気候も穏やかになり、食べ物もまた美味しく……
この日の北海道千歳市は、気持ちの良い青空のもとにあった。
左様、こうでなくてはいけないのだ。
なんたって春のゴールデンウィーク、誰もが待ちに待っていた
大型連休の到来であるからには!
宙マン「いやぁ~、いい天気になってくれたねぇ!」
ピグモン「はうはう~、風もすっごく気持ちいいの~」
落合さん「お出かけもよし、家でのんびりするもよし……」
ビーコン「そして、まさに平和そのものっス!」
みくるん「今年のゴールデンウィーク、凄く良い出だしですぅ」
ながもん「幸先が、いいとは……まさに……このこと」
と、いきたいのは山々なのだが……
そうは問屋が卸してくれないのが『宙マン』ワールド。
ビーコン「……ちょ!
なんスか、何なんスか、今の不穏なナレーションはっ!」
落合さん「まさか、またまた何か……事件だったりしますの!?」
宙マン「おいおい、勘弁してくれよぉ……!」
ながもん「(無表情に)おお、どうやら……そうみたい」
みくるん「えっ、ながもん……また何か、ピンときちゃったのぉ!?」
ながもん「……(こっくりと頷き)」
人並み以上に鋭く、的中率の高さに定評のあるながもんの「勘」。
……それが正しかったことは、不幸にもこの後すぐに示される。
ビーコン「……ちょ! な~にを既成事実みたいに語ってんスかぁ!?(汗)」
落合さん「お待ち下さいナレーター様、私ども未だ心の準備が……」
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラっ!
落合さん「……あらあら、まぁまぁ、待ったなしですの!?」
ビーコン「どひ~っ、こいつァまたヤバげな揺れ方っスよぉ!?(汗)」
のどかな、平穏な時間を破るかのように……
不意の局地的大地震が、またまた千歳の街を襲った。
大地が揺れ、舗装道路がメリメリと割れ裂ける。
夥しい土砂を巻き上げ、地中から立ち上がった巨体とは!?
「ぐおおお~んっ!!」
みくるん「ああっ、やっぱり今日も怪獣さんだったですぅ!」
ながもん「あれは……古代怪獣、ゴモラ」
ピグモン「はわわわ、何でもいいけど怖い顔なの~!」
強靭な生命力とパワーを武器に暴れ回る、怪獣軍団きっての暴れ者。
ゴモラ「南の楽園・ジョンスン島の顔役。
怪獣界にその名も高き、古代怪獣ゴモラとは俺のことさァ!
……つーか、それはさておき……」
落合さん「(首を傾げて)さておき……?」
ゴモラ「……いやはや、寒いね、北海道っ!」
宙マン「……寒い?」
みくるん「って、北海道ももうすぐ5月なんですよぉ?」
ゴモラ「ンなこと言われたって、冷えるんだから仕方ねーやな。
怪獣魔王様の命令を受けて、北海道まで来てみれば……
……ぶるぶる、何だよこの気温。寒くてやってらんねーよぉ!」
ビーコン「あー、年じゅう常夏のジョンスン島と北海道とじゃねぇ……」
ながもん「(しみじみ頷き)……無理も、ないかも」
ゴモラ「ありがとう、ありがとう、ご理解いただきありがとうッ。
と、まぁ、そういうワケなんで……
暖をとってあったまるために、これからこの街、ブッ壊すんでよろしくゥ!」
落合さん「(目がテン)……はぁ!?」
ビーコン「そ、そいつぁちょっと話が飛躍しすぎっスよぉ!(汗)」
ゴモラ「ぐおおお~んっ、うっせぇ!
もう、一瞬たりとも我慢して、じっとしてなんてらんねーんだっ!」
スライ「んー、ふふふ……全ては、この私の狙い通り!」
スライ「南国育ちのゴモラ君が、ひとたび北海道の外気に触れたなら……
その肌寒さに辛抱たまらず、暴れ出すことは必定!」
イフ「うむっ……流石の悪知恵よの、”魔導の”スライ!」
イフ「寒さを吹き飛ばし、体を温めるには適度な運動が一番だ!
さぁ、ゴモラよ、お前の元気のいいところをワシに見せてみよ!」
ゴモラ「ひぇぇ~っ、魔王様もスライの旦那もひどぉい……
……ええ、やりますよ、カラダ動かしますとも!
わざわざ言われなくたってね、コンチクショーめっ!」
半ばヤケクソで、猛然と進撃を開始するフリドニアン・ゴモラ!
迫り来る巨体を前に、慌てふためいて逃げ惑う落合さんたち……
そして、善良な千歳の人々。
落合さん「(慌てて)あ、あらあら、まぁまぁ!」
ビーコン「えらいこっちゃ、えらいこっちゃっス~!」
ながもん「待って……今……戦闘機が、来て……くれた」
みくるん「えっ、ほんと!?」
ピグモン「はうはう~、いいタイミングなの、よかったの~!」
ゴモラの進撃を阻むべく、勇躍スクランブルをかけた最新鋭戦闘機。
ロケット弾で果敢に攻撃をかけるが、ゴモラには全く通用しない。
いや、それどころか……!
ゴモラ「ぐおおお~んっ、いいねぇ、いいねぇ!
イイ感じにカラダあったまってきたぞ、調子出てきたぜィッ!」
みくるん「ああっ、さっきより元気になってるぅ!?」
ビーコン「あれじゃ、わざわざ焚き火してやってるようなもんっス!」
ながもん「(頷き)泥棒に……追い銭」
ロケット攻撃の熱で全身がほどよく暖まり、元気百倍のゴモラ。
持ち前の巨体が、ドスドスと千歳の街を突き進んでいくだけで……
道路に亀裂が走り、ビルが崩れ落ちて行くこの有様!
落合さん「こっ、この状況は……
少々どころか、かな~りシャレになりませんわねぇ!(汗)」
ピグモン「はわわわ……宙マン、宙マン、何とかしてなの~」
宙マン「おのれ、もう許さんぞ!
宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、荒れ狂うゴモラの前へ舞い降りる!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
古代怪獣ゴモラよ、それ以上の乱暴狼藉は見過ごせんぞ!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「おおっ、待ってたっスよアニキ、千両役者ー!」
落合さん「今となってはもう、お殿様だけが頼みの綱ですわ!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
ゴモラ「ぐおおお~んっ、俺とやろうってか、宙マン!?」
宙マン「ああ、そうするより他に手がなさそうなのでね!」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マンーー
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ。
ゴモラ「ぐおおお~んっ、来るなら来いやァッ!」
宙マン「徹底的にやらせてもらうぞ、ゴモラ!」
遂に激突、宙マン対ゴモラ!
落合さんたちが見守る中、巨大な両者の肉弾戦が展開。
華麗な超能力を駆使する怪獣も数多い中にあって……
このゴモラの場合は、その旺盛な生命力と破壊力そのものが
何にも勝るトレードマークにして最大の武器。
地中を猛スピードで掘り進む怪力、硬く鋭い頭部の角。
原始的そのものの攻撃だが、秘められたパワーは侮れない――
それだけに宙マンも決して気を緩めず、冷静に相手の隙を伺う。
咆哮をあげ、何度目かの突進をかけてくるゴモラ。
そこに生じた防御の隙を、決して見逃すことなく……
宙マンの繰り出した空手チョップが、ゴモラの眉間めがけて炸裂!
ゴモラ「が、がハァァァ……っ!」
宙マン「どうだ、参ったか!」
ゴモラ「コンニャロ~っ、なんの、それしき……
食らいやがれ、これがゴモラ様のとっておきだィッ!」
ブゥゥーンっ! ブワゥゥーンっ!
宙マン「(怯んで)!?」
鋭い風切り音を伴い、嵐の激しさで振り回される太く、長い尾。
敵めがけて叩きつけられるゴモラの尻尾攻撃は、かつてあの初代ウルトラマンや
科学特捜隊をも大いに手こずらせた、ゴモラ一族の得意技なのである。
そして、遂に……!
ズ、ズーンっ!
宙マン「う、うわぁぁぁぁ……っ!」
ゴモラ「ぐおおお~んっ、どんなもんだィ!」
みくるん「ああっ、宙マンさんが!」
落合さん「いけませんわね、あの尻尾は強力ですわ!」
ビーコン「こんどアレをまともに喰らっちゃ、いくらアニキでも……!」
ながもん「……(ハラハラと頷く)」
ピグモン「はわわわ、宙マン、まけないでなの~!」
イフ「わははは、素晴らしいぞゴモラ、さすがジョンスン島の覇者!
それ、そのまま一気に宙マンめを叩き潰してしまえ!」
ゴモラ「おいさァ、魔王様!」
勝利を確信し、渾身の力をこめた尻尾の一閃を叩きつけてくるゴモラ。
だが、あのままやられっ放しでいるような宙マンではない――
ゴモラの尻尾をジャンプでかわし、素早く態勢を立て直す!
ゴモラ「(驚愕)な、何っ!?」
宙マン「残念だったな、正義は必ず勝つ――
とどめだ! 宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、ゴモラを直撃!!
ゴモラ「ひぇぇぇ……熱いやら、寒いやら、痛いやら~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
ビーコン「いえっふ~、さっすがアニキ、そうこなくっちゃっス!」
落合さん「お見事でしたわ、お殿様!」
みくるん「宙マンさん、ありがとうですぅ!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、かっこよかったの~♪」
ながもん「……グッジョヴ」
イフ「うぐぐぐっ……またしても、またしても宙マンめが!
いいか、この仕返しは必ずしてやるからな――
この次こそはお前のドテッ腹に風穴を開けてくれるわ……!」
……などと言う、いつもの負け惜しみはさて置いて。
かくして、今回もまた宙マンの活躍により……
古代怪獣ゴモラは撃退され、千歳の街に平和が蘇ったのであった。
落合さん「改めまして……どうもお疲れ様でした、お殿様!」
みくるん「今回は、どうなることかってハラハラでしたけどぉ……」
ながもん「そこは、やっぱり……元・銀河連邦の……英雄」
ピグモン「はうはう~、宙マンかっこよかったの~☆」
宙マン「はっはっはっ、みんなの応援があったからこそだよ」
落合さん「では、引き続き……のんびりと致しましょうか!」
ビーコン「ヒヒヒ……のんびりなんて、とんでもない!
オイラたちにとって、本当の戦いはここからなんスよね」
落合さん「あら、何がですの?
悪い怪獣は既に、お殿様の手でやっつけられて……」
ビーコン「ヒヒヒ、そりゃもう落合さん…
オイラと二人、ベッドルームでの「愛」と言う名の戦い!
これ以外にあるわけないじゃないっスかぁ~。
瞬間、ココロ重ねて、ついでにカラダの敏感な箇所も……」
げ し っ !
落合さん「ねーい、よくもそんな世迷言をっ!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、それはとても気持ちいいはずなんスぅぅ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
今日も本当にありがとう、宙マン!
だが、未だ怪獣軍団の野望は尽きない……
さて、次回はどんな活躍を見せてくれるかな?