ポカポカと温暖な気候、そして好天にも恵まれ……
日本全国津々浦々、まさに絶好のレジャー日和といったところ。
ここ、北海道においても、それは例外ではない――
と言うわけで今回の『宙マン』は、後志総合振興局管内にある
みくるん「は~い、スマイル、スマイル!
いいですか皆さん、撮りますよぉ~っ!」
ながもん「にっこり、笑って……セイ・チーズ」
パ シ ャ リ っ !
ピグモン「はうはう~。 みくるんちゃん、記念撮影ありがとうなの~」
落合さん「おかげさまで、よい遠出の記念になりましたわ」
みくるん「うふふ。どういたしまして♪」
ながもん「でも……私たちの、目的達成は……まだ、これから」
ビーコン「いえっふ~、そうそう!
写真だけ撮りに、わざわざ寿都まで来たわけじゃないっスよ――」
そんな寿都町の名産と言えば、何といっても牡蠣であるが……
牡蠣と同様に人気の高い食材が、4月下旬から5月下旬までと言う
ごく限られた期間にしか味わう事の出来ない、産地ならではの
鮮度抜群な「生しらす」なのであった。
とにかく「足が早」く、鮮度が落ちやすい食材であるため……
道内においては、この寿都町でしか食べられないのである。
落合さん「期間限定、そして産地限定……」
ビーコン「ダブル希少価値となりゃ、俄然食いたくなるっスよねぇ!」
ながもん「この時期、ならではの……旨味……じゅるりっ」
みくるん「シーズンが終わる前に、一度は食べておきたいですよねぇ~」
宙マン「ああ、私も実に楽しみだよ。
と、ここで……
ウキウキ嬉しそうな宙マンの言葉が、不意にぴたりと止まった。
宙マン「(怪訝な表情)……むむっ」
落合さん「あら、お殿様、どうかなさいまして?」
宙マン「済まない、みんな、ちょっと待っててくれるかな。
何だか気になることが出来たんで、確かめてくるよ」
落合さん「は? 気になること、と申しますと……」
ビーコン「……って言うか、今からっスか、アニキ!?(汗)」
宙マン「すぐ戻るから、ちょっとだけ……済まないっ!」
落合さん「あらあらまぁまぁ……お殿様っ!?」
みくるん「きゅ、急にどうしたんですかぁ? 宙マンさ~んっ!」
ビーコン「アニキ~! ちょっ、アニキ~っ!(汗)」
かくして皆と別れ……
一人、別の方向へとダッシュしていく宙マン。
彼が急に「気になった」ことと言うのは、一体何であろう?
そう、彼の「気になること」は他でもない。
「歴戦のヒーローとしての勘」で、不穏な気配を察知した宙マンは
いてもたってもいられず、それを調べに向かったのである。
そして、そんな宙マンの懸念を裏付けるかのように……!
「ぎょほほほほ~んっ!」
不気味な海面の泡立ちとともに、波しぶきをあげて出現!
寿都湾から姿を現し、のっそりと海岸の岩場へと上陸してきたのは
怪獣軍団の一員、電撃怪獣エレキングである。
エレキング「ぎょほほぉぉ~んっ、魔王様、偉大なる怪獣魔王様!
イフ「うむっ、ご苦労、エレキング!」
イフ「では、到着早々ではあるが……
お前には直ちに、作戦行動にかかってもらわねばならん。
分かっていような、それは即ち――」
エレキング「ぎょほほぉぉ~んっ! しち面倒臭い話はナシですぜ、魔王様」
エレキング「要はアレでしょ?
この俺の力で、手当たり次第にブッ壊せばいいんでしょ!?」
イフ「(頷き)大した鼻息だな、エレキング。……大いに結構、それでよい!」
イフ「地球侵略の前線基地を、寿都に築くための下準備。
そのためにこそ、お前の力による徹底破壊が必要なのだ」
エレキング「お任せ下さい魔王様、ブッ壊しならお手の物です!
こんな辺鄙な田舎町、ものの10分とかからずに――」
「おおっと、そうは問屋が卸さんぞ!」
エレキング「(ハッとなり)むむっ! 誰だ、誰でぇ!?」
凛として響いてきた声に、驚いて振り返るエレキング。
華麗なる空中回転と共に舞い降りてきたのは……
もちろんスーパーヒーロー、我らの宙マンだ!
エレキング「(驚愕)げげぇっ、お、お前は!?」
宙マン「ああ、そうだとも、宙マンだ!
現役引退の身だが、まだまだ正義に味方する気はあるぞ」
宙マン「全く、どこでも懲りずに悪企みばかりして……
おちおちゆっくり、生しらす丼の味も楽しめやしない!」
宙マン「ああ、いや……何でもない。こっちの話だ(赤面)」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ。
真っ向激突、宙マン対エレキング!
美しい寿都湾を背景に、両者の死闘がダイナミックに展開される。
かの「怪獣星」における決闘三昧の日々で、勇名を轟かせていた
名うての喧嘩好きだけのことはあって、宙マンに襲いかかってくる
エレキングの攻撃スタイルは、パワーに物を言わせた突進戦法。
だが、そんな力任せの猛攻に怯むヒーローではない。
宙マンは長年の経験を通じて磨き抜かれた判断力とテクニックで
冷静に相手の攻撃をかわし、果敢に反撃へと転じていく。
パンチ、パンチ、嵐のような連打!
軽快なフットワークと相まって繰り出させる、宙マン・鋼の鉄拳が
エレキングのボディへと次々にぶち当たっていく。
宙マン「それそれ、どうだッ――まだ参らないか、これでもか!」
エレキング「ぎょほほほ……エレキング様を、なめんなよ~っ!」
エレキング、怒りの猛突進――
メガトン級の殺人頭突きが、宙マンを大きく弾き飛ばした!
「う、うわぁぁぁぁ……っ!」
イフ「ぬふふふ……いいぞ、エレキングよ、その調子だ!
邪魔な宙マンなど、そのまま一気に捻り潰してしまえ――
そして覚悟するがいい宙マン、この寿都が貴様の墓場だ!」
宙マン「(苦悶)うう……うっ!」
エレキング「ぎょほほぉぉ~んっ、悪く思うなよ、宙マン!
魔王様のご命令だ、お前の命(タマ)、ここで頂くぜィ!」
とどめを刺さんと、勢いよくのしかかってくるエレキング!
そうはさせじと、宙マンも応戦。
両者、激しく地面を転がり、もつれ……
マウントポジションを取り合う、泥臭い攻防が展開される。
エレキング「ぎょほほほ、首の骨ェ、へし折ってやる!」
宙マン「なんの! そうはいくか――」
宙マン「ああ、そうとも……負けて、たまる、かぁぁっ!」
パワー全開、起死回生の宙マン・リフター!
豪快な投げ技で、大怪獣の体を岩場に叩きつけたところへ――
宙マン「とどめだ! 宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、エレキングを直撃!!
エレキング「ぎょホぁっ……な、何たるスパイシーな一撃ぃぃ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
イフ「ぬうううっ……おのれ、またしても宙マンめが!
よくも、このワシと怪獣軍団の顔に泥を塗ってくれたな。
だが忘れるな……ワシらはあくまで、地球征服を諦めぬ決意だ!
よいか宙マン! 覚えておれ、覚えておれよ……!」
……などと言う、いつもの負け惜しみはさて置いて。
我らが宙マンの活躍により、寿都を急襲した電撃怪獣エレキングは
見事に撃退され、のどかな港町の平和は保たれたのであった。
そして、戦いを終えた宙マンは……
勝利の余韻を味わうのもそこそこに、慌てて仲間たちの待っている
「かき小屋」の店舗前へと戻ったのであった。
ピグモン「あっ、宙マンが帰ってきたの!」
ビーコン「ンモー、アニキ、一体どこで油売ってたんスかぁ!?」
宙マン「や、申し訳ない、みんな。
話せば長くなるんで、その辺のことは後回しにして……
それより生しらす、私たちの注文は間に合ったかな!?」
落合さん「ご安心ください、お殿様。
私たちの分、ちゃーんとあるとのことですわよ!」
そう!
宙マンがこの日味わうべきは、怪獣バトルの余韻などではなくて
透き通った身も美しい、新鮮そのものの生しらす丼。
宙マン「ああ、これこれ……これなんだよ!」
ながもん「おお、宙マン……すごい……感激、っぷり」
生臭みもなく、その体色以上に透き通って鮮烈な味わいの
生しらすの瑞々しい生命力が、薬味醤油や卵黄と渾然一体になって
躍るように口中へ滑りこんでくる快感――
それはさながら、戦いで沸き立った宙マンの血潮を優しく鎮めつつ
全身に爽やかな初夏の海風を吹き渡らせるかのようであった。
宙マン「ふぅ~、ご馳走様でした、満足満足!」
落合さん「足の早い食材ですから……仕方ありませんわね」
みくるん「来年また……きっと、みんなで食べにきましょうね!」
宙マン「(頷き)ああ、勿論だとも!」
北海道にも初夏の風……
そしてますます、元気いっぱいの宙マン。
次回もまた、地域の平和は任せたぞ!