渦巻く暗黒星雲の奥深くに陣を構え……
今日もまた、虎視眈々と地球を狙い続ける恐怖の怪獣軍団。
幾度も宙マンにしてやられ、それでも地球征服の野望は捨てない彼ら。
はてさて、今度はいったいどんな怪獣を差し向けてくるのやら？
イフ「よいか、者ども。
今度こそ……今度こそ必ず、地球を我らのものに！」
イフ「我ら怪獣軍団の悲願、地球征服の野望達成。
今日という日を、その輝かしい記念日にしてくれる者は誰だ！？」
「んー、ふふふふ……
既に手は打ってございますよ、魔王様！」
余裕綽々の表情で、怪獣魔王の前に進み出てきたのは……
ダークネスファイブのリーダー格、メフィラス星人“魔導の”スライ。
イフ「おおっ、スライではないか！」
スライ「地球征服の第一歩は、何と言っても宙マン打倒。
そういう大前提で問題ないですな、魔王様？」
イフ「あぁ、勿論だとも……
奴のために、ワシらがどれだけの煮え湯を呑まされてきたか！」
スライ「ですが、そんな忌々しい記憶も今日限り。
私の放った悪の使者は、既に地球の海へ潜伏し……
オイルをたっぷり呑んで、全身に力をみなぎらせております」
イフ「ううむ、まさに万全の態勢というわけだな！」
イフ「素晴らしいぞ、“魔導の”スライ！」
スライ「今度という今度こそ、我々の大勝利！
地球人どもと宙マンに、吠え面かかせてみせましょう！」
おお、何と言うことであろう！？
我々が永遠のものと信じてやまないこの平和、その裏側において……
怪獣軍団の恐ろしい悪企みが、既に着々と進行中であったとは！
が、ひとまずそれはそれとして――。
毎度おなじみ、千歳市ほんわか町５丁目在住の宙マンファミリー。
ビーコン「いえっふ～、良い子も悪い子も、みんな元気っスか！？
みんなのアイドル、ご存じビーコンちゃんっスよ～☆
今日もオイラと一緒に、目くるめく快楽の世界へ……」
落合さん「（ジト目）……ちょっとちょっと、ビーコンさん？」
ビーコン「はぁ？ なんスか、落合さん？」
落合さん「なんスか？ じゃないですわよ、全く。
顔が近すぎです、お顔がっ！（呆）」
宙マン「はっはっはっはっ」
宙マン「や～、何度も来ている苫小牧だけど……
探せばまだまだ、楽しめるスポット、あるもんだねぇ！」
ピグモン「はうはう～、ほっき貝資料館、楽しかったの～♪」
苫小牧の街づくり市民グループ「ゆうべあまちづくりネットワーク」が
ボランティアで運営しているこの小さな施設、「ほっき貝資料館」。
映像資料・文献からアート作品、料理のレシピに至るまで……
ほっき貝に関するものであれば何でもかんでも手当たり次第に収蔵した
「手作り感覚」の温かみが何とも楽しい場所である。
落合さん「ああいう整理されきってない雑多さというのは……
本格的な博物館では、逆に出せない「味」ですわね～」
ビーコン「それと、入館料・無料ってのも嬉しいスよねぇ。
プライスレスで、あれだけ楽しめりゃ文句なしっス！」
ビーコン「……と、テンション上がったところで。
なんか絶妙のタイミングで、心地よくハラが減ってきたっスねぇ～」
落合さん「ああ、そう言えばもうお昼時ですものね。
お殿様、今日のランチはいかが致しましょう？」
宙マン「う～ん、そうだねぇ。
ホッキカレーも良いし、ラーメンも捨てがたいけど……
やはり港街に来たからには、旨い寿司を愉しみたいねぇ」
ビーコン「冬の魚は、脂が乗って旨いっスからねぇ～！」
ピグモン「はうはう～、ピグちゃんもお寿司だいすきなの～♪」
落合さん「心得ましたわ、お殿様。
では、今日のランチはご当地のお寿司を頂くということで……」
だが……その時であった！
ぎゃあ！ ぎゃあ！
さながら飢えた嬰児のように、けたたましい啼き声をあげて……
港に集まっていたカモメたちが、一斉に空高く飛び立つ。
ピグモン「はわわ、カモメさんたち、急にどうしたの！？」
宙マン「何かの前触れか……こりゃ、只事じゃなさそうだぞ！」
そう、今まさに！
苫小牧に、特大級の災厄がふりかかろうとしていたのだ。
「チュケケケケ……！！」
驚愕する宙マンたちの目の前で……
激しい波しぶきをあげて、海中からぬっと巨大な姿を見せたのは
コウモリと二匹のヒトデをかけ合わせたような、面妖不気味な大怪獣。
ビーコン「どひ～っ、あ、あいつは……」
落合さん「（ハッと思い出し）……ペスター！？」
ピグモン「そうだったの、ながもんちゃんの怪獣図鑑に載ってたの～！」
ペスター「ケケケ～っ、そうとも、油獣ペスター様だすた～っっ！」
ペスター「世界のタンカーを襲い、大好物の原油をたらふく食って……
元気もりもり、パワー充填完了だすた～！
この勢いで、苫小牧をブッ潰してやるだすた～！」
落合さん「ちょっ！ あなたはそれでいいかもしれませんけど……」
宙マン「我々のすきっ腹、どうしてくれるんだね！」
ビーコン「オイラたちゃ、これからランチだったんスよ～！？」
スライ「んー、ふふふ……
だからこそ、この時間を狙って襲撃をかけたのですよ！
さぁ、ペスター君、ランチタイムなどと浮かれる地球人たちに
真の恐怖と言う物を教えてあげちゃって下さい！」
ペスター「ケケケ～、任せとくだすた～、スライの旦那！」
苫小牧港から上陸し、進撃を開始するペスター！
迫り来る巨体を前に、悲鳴をあげて逃げ惑う人々。
ピグモン「ふぇぇん、おっかないの～！（涙目）」
ビーコン「ひぃふぅ、すきっ腹のフルマラソンは堪えるっスよ！」
宙マン「気持ちは分かるが、今はとにかく逃げるんだ！」
おお、早くも絶体絶命の苫小牧市！
だが、こんな緊急事態に黙っている航空防衛隊ではない。
直ちに空の精鋭たちが、最新鋭の戦闘機でスクランブル！
ピグモン「あっ、防衛隊のおじさんたちなの！」
落合さん「これで一安心……出来れば、良いのですけれど（汗）」
ビーコン「頼んだっスよ～、今回こそは！」
「ようし、全機、俺に続け！
一斉攻撃を叩きこんで、あの怪獣に目に物を見せて……」
ペスター「ケケケ～、そうは問屋が卸さんだすた～！」
「ひぇぇ～、まだ何もしてないのに～っ！？」
げに恐ろしきは、ペスターの吐き出す高熱火炎！
その洗礼を受け、戦闘機隊はなすすべもなく撃墜されていく。
ペスター「ケケケ、どんなもんだすた～！」
勢いづいて調子に乗り、高熱火炎を吐きまくるペスター。
灼熱の炎が渦巻き、街は紅蓮の地獄へと化しつつあった！
ビーコン「ど、どひ～っ！ もうだめっス、おしまいっス！」
落合さん「これは……いくらなんでも、洒落になりませんわ！」
ピグモン「はわわ……宙マン、宙マン、なんとかしてなの～」
宙マン「（頷き）おのれ、もう許さんぞ！
宙マン・ファイト・ゴー！！」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、ペスターの前へ敢然と立ちはだかる！
宙マン「トゥアーっ！ 宙マン、参上！
怪獣軍団、これ以上の乱暴狼藉は私が許しておかないぞ！」
ズ、ズーンっ！！
ビーコン「いえっふ～、出たっス、アニキの十八番！」
落合さん「ああ、やっぱりここ一番で頼れるのはお殿様ですわねぇ！」
ピグモン「はうはう～、宙マン、がんばってなの～！」
宙マン「みんなが楽しみにしている、このランチタイムに……
よくもつまらない水を差してくれたな、油獣ペスター。
この私がいる限り、そんな無法は断じて見逃さない！」
ファイティングポーズを取り、敢然と身構える宙マン。
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ！
ペスター「ケケケケ～、粋がるなってんですた～、宙マン！
すきっ腹のお前が、今の俺に勝てるわけないだすた～！」
宙マン「なんの、正義の一撃で目を覚まさせてやる！」
真っ向激突、宙マン対ペスター！
落合さんたちが見守る中、ふたつの巨体がぶつかり合う。
通常の怪獣の約二倍という巨躯と、持ち前の軟体をフル活用した
ぐねぐねと捉えどころのない、トリッキーな動きにものを言わせて
宙マンめがけて果敢に攻撃を仕掛けていくペスター。
通常型の怪獣たちとは異なる動きに、宙マンも間合いがつかめず
思いのほか手こずらされてしまう。
ペスター「ケケケ、これを受けてみるだすた～！」
「う、うわぁぁぁぁ……っ！？」
おお、何ということであろう！
ペスターの高熱火炎が、宙マンの全身にみるみるに燃え移り……
更なるダメージの追い討ちをかけていくではないか！？
落合さん「お、お殿様っ！？」
ビーコン「ヤバいっス、このままじゃアニキが……！」
ピグモン「はわわわ、宙マン、まけないでなの～！」
スライ「んーふふふ、流石は私の見込んだペスター君！」
イフ「わははは……いいぞ、いいぞ、その調子だペスター！
宙マンを焼き尽くし、黒焦げの消し炭にしてしまえ！」
ペスター「ケケケ、俺の勝利も時間の問題だすた～っ！」
宙マン「……ペスターよ、調子に乗るのはまだ早いぞ……」
「ぬうぅぅぅ……トゥアーッ！！」
宙マン、気力を振り絞ってパワー全開！
気合一閃、全身にまとわりつく灼熱の炎を吹っ飛ばしてしまう。
ピグモン「わぁっ、宙マン大逆転なの！」
ビーコン「よーっしゃ、こっからがアニキのターンっスよ！」
落合さん「頑張って下さいませ、お殿様！」
ペスター「グギギ……ちきしょう、もう一度だすた～っ！」
再び高熱火炎を吐きかけるペスター！
だが、その一閃は、宙マン・プロテクションが無力化だ。
宙マン「はっはっはっはっ……
そうそう同じ手を、何度も食うような私じゃない！」
宙マン「さぁて、今度はこっちがお返しだ！」
ペスターの巨体を、宙マン・リフターで抱えあげ……
一気呵成に地面へ叩きつけ、大ダメージを与えたところへ！
宙マン「とどめだ！
宙マン・エクシードフラッシュ！！」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、ペスターを直撃！！
ペスター「ぎゃひぃぃんっ、し、しびれたすたぁぁ～っ！」
やったぞ宙マン、大勝利！
ビーコン「っしゃあ！ やっぱアニキはそうじゃなきゃっス！」
落合さん「ありがとうございました、お殿様！」
ピグモン「はうはう～、やったのやったの、宙マンの勝ちなの～♪」
イフ「うぐぐぐっ……またしても宙マンめが！
覚えておれよ、この次こそは思い知らせてやるからな！
よいか、必ずだぞ！ 必ずだからな！？」
……などと言う、いつもの負け惜しみはさて置いて。
かくして宙マンの活躍により、油獣ペスターは見事撃退され
苫小牧の街には再び平和が蘇ったのであった。
ピグモン「はうはう～、宙マン、おかえりなさいなの～」
宙マン「やぁやぁ、どうもどうも、お待たせ！」
落合さん「今日も流石でしたわ、お殿様！」
ビーコン「アニキのパワーには、限界なんてないっスね！」
宙マン「（苦笑）……いや、とんでもない！
何せもう、昼ごはん抜きでのバトルだったからね……
お腹ペコペコで、そっちはもう、とっくの昔に限界だよ！」
ビーコン「……あ、そっちスか！」
落合さん「無理もございませんわ……本当に、お疲れ様です」
ビーコン「ま、アニキはたらふく寿司食って、ハラペコ癒して下さいね。
そして、落合さんの淫らに爛れきった肉体の「飢え」を癒すのは
いつだってオイラの特選恵方巻き……♪」
げ し っ ！
落合さん「ねーいっ、このエロ怪獣！ 言うに事欠いてッ！！（怒）」
ビーコン「どひ～っ、やっぱ今日もこうなるんスねぇぇ～っ！」
宙マン「はっはっはっはっ」
しぶとい寒さも、邪悪な炎もなんのその……
我らが宙マン、次回も元気に大活躍！
みんな、バッチリ応援してくれよ、ナッ！
