例年にない記録的猛暑の余波が、しぶとく尾を引いていた感のある
2023年の日本列島・津々浦々ではあったが……
それがここに来て、まさに急転直下の冷え込みっぷり。
列島最北端たる北海道ともなれば、寒さのほどは推して知るべしで
街を吹き抜ける空っ風の冷たさは、さながら刃物のよう。
寒い、寒い、本当に寒い11月下旬の一日。
ここ、北海道千歳市……
ほんわか町5丁目の「宙マンハウス」も、勿論その例外ではない。
「び、ぶ、ぶぇっ……ぶぇぇ~っくしょい!!
……え~いチキショ~、バーローっス~」
落合さん「(呆れて)ちょっ……
何ですかビーコンさん、その典型的なオッさま丸出しクシャミはっ!」
落合さん“宙マンファミリー”の一員たるもの、お殿様の御名を辱めないよう
貴方ももっと、自覚を持って節度ある生活態度というものを……」
ビーコン「いやぁ落合さん、それじゃ全国400万人(推定)の
オイラのファンが納得しないっス~」
ビーコン「……つ~か、今回に関しては、別にオイラのせいじゃないっスよ?
ここんとこの朝晩の、バカみたいな冷え込みが全ての元凶っス~。
……ぐじゅ、ずずずぅ~」
ピグモン「はう~、ビーコンちゃん、大丈夫ぅ?」
ビーコン「ダイジョブくないっス、ヘロヘロっスよ~。
嗚呼、でもでも、落合さんがハダカで添い寝したりしてくれたりしたら
こんな風邪なんて一発で……」
落合さん「(ジト目)いえいえ、どうぞお気遣いなく!」
みくるん「うふふっ。
落合さんとビーコンさんの掛け合い、今日も絶好調で安心します~」
ながもん「(頷き)仲良き……ことは……美しき哉」
落合さん「……って、そんな風に尤もらしくまとめないで下さいな!(汗)」
宙マン「はっはっはっはっ、まぁまぁ、落合さん♪」
落合さん「コホン、それはさておき……
確かに、ここに来ての冷えっぷりときましたら
ジェットコースターなみの急加速ですわよね~。
うふふ、またまた悪い怪獣の仕業だったりしたらどうしましょ?」
冗談交じりに言って、落合さんがサッと居間のカーテンを開け放つと……!
グワーン! ズガガガガーンっ!
ビーコン「だーっ、落合さん、どうしてくれるんスか!?」
落合さん「ちょ、何で私のせいにしちゃってますの!?」
みくるん「お二人とも、言い争ってる場合じゃないですよ~!(汗)」
ピグモン「はわわわ、まさか今日も……なの~!?」
ながもん「どうやら、間違いなく……今日も……みたい」
大地を割り、次々と出現する大怪獣……
大地を引き裂き、煙を噴き上げて、またも現れる破壊の使者。
果たして、今回の怪獣は!?
「あんぎゃぁぁぁ~っ!!」
みくるん「ふぇぇっ、か、怪獣さんですぅ!」
ながもん「予想、通りの……ズバリ賞」
ピグモン「はわわ、ちっとも嬉しくないの~!」
ビーコン「どうせまた、怪獣軍団が一枚噛んでるんスよねぇ!?」
「ぎゃ~っ、それも正解、ズバリ賞だぜェ!」
そう、奴もまた怪獣軍団から送り込まれた悪の使者……
誰が呼んだか炎熱怪獣・バーストロン。
全身からむせるような熱気を放つ、凶暴無比の暴れ者だ!
宙マン「そのバーストロン君とやらが、今日は一体何の用だね?」
バーストロン「あんぎゃぁぁ~っ、バーロイ! 真顔で聞いてんじゃねぇ!
俺がわざわざ、お前との茶飲み話でもしにきたように見えるかよ!?」
宙マン「……いや、出来ればそうあって欲しかったんだがな……(汗)」
バーストロン「あんぎゃぁぁ~っ、千歳の連中が寒がってる様子なんで……
今から俺様の熱エネルギーで、ガッツリあっためてやろうってのさァ。
それこそ熱すぎて、物理的な意味で燃えちまうぐらいになぁ!」
ビーコン「どひ~っ、やっぱりっスよぉ、やっぱり!(汗)」
落合さん「怪獣軍団の方々ときましたら、どうして皆さん揃いも揃って……(呆)」
イフ「わははは! さぁ行け、思い切り暴れるのだバーストロン!
徹底的に破壊し、怪獣かくあるべしとの模範を全軍団に示せ!」
バーストロン「あんぎゃぁぁ~っ、お任せ下さい、魔王様!」
怪獣魔王の命を受け、進撃開始のバーストロン!
迫り来る巨体を前に、悲鳴をあげて逃げまどう千歳の人々。
ピグモン「(怯えて)きゃああん、どんどんコッチ来てるの~!」
ビーコン「どひ~っ、ちょっとヤル気出しすぎじゃないっスか!?」
落合さん「あらあら、どうにもこうにも大ピンチですわ!」
冬の寒さを吹っ飛ばし、人々の心胆を別の意味で寒からしめるその熱量。
危うし地球、危うし千歳。
だからこそ……炎熱怪獣の暴虐、許すまじ!
千歳の平和を守るべく、航空防衛隊が直ちに出撃した。
ビーコン「おおっ、今日も今日とて航空防衛隊っス!」
落合さん「お願いしましたわよ~、どうか今度こそは!」
みくるん「防衛隊の皆さん、頑張って下さいですぅ~!」
「ようし……全機、一斉攻撃開始っ!」
攻撃、攻撃、また攻撃!
バーストロンへと、嵐の激しさで叩きこまれる一斉砲火だが……。
バーストロン「あんぎゃぁ~っ、小うるせぇってんだよ!」
「……う、うわぁぁぁぁっ!?」
“炎熱怪獣”と言う別名の由来、口から吐き出す超高熱火炎。
その威力にはひとたまりもなく、次々に撃墜されていく戦闘機。
みくるん「ああっ、やられちゃったぁ!」
ビーコン「やっぱりっつーか、何つーか……」
ながもん「戦闘機隊は、頑張った……怪獣が……強すぎる」
「ぜ、絶妙のフォローありがとう……ガクリッ(気絶)」
……などとやっている間にも、図に乗って大暴れするバーストロン。
口からの超高熱火炎が、周囲の街を紅蓮の地獄へと変えていく。
ビーコン「……うへぇ、アイツ、すっかり勝ち誇ってるっスよ~!」
みくるん「でも、このままじゃホントに……」
ながもん「(頷き)我が街、千歳……今度こそ、おしまい?」
落合さん「いくら冬だからって、こんな暖まり方はご勘弁ですわ!」
ピグモン「はわわわ……宙マン、宙マン、何とかしてなの~」
宙マン「(頷き)おのれ、もう許さんぞ!
宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、荒れ狂うバーストロンの前に舞い降りる!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
怪獣軍団、これ以上の乱暴狼藉は私が許しておかないぞ!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「いえっふ~、出たっス、アニキの十八番!」
落合さん「ああ、やっぱり頼れるのはお殿様ですわねぇ!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
バーストロン「あんぎゃぁ~っ、出てきたな、宙マンめ。
悪のパワーで、今度こそ叩きのめしてやらぁ!」
宙マン「いいや、最後に勝つのは正義の力さ!(ニヤリ)」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日もまた、世紀のビッグファイト開幕だ。
バーストロン「ニャロオッ、スカしやがって! 捻り潰してやらぁ!」
宙マン「さぁ、どこからでも来いっ!!」
激突、宙マン対バーストロン!
落合さんたちが見守る中、巨大な両者が攻防戦の火花を散らす。
宙マン「はっはっはっ、サクッと片付けさせてもらおうか!」
バーストロン「うがーッ! マジむかつくぜ、コイツ!!」
カッカと怒りに燃え、パワー全開で襲い来るバーストロン!
その猛攻をかわしつつ、得意の格闘技で渡り合う宙マン。
宙マン「そうら、こっちだ、こっちだ!」
巨体に見合わぬ、俊敏かつ軽快な宙マン・ジャンプ!
バーストロンの頭上をひらりと飛び越え、反対側に着地する。
ズ、ズーンっ!!
バーストロン「あんぎゃあぁ~っ、チョコマカと!」
宙マンのパンチ、嵐のような打撃のラッシュ!
バーストロンめがけ、得意のパワー技を次々に炸裂させていく。
宙マン「そうれ、どんどん行かせてもらうぞ!」
バーストロン「野郎ッ……調子に乗るのも大概にしとけッ!」
バシィッ!
炸裂、怪獣バーストロンの地獄ビンタ!
たまらず、宙マンが吹っ飛んで地に叩きつけられた隙を逃さず……
バーストロンの超高熱火炎が、宙マンを容赦なく急襲!
「う、うわぁぁぁぁ……っ!!」
みくるん「(衝撃)ああっ……ちゅ、宙マンさんが!」
ながもん「これは……まずい……色々と」
ビーコン「ひぇぇ、アニキが負けたらオイラたち、どうなっちまうんスか~!?」
ピグモン「はわわわ……宙マン、がんばってなの~!」
宙マン「(苦悶)……う、うう……っ!」
バーストロン「あんぎゃあぁ~っ、地獄へ落ちろや宙マン!」
とどめを刺すべく、猛然と駆け寄ってくるバーストロン。
だが、宙マンもまた残された気力と体力を振り絞り、動いた。
そして、ほんの一瞬の中に……反撃のチャンスを鮮やかに見出したのだ!
宙マン「どりゃあーっ! 宙マン・ショット!!」
気合とともに、不可視の破壊衝撃波を放つ宙マン!
頬げたへの一撃に、バーストロンがよろめき怯んだところへ――
宙マン「とどめだ!
宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、バーストロンを直撃!!
バーストロン「ぐはぁぁっ……や、こりゃタマラ~ン~!」
やったぞ宙マン、大勝利!
みくるん「わぁっ、やりましたぁ、宙マンさんの勝ちですぅ!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、かっこよかったの~♪」
ながもん「……グッジョヴ」
イフ「うぐぐぐっ……またしても、またしても宙マンめが!
いいか、この仕返しは必ずしてやるからな――
次こそ必ず、お前をギャフンと言わせてやる!!」
……などと言う、怪獣魔王の負け惜しみはさて置いて。
かくして、今回もまた宙マンの活躍により……
炎熱怪獣バーストロンは撃退され、千歳の街に平和が蘇った。
みくるん「宙マンさん、どうもお疲れ様でした!」
ながもん「安心したら……おなか……すいたかも」
宙マン「そんな時にこそ、身も心もあったまるような一杯が
心和んで、染みわたるっていうものさ」
ピグモン「冬のラーメン、あったかあったかなの~♪」
ながもん「おお、何と、きれいな……オチの、着地点」
みくるん「うふふっ、それじゃみんなで食べに行きましょうか♪」
ビーコン「ヒヒヒ、そんでもって……
食後には、ちゃんと甘いもんあるっスから、ご心配なくっスよ~」
落合さん「あら、お珍しいですこと。
ビーコンさんが、そんな風にお気をきかせて下さるなんて!」
ビーコン「ウッシッシッシ、そりゃもうね!
そして落合さんには、お菓子よりもっと甘く蕩ける「犯し」の方も……」
げ し っ !
落合さん「ねーいっ、せっかくの大団円をブチ壊すんじゃありませんっ!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、このオチあってのこのシリーズっスぅぅ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
寒さに負けず、元気いっぱい……
千歳のヒーロー・我らが宙マン、明日も行く!
さァて、次回はどんな活躍を見せてくれるかな?