暴れん坊は波濤を越えての巻

遥かなる宇宙の彼方、暗黒星雲の奥深くから……

美しい緑の星・地球を我が物にせんと狙い続けている怪獣軍団。

今日も配下の怪獣たちに向けて、怪獣魔王・イフの檄が飛ぶ。

またも恐るべき侵略の魔手が、我らの故郷へ向けて伸びるのだ！

イフ「わははは……よく聞け、地球人ども！

　もう間もなく、地球はワシら怪獣軍団のものとなるのだ！」

イフ「戦いの嬰児（みどりご）、血と破壊を好む素晴らしき荒くれ……

我が配下の前に、お前たちは決して勝てはしない。

　さぁ、宙マンを打倒し、地球征服の功を成す者は誰だ！？」

モノマガジン 2023年 3/16 号 [雑誌]

「ピギャルルルル……

　この俺を措いて、他に誰がおりましょう！？」

怪獣魔王の呼びかけに答える、海底からの不気味な宣誓！

異変を感じて、港のカモメたちが一斉に飛び立った次の瞬間に

穏やかだった海面が、にわかに異様な泡立ちを見せ……！

「ピギャルゥゥ～ッ！！」

波しぶきをあげ、その泡立ちの中から一気に躍り出てきたのは

怪獣軍団の一員、怖るべき海の悪魔……巡洋怪獣バメールだ！

ながもん「おおっ……怪獣」

みくるん「ふぇぇ、いきなり出て来るなんて心臓に悪いよ～！（涙目）」

スライ「んー、ふふふ……実に頼もしいですよ、バメール君！

　どうやら地球の海底で、充分パワーを蓄えたようで！」

イフ「うむ、見事な姿じゃ！」

イフ「そなたの持ち前のパワー、無駄遣いせずフルに出し切るがよい。

　そのためには……わかっておろうな、バメールよ！？」

バメール「ピギャルゥゥ～、勿論ですともさ、魔王様！

　ここから寄り道せず、まっすぐ目的地へ向かいま～す！」

みくるん「ああっ、やっぱり千歳の方へ向かってくみたい――」

みくるん「宙マンさんたち、大丈夫かなぁ！？」

ながもん「信じるより……ほかに……ない」

みくるん「……だよね、宙マンさんならきっと……」

おお、どうにもこうにも待ったなしの大ピンチ――

宙マンファミリーの暮らす千歳市に、絶体絶命の危機迫る！

だが、そんな事とは露知らず。

こんち、お馴染み宙マンファミリー。

今日は揃って、３月の街をのんびり街を散策中であった。

ビーコン「うひ～、もうだいぶ雪も溶けてきたっスけど……

　それはそれとして、まだまだ風が冷えるっス！」

宙マン「でも、家に閉じこもりっぱなしでいるのも……

　運動不足やら何やらで、それはまた良くないからね」

ピグモン「はうはう～、子どもは風の子なの～♪」

ビーコン「……ちぇっ、ピグモンは気楽でいいっスねぇ！」

落合さん「まぁまぁ、そうぼやかないで、ビーコンさん。

　そろそろお店も開く時間ですし、どこかでお食事でも……」

ビーコン「そう。「それ」なんスよね、落合さん」

落合さん「あら、美味しいご飯がどうかしまして？」

ビーコン「旨い店での外食、そりゃ大いに結構なんスけど……

　毎回そればっかりだと、さすがに読者さんも飽きるっしょ！」

落合さん「あら、それじゃ他に何か良いアイディアでも？」

ビーコン「うひひ、そりゃもうエロスとセクハラ乱れ打ち！

　……あれれ、今日はお仕置きしないんスか？」

落合さん「やっぱりと言うか、何と言うか……

　呆れて、その気力も失せてしまいましたわ（溜息）」

ビーコン「いえっふ～、って事は落合さんも同意ってことっスね！？

　やー、待ってましたっス、そう来なきゃ――

　さぁ落合さん、今すぐここでパンツを脱ぐっス！」

落合さん「っがー、勘違いも甚だしいですっ！（怒）」

ピグモン「（呆れて）……はう、また始まっちゃったの～」

宙マン「（苦笑）ありゃもう二人の日課さ。放っておこう」

ビーコン「ヒヒヒ、そうっス、放置で全く無問題っスよ！

　さぁ落合さん、ここからは心置きなく甘い蜜月を……」

落合さん「……ちょ、冗談じゃありませんわよっ！？」

放っておいたら際限なく続きかねない、極楽コンビの実のない会話。

……だが、その時である！

ズゴゴゴグワーンッ！！

落合さん「あ、あらあらあらあらっ！」

ビーコン「ちょ、なんスか、いきなり何なんスか！？（汗）」

ピグモン「ああっ！……みんな、アレ見てなの、アレっ！」

宙マン「（空を見上げて）！？」

ピグモンの指差した先――

轟然と飛来してくる、海亀ともエイともつかぬ異形の巨躯。

それは勿論、苫小牧から飛来してきたバメールに他ならない！

バメール「ピギャルゥゥ～、巡洋怪獣バメール、ただいま参上！

　俺の力で、千歳の街を瓦礫の山に変えてやるぜ！」

ピグモン「えう～、そんなの全然お呼びじゃないの～（涙目）」

落合さん「せっかく、のんびり日常を満喫中でしたのに……」

バメール「ピギャルル～、笑わせんなっ！

　そんなもん、宇宙が許さん、怪獣が許さん……

　そして、このシリーズの読者様が許さんっ！」

ビーコン「どひ～っ、なんつーメタ台詞っスか！？（汗）」

宙マン「……うぬっ！」

イフ「わははは！　さぁ、やれやれ、思う存分暴れろ！

　お前こそ怪獣軍団の勇者だと、全宇宙に証明してみせよ。

　期待しているぞ、バメールよ！」

バメール「ピギャルゥゥ～、やりますぜぇ、魔王様っ！」

バメールの口から、連続的に吐き出される生体ロケット弾――

高熱を帯びた生体物質の弾丸が、地上に次々と爆発を巻き起こす！

落合さん「……な、なるほど、先程の爆発はこういう事でしたのね！？」

ビーコン「どひ～っ、こんなレクチャー嬉しくないっスよ～！（汗）」

バメール「ピギャルルル、俺にはまだこんな技もあるんだぜ！」

いよいよ図に乗って、口から第二の武器を発射するバメール！

それは、緑色の輝きとともに放たれるエネルギー衝撃波である。

バメール「ピギャルゥゥ～ッ、どんなもんだい～！」

海底怪獣の暴虐、許すまじ！

千歳の平和を守るべく、航空防衛隊が直ちに出撃した。

ビーコン「おおっ、今日も今日とて航空防衛隊っス！」

落合さん「何だか今日は、いろいろ大丈夫そうな気がしますわ！」

ピグモン「はうはう～、おじさんたち、がんばってなの～！」

「ようし……全機、一斉攻撃開始っ！」

攻撃、攻撃、また攻撃！

怪獣めがけ、嵐の激しさで叩きこまれる一斉砲火。

……が、固い甲羅に包まれたバメールには全く通用しない。

「そ……そんな、バカなっ！？」

バメール「ピギャル～、効くわきゃねェだろうがよ～っ！」

「……ど、どわぁぁぁ～っ！？」

バメールの吐き出すエネルギー衝撃波！

その威力によって、戦闘機隊は次々に撃墜されていく。

ピグモン「ああっ、やられちゃったの！」

ビーコン「たはは、今回もやっぱり……」

落合さん「……えぇ、儚い夢でしたわねぇ」

宙マン「って、しみじみ黄昏ている場合じゃないよ！（汗）」

落合さん「……あ、そうでした（赤面）」

そう、全くもって宙マンの言う通り！

ビルが消し飛び、音を立てて次々と崩れ落ち……

その混乱の中を、悲鳴をあげて逃げ惑う千歳の人々。

バメールの威力の前に、平和の街はたちまち炎の巷と化した！

ビーコン「こうなったらもう、頼れるのはアニキだけっスよ！」

ピグモン「宙マン、いつもみたいに……お願いしていい！？」

宙マン「（頷き）ああ、勿論だとも！

　宙マン・ファイト・ゴー！！」

閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。

華麗な空中回転とともに、バメールの前へと舞い降りる！

宙マン「トゥアーっ！　宙マン、参上！

　地上を荒らす大怪獣、大人しく海へ帰るがいい！」

ズ、ズーンっ！！

ビーコン「いえっふ～、頼んだっスよアニキぃ～！！」

落合さん「お殿様、いつもながら素敵です……♪」

ピグモン「はうはう～、宙マン、がんばってなの～！」

バメール「ピギャルゥゥ～ッ、出たな宙マン！」

宙マン「あぁ、さすがにこれは見過ごせないんでね！」

ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――

さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ！

バメール「ピギャルゥゥ～ッ、問答は無用だ、死んでもらうぜ！」

宙マン「面白い、来るなら来てみろ！」

バメールが連射する生体ロケット弾を、華麗な回転戦法で回避。

そんな宙マンめがけ、一気に飛行速度を上げて間合いを詰めるバメール。

両者の巨体が激突！！

宙マン対バメール、ついに真っ向から相打つ！

三月の千歳狭しと、壮絶な巨大バトルが展開される。

宙マン「（パワー全開で踏ん張り）ぬうう……ぅおおおっ！」

バメール「手ぬるいぜ、お前の力はその程度か！？」

空中加速で威力を増した、バメールの頭突きが炸裂！！

大きく吹っ飛び、地面に叩きつけられる宙マンの巨体。

ピグモン「はわわわ、宙マンがあぶないの～！」

落合さん「憎らしいですこと、自分の能力フル活用ですわ！」

ビーコン「悔しいスけど……やり手っスよ、あの怪獣！」

バメール「ピギャルゥゥ、まだまだ、こんなもんじゃないぜ！」

バメール、生体ロケット弾を連射！

宙マンを牽制しつつ、爆発で動きを封じたところへ……

口からのエネルギー衝撃波が勢いよく吐き出された！

「う、うわぁぁぁぁ……っ！！」

爆発！　炎上！

ビルが、自動車が……

そして宙マンが、衝撃波の威力に吹っ飛ばされる！

大爆発に吹っ飛び、大きく虚空を舞う宙マン！

ヒーローの巨体が落下し、再度したたかに地面へ叩きつけられる。

ピグモン「（衝撃）……ちゅ、宙マーンっ！！」

ビーコン「ど、どひ～っ！　もうダメっス、おしまいっス！（汗）」

落合さん「だーっ！　

　ビーコンさんったら、縁起でもないこと仰らないで下さいっ！」

宙マン「（苦悶）……う、ううっ……！」

バメール「ピギャルゥゥ～！

　どうだ宙マン、もう手も足も出ないだろう！？」

バメール「ピギャルゥゥ～っ、とどめだ！！」

上空からの急加速で、一気に突っ込んでくるバメール。

だが、宙マンも残る力を振り絞って立ち上がり――

「なんの、まだまだ……勝負は、これからだっ！」

宙マン、気合とともに大ジャンプ！

突進してきたバメールを、ひらりとかわしての空中回転。

バメール「（狼狽）な、何だとっ！？」

宙マン「どうだ、これが正義の技の冴えってものさ！」

慌てて方向転換しようとするバメールだが、時すでに遅し。

宙マン「とどめだ！　

　宙マン・エクシードフラッシュ！！」

全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……

エクシードフラッシュの一閃が、バメールを直撃！！

バメール「気を付けよう、怪獣は急に……曲がれないぃぃ～っ！」

やったぞ宙マン、大勝利！

イフ「うぐぐぐっ……よくも、よくもやってくれたな宙マン！

　まさか、あのバメールまでもを破るとは。

　だが、この次は……こうはいかんぞ！」

……などと言う、いつもの負け惜しみはさて置いて。

かくして、我らが宙マンの活躍によって……

恐怖の怪獣バメールは倒され、千歳の平和も守られたのであった。

ピグモン「はうはう～、宙マン、ありがとうなの～♪」

落合さん「今日も惚れ惚れするようなご活躍でしたわ、お殿様」

ビーコン「いや～、アニキ、どうもお疲れ様っした！」

宙マン「いや～、一時はどうなることかと思ったけどね。

　さてと、それじゃここからは改めて……」

ビーコン「（頷き）セクハラとエロスのつるべ打ちっスね！？」

落合さん「いい加減にそこから離れて下さいなっ！（赤面）」

ピグモン「はうはう～、今まっさきにすることって言ったら……

　美味しいお店で、美味しいごはん食べることなの～♪」

そう、まさにピグモンの言う通り――

騒動で気を揉んだ後のすきっ腹をなだめ、冷えた体を暖める。

まさにそれこそ、宙マンたちにとっての急務であった。

宙マン「大正解だよ、ピグモンは賢いね！」

ピグモン「えへへ、ほめられちゃったの～♪」

ビーコン「な～るほどっス、腹が減ってはイクサが出来ず。

　これからのエロ展開のためにも、まずはしっかり食って……」

落合さん「（憤怒）……させませんからねっ！？」

ビーコン「どひ～っ、落合さん、タンマタンマ！

　今、美少女キャラがしちゃいけない顔になってるっスよ！？（汗）」

宙マン「はっはっはっはっ……さぁ、それじゃ行こうか！」

しぶとい寒さに負けず、怪獣にも負けず……

とにもかくにも、次回も頼んだぞ宙マン！

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日本昭和トンデモ怪獣大全 (タツミムック)