地球侵略に飽くなき執念を燃やし続ける、暗黒星雲の怪獣軍団……
今日も今日とて懲りもせず、怪獣魔王とその配下がめぐらす悪だくみ。
イフ「ぐぬぬぬっ……それにつけても、憎むべきは千歳のあの男。
「銀河連邦」の一員、プラネット星人の宙マンだ!
奴のために、今までどれだけワシらが煮え湯を飲まされてきたことか――」
イフ「どうすれば、どうすれば宙マンに勝てる。
どうすれば奴をギャフンと言わせ、地球を征服できるのだ!」
スライ「んー、ふふふ、そう問われたなら答えはひとつ!」
スライ「趣向を凝らした緻密な戦略、全てはこれに尽きるかと。
ダークネスファイブが一人、“魔導の”スライにどうぞお任せを!」
イフ「ううむっ、なるほど――」
「いいや、スライも叔父貴も甘いぜ!」
どこか嘲るような怒号とともに、ずいっと前に進み出てきたのは……
スライと同じく怪獣軍団の幹部候補生「ダークネスファイブ」の一員である
スライ「……少々聞き捨てなりませんね、ヴィラニアス。
一体、この私のどこが甘いと――」
ヴィラニアス「戦略だの、絡め手だの、相手の裏をかく罠だの……
そんな真似ばかりしてるうち、だんだん発想が先細っていくもんさね。
怪獣の本分は今も昔も真っ向勝負のブッ壊し、これに尽きるぜ!」
イフ「うむっ、それもまた大いに頷ける意見じゃの。
だがヴィラニアスよ、ワシの前でそこまで言うからには――」
ヴィラニアス「(頷き)俺様の選んだ怪獣は、既に地球に潜伏中さ。
そして間もなく、そいつが行動をおこそうとしている――
ガハハハッ、まァ見ててくれや、イフの叔父貴!」
イフ「よかろう、ワシも何だかワクワクしてきたぞ!」
ヴィラニアス「ガハハハハハッ……!」
おお、何ということであろう?
新たなる地球の危機は、もうすぐそこまで迫りつつあったとは!
が、ひとまずそれはそれとして。
こちらは毎度お馴染み、北海道千歳市ほんわか町5丁目。
そんなこととは露知らぬ「宙マンハウス」の住人たちと、そのご近所さんたちは
静かでのんびりした、初夏の午後を満喫中であった。
ピグモン「はうはう~、フキがいっぱいなの~!」
当地・北海道の様々な大自然の恵み……
5月下旬から6月にかけては、やはりどうしてもフキは外せない。
ビーコン「こいつが山のそこかしこに自生してるってんスから……」
落合さん「えぇ、それはもう、この土地柄ならではの有難さですわね」
ビーコン「油炒めに味噌汁、肉詰め、煮つけ……っかー!
オイラもう、想像しただけで口ン中に唾が沸いて止まんないっスよ!」
ピグモン「えう~、ビーコンちゃん、お上品に。なの~」
宙マン「はっはっはっ、でもビーコンの気持ちも分かるよ。
……落合さん、今夜はとびきり旨いフキ料理、頼んだよ!」
落合さん「お任せ下さいお殿様、腕によりをかけまして。
……みくるん様たち、このたびは結構なものを有難うございました!」
みくるん「いえいえ~、いっぱい採れたからお裾分けですぅ」
ながもん「美味しく、食べてくれたら……私たちも、うれしい」
ビーコン「やー、持つべきものは気配り上手のご近所さんスねぇ。
んじゃオイラ、料理が出来るまでのんびり昼寝でもしてるっス~」
落合さん「(ジト目)ちょっと、ビーコンさんったら。
調理の準備を手伝おうとか、そういう殊勝なお気持ちはございませんの?」
ビーコン「いやいや~、アナタ作る人、オイラ食べる人。
役割分担ってのは何気に大事っスよねぇ、ヒッヒッヒ~♪」
落合さん「(呆れ)ンーまっ、いけしゃあしゃあとッ!」
宙マン「(苦笑)たはは、まぁまぁ、二人とも……」
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラっ!
みくるん「きゃ、きゃああぁぁんっ!」
落合さん「こ、これはまた……例によって、いつも通りの展開ですかしら!?(汗)」
ビーコン「……な~んかネェ、猛烈にそういう予感がするっスよ!(汗)」
のどかな、平穏な時間を破るかのように……
不意の局地的大地震が、またまた千歳の街を襲った。
大量の土砂を天高く柱のように撒き上げ、舗装道路をも容易く引き裂いて
地の底から今また新たに、その姿を現わさんとしている邪悪な影。
……果たして、それは!?
「ぐわぉぉぉぉーんっ!!」
みくるん「ああっ、レッドキングさんですぅ!」
ピグモン「力がものすご~く強い、乱暴者の怪獣さんなの~!}
ながもん「(無表情に)オウ……ぜんぶ……先に、言われちゃった」
「怪獣博士」ならずとも、その姿と名前を広く知られた怪獣界の大メジャー。
多々良島出身の暴れん坊、どくろ怪獣レッドキング……
“極悪の”ヴィラニアスの命を受け、地球に送りこまれた破壊の使者だ!
ビーコン「何てこったっス、相手がレッドキングとなると……」
落合さん「……どうやら今回も、只では済みそうにないですわねぇ!」
レッドキング「ぐわぉぉ~、もちろん俺もタダで済ます気なんてないぜ!」
レッドキング「この俺の力で、千歳の街を全部ブッ潰して更地にしてやる!」
宙マン「ううむっ……なんてハタ迷惑な宣誓だ!」
ピグモン「(怯えて)はわわわ、ピグちゃん怖いの~!」
ジャタール「何だ、ヴィラニアス……
お前が言っていた強豪怪獣、誰かと思えばレッドキングのことかね?」
ヴィラニアス「(頷き)腕っぷし一本でのしあがった、怪獣界の怪力バカ一代……
小細工抜きの分かりやすさと強さ、そこがいい!」
イフ「よぉし……行け、レッドキング! 思い切り暴れろ!」
レッドキング「ぐわぉぉ~、任せといて下さいや、魔王様!
レッドキングの怪力ここにあり、ニンゲンどもに見せつけてやるぜ!」
怪獣魔王の命を受け、猛然と進撃開始するレッドキング!
荒々しく迫るその巨体を前に、慌てて散り散りに逃げ惑う千歳の人々。
ビーコン「どひ~っ、結局今回もこうなっちまうんスねぇぇ~っ!」
落合さん「落ち着いてお料理どころではございませんわ、これじゃ!」
持ち前の野獣性と凶暴さを全開にして、人々の恐怖と混乱を鼻で笑いつつ
この猛威を阻止すべく、直ちに防衛隊の戦闘機がスクランブルをかけた。
ピグモン「あっ、あれ……戦闘機なの!」
落合さん「(頷く)防衛隊のお歴々、今日も勇んでお出ましですわねぇ!」
ビーコン「いいトコロに来てくれたっス、頼んだっスよ~!」
「ようし――全機、攻撃開始っ!」
だが、その相次ぐ直撃にも、全く怯むことなく前進を続けるどくろ怪獣。
怪力ばかりではなく、その肉体の頑健さもまた折り紙つきなのだ。
レッドキング「ぐわぉぉ~、効かねぇ効かねぇ、こそばゆいぜ!」
「ううむっ……なんて奴だ!(汗)」
みくるん「そんな……あれだけ撃って、ちっとも効いてないなんて!」
ながもん「これは、いよいよ……切羽、つまって……きたかも」
ビーコン「どひ~っ、ここは一発、ヒーローの出番スよ、アニキ!」
落合さん「お殿様、今日もまた……お願いできますか!?」
宙マン「(頷き)ようし、やるとも! 宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、猛り狂うレッドキングの前に舞い降りる!
宙マン「トゥアーッ! 宙マン、参上!
レッドキング、これ以上の乱暴狼藉は見過ごせないぞ!」
ズ、ズーンっ!!
ながもん「おおっ。……この、安心感」
ビーコン「こうなったらもう、アニキだけが頼みの綱っス!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
レッドキング「ぐわぉぉ~、出たな宙マン! 泣きっ面にしてやるぜ!」
宙マン「いいや、そうなるのはお前さんの方さ!」
ファイティングポーズを取り、敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ。
激突、宙マン対レッドキング!
千歳の人々が息を呑み見守る中、巨大な正邪の死闘が展開される。
持ち前の怪力で、猛然と挑みかかってくるレッドキング!
もはや宙マンも駆け引き抜きで、真っ向からパンチ連打で対抗。
レッドキング「ぐわぉぉ~、つまんねぇ小細工なんていらねぇぜ!
この力と腕っぷし、俺にはコイツがあるからな!」
宙マン「……ただそれだけで、私を倒せると思ったら大間違いだ!」
どくろ怪獣の一瞬の隙を突き、回し蹴りを炸裂させる宙マン。
レッドキングが怯んだところへ、更にダメ押しのストレートパンチ一発!
レッドキング「ぐ、ぐふぅぅっ!?」
宙マン「どうだ、参ったか! これが正義の宙マン・アクションだ!」
宙マン「これに懲りたら、大人しく暗黒星雲へ帰るがいい!」
レッドキング「ニャロオッ……なめんな、コラァッ!!」
バ キ ィ ィ ッ !
大きくふりかぶって勢いに乗った、レッドキングのパンチが炸裂!
その「たった一発」によって大きく吹っ飛び、地面に叩きつけられる宙マン。
みくるん「ああっ、宙マンさんが!」
ながもん「さすが、レッドキングの……超、怪力」
ビーコン「ああ言う馬鹿力一辺倒の攻撃は、当たればダメージがデカいから
色んな意味で厄介っスよねぇ!(汗)」
落合さん「あれを何発も食らえば、流石にお殿様でも……(汗)」
ピグモン「はわわ、宙マン、負けないでなの~!(涙目)」
宙マン「(苦悶)うう……うっ!」
レッドキング「ぐわぉぉ~、ザマぁねぇな、宙マン!」
イフ「おおっ、いいぞいいぞ、その調子で押しまくれ!」
レッドキング「ぐわぉぉ~んっ、捻り潰しちゃるぜ、宙マン!」
宙マン「なんの! 宙マン・サンブライト・スパーク!」
宙マンの胸から周囲に迸る、太陽光のごときまばゆい閃光!
その正義の光に、思わず目がくらんで動きが止まるレッドキング。
レッドキング「ぐ、ぐわぉぉんっ!?」
宙マン「よし、今だ!」
宙マン「エイヤァァーっ! 宙マン・ミラクル・キック!」
怯んだレッドキングの隙を突き、必殺キックが炸裂!
燃える足先をまともに喰らい、大怪獣がよろめいたところへ――
宙マン「とどめだ! 宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、レッドキングを直撃!!
レッドキング「……く、悔しいけど、アンタが一枚上手ぇぇ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
みくるん「わぁっ、やりました、宙マンさんの勝ちですぅ!」
ながもん「さすが、宙マン……ヒーローは、こうじゃ……ないと」
ピグモン「はうはう~、宙マン、ありがとうなの~♪」
ヴィラニアス「ぐぬぬぬっ……おのれ宙マン、よくもレッドキングを!」
スライ「ふふん……だ~から、言わないことじゃない!」
ヴィラニアス「(ムカッ)……何だと!?」
イフ「ええいっ、仲間内でつまらぬ喧嘩はよさんか!」
イフ「それにつけても、それにつけても……
どこまでもにっくき宙マン、よくもワシの顔に泥を塗ってくれたな!
今に見ておれ、この仕返しは必ずしてやるぞ……!」
……などと言う、いつもの怨嗟と負け惜しみはさて置いて。
我らが宙マンの活躍によって、テンペラー星人“極悪の”ヴィラニアスの肝入りこと
どくろ怪獣レッドキングは撃退され、千歳には再び平和が蘇ったのであった。
落合さん「改めまして……お疲れ様でした、お殿様!」
みくるん「宙マンさんのおかげで、私たちもほっと一安心ですぅ」
ながもん「ほっとしたら……お腹……すいてきた」
宙マン「ああ、私もさ、今からお腹がぺっこぺこだよ。
落合さん、美味しいフキ料理、楽しみにしているからね!」
落合さん「はいっ、お殿様、それはもう!」
ビーコン「ヒヒヒ、オイラもめっちゃ楽しみっス~。
そして「山菜」つながりで、オイラの股間にも季節外れの小粋なキノコが……」
げ し っ !
落合さん「ねーいっ、言うに事欠いてッ!!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、皆さん、また次回お目にかかりましょうっス~」
宙マン「はっはっはっはっ」
今日も本当にありがとう、宙マン。
さて、次はどんな活躍を見せてくれるかな?