遊びをせんとや生まれけり

全ての「面白がりやさん」へ――千歳より、愛をこめて。

『ウルトラマンデッカー』20話、見ました!

1話完結・読み切り形式……

毎回、毎回がSF・幻想小説などの「短編」としての余韻を讃え、エピソードごとに

違った形で示される切り口や作り手の個性にこそ良さがあり、また魅力でもあった

SFアンソロジーウルトラQ』から始まったウルトラシリーズ

シリーズを重ねるごとにトータルでの情報が統合・整理されていくにつれ……

また、メインスポンサーたる玩具メーカーの販促との密接な連携を求められるあまりに

次から次に(それこそ視聴者サイドの我々が消化しきれないほどのスピードと量で!)

提示されてくる種々の新要素、連続ストーリーとしての経糸と「引き」重視の展開が

徐々に、しかし確実にそれらの「1話読み切りアンソロジー」時代の良さと財産とを

スポイルしている、と言うのもまた否めない事実なわけですが。

総天然色ウルトラQ キャラクター大全縮刷版

総天然色ウルトラQ キャラクター大全縮刷版

 

そんな良くも悪くも変質していきつつある『ウルトラ』の中にあって

原初の「ウルトラ的なるものの」よさを何とか風化させずに残していこう、と言う

スタッフ陣の意向、と言うか抵抗もまた、ニュージェネレーションと称される

2013年以降の『ウルトラマン』作品群の中からも確かに感じられ……

今回の20話「らごんさま」も、そんな単発編ならではの自由度の高さを活かす形で

他の特撮変身仮面ものにはない『ウルトラ』ならではの空気への傾倒と言いますか

『ウルトラ』本来のよさ、1話完結アンソロジーならではの楽しさへの強い憧憬が

全編から強く匂い立つ(ちょっと露骨なほどに)つくりになっていて楽しめました。

 

 

……が、毎回のストーリーの連続性を楽しみにしているタイプの視聴者にとっては

こういう「寄り道」は、必ずしも歓迎されないのかな?(苦笑)

ウエーブ ウルトラQ 海底原人ラゴン ソフビキット

ウエーブ ウルトラQ 海底原人ラゴン ソフビキット

 

埋め立てがなされる200年前は海だったと言う地方都市ワダツミ・シティに

古くから伝わる「らごんさま」の因習にからめ、『Q』の海底原人ラゴンを

単なるSF・疑似生物学的興味の産物ではなく、この世ならざる異界からの住人として

再解釈したうえで展開されていく幻想怪奇譚……

 

あくまで『Q』『ウルトラマン』における、海生生物の進化体であるというラゴンとは

別物として解釈すべきその一方で、巨大化後もちゃんと理性を保っているがゆえに

ラゴンがバラゴンの声で鳴かない(笑)など、そんな細かい演出の気の使いぶりが

何とも律儀で、朝から嬉しくなってしまいます(笑)。

 

ウルトラアクションフィギュア ウルトラマンデッカー ミラクルタイプ

 

そして今回のお話が個人的にすごく「響いた」のは、そんな通常の本作らしからぬ

『ウルトラ』の原点たるSF怪奇アンソロジー路線への傾倒ぶりを前面に押し出しつつも

しっかりウルトラマンデッカー』として在り続けたと言う点で……

 

スフィアのために自分の夢を奪われ、それでも今出来ることを諦めない……と言う

番組当初からのキャラクターを一貫させたうえで、「らごんさま」と手を取り合って

深淵へと去っていこうとする老婆を必死で止め、この世界にとどまらせようとする

イチカの一途な姿や、そんな彼女たちを最終的に現世へと引き戻す決め手となったのが

デッカー・ミラクルタイプの奇跡の力であった点などで、いつもとまるで毛色の違う

幻想怪奇譚でありんばがらも、決してGUTS-SELECTやヒーローを蚊帳の外にはせず

あくまで『デッカー』の一編としての筋を通してみせたスタッフ陣のクレバーさと

それにもましての視聴者への誠実さにはただ、脱帽と最敬礼あるのみです。

てれびくん超ひゃっかシリーズ ウルトラマンデッカー デッカー&ヒーローバトルずかん

てれびくん超ひゃっかシリーズ ウルトラマンデッカー デッカー&ヒーローバトルずかん

 

玩具展開と密接に連携したド派手な展開、と言うのは、もはや過酷な生き残りの上で

『ウルトラ』も受け入れていかなければならない事なんでしょうけど……

その一方で、こういったプリミティヴな、1話完結編ならではの余韻ある味わいも

決してなくしてほしくはない、と改めて朝から思う一ファンでした、