遥かなる宇宙の彼方、暗黒星雲の奥深くから……
今日も虎視眈々と、地球を狙い続けている恐怖の怪獣軍団。
幾度も宙マンにしてやられ、それでも地球征服の野望は捨てない彼ら。
はてさて、今度はいったいどんな刺客を差し向けてくるのやら?
イフ「ワシら怪獣軍団の大目的……他でもない、地球征服の大いなる野望。
今度と言う今度こそ、その悲願を現実のものとする時がきたのだ――
さぁ、今ぞ起て! 勇猛果敢なる怪獣軍団の戦士よ!」
そして、今回の刺客は……
千歳市からほど近い、苫小牧市寄りの沼地から姿を見せようとしていた!
果たして今回、我々の前に恐るべき姿を見せるのは何者であろうか。
……え? 「サブタイトルの段階で既にネタバレ完了」ですって?
まぁまぁ、そう仰らず。
俄かに妖しく波立ち、ボコボコと激しい泡が噴き上がる沼の水面。
沸き立つ気泡とともに、水底からゆっくり浮かび上がってきた者は!?
「あんぎゃあぁぁ~っ!!」
甲高い叫び声とともに、沼底から姿を見せた大怪獣。
過去にも幾度となく北海道を襲撃した、かの宇宙怪獣・ベムラーの眷属……
便宜上、これ以降は“ベムラーⅡ”と呼称しよう。
イフ「ううむ、いつ見ても頼もしい面構えよ!
よいかベムラー、お前がこの地において成すべきことは只ひとつ……」
ベムラーⅡ「あんぎゃああ~っ、判ってますとも、千歳襲撃ですね!
ええ、ええ、俺もハナっからそのつもりでいましたともさ!」
イフ「うむ、その通りだ!
たかが一地方都市の分際で、我らの進行をことごとく阻んできた街……
怪獣軍団の威力によって、何がなんでも千歳市を壊滅させぬことには
もはやワシらの面子に関わるのだ!」
ベムラーⅡ「あんぎゃああ~っ、全てこの俺にお任せを!」
ベムラーⅡ「このさい小細工は抜きで、一気呵成の「電撃戦」と参りましょう。
宙マンが事態に反応して動くより前に、スピーディーにコトを運んでしまえば
もはや千歳壊滅は既成事実も同然……」
「……ふむふむ、なかなか興味深い話だね?」
不意に聞こえてきた声に、ベムラーⅡが振り向けば……
彼の巨大な足もとには、いつもの呑気な宙マンファミリーの姿が。
ビーコン「や、ドモドモっス☆」
ピグモン「はうはう~、こんにちはなの~」
ベムラーⅡ「ゲゲェッ、お前は宙マン!?(汗)
どうして、どうしてこんなにタイミングよく俺の計画を嗅ぎつけて……」
宙マン「いや、私たちはただ単に散歩の途中だったんだけどね。
……あ、でも、“嗅ぎつけた”って言うのはあながち間違いでもないかな」
ベムラーⅡ「な、ナヌッ?」
ピグモン「んーとね、ピグちゃんがお鼻クンクンしたら……
風に乗って、嗅ぎなれないミョーな匂いが流れてきたの~」
落合さん「うちのピグモンちゃんの嗅覚には、それはもう定評があるんですのよ」
ビーコン「で、ピグモンがあんまりしつこく言うもんだから……
半信半疑で来てみたら、ちょうどアンタが出てきてたとこだったんスよ」
宙マン「ピグモンが嗅ぎつけたのは、あの怪獣の臭いだったんだねぇ」
ピグモン「えっへん! ピグちゃん、うそつかないの~」
落合さん「(なでなで)えぇ、えぇ、よく判っておりますとも」
宙マン「うんうん、ピグモンの言ってることが事実と判ったことだし……
一件落着したところで、今回のお話はこれにて!」
落合さん「皆様、また次回のお話にてお会いしましょうね!」
今日もめでたし、一件落着。
よかったよかった、ほんとによか(った)……
ぷ ち っ !
ベムラーⅡ「っがー、なんだそのナメくさった態度ッ!
こちとらなぁ……
ああ、こちとら仕事で来とんのじゃ~っ!!」
宙マンファミリーの「通常営業」っぷりに、怒り心頭!
グワッと開いた口から、青色の破壊光線を吐いて迫るベムラーⅡ。
ベムラーⅡ「こうなりゃお前らからだ、家族まとめて血祭だ~!」
ビーコン「ど、どひ~っ、アイツめっちゃ怒ってるっスよ!」
落合さん「お怒りになるのも、無理のない話ではありますが……
とにかくこのまま放置しては、またまた千歳の街が大ピンチですわっ」
ピグモン「はわわわ……宙マン、宙マン、何とかしてなの~」
宙マン「(頷き)ああ、私はやるとも!
宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、荒れ狂うベムラーⅡの前に舞い降りる!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
怪獣軍団め、ここから街には一歩たりとも踏みこませないぞ!」
ズ、ズーンっ!!
落合さん「お殿様の十八番、何度見ても素敵です……♪(うっとり)」
ビーコン「いえっふ~、正義の味方のお出ましっスね!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~♪」
ベムラー「あんぎゃあぁ~! ブッ潰れろ、宙マン!」
宙マン「どこからでもかかって来い、ベムラー!」てろよ!
ギャラリーの前で赤っ恥かかせてやる、お前をブチのめしてな!」
宙マン「(ニヤリ)果たして、そう思い通りに事が運ぶかな……!?」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ。
ベムラーⅡ「あんぎゃあぁ~! 完全粉砕だぜ!」
宙マン「その大口、すぐに後悔させてやるぞ、ベムラー!」
かくて激突、宙マン対ベムラーⅡ!
落合さんたちが見守る中、巨体の闘う響きが原野を熱く揺さぶる。
手刀一閃、宙マンお得意の空手チョップ!
ベムラーⅡの脳天へとめり込むように炸裂した打撃が怪獣を怯ませ、
その機を逃さず宙マンの猛烈アタックが華開く。
ビシッ! バシィッ!
宙マン・キック! 宙マン・パンチ!
勢いに乗って攻めに攻める宙マンだが、ベムラーⅡもさるもの……
そう簡単に、ギブアップしてくれるような相手ではない。
宙マン「むむっ、しぶといヤツだな――どうだ、これでもか!」
ベムラーⅡ「あんぎゃああ~っ、甘く見るなよ、宙マン!」
突進してきたベムラーⅡの巨体を、がっちり掴んで押さえこむ宙マン。
だが、ベムターⅡは持ち前の怪力によって……
勢いよく身を起こすとともに、宙マンを逆に跳ね飛ばしてしまった!
宙マン「う、うわぁぁぁぁ……っ!」
落合さん「(衝撃を受け)お、お殿様っ!?」
ビーコン「やばいっスよ、どう見てもアニキの大ピンチな流れっス!」
ピグモン「(涙目)はわわわ……宙マン、がんばってなの~!」
宙マン「(苦悶)……うう……うっ……!」
ベムラーⅡ「あんぎゃあぁ~っ、思い知ったか!
今度と言う今度こそ俺らの勝ちだぜ、宙マン!」
イフ「ようし、よくやった、でかしたぞベムラー!
そのまま一気に、恨み重なる宙マンめにとどめを刺してしまうのだ!」
ベムラーⅡ「あんぎゃあぁ~、ウィっス!!」
猛然と、宙マンめがけて突進してくるベムラーⅡ。
だが宙マンも、ただやられっぱなしでいるわけではない――
気力を振りしぼって、再びすっくと立ち上がるその雄姿!
宙マン「負けるものか。……負けて、たまるかッ!!」
ベムラーⅡ「ほざくな宙マン、くたばれッ!」
口から破壊光線を吐き出すベムラー。
だが宙マンは、冷静な判断でその一閃をかわし、ジャンプ!
ベムラーⅡ「ぬ、ぬおおおっ!?」
宙マン「くらえ――宙マン・閃光波!」
ピッキュイィィーン!
高らかな音とともに、宙マンの手にストロボ状の発光が生じ……
次の瞬間、ベムラーⅡのボディで激しい爆発が起こる。
宙マン「――どうだっ!?」
ベムラーⅡ「あぎゃあぁぁっ、め、めちゃくちゃ不本意ぃぃ~っ!」
火花を散らして崩れ落ち、大爆発とともに吹っ飛ぶベムラーⅡ。
やったぞ宙マン、大勝利!
ピグモン「はうはう~! やったのやったの、宙マンの勝ちなの~!」
ビーコン「さっすがはアニキ、やっぱこうじゃなきゃっスよねぇ!」
落合さん「今日もお見事でしたわ、お殿様!」
イフ「おのれぇぇ……またしても、またしても宙マンめが!
だが、いい気になっているのも今のうちだけだぞ……
怪獣軍団には、まだまだ強者がズラリと揃っておるのだからな!」
……などと言う、いつもの負け惜しみはさて置いて。
かくして、今回もまた……
宙マンの活躍で、宇宙怪獣ベムラーⅡの千歳襲撃は未然に防がれたのであった。
宙マン「やぁ、みんな……お待たせ、お待たせ!」
落合さん「お殿様、どうもお疲れ様でした!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、かっこよかったの~♪」
ビーコン「さすがはアニキ、安心と信頼のヒーロー・アクション!
こうなりゃオイラも負けずに、自慢のアクション披露の時っスね!」
落合さん「あらあら、よりによってビーコンさんが「アクション」ですって?
何だかピンと来ませんわねぇ、イメージじゃございませんことよ?」
ビーコン「ヒヒヒ、そんなこと言ってられるのも今のうちだけっスよ!
今こそ炸裂するビーコンちゃん秘伝のセクハラアクション――
見て、感じて、そして思い切り悶えるがいいっス!」
さわっ、さわさわっ
落合さん「(赤面)……きゃ、きゃああああっ!?」
げ し っ !
落合さん「ねーいっ! およしなさい、そんな下品な比喩っ!!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、セクハラの道は限りなく険しいっスぅぅ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
それを乱す者は、許しちゃおかぬ正義の味方。
さァて、次回はどんな活躍を見せてくれるかな?