遥かなる宇宙の彼方、暗黒星雲の奥深くから……
地球を我が物にせんと狙い続けている、恐怖の怪獣軍団。
怪獣魔王の威厳そのもののように、不気味にそびえる城。
それはまさに、大宇宙の悪のシンボルそのものであったが……
ズガーン! グワーンっ!
こと今日に限っては、のっけから大変なことになっていた!
ヴィラニアス「どわ~っ! 何だ何だ、何だってんだぁ!?(汗)」
「天変地異か!」「マシントラブルか?」
「それとも、他の勢力の殴り込みか……!?」
イフ「えぇい、うろたえるでない、お前たち!
……まずは現状を報告せい、それが判らぬことにはな!」
ジャタール「や、どうもこうもありませんですよ、魔王様!」
グロッケン「まずはアレですね……
こちらの映像を見てもらうのが手っ取り早いかと!」
イフ「ううむっ……これは、予想以上の酷さだな!」
怪獣軍団の本拠地も、あちらこちらが無残に破壊され……
ご覧の通りの、痛ましい有様。
ジャタール「現場からの報告によれば……
随所に鋭く切り裂かれたような切り傷や断面が残っていた、と」
ヴィラニアス「何っ、切り裂かれた断面だとォ……!?」
イフ「(頷き)ううむっ、それでワシにも察しがついたわ。
……これ、ツルク星人! ツルク星人はおるか!?」
「テュカカカっ……魔王様、お呼びで?」
怪獣魔王の声に応え、本拠地中心部の大広間に姿を見せたのは……
「奇怪宇宙人」の異名をとる宇宙の切り裂き魔・ツルク星人。
もはや両手に剣を持つことさえもどかしくなり、外科手術によって
両腕に鋭利な刃を移植してしまった、手に負えない凶状持ちである。
イフ「(溜息)はぁ……やっぱりお前の仕業であったか!」
イフ「さてはまた、「切りたい病」の発作が出たな?
軍団内で刃物は振り回すなと、あれほど言っておいたに!」
ツルク星人「テュククク、こればっかりは性分ですので♪」
ツルク星人「久々に切り裂きを満喫できて、大いに満足ですっ。
すっきりしたところで、私ゃこれから昼寝でも……」
イフ「…………(ぶ ち っ !)」
「えぇい、この大馬鹿者めが~っ!
言うに事欠いて、よくもぬけぬけと……!!」
イフ「元気が有り余っておるなら、とっとと地球でも侵略して来い!
さもないと、基地破壊の分だけ減俸処分にするぞ……!?」
ツルク星人「ひぇぇぇ、ご、ごめんなさ~いっ!(汗)」」
かくして、怪獣魔王の命……
……と言うか、お叱りを受けて出撃の運びとなったツルク星人。
彼は空間伝送によって、大宇宙の遥かな距離を一瞬にして飛びこえ
今、我々の地球……北海道千歳市に、その姿を現した!
「テュカカカカカ……!!」
ピグモン「あっ、また怪獣が出てきたの!」
ビーコン「いや、怪獣みてーに見えるルックスっスけど……
あいつァ確か、れっきとした宇宙人だった筈っス!」
宙マン「(頷き)奇怪宇宙人、宇宙の切り裂き魔……
悪名高き、ツルク星人!」
ツルク星人「テュカカカっ、イカにもタコにも、ツルク星人!
そして俺が、こうして地球に来た理由は……
前段参照・以下省略ってことで、ひとつ☆」
ビーコン「(思わずドタこけ)……うわっ、超・雑!」
落合さん「そこはもう少し、説明の丁寧さと申しますか……」
ツルク星人「テュククク、どうせやる事ァ同じなんだ。
サクサク進めよう、サクサクっとテンポよく、ね!」
宙マン「うぬぬっ……よくも抜け抜けと!」
イフ「さぁ行け! 思い切り暴れるのだ、ツルク星人!
若い日の衝動も、効果的に正しく発散してこそじゃ……
それこそが、我が怪獣軍団の理想的宇宙人像だぞ!」
ツルク星人「テュカカカ、やらせてもらいますよォ、魔王様!」
怪獣魔王の命を受け、進撃開始するツルク星人!
迫り来る巨体を前に、悲鳴をあげて逃げ惑う千歳の人々。
落合さん「あらやだ、何て強引な方なんでしょう!?」
ビーコン「ゴーイン矢の如し、星人は怪獣のごとし……」
ピグモン「えう~、ビーコンちゃん、あんまり上手くないの~」
ビーコン「うひ~、ボヤかなきゃやってらんないんスよ~!(汗)」
持ち前の嗜虐性を全開にして、人々の恐怖と混乱を鼻で笑いつつ
千歳市街を我が物顔で突き進むツルク星人。
この猛威を阻止すべく、直ちに戦闘機隊がスクランブルをかけた。
ビーコン「おおっ、ナイスタイミングっス!」
落合さん「頼みましたわよ~、航空防衛隊の皆様!」
ピグモン「おじさんたち、ファイトなの~♪」
「星人め、これ以上の好き勝手は許さんぞ……
防衛隊の底意地、見せてやれッ!」
戦闘機編隊、一斉に攻撃開始!
が、無数のロケット弾を叩きこまれ、直撃を受けてなお……
不敵なまでのふてぶてしさで、びくともしないツルク星人。
ツルク星人「テュカカカっ、邪魔だ邪魔だ!」
「……ど、どわぁぁぁ~っ!?」
げに凄まじきは、ツルク星人の両腕の刃!
その切れ味の前に、次々と切り裂かれて墜落していく戦闘機。
ツルク星人「テュカカカ……我が“星魔剣”の切れ味、思い知れ!」
ズバァーッ! バシュウーッ!
両腕の刃を翻らせ、市街地をを突き進むツルク星人!
そして次の瞬間には、近代建築のビルが次々に切断されていく。
ツルク星人「テュカカカっ、いい気分だぜ、超サイコー!
俺のレベルまで突き詰めりゃ、切り裂きも一種の芸術だね!」
ビーコン「どひ~っ、なんつーヤバげな自画自賛っスか!?」
落合さん「あちらは良くても、私どもは大迷惑ですわ!」
ピグモン「はわわ……宙マン、宙マン、なんとかしてなの~」
宙マン「(頷き)おのれ、もう許さんぞ! 宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、ツルク星人の前へと舞い降りる!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
宇宙の悪党星人め、度の過ぎるおふざけもそこまでだ!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「出たっス、アニキの十八番!」
落合さん「こうなってはもう、お殿様だけが頼りですわ!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
ツルク星人「テュカカカ、これはまた切り裂き甲斐のある獲物ちゃん!」
宙マン「悪いが、お前の思い通りにはいかん!」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ!
ツルク星人「我が“星魔剣”の錆になってもらうぞ、宙マンよ。
まぁもっとも、この刃が錆びたことァないんだけどね!」
宙マン「いや、そういう情報は割とどうでもいいんで!(汗)」
激突、宙マン対ツルク星人!
落合さんたちが見守る中、巨大な両者がしのぎを削りあう。
両手の刃を縦横に奮い、嵐の激しさで襲い来るツルク星人!
宙マンもまた、怯むことなく果敢に渡り合っていくが……
ツルク星人の二段戦法の苛烈さに、反撃の好機を見いだせない。
宙マン「ううむっ、これは意外に厄介だな!」
ツルク星人「テュカカカ、ボヤいてる暇があるのかぁ!?」
ズバシュっ!
振り下ろされた刃が、宙マンのプロテクターをも切り裂いた!
これにはたまらず、ドドーッと勢いよく倒れ伏したヒーローである。
落合さん「お、お殿様っ!?」
ビーコン「次にアレを食らっちゃ、いくらアニキでも……!」
ピグモン「はわわ、宙マン、まけないでなの~!」
宙マン「(苦悶)ぐ、うっ……これは、効くな……!」
ツルク星人「テュカカカ……宙マン、膾にしてやる!」
「なんの……宙マン・プロテクション!」
ツルク星人「(驚き)ぬぉぉぉっ……あ、味な小細工をっ!」
とっさの防御壁発動で、ツルク星人の刃を受け止めた宙マン。
その際に生じたスパークで、星人の目がくらんだ隙を突き……
宙マンは、大空高くジャンプ!
ツルク星人「な、何だとっ!?」
星人めがけて急降下していく宙マン。
激しい空中きりもみ回転とともに、繰り出すその技の名は!
「エイヤぁぁぁーっ!
宙マン・回転フルキック!!」
高速回転の勢いを加え、両足で蹴り込む正義のキック!
鋭い足先を食らって、ツルク星人がブッ倒れたところへ――
宙マン「とどめだ!
宙マン・ヘッドビーム!!」
宙マンの闘志そのもののような、真っ赤に輝く破壊光線……
ヘッドビームの一閃が、ツルク星人を直撃!!
ツルク星人「だハぁぁっ……
こりゃまた何とも、切れ味よすぎ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
落合さん「やりましたわ、流石お殿様です!」
ビーコン「いえっふ~、やっぱアニキはこうじゃなくちゃっス!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、ありがとうなの~♪」
イフ「おのれ、またしても……またしても宙マンめが!
だが、怪獣軍団にはまだまだ手練れの者らが揃っておるわ……
今に見ておれ、思い知らせてくれる!」
……という、怪獣魔王のいつもの負け惜しみはさて置いて。
怪獣軍団の恐怖の使者、ツルク星人を撃退し……
かくてまたまた、見事に北海道の平和を守りぬいた宙マン。
そんな彼を讃えるように、降り注ぐ陽の光もひときわ眩しかった。
落合さん「お殿様、今日もまたお疲れ様でした!」
ビーコン「ホント、アニキのおかげでみんなが救われたっスよ~」
宙マン「いやぁ、一汗かいたらすっかりお腹がすいちゃったな」
ピグモン「はうはう~、ピグちゃんもお腹ぺこぺこなの~♪」
落合さん「承知しましたわ、すぐにご飯の準備を致しましょう!
活きの良いお魚が手に入ってますので、私の包丁さばきで……」
ビーコン「いや~、切ったり刻んだりはたくさんっスよ、しばらく!
それよりもオイラは、ありのままの温もりと優しさ……
ヒヒヒ、この柔らかさの中に今は溺れていたいっす~☆」
むにゅんっ、ふにふにっ
落合さん「(悲鳴)……きゃ、きゃああああっ!?」
げ し っ !
落合さん「ねーい、まずはこちらの「料理」が先ですわねっ!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、落合パンチの切れ味もハンパないっスぅぅ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
怪獣軍団から送りこまれる刺客たち……
どいつも、こいつも、曲者揃い。
負けるな宙マン、片っ端から打ち砕け!