日に日に、寒さが深まってきて……
いよいよ、秋から冬への境目がくっきり見えてきた北海道。
ここ・千歳市ほんわか町5丁目もまた、その例外ではなく……
目前の冬本番に臨んだ諸々の支度を進めている最中であった。
粛々と、淡々と……
落合さん「……と言うわけで皆様、改めましてこんにちは。
既にお馴染み、メイドの落合でございます♪」
落合さん「ここまでの流れで、何となくご理解頂けるでしょううか?
もっか私ども、お庭の落ち葉掃除の真っ最中ですの」
そう、そうなのだ。
人々の目を楽しませてくれる紅葉のシーズンが過ぎてしまうと、
色あせた葉は次から次に、枝を離れて落ちていき……
それらの落ち葉が溜まりに溜まり、あとはもうご覧の有様。
落合さん「せっせと折を見ては掃き集めているのですけれど……
正直、掃いても掃いてもキリがないですし。
……サポート要員が頼りないおかげもあって、作業のほうも
これが全く捗りませんのよねぇ(溜息)」
宙マン「いやぁ、落合さん、面目ない!」
宙マン「少しでも落合さんの手助けになればと思ったんだが……
不慣れなせいで、却って足手まといになってしまったかなぁ」
ピグモン「でも、ピグちゃんたちなりに頑張ってたつもりなの~」
落合さん「……ああ、いえいえ、そんなそんなっ!
お殿様とピグモンちゃんのお手伝い、本当に助かっていますし
心から感謝もさせてもらっていますのよ。
私が申しておりますのは、残り一匹のヒョーロクダマ……」
「ん、オイラを呼んだっスか?」
ビーコン「いえっふ~、良い子も悪い子も、元気してるっスか!?
怪獣界のアイドル、あなたのビーコンちゃんっスよ~。
ヒヒヒ、勉強なんてやめちゃって、オイラと一緒に刺激的すぎる
甘くときめくような夢の世界へ……」
げ し っ !
ビーコン「ハンニャラ、ヒ~っ……」
落合さん「ねーいっ、噂をすれば何とやら……
よくものうのうと出てこられましたわね、ヒョーロクダマっ!」
落合さん「落ち葉掃除を手伝って下さると言うお約束を信じて、
私としても格別の配慮で特別のお駄賃を前払い致しましたのに。
……それが何です、ろくすっぽ仕事もなさらないで!
これじゃ前借り詐欺もいいところじゃございませんこと!?」
ビーコン「っかー、情けないっスねぇ落合さん!
長い付き合いのオイラをつかまえて、詐欺呼ばわりたぁ!」
ビーコン「いいスか、オイラだって今日は忙しいんスよ――
具体的には、買ったばかりの漫画読んだりとか!」
落合さん「……お抜かしやがりましたわね、イケシャーシャーとっ!
そんな暇があるなら、落ち葉掃除の手伝いをですね……」
ビーコン「いやいやいや、これだって大事なシゴトっスよ!?
もしもオイラがやらなけりゃ、いったい誰が……
最新刊のあらすじを詳細レビューするって言うんスか!?」
落合さん「(激怒)しなくて結構ですっ!!」
ピグモン「えう~、また始まっちゃったの~」
ピグモン「落合さんもビーコンちゃんも……
毎日毎日、ほんとによく飽きないの~」
宙マン「たはは……いやはや、あの二人にも困ったものだねぇ(苦笑)」
落合さん「そんな下らない使命感、ドブ川に叩き捨てておしまいなさいっ!」
ビーコン「っしゃー、それならついでに理性も捨てちまうっスね!
そして残るのは、ただ「愛欲」の二文字だけ……」
落合さん「ははんっ、な~にが「理性も捨てる」ですかっ。
そんな物の持ち合わせ、ビーコンさんには最初から……」
放っておけば、いつまでも際限なく続きかねない言葉の応酬。
……だが、その時である!
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラっ!
ビーコン「お、おろろろろろっ!?(汗)」
落合さん「こ、これは……っ!」
宙マン「かなり大きいな……これは只事じゃないぞ!」
激しく揺れる大地、割れ裂ける舗装道路。
土砂を吹きあげながら、地中より姿を現した巨体とは!?
「ぐぉごぉぉぉ~んっ!!」
ピグモン「あっ、怪獣なの!」
宙マン「ううむっ、それにしても、あの姿……」
ビーコン「なんつ~か、ゴミの塊そのものっスねぇ!」
落合さん「(ボソッ)……えぇ、ビーコンさんとは別の意味で!」
ビーコン「(憤慨)何でオイラに振るんスか!」
と、宙マンたちがそんな感想を抱いたのも無理はない。
今回現れたこの怪獣、その名もずばりの“ダストマン”。
その全身が、大小さまざまな人類のゴミによって形成されており
ゴミを食べれば食べるほど大きく、そして強くなる……と言う
正に文明のゆがみそのものとも言うべき大怪獣なのである。
宙マン「そのダストマンが、今日こうして来たって事は……」
ダストマン「おうよ、パワー充填完了だぜぇ!」
ダストマン「地球人どもが際限なく増やし続ける粗大ゴミに不燃ゴミ……
そいつを食べて、俺はどんどん大きく、強くなる」
ダストマン「ぐぉ~、そうして今の俺がどんだけ強くなったか……
それをこの場で、ばっちり証明してやるぜ!」
ビーコン「どひ~っ、要はまた大暴れって事っスね!?」
落合さん「いえいえ、謹んでご遠慮申し上げますわ!(汗)」
ダストマン「ぐぉごぉぉ~、まぁまぁ、そう仰らず♪」
イフ「わはは! そうだそうだ、遠慮も情けも無用だぞ!
行くがよいダストマン、千歳の街を徹底的に破壊せよ!」
ダストマン「ぐぉごぉぉ~んっ、お任せを、魔王様!」
怪獣魔王の命を受け、進撃開始するダストマン!
迫り来る巨体を前に、悲鳴をあげて逃げまどう千歳の人々。
落合さん「ああもうっ、落ち葉掃除だけでも難儀しておりましたのに……」
ビーコン「これじゃもう、漫画どころでもないっス!(汗)」
ダストマン「ぐぉごぉぉ~んっ、これがダストマン様の恐怖の力だぁ!」
ダストマンの口から吐き出される、真黒く澱んだ怪液。
まともに浴びたビルが、一瞬のうちに……この通り!
ピグモン「……はわわ、ビルが溶けちゃったの~!」
ダストマン「ぐぉごぉぉ~んっ、千歳の全てをこうしてやるぜェ!」
ビーコン「どひ~っ、なんつーハタ迷惑な宣言っスか!」
落合さん「色々と……あらゆる意味で、ご勘弁願いたいですわ!」
怪獣ダストマンの出現により、またまた千歳は大混乱!
だが、こんな緊急事態を、航空防衛隊は放置などしない。
直ちに空の精鋭が、怪獣攻撃用の戦闘機でスクランブル!
ビーコン「おおっ、今日も例によって来てくれたっスよ!」
落合さん「今度こそは……頼らせてもらって、よろしいのかしら!?」
ピグモン「はうはう~、ピグちゃんは頼りにしてるの~♪」
「ようし……全機、怪獣への一斉攻撃だっ!」
地上のダストマンを攻撃する戦闘機隊。
ロケット弾が次々と炸裂!
ダストマン「ぐぉごぉぉ~んっ、何でぇ、そんなものっ!」
防衛隊の攻撃にも怯まず、進撃を続けるダストマン!
それを阻まんとして、戦闘機隊の攻撃も更に激しさを増していく。
「えぇいっ、ここで怯むな、集中攻撃だ!
ありったけの火力を叩きこめ、我々の底力を見せてやれ!」
ビーコン「や、あの、張り切ってくれるのは結構なんスけど……」
ビーコン「……もうちょっと、こうね!
周りへの被害ってやつも、考えてやってくれると!
……これじゃ、オイラたちまでヤバいっしょ~!?」
落合さん「いけませんわ、これでは……
怪獣さんより先に、私どもの方が黒焦げになりかねません!」
ピグモン「はわわわ……宙マン、宙マン、何とかしてなの~」
宙マン「(頷き)おのれ、もう許さんぞ!
宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、ダストマンの前へと舞い降りる!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
怪獣ダストマン、みんなの平和まで汚させはしないぞ!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「いよっ! 出たっスよ、アニキの十八番!」
落合さん「この頼もしさ、今日もキュンキュン致します……♪」
ピグモン「宙マン、頑張ってなの~っ!」
宙マン「航空防衛隊の皆さん、お疲れ様でした。
……あとのことは、この私に任せておいて下さい!」
ダストマン「ぐぉごぉぉ~んっ、宙マンめ、なめくさりやがって!」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ。
ダストマン「ぐぉごぉぉ~んっ、消え去れ宙マン!」
ダストマンが口から吐き出す溶解液!
が、その恐怖の液体は、空間そのものを湾曲させて形成する
宙マンの防御技・プロテクションで完全に受け止められている。
宙マン「そんなつまらない小細工、私には通用しないぞ!」
ダストマン「ぐぉごご~、だったら腕づく、力づくだァ!」
激突、宙マン対ダストマン!
落合さんたちが見守る中、巨人と怪獣がしのぎを削る。
ダストマン「ぐぉごぉぉ~んっ、オラオラオラぁっ!」
腕力にものを言わせ、猛然と殴りかかってくるダストマン!
そのパワーと勢いには、さしもの宙マンもずずっと後退。
だが……
勢い「だけ」で完全に宙マンを圧倒できると考えたのだとしたら
流石にそれは、ダストマンの短慮が過ぎるというものである。
宙マン「そぉれっ、今度はこっちがお返しだ!」
突進してきたダストマンの脇腹めがけて、しなやかに唸りをあげ
鮮やかに決まる、宙マン得意の回し蹴り!
その威力に大きく吹っ飛び、ドドーッと倒れたダストマンである。
ダストマン「(悶絶)げ、げフゥゥゥっ……」
宙マン「とどめだ!
宙マン・ヘッドビーム!!」
宙マンの闘志そのもののような、真っ赤に輝く破壊光線……
ヘッドビームの一閃が、ダストマンを直撃!!
ダストマン「ぐ、ぐぉごぁぁっ……こりゃたまら~んっ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
落合さん「お見事ですわ、お殿様!」
ビーコン「いえっふ~、アニキ、やっぱサイコーっスよ!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、ありがとうなの~♪」
イフ「うぐぐぐっ……またしても、またしても宙マンめが!
だが、この次こそ貴様に目にもの見せてくれるわ!
覚えておれ、覚えておれ~っ!!」
……などと言う、怪獣魔王のいつもの負け惜しみはさて置いて。
我らが宙マンの活躍によって、巨大怪獣ダストマンの恐るべき猛攻は
見事に撃退され、千歳の街に再び平和が蘇ったのであった。
落合さん「お殿様……今日も本当にお疲れさまでした!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、かっこよかったの~」
宙マン「なぁに、みんなの応援のおかげで勝てたようなものさ。
……さてと、無事に一件落着したところで……」
落合さん「(頷き)改めて、お仕事再開と参りましょうか!」
ビーコン「ヒヒヒ、そしてお仕事と言えばっスねぇ……」
落合さん「(呆れ)漫画読み、とか仰りたいんでしょう?」
ビーコン「や、世の中にゃもっと大事なもんがあるっスよ」
落合さん「あら、ようやくあなたも判って下さいましたのね?」
ビーコン「イエ~ス、「愛」と言う名のシ・ゴ・ト!
さぁ落合さん、今すぐ全てを脱ぎ捨てて寝室のベッドに……」
げ し っ !
落合さん「ねーいっ、まずはこっちの「お掃除」が先ですわねっ!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、枯葉のようにヒ~ラヒラっスぅぅ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
平和を愛する、ご存じ宙マンと仲間たち。
さぁて、次回はどんな活躍を見せてくれるかな?