永遠に続くかのようだった、あの銀世界も今やいずこ……
4月の雪溶けとともに、北海道民もようやく春を実感できる時がきた。
お馴染み、千歳市ほんわか町5丁目の「宙マンハウス」。
その住人である宙マンファミリーの面々も、待ちに待った北国の春の
うららかな日々を、心ゆくまで満喫しているところなのであった。
そんなわけで、今回の『宙マン』は……
四月の陽光に暖められた、「宙マンハウス」の庭先から物語を始めよう。
宙マン「おや、ピグモンはどこへ行ったかな?」
落合さん「先程、みくるん様やながもん様と一緒に遊びに出かけましたよ。
何でも季節の花を見に、ママチ川のほとりまで行くのだそうで……」
宙マン「ほほう、そりゃまた風流だねェ」
落合さん「うふふ、春ですもの。じっとしてなどいられませんわよねぇ」
ビーコン「フヒヒ、そうそう、じっとしてなんていられないっスよね!
てなわけで落合さん、さっそくオイラたちも元気いっぱいにズンパコ……」
げ し っ !
落合さん「ねーいっ、のっけから何です、このお下劣怪獣っ!(怒)」
ビーコン「ハンニャラ、ヒ~っ……そりゃないっスよ、落合さぁ~ん。
オイラはただ、新年度の幕開けに相応しい遊びを、って思って……」
落合さん「んーまっ、いけしゃあしゃあとッ。
どうせ遊ぶのなら、ピグモンちゃんたちの健全さを見習ってですね……」
「ふぇぇん……宙マンさん、宙マンさ~んっ!」
……と、噂をすれば何とやら。
慌てて駆けこんできたのは、まさにそのピグモン、みくるん、ながもんではないか。
宙マン「やぁ、みんな、こんにちは!」
落合さん「随分お早いお帰りでしたわね、何かありましえt?」
ピグモン「はわわわ……あ、あったなんてモンじゃないの~!(汗)」
ビーコン「……うげ、マジっスか!?」
宙マン「……熊の足跡でも見つけたかね?」
ながもん「(首を振り)それより、もっと……凄いもの」
みくるん「(頷き)……へ、変なオジサンが出たんですぅ~!!」
落合さん「変なオジサン、ですって!?」
ビーコン「……ちょ、落合さぁん!
なんで今、ちらっとオイラの方見たっスか!?(汗)」
ピグモンたちの語る「変なオジサン」――
近所では見慣れぬ毛むくじゃらの怪人物が、突如ママチ川のほとりに現われ
遊んでいた彼女らを、強引にその場から追い返してしまったのだ、と言う。
落合さん「あらあら、不審者ですか……怖いですわねぇ。
ウチのビーコンさんだけでも、ほとほと手を焼いておりますのに……」
ビーコン「……だからぁ、なんでソコでオイラに振るんスかぁ!?(汗)」
宙マン「とにかく、放ってはおけない案件だね!」
ピグモンたちからの報告を受け、俄かに緊張が高まる「宙マンハウス」。
そしてこちらは、問題のママチ川流域。
よくよく目を凝らしてみれば……
おおっと、確かにいたぞ、毛むくじゃらの怪人が。
「ウギッ、ウギギギギーッ!」
黄金色の毛に全身が覆われた宇宙猿人・ゴーロン。
言うまでもなく彼もまた、暗黒星雲から送りこまれた怪獣軍団の使者なのだ!
イフ「しっかり頼むぞ、ゴーロン!
お前が確保しているその場所は、これから怪獣軍団の前線基地が建設されて
地球侵略の拠点となる最重要ポイントだ……
ゆえに誰一人として、その場所に足を踏み入れさせてはならんぞ!」
ゴーロン「ウギギギっ、お任せを、魔王様!」
ゴーロン「この土地は既に、怪獣軍団の手中に落ちたも同じ……
前線基地が築かれるまで、誰も寄せ付けやしませんとも!」
「……いいや、そうはさせないぞ!」
ゴーロン「(驚き)!?」
突如として、凛とした声がママチ川の流域に響き渡る。
不意の気配に、ぎょっとしてゴーロンが振り返ると、そこにいたのは……
勿論、正義と真実の人・宙マンだ!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
宇宙猿人ゴーロン……いや、暗黒星雲の怪獣軍団よ。
お前たちの悪企みは、この耳で確かに聞かせてもらったぞ!」
宙マン「この川沿いは、市民みんなのいこいの場所だ。
お前たち悪党の好き勝手にはさせん、即刻立ち去るがいい!」
ゴーロン「しゃらくさいぜ、返り討ちだぁ!」
宙マン「あくまでやる気か……ならば、やむを得ん!」
ゴーロン「ウギギギ~、行くぞ宙マン! 勝負だァ!」
激突、宙マン対ゴーロン!
さらさらと流れるママチ川のほとりで、今日もスーパーバトルの幕が開いた。
数多い侵略宇宙人の中でも屈指と言われる、気性の荒さと腕力の強さ……
持ち前の野獣性を全開にして襲いかかるゴーロンの怪力殺法を前にして、
宙マンもまた磨き抜かれた格闘技によって真っ向から渡り合う。
ゴーロン「ウギギギ! その首の骨、ボキっとへし折ってやるぜ!」
宙マン「そうはいかんぞ、私は負けない!」
どんな強敵を前にしても、決して衰えない宙マンのファイト。
が、腕力にものを言わせ、しゃにむに突き進んでくるゴーロンの強引さには
さしものヒーローも、じりじり後退を余儀なくされてしまう。
ゴーロン「ウギギギ~っ、どうだ、これでもか!」
宙マン「う、うわっ!?」
遂に、ゴーロンの腕力に押し切られ――
足がもつれて、その場の地面に倒れこんでしまう宙マン!
宙マン「(呻いて)……くっ!」
ゴーロン「ウギギ~、俺の勝ちだな宙マン! 死ね死ねぇ!」
倒れた宙マンにとどめを刺さんと、勢いよくのしかかってくるゴーロン!
そうはさせじと、宙マンも応戦。
両者、激しく地面を転がり、もつれ合い……
マウントポジションを取り合う中、一足先に立ちあがったのは宙マンの方であった。
ゴーロン「(慌てて)ウ、ウギギっ!?」
宙マン「もらった!」
立ち上がろうとした猿人の顔面めがけて、宙マンのパンチが炸裂。
鼻の頭に強烈な一打を食らい、ふっとび倒れるゴーロン――
そこに生じた隙を突いて、すかさずジャンプで大空に舞い上がる宙マン!
「セイヤァァーッ! 宙マン・チョップ!!」
落下速度を利用した宙マンの必殺チョップ……
文字通りの「手刀」が、ゴーロンの脳天を叩き割るように炸裂!
ゴーロン「(目を回して)……こ、コリャ効いたぁぁ~っ!……」
これにはたまらず、ゴロンと倒れて悶絶してしまった宇宙猿人である。
宙マン「ようし……これにて一件落着、っと!」
やったぞ宙マン、大勝利!
イフ「おのれ宙マン、どこまで……
どこまで邪魔をして、どこまでワシに恥をかかせれば気が済むのか!?
見ておれ、この次こそは見ておれよ……!!」
かくして、宙マンの活躍により……
怪獣軍団の秘密基地建設計画は、ゴーロンの敗退とともに潰え去った。
そしてママチ川の流域は、再び千歳市民の憩いの場に戻ったのであった。
おお、そんな宙マンの勝利を讃えるかのように……
聞こえてくるのは川のせせらぎと小鳥の声、そして子どもたちの笑い声である。
みくるん「うふふ、宙マンさん、お疲れ様でしたぁ!」
ながもん「これで、また……安心して……川沿いを、歩ける」
ピグモン「はうはう~、みんな宙マンのおかげなの~」
宙マン「はっはっはっ、そう言ってもらえると私も嬉しいよ」
宙マン「これからはまた安心して、みんなで元気に遊んでおくれ!」
みくるん「はいっ♪」
みんなの笑顔のため、ただ一輪の花のため……
宙マンは、今日も正義の命を燃やす。
さて、次回はどんな冒険が待っているのかな?