遊びをせんとや生まれけり

全ての「面白がりやさん」へ――千歳より、愛をこめて。

双頭だけに相当なワルの巻

f:id:KOUMEMYLOVE4794:20210502103843j:plain

静かに夕焼けが、大地を包んでいく……

何時もと変わらぬ、日暮れ。

家路を急ぐものあり。

過ぎゆく一日にしみじみと思いを馳せるものあり。

そして……今夜の夕食に、早くも胸をときめかせるものもあり。

と言うわけで今回の『宙マン』もまた、暮れなずむ北海道千歳市の一角、

ほんわか町5丁目の「宙マンハウス」から物語を始めよう。

 

 

 

宙マン「いやぁ、ぼちぼちいい具合にお腹が減ってきたねぇ!

 落合さん、今夜のおかずは何かな?」

落合さん「うふふ、今夜はぐっと庶民的かつパワフルに……

 コロッケとハムカツ、この二本柱を軸にしてみましたわ」

ビーコン「おおっ、頼もしい響きっスねぇ!」

宙マン「庶民的けっこう。大いに結構だよ!」

ピグモン「はうはう~、ピグちゃんも揚げ物大好きなの~♪」

宙マン「香ばしく揚がったこの上に、ソースをどぼどぼっと……

 少々品がないくらいに、どぼどぼ行くのが私ゃ好きでねぇ!」

落合さん「えぇ、ご飯が本当に進みますのよね~。

 食べ盛りだった、学生時代のことを思いだしますわ」

ビーコン「ヒヒヒ、食べ盛りなのは今も同じっしょ?

 夜中、こっそりゴソゴソ起きてはカップ麺食ってたり……」

落合さん「(赤面)……ちょ、ビーコンさんっ!?」

f:id:KOUMEMYLOVE4794:20211129024802j:plain

ビーコン「それに落合さん、今なお育ちざかりでもあるじゃないスか。

 ほーら、気がつけば、下腹部あたりに余分なお肉が……」

落合さん「っがー! それ以上仰ったら、鉄拳制裁ですわよ!?(汗)」

ビーコン「(ニヤニヤ)それでもなお、揚げもんの誘惑にゃ勝てねー、と!」

落合さん「……わ、判り切ったことを聞かないで下さいましっ」

宙マン「はっはっはっはっ」

 

夕餉前の、どこにでもある穏やかな団欒。

だが、そんな人々のやすらぎの時間を破るかのように!

f:id:KOUMEMYLOVE4794:20211129025441j:plain

ゴゴゴゴ……グラグラグラグラっ!

 

ピグモン「は、はわわわわわっ!?」

落合さん「この揺れ方……只事ではございませんわね!」

ビーコン「どひ~っ、ってコトは、また……!?」

そう、その通り!

街を揺るがし、大地を裂いて……今回もまた怪獣軍団の刺客が

夕陽に染まった千歳市のド真ん中へその巨体を現した!

「グルルル……クエェェェ~ッ!!」

 

ピグモン「ああっ、おっきい怪獣なの!」

ビーコン「こ、古代怪獣ツインテールっス!」

落合さん「いえ、あれは確かオーストラリア出身の……」

宙マン「(頷き)……双脳地獣ブローズじゃなかったっけな!?」

そう、まさしくその通り――

二つの頭部に二つの脳を分散している彼は、双脳地獣ブローズ。

言うまでもなく、暗黒星雲から送りこまれた怪獣軍団の一員だ!

ブローズ「クェェェ~ッ、そうとも、そうだとも!

 このブローズ様が、こうして千歳に来てやったからには……

 お前らはもう、呑気に晩飯食ってる場合じゃないんだぜ!?」

ビーコン「ど、どひ~っ!

 全然有難くないうえに、最悪の宣誓頂きましたっス!(汗)」

落合さん「ああもう、何てことでしょう!?

 せっかくこれから、揚げ物に舌鼓を打つところでしたのに……」

ピグモン「これじゃ、ハムカツもコロッケもお預けなの~!」

宙マン「……うぬっ!」

イフ「わははは! そうだ、今こそ行くがよい、ブローズよ!

 お前の俊敏性を武器として、てきぱき使命を果たせ!」

イフ「判っておるな、それは即ち――

 地球征服の手始めとして、千歳の街の徹底破壊だ!」

ブローズ「クェェェ~ッ、お任せ下さい、魔王様!」

異形に似合わぬ俊敏さで、おもむろに動き出すブローズ!

迫り来る巨体を前に、散り散りに逃げ惑う千歳の人々である。

ビーコン「どひ~っ、よりにもよって晩飯時にっス~!」

落合さん「食べる寸前でのお預けが、一番こたえますわねぇ!」

宙マン「いいから、とにかく逃げるんだ――さぁ、こっちへ!」

大怪獣ブローズの出現により、千歳市内は大混乱。

だが、この緊急事態を、航空防衛隊は座して見ているだけではない。

落合さん「あらまぁ、(ピー)がタンクで……」

ビーコン「……もとい、防衛隊がジェットでやって来たっス!」

ピグモン「はうはう~、おじさんたち、がんばってなの~!」

「ようし……全機、一斉攻撃開始っ!

戦闘機編隊から叩きこまれる、ロケット砲の一斉攻撃!

人間相手の戦争ならば、絶大な威力であろう通常兵器……

だが、異形の荒くれ者・ブローズには全く通用しない。

 

ブローズ「クェェェ~ッ、ザコは引っ込んどれィッ!」

「……う、うわぁぁぁぁ~っ!?」

ブローズ頭部の角から放たれるのは破壊閃光。

断続的フラッシュが周囲に走った次の瞬間、上空の戦闘機は

次から次へと撃ち落とされていく。

怪獣ブローズ、傍若無人の大暴れ。

爆発! 炎上!

千歳の街の命運は、今や紅蓮の炎の中に尽きようとしていた!

ビーコン「ひぇぇぇ、もうだめっス、おしまいっス!」

落合さん「こうなってはもう、お殿様だけが頼みの綱ですわっ」

ピグモン「はわわ……宙マン、宙マン、なんとかしてなの~」

宙マン「(頷き)おのれ、もう許さんぞ!

 宙マン・ファイト・ゴー!!

f:id:KOUMEMYLOVE4794:20210430202106j:plain

閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。

華麗な空中回転とともに、荒れ狂うブローズの前へと舞い降りる!

f:id:KOUMEMYLOVE4794:20211113010718j:plain

宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!

 怪獣ブローズ、悪ふざけはそのくらいにしておくがいい!」

ズ、ズーンっ!!

ブローズ「クエェェ~ッ、相変わらずカッコつけやがって!

 今すぐそのスカシっぷりを、惨めな泣きっ面に変えてやる!」

宙マン「そっちこそ……

 恥をかく前に、さっさと退散するのが身のためだぞ!?」

ブローズ「(ムカッ)……言ったな、コノヤローっ!」

f:id:KOUMEMYLOVE4794:20211113011059j:plain

ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――

さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ。

 

ブローズ「クエェェ~ッ、くたばれ宙マン!」

全身のイボの「孔」から、有毒ガスを噴きかけるブローズ。

しかし、宙マンのプロテクションがこれを見事に無力化。

 

ブローズ「ムムムッ!?」

宙マン「そんな小細工など、この私には通用しないぞ。

 どうせやるなら、真っ向勝負で来るがいい!」

宙マン「私も真っ向から受けて立つ……そして、勝たせてもらうっ!」

ブローズ「……野郎ッ!!」

対決、宙マン対ブローズ!

人々が見守る中、ふたつの巨体が真っ向から激突する。

 

ブローズ「クェェェ~ッ、そりゃそりゃ、そぉりゃっ!」

右に左に、風を切って勢いよく唸りをあげる触手鞭!

そのトリッキーな動きに、宙マンもなかなか相手へ近づけない。

触手鞭攻撃で、宙マンを間合いに入らせまいとするブローズ。

その縦横無尽な軌道に手こずらされながらも、決して怯まずに

果敢に接近戦を挑んでいく宙マンである。

ブローズ「クェェェ~ッ、叩きのめしてやるぜ、宙マン!」

宙マン「――なんの!」

鞭を回避し、相手の懐に飛びこまんとする宙マン。

だが、嵐のように激しいブローズ鞭の一閃が、宙マンのボディを

ついに捉え、地面へと叩き伏せた!

宙マン「(悶絶)……ぐぅっ!」

ブローズ「クェェェ~ッ、お次はこれだぁ!」

「う、うわぁぁぁぁ……っ!!」

 

落合さん「(愕然)……お、お殿様っ!?」

f:id:KOUMEMYLOVE4794:20210429162343j:plain

ビーコン「頭が二つだけに、悪知恵も二倍ってことっスかねぇ!?」

ピグモン「はわわわ、宙マン、まけないでなの~!」

宙マン「(苦悶)う、うう……っ!」

ブローズ「クェェェ~ッ!

 恨み重なる宙マンよぉ、いよいよお前の最期だなぁ!?」

「なんの、これしき……負けて、たまるかッ!

残された気力を振り絞り、大ジャンプする宙マン!

ブローズ鞭の一閃を、ひらりとかわしたところで――

 

宙マン「とどめだ!

 宙マン・エクシードフラッシュ!!

全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……

エクシードフラッシュの一閃が、ブローズを直撃!!

ブローズ「あ、あビャあぁぁぁっ……

 け、結構いいとこまで行ったと思ったんだけどなぁ~っ!?」

やったぞ宙マン、大勝利!

 

ビーコン「いえっふ~! 今日もアニキがやってくれたっスよぉ!」

落合さん「お見事ですわ、やはりお殿様は素敵です!」

ピグモン「はうはう~、宙マン、ありがとうなの~♪」

イフ「うぐぐぐっ……おのれ、おのれ、またしても宙マンめが!!

 どこまで、ワシら怪獣軍団の邪魔をすれば気が済むのか……。

 だが、今に見ておれ、この次にはこうはいかんぞ!」

 

……などと言う、怪獣魔王の負け惜しみはさて置いて。

かくして我らが宙マンの活躍により、恐るべき大怪獣ブローズは撃退され

千歳市には再び、夕餉時の穏やかな時間が戻ってきたのであった。

 

落合さん「改めましてお殿様、大変お疲れ様でした!」

f:id:KOUMEMYLOVE4794:20211113012837j:plain

宙マン「いやぁ、怪獣退治で一汗かいたら……

 すっかりお腹ペコペコで、もう目が回りそうだよ」

落合さん「(苦笑)……えぇ、無理もございませんわ」

ピグモン「はうはう~、さっそく帰って晩ごはんなの~。

 揚げたてホカホカ、コロッケとハムカツが待ってるの~!」

宙マン「うんうん、ソースドボドボでいきたいね!」

ビーコン「ウヒヒ、いいっスよねぇ、ソースドボドボ!

 そして食後のデザートも、ドボドボで行きたいっスねェ」

落合さん「(表情が引きつり)……はァ!?」

ビーコン「具体的には落合さんに、オイラ謹製のホワイトソースを……」

 げ し っ !

落合さん「ねーいっ! ほんとにまったく、この怪獣(ひと)はっ!!

 誰も貴方の説明なんて求めてませんからッ!」

ビーコン「どひ~っ、結局今回もこうなっちまうっスねぇぇ~」

宙マン「はっはっはっはっ」

 

f:id:KOUMEMYLOVE4794:20211204232911j:plain

ひとつの危機は去った……

だが、怪獣軍団の野望は未だ尽きない。

さぁ、次回はどんな冒険が待っているのかな?