日に日に、過ぎ行く風も冷たさを増し……
それに伴って、山々の木の葉も急速に美しく色づきだす季節。
そんな、穏やかさと寂しさ・もの悲しさが同居する時期であっても
北海道千歳市・ほんわか町5丁目、お馴染み「宙マンハウス」は
今日も今日とて、変わらず賑やかである。
では、ここでちょっと、「宙マンハウス」の住人たちの会話に
耳を傾けてみることにしよう。
落合さん「季節はすっかり秋、と言いたいところですけど……
まだまだ不意打ちみたいに、暑い日もあったりしますわねぇ」
宙マン「はっはっはっ、本当にねぇ。
とは言うものの、陽が落ちると一気に冷えこむし……」
ビーコン「気ぃ抜いてたら、冬なんてあっという間っスよ!」
ピグモン「はうはう~、油断大敵なの~」
みくるん「ここ数年は、夏場が物凄く暑かったり……
積雪が物凄く遅かったり、いろいろ変ですよねぇ」
ながもん「地球的……異常、気象の……前触れ?」
宙マン「う~ん、それはまだ何とも断言はできないけどねぇ」
宇佐美さん「そうそう、異常って言えばねぇ……」
ビーコン「あれ、何かあったっスか?
ウチのご町内で電気屋さんを営んでる宇佐美さん!」
宇佐美さん「や、わざわざのご説明、ありがと!」
宇佐美さん「……っと、それはともかくとしてね」
宙マン「どうやら、只事じゃなさそうですね?」
宇佐美さん「……(頷く)」
と言うわけで、宇佐美さんの話に曰く。
電話ケーブルや上下水道の定期点検中だった、当該組織の職員らが
地下通路の奥深くに、ギョロリと光る巨大な目玉を見た、と
異口同音に、相次いで証言しているのだと言う。
宙マン「ふうむ……巨大な目玉、ねぇ?」
宇佐美さん「ね、宙マンさんはどう思います?」
宙マン「それもまた、現時点での断言は出来かねるけれども……」
ビーコン「ただ、またぞろ怪獣軍団が動き出して……
何かロクでもないこと企んでる可能性もあるんスよねぇ」
落合さん「ちょっ、やめて下さいな、縁起でもない!」
ビーコン「や、あくまでオイラはね、ひとつの可能性として……」
……と、その時!
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラッ!
のどかな、平穏な時間を破るかのように……
不意の局地的大地震が、またまた千歳の街を襲った。
宇佐美さん「のわぁぁっ、こ、こいつは……」
ビーコン「噂をすれば何とやら、ってやつっスかねぇ!?」
みくるん「(蒼白)ってことは、つまり……!」
大量の土砂を天高く撒き上げ、舗装道路をもやすやすと引き裂いて
地の底から、巨大な姿を現わさんとしている邪悪な影。
……果たして、それは!?
「ビャゴゴゴ~ンっ!!」
みくるん「ああっ、やっぱり怪獣さんだったですぅ!」
落合さん「ほら、ビーコンさんが余計なこと仰るから!」
ビーコン「ちょ、オイラのせいじゃないっしょ!?」
宇佐美さん「いやいや、モメてる場合じゃないから!(汗)」
のっそりと歩を進めてくる、黒一色の重厚な巨体。
怪獣軍団の一員、地底怪獣マグラだ!
宙マン「そのマグラ君とやらが、今日は何の用だね!?」
マグラ「ビャゴゴゴ~、よくぞ聞いてくれました。
……それはそうと、今の季節…
北海道は、どこで何を食っても本当に旨いよねぇ!」
ながもん「(首を傾げて)……?」
マグラ「ビャゴゴゴ、まずは美唄の鶏めし。
鶏一羽を丸ごと使ってるから、濃密なコクが深くて……
鶏ガラ出汁のラーメンとの相性も抜群、いやぁ旨かった!」
みくるん「(ポカンとして)……は、はぁ」
マグラ「続いて、こちらの海鮮丼。
これだけの具がふんだんに乗って、しかもどれも新鮮で……
しかもこの内容で1200円だよ、有難いよねぇ!」
ながもん「……じゅるりっ」
ビーコン「うぐぐ……聞いてるだけで旨そうっスね!(汗)」
マグラ「そしてそして、からりと揚がった天ぷらーっ!
サクサク香ばしい衣と、ほっこりした具材のコントラスト
食材が道産だと、同じ天ぷらでもこうも「違う」もんかね!」
落合さん「だーっ、いい加減にして下さいまし!
あなた、地底からわざわざ飯テロしに来ましたの!?」
マグラ「ビャゴゴゴ、と~んでもない♪」
マグラ「食うもの食って満足して、パワーもついたことだし……
ここからは気合入れて、俺の仕事をさせてもらおうかと!」
みくるん「ほにゃ、し、仕事……?」
ビーコン「どひ~っ、要は破壊活動ってコトっスよ!(汗)」
落合さん「あらまぁ、別の意味での“飯テロ”でしたのね!」
スライ「んー、ふふふ……
どれもこれも、私が直に食べ歩いて厳選した店と料理ばかり。
味に外れなどあろうはずがございません!」
イフ「よーし、マグラよ、食べた分だけしっかりやるのだぞ。
成功の暁には、年末のボーナスにうんと色をつけてやる!」
マグラ「ビャゴゴ~、有難き幸せです、魔王様~っ!」
怪獣魔王の命を受け、猛然と進撃開始するマグラ!
迫り来る巨体を前に、悲鳴をあげて逃げ惑う人々。
宇佐美さん「ひぇぇ、参った参った、こりゃお手上げだぁ!」
ビーコン「こういう予想に限って、ばっちり当たるんスよねぇ~!」
落合さん「外れてくれて、一向に構いませんでしたのに!」
おお、まさに千歳の危機!
だが、巨大怪獣の進撃を阻むべく、防衛隊の陸の精鋭たちが
戦車隊を編成して出動した。
マグラめがけて、一斉砲火が雨あられとばかりに叩きこまれるが
それを物ともせぬ地底怪獣の勢いは、一向に止まらない。
みくるん「ああっ、効いてない!?」
ながもん「怪獣、相手じゃ……分が、悪い」
ビーコン「だーっ、分かっちゃいたんスけどねぇ、分かっちゃ!」
宇佐美さん「(溜息)それでも、毎回……期待はしちゃうよねぇ」
……などと人々が嘆き、ぼやいているその間にも。
持ち前の怪力にものを言わせ、傍若無人に進撃するマグラ。
平和な街は、今や紅蓮の炎に包まれていた!
マグラ「ビャゴゴ~、俺ってば、どうにも絶好調~っ!」
みくるん「どうしましょう、このままじゃ街が全滅ですぅ!」
ながもん「ここは、一発……ヒーローの……出番」
宙マン「(頷く)おう、やらいでか! 宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、荒れ狂うマグラの前に舞い降りる!
宙マン「トゥアーッ! 宙マン、参上!
それ以上みんなに迷惑をかけるなら、この私が黙ってはいないぞ!」
ズ、ズーンっ!!
ながもん「おお。……いつもながら……頼もしい」
ビーコン「いよっしゃ、出たっス! アニキの十八番!」
落合さん「頼みましたわ、お殿様!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
宙マン「忠告しておく、今日は大人しく帰りたまえ!」
マグラ「ビャゴゴゴ、そう言うわけにゃいかねぇんだよ!
このひと暴れには、年末ボーナスの査定もかかってるんでな!」
宙マン「聞く耳持たずか……ならば、やむを得ん!」
ファイティングポーズを取り、敢然と身構える宙マン。
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトルの幕開けだ!
マグラ「ビャゴゴ~、ぶっ潰してやるぜ、宙マン!」
宙マン「いいだろう、やってみろ――やれる物ならな!」
激突、宙マン対マグラ!
落合さんたちが見守る中、巨大戦は早くもヒートアップ。
野生のパワー全開で、力任せに突進してくるマグラ!
宙マンもまた、持ち前の力と技で真っ向から渡り合う。
マグラ「ビャゴゴ~、オラオラ……潰れろ、宙マン!」
宙マン「ぬううっ……なんの、これしき!」
マグラ「ビャゴゴォォォ……ッ!」
両者の凄絶な力比べの中……
そこに生じた一瞬の隙を突き、宙マンのキックが炸裂だ!
宇佐美さん「よぉしっ! 今のは上手いぞぉ、宙マンさん!」
宙マン「どうだマグラよ、正義のキックに怖れをなしたか!?」
マグラ「(カチンときて)ビャゴゴゴ……ふざけんなーっ!!」
宙マンめがけて突進――
マグラの鋭利な一本角が、ヒーローの胸板に突き刺さる!
ズ、ズーンっ!
みくるん「ああっ、宙マンさんが!」
宇佐美さん「このままじゃ……負けてしまうかも!?」
ビーコン「そんな……ウチのアニキに限って、そんなっ!」
落合さん「お殿様、ファイトですわ、しっかりっ!」
ピグモン「はわわ、宙マン、まけないでなの~!」
宙マン「(苦悶)う……うう……っ!」
マグラ「終わりだ宙マン、ぺしゃんこにしてやるぜ!」
「なんの……まだまだ、勝負はここからだ!
デリャァァーッ! 宙マン・ショット!」
気合と共に、不可視の衝撃波が飛ぶ!
宙マン・ショットの直撃に、マグラの動きが鈍ったところへ――
宙マン「とどめだ!
宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、マグラを直撃!!
マグラ「ビャゴゴゴ、ボーナスの夢よ、さようならぁぁ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
みくるん「わぁっ、今日も宙マンさんの勝ちですぅ!」
ながもん「流石、宙マン……まかせて……安心」
ピグモン「はうはう~、宙マン、ありがとうなの~♪」
イフ「うぐぐぐっ、おのれ宙マン、やってくれたな!
だが、怪獣軍団の真の威力を知るのはこれからだ。
今に見ておれ、その得意顔を泣きっ面に変えてやる……!」
……などと言う、怪獣魔王の負け惜しみはさて置いて。
かくして宙マンの活躍により、恐るべき地底怪獣マグラは撃退され
千歳には再び平和が戻って来た。
宇佐美さん「やぁやぁ、お疲れ様です、宙マンさん!」
宙マン「苦戦しましたが、どうにか今度も勝てましたよ」
みくるん「これでまた、安心して地価の作業もできますね!」
ながもん「みんな、宙マン……あなたの、おかげ」
宙マン「(頭かきかき)いやぁ、なんだかテレるなぁ!」
ビーコン「ほっとしたら……何だかハラ減ってきちゃったっスね~。
と言うわけで落合さん! ただちに服を脱いで横になるっス!
それと、上にかけるメイプルシロップもたっぷり用意して……」
落合さん「…………(ぶ ち っ !)」
げ し っ !
落合さん「ねーい! 何が“と言うわけ”です、何がっ!」
ビーコン「どひ~っ、事件解決後のほろ苦い余韻っスぅぅ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
今日も颯爽、かっこいいぞ宙マン。
さぁ、次回はどんな活躍を見せてくれるかな?