの命を受けて地上に派遣されてきた暴れ者。
怪獣ガボラの使命と目的、それは――
ガボラ「(頷き)ズバリ、千歳の徹底破壊!!」
イフ「そう、その通りじゃ!
有り余るお前のパワー、地球の奴らに見せつけてやれ!」
ガボラ「くぅぅ~っ、それそれ!
そのご命令を、今か今かと楽しみに待ってやしたぜ!」
ガボラ「千歳破壊、この俺以外に誰が出来るってんです。
自慢のウラン光線の威力で、街を跡形もない焼け野原に……」
「おおっと、そうはさせないぞ!?」
ガボラ「ど、どこのどいつだッ!?」
不意に響いてきた凛たる声に、驚いて振り返るガボラ。
次の瞬間、華麗な空中回転とともに舞い降りてきたのは……
もちろん、この男だ!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
もしやと思って来てみれば、やっぱり怪獣軍団の悪企みか!」
ガボラ「ゲゲェーっ、宙マン!?」
宙マン「正義のパワーに恐れをなすのは、そちらの方だと知れ!」
ガボラ「抜かせや、宙マン!」
ファイティングポーズをとり、敢然と身構える宙マン。
さぁ、今回もまたビッグファイトの幕開けだ!
宙マン「いいだろう、どこからでもかかって来い!」
ゆっくり間合いを詰めながら、先制攻撃のチャンスを狙う宙マン。
小刻みに頭を振りながら、これまた相手の隙を伺うガボラ。
そして、同時に駆け寄って……両者、ついに相打つ!
がっぷり四つに組んでの攻防戦。
宙マンも、ガボラも、お互いの意地にかけて……
大相撲の取組みを彷彿させる、一歩も引かない力比べである。
宙マンの押し出し! ガボラの張り手!
どちらが強いか、小細工抜きのパワフルな激突が続く。
しぶてェ野郎だ、さっさとやられちまいやがれ!」
宙マン「ふん、そう簡単にはいくものかね!」
幾度にも及ぶ格闘戦、真正面からの力比べ。
両者、再びバッと離れて間合いをとり……
そして、ガボラの次なる一手が、この流れに変化をもたらした。
宙マン「ぬうっ!」
グワッと開いたガボラの口から、勢いよく吐き出されるウラン光線!
凄まじい爆発が巻き起こり、宙マンをよろめかせる。
ダメ押しとばかりに、ガボラの頭突き一発!
これにはたまらず、大きく吹っ飛び倒れてしまった宙マン。
宙マン「ぐうっ……ううっ!」
とどめを刺すべく、宙マンへのしかかってくるガボラ。
今度はスリリングな寝技の攻防戦が展開されていく――
転がり、もみ合い、もつれ合いながらの死闘。
そんな攻防の中で、宙マンは冷静に相手の技を見切り……
敵の力を巧みに受け流しながら、いつしか形勢逆転!
逆に今度はガボラのマウントをとりつつ、怪獣の抑えこみから
見事に脱出を果たしたのであった。
宙マン「はっはっはっ……残念だったな、ガボラよ!」
ガボラ「よ、よくもやりゃがったな……!」
ガボラ「今度こそ、今度こそ黒焦げにしちゃるっ!」
宙マン「おおっと、同じ手を何度も食うか!」
宙マン、ジャンプ一閃!
ガボラのウラン光線を、ひらりとかわして大空に舞いあがる。
宙マン「とどめだ、ガボラ!」
宙マン「エイヤァァーっ!
宙マン・ミラクル・キック!!」
やったぞ宙マン、大勝利!
イフ「うぐぐぐっ……おのれ、またしても宙マンめが!
だが覚えておれよ、次は、この次こそは……必ずっ!」
かくして、我らが宙マンの活躍によって……
大怪獣ガボラは撃退され、千歳の平和は守られたのであった。
宙マン「(ハッとなり)……っと、いかんいかん!
ポーズなんて決めてる場合じゃなかったよ、早く戻らなきゃ!
ビーコンたち、今頃カンカンだろうなぁ……(汗)」
そうは言いつつ、地域の悪事を黙って素通りできないその性分。
間違いなくそれは宙マンの「よいところ」のひとつでは、あった。
現役を退いたその後も……
こだわり抜くのは、皆の笑顔とこの平和。
がんばれ宙マン、どんと行け!