さんさんと照りつける太陽――
ここ・北海道千歳市も暑い日が続き、例年よりも少し早めとは言え
文字通りの「盛夏」と言ってよいここ数日である。
そんな暑さに誘われて、大自然の生命力が沸き立つ季節。
空の青さと緑の眩しさ、夏ならではのエネルギッシュな空気に誘われて
誰も彼も、じっとしていられるはずがない。
そんなわけで、お馴染み宙マンファミリーとコロポックル姉妹もまた……
今日は家の外に出て、アウトドア・ライフを満喫中なのであった。
宙マン「いやー、いい天気で本当によかったねぇ!」
ビーコン「天気が良すぎて、逆にメッチャ暑かったりもするんスけど……」
落合さん「なんの、これこそ夏場の醍醐味と言うものですわ」
ビーコン「(頷き)っスねぇ!」
ピグモン「川遊びでしょ、昆虫採集でしょ、アスレチックでしょ……
はうはう~、ピグちゃん、やりたいこといっぱいなの~」
宙マン「うんうん、みんなで思いっきり遊ぼうじゃないか」
みくるん「うふふふっ、そしてそして、思いっきり遊んだあとはぁ……
炭火焼のバーベキューで、お腹いっぱいになりましょうね!」
ながもん「屋外で、食べると……いつも以上に、美味しい」
ビーコン「うんうん、いえっふ~! 異議なしっス!」
宙マン「まさに今日と言う日は、絶好のアウトドア日和だよねぇ。
天気は快晴、空気は旨いし、何よりこの静かな環境……」
……と、宙マンが言いかけたとき。
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラっ!
大地を引き裂き、煙を吹き上げ、地中からその巨大な姿を現した者とは!?
「ギシャウゥゥ~っ!!」
みくるん「ああっ、怪獣さんですぅ!」
ピグモン「はわわ、あんな怪獣……今まで見たことないの!」
ながもん「(眼鏡をクイッと上げ)初めて見る顔……あれは、いったい……?」」
怪獣軍団の新たなる一員、甘党怪獣キビロス。
つい先月、ゾネンゲ博士のスカウトの目にかなって軍団入りし……
宙マン「で、そのデビューを千歳で飾ろうってわけか……」
落合さん「今度はいったい、何がお望みですの!?」
「ギシャシャ……ずばり、バーベキュー♪」
落合さん「……はぁ!?」
キビロス「この俺は昔から焼肉……と、食後の甘いデザートには目がなくてなぁ~。
そこへ、「バーベキュー」だなんて心ときめく単語を聞いてしまったら
たとえ潜伏中だろうと何だろうと、ガマンなんてききっこないぜ!」
ビーコン「ははぁ……要は食い気最優先、ってことっスか」
ながもん「(ボソッと)……私は、構わない」
みくるん「(驚き)ふぇぇっ、な、ながもん!?」
ながもん「あなたが……アウトドアの、お約束に……親しみ……
節度をもって、行動……してくれるのなら……
それも、不可能な……ことじゃ、ない」
キビロス「その上でなら、焼肉もデザートも、食える……と?」
ながもん「(頷き)お約束……守れる?」
キビロス「おうさ、守る守る、ちゃんとマナーを守るとも
旨いもんにありつく為なら、いくらでもいい子ちゃんに――」
「えぇい、この大馬鹿者めが~っ!!」
イフ「な~にがアウトドアのマナーだ、何がいい子ちゃんだ!
キビロスよ、お前も怪獣軍団の一員になったのならば……
欲しいものは腕づく・力づくで奪い取らずして何とする!?」
キビロス「(慌てて)は、ははぁーっ!
まことに全く、魔王様の仰る通りでございます!」
イフ「ようし、ならば行け! 思い切り暴れるのだ!
どうせバーベキューをやるなら、もっと派手に行けィ――
左様、千歳全域を丸ごと焼き尽くすぐらいの勢いで、な!」
怪獣魔王の一喝を受け、慌てて進撃開始するキビロス!
楽しいはずのアウトドア・ライフが、たちまち恐怖に包まれる。
そんな混乱を、むしろアザ笑うかのようなキビロス。
ぐわっと開いたその口から、勢いよく火焔熱線が吐き出された。
みくるん「きゃああん、あ、あっついですぅ~!(涙目)」
ビーコン「どひ~っ、シャレんなってねーっス!(汗)」
巻き起こる爆発、燃え盛る炎。
平和だった千歳の山は、にわかに火炎地獄の様相を呈していた!
キビロス「ギシャウゥ~、このまま山ごとバーベキューだァ!」
ピグモン「はわわ……宙マン、宙マン、なんとかしてなの~」
落合さん「こうなってはもう、お殿様だけが頼りですわ!」
宙マン「(頷き)ようし、いっちょやるか!
宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
大ジャンプとともに、荒れ狂うキビロスの前へと舞い降りる!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
怪獣軍団め、楽しいアウトドア・ライフを乱す者は許さん!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「うお~い! アニキ、ここは任せたっスよ~!」
落合さん「いつもながら凛々しいお姿です……♪(うっとり)
……っと、それよりお殿様、まずは山火事の方を!」
宙マン「判ってる!」
宙マンの指先から迸る消火ビーム……
“ミラクル・ディスチャージャー”の清冽な一閃が、燃え盛っていた山火事を
たちまちのうちに消し止めてしまう。
ながもん「おおっ……グッジョヴ」
みくるん「さすが宙マンさんです、これでもう安心ですぅ!」
落合さん「いえ、まだですわ――まだ、あの怪獣がいます!」
キビロス「ギシャウゥゥ~っ! 出たな、お前が噂の宙マンか……
おまえを倒して、俺のデビュー戦を特大の大金星で飾っちゃる!」
宙マン「そうは問屋が卸すものか、正義の力を思い知れ!」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ。
キビロス「ギシャウゥゥ~っ! 勝負だ勝負だ、勝負だぁ!」
宙マン「ああ、とことんまでやるぞ!」
真っ向激突、宙マン対キビロス!
落合さんたちがハラハラと見守る中、巨大な両者の死闘が凄絶な火花を散らす。
「甘党怪獣」という異名の通り、甘いものには目がなくて……
いざ戦いとなれば、体内に蓄えた莫大な糖分をエネルギーへと変換して
爆発的なまでのパワーを発揮するのが、この大怪獣キビロスである。
野太い日本の腕を振りかざし、宙マンに掴みかからんとし……
更に隙あらば、自慢の牙で噛みつかんとするキビロス。
猛攻をかわしつつ、宙マンも決死の接近戦を挑んでいくが……。
持ち前の怪力で、押しに押しまくるキビロス!
「甘党」の別名に反する辛口の猛攻に、さしもの宙マンも苦戦するが
一瞬の隙をついての水平チョップ、更に正面からのキック!
宙マン「どうだキビロス、思い知ったか!」」
キビロス「ギシャウゥゥ~っ! ざけんな、これでもくらえ!」
キビロスの吐き出す火焔熱線!
その威力が、宙マンの周囲に凄まじい爆発を生じさせる。
「う、うわぁぁぁぁ……っ!」
みくるん「ああっ、宙マンさんが!」
ながもん「見た目に、反して……あんがい、強い」
ビーコン「ひぇぇ、感心してる場合じゃないっスよ、ながもんちゃん!」
落合さん「このままでは、いくらお殿様でも……」
ピグモン「はわわわ、宙マン、負けないでなの~!」
宙マン「(苦悶)うう……うっ……!」
キビロス「ギシャウゥゥ~っ、デビュー早々にして大金星だぁ!」
宙マン「なんの……負けて、たまる、かぁぁっ!」
宙マン、起死回生のパワー全開!
キビロスの火焔熱線をジャンプでかわし、空へと舞いあがる。
キビロス「(驚き)ぎ、ギシャウゥゥっ!?」
宙マン「くらえキビロス――宙マン・閃光波!」
ピッキュイィィーンっ!
高らかな音とともに、宙マンの手にストロボ状の発光が生じ……
次の瞬間、キビロスのボディで激しい爆発が起こって大怪獣を怯ませる。
宙マン「とどめだ! 宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、キビロスを直撃!!
キビロス「うがががっ……この黒星は、悔しすぎぃぃ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
みくるん「わぁっ、やっぱり宙マンさんは強いですぅ!」
ながもん「やっぱり、宙マン……安心感が……段違い」
ピグモン「はうはう~、宙マン、ありがとうなの~♪」
イフ「ぐ、ぐばばばばばっ……おのれおのれ、よくもやってくれたな!
だが覚えておれよ、ワシら怪獣軍団の威力には限りがないのだ。
宙マンよ、この次こそは、お前にそれを思い知らせてやる!」
……などと言う、怪獣魔王のいつもの負け惜しみはさて置いて。
我らが宙マンの活躍により、甘党怪獣キビロスは撃退され……
美しい千歳の山々には、再び元の静けさが返ってきたのであった。
みくるん「うふふっ、宙マンさん、どうもお疲れ様でした!
宙マン「やー、「一仕事」して体を動かしたら、すっかりお腹がすいちゃったな。
さぁさぁ、何はともあれランチにしよう、ひ・る・ご・は・ん!」
ピグモン「はうはう~、ピグちゃんもお腹ペッコペコなの~♪」
落合さん「ご安心下さいませ、お殿様。
バーベキューの用意なら、既に整っておりますわ!」
宙マン「おおっ、いい匂いだねぇ、たまらないな!」
ながもん「これぞ……アウトドアの……醍醐味」
落合さん「さぁさぁ、どんどん焼けますわよ、どんどん食べて下さいな!」
ビーコン「いえっふ~、今こそオイラの食欲の見せどころっスね!
そして食後は落合さん相手に、オイラの性欲の魅せどころ……
……あ、「肉欲」の方がいいっスかね? モノがバーベキューだけに!」
げ し っ !
落合さん「ねーいっ、上手いこと言ったおつもりですかっ!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、小粋なジョークを判ってもらえないのは悲しいっスぅぅ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
今日も本当にありがとう、宙マン!
だが、未だ怪獣軍団の野望は尽きない……
さて、次回はどんな冒険が待っているのかな?