地球から遠く離れた大宇宙、遥かなる暗黒星雲。
その奥深くで、地球征服を企む巨大な悪の一味が蠢いている。
彼ら怪獣軍団の辞書に「懲りる」と言う文字は無い。
はたしてそれが単なる落丁版か、故意に消したものかは定かではないが……
そんなわけで今日もまた、暗黒星雲から恐怖の魔手が地球に迫るのだ。
イフ「さぁ、いよいよお前の出番だ、我が怪獣軍団の誇る精鋭よ!
持てる力を存分に奮い、地球をワシらの物とするのだ。
行け! 行け! 行けーぃっ!!」
おお、何と言うことであろう!?
怪獣軍団の新たなる使者は、既に北海道への侵入を果たし
魔王イフの命令のもと、行動を起こそうとしていたのだ。
だが、そんな事とは露知らず……
北海道千歳市は、もっか6月下旬の平和な一日を満喫中であった。
落合さん「あぁ、こうでなくてはいけませんわねぇ!」
落合さん「お空は快晴、それでいて気温も暑すぎず快適……」
ビーコン「でもって、何より平和そのものっス!」
ピグモン「はうはう~、平和がいちばんなの~♪」
宙マン「あぁ、全くもって異議なしだねぇ。
……で、そう言う時には気持ちよくお腹がすいてきちゃうよ」
みくるん「(くすくす)……ふふ、宙マンさんったら♪」
みくるん「そういうことなら、皆さん……
今日のお昼は「やきとん」なんてどうですかぁ?」
ながもん「この間、見つけた……とっても、美味しい……お店」
宙マン「ほう、やきとんねぇ……」
ビーコン「「とん」ってコトは、豚肉っスか?」
みくるん「(頷き)お店のメニュー、豚肉料理一本に絞り込んでるんですよね。
だからこそ、いろんな珍しい部位のお肉や、それを使ったお料理なんかも
余すところなく、じっくり味わえて……」
ながもん「しかも、とびきり……リーズナブル」
ビーコン「おおっ、いいっスねぇ、今日はそれにするっス!」
落合さん「ちなみに、お勧めのメニューとかございます?」
ながもん「私的には……“ブタタン定食”を……推したい。
ブタタンとは、豚の舌の事で……噛みしめた際の……」
ビーコン「ふむふむ!」
ながもん「………………(無言)」
ビーコン「……あ、あれれっ、そこから先は?」
落合さん「どうかなさいましたか、ながもん様?」
ながもん「(無表情に、一方を指差し)………あれ」
ビーコン「へっ?」
と、一同もながもんの指差した方へ向き直り……びっくり仰天!
ゴゴゴゴ……ズゴゴゴゴゴ……ッ!
おお! 見よ! 驚愕せよ!
何の前触れもなく、激しい震動とともに大地へ荒々しい亀裂が走り
高層ビルが次から次へと、まるで蟻地獄に呑まれていくかのように
地中へと沈み、崩壊していく、この恐るべき光景!
みくるん「そ……そんなぁっ!」
落合さん「この展開、もしかして……」
宙マン「もしかすると……」
ビーコン「もしかしちゃうんスかね、やっぱりぃ!?(汗)」
大量の土砂を天高く撒き上げ、舗装道路をも軽々と引き裂いて
地の底から今また、姿を現わさんとしている邪悪な影。
……果たして、それは!?
「ギチギチギチ……ギッギギィィ~ッ!!」
みくるん「ああっ、大きなアリジゴクさんですぅ!」
ピグモン「って言うか、もうどう見ても怪獣なの~!(汗)」
ながもん「(頷き)あれは……磁力怪獣・アントラー」
かつて第61話で宙マンと戦った、怪獣アントラーの亜種……
便宜上、ここでは“アントラーⅡ”と表記しよう。
宙マン「……ああ、思い出したぞ、そんなのもいたっけなぁ!」
ビーコン「道理で、アリジゴクの怪獣なら……
こんな凝った現れ方ってのも、ある意味納得っスよ!」
宙マン「ああ、ひとまずの筋道は通るねぇ。
……だが、それを受け入れられるかどうかは、また別問題さ」
アントラーⅡ「ギチギチギチ……残念だったなぁ、人間どもよ。
これから何が起ころうと、お前たちに拒否権はないんだ」
アントラーⅡ「磁力怪獣アントラー、またの名を“アリジゴク怪獣”。
そして今から、俺の力で作り上げるのは……
蟻んこなんかじゃない、お前たちにとっての地獄だぜ!」
ビーコン「どひ~っ、なんなんスか、あのドヤ顔と言い回し!」
落合さん「上手いおつもりなのが、余計癪に障りますわねっ!」
イフ「わははは……さぁ行け、暴れるのだアントラーよ!
千歳の街をメチャクチャに破壊し、その瓦礫の廃墟の上に
ワシら怪獣軍団の前線基地を築くのだ!」
アントラーⅡ「ギリギリィ~ッ、魔王様、お任せ下さい!」
奮い立ち、進撃開始するアントラーⅡ!
迫り来るその巨体を前に、悲鳴をあげて逃げ惑う千歳の人々。
ビーコン「どひ~、せっかく平和な一日だったってのに!」
落合さん「毎度毎度、どうしてこうなってしまうんでしょうねぇ!?」
みくるん「何でもいいですから、早く逃げなきゃですよぉ~!」
おお、北海道千歳市に早くも絶対の危機迫る!
だが、そんなアントラーⅡの暴虐を阻まんものと……
ながもん「おお……今日もまた……来てくれた」
ビーコン「う~ん、来てくれるのは嬉しいんスけど……」
落合さん「あとはもう少し、成果が伴って下さいますと……ねぇ?」
「う~ん、またまたヒドい言われようだけど……
気にせずドーンと行くぞ、一斉攻撃開始っ!」
激しいアタックをかける戦闘機隊!
持てる火力の全てが、怒濤のごとく大怪獣へ叩きこまれる。
アントラーⅡ「ギチギチギチ……小うるさいな、引っ込んでろィ!」
「ど、どわぁぁぁ~っ!?」
アントラーの「磁力怪獣」たる所以、七色の磁力光線!
その威力に景気を狂わされ、なすすべなく墜落していく戦闘機。
みくるん「ああっ、そんな!?」
ビーコン「カラフルでポップなのに、えげつない攻撃っスねぇ!」
ながもん「綺麗な……花には……とげが、ある」
アントラーⅡ「ギギィ~、どうだ俺の強さは!」」
勢いに乗り、大暴れするアントラーⅡ。
凄まじい破壊のパワーが、街を炎に包んでいく!
ビーコン「こ、こりゃ色々とシャレんなってないっスよ!」
落合さん「このままでは、冗談抜きで千歳の大ピンチですわ!」
ピグモン「はわわわ……宙マン、宙マン、何とかしてなの~」
宙マン「(頷き)おのれ、もう許さんぞ!
宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、アントラーⅡの前に舞い降りる!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
平和を乱す無法者には、うんとキツめにお灸を据えてやる!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「いよっしゃ! アニキの十八番が出たっスよ!」
落合さん「ああ、やはり素敵ですわ、お殿様っ!(うっとり)」
ピグモン「宙マン、よろしくおねがいなの~!」
アントラーⅡ「ギギィ~っ、そっちから出てくるとは好都合だぜ。
ウチの一族のモンが、お前から受けてきた屈辱……
今日この場で、俺のこの手で叩き返せるんだからなァ!」
宙マン「残念ながら……大外れだよ、その思惑は!」
ファイティングポーズを取り、敢然と身構える宙マン。
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトルの幕開けだ!
アントラーⅡ「ギギィ~っ! 行くぞ、宙マン!」
宙マン「さぁ来い、アントラー!」
激突、宙マン対アントラーⅡ!
落合さんたちが見守る中、ダイナミックに展開される巨大戦。
宙マンを押さえこみ、そのまま息の根を止めんと……
開閉を繰り返しながら、唸りをあげるアントラーⅡの大顎!
ぐわっと左右から、大顎が宙マンを挟みこみにかかる。
危ないところで宙マンも、その一撃を受け止めるが……
怪獣はそのまま、勢いに乗ってぐいぐい押しまくってくる。
アントラーⅡ「宙マン、お前の胴体をちょん切ってやる!」
宙マン「なんの、そうはいくか!」
アントラーⅡの攻勢時に生じた、一瞬の隙を逃すことなく……
宙マンの鋭い蹴りが、怪獣めがけて正確にヒット!
これにはたまらず、アントラーⅡもズズッと後退したぞ。
宙マン「どうだ、参ったか!」
アントラーⅡ「ギギ~ッ、参ってたまるか……これでもくらえっ!」
宙マンの足元に炸裂する、虹色の磁力光線!
ただ単に機械の計器を狂わせ、金属を引き寄せるだけでなく……
威力の調節によって、それは恐るべき破壊光線ともなるのだ。
グワーン! ズガガガガーンっ!
「う、うわぁぁぁぁ……っ!!」
みくるん「ああっ、宙マンさんが!」
ビーコン「って、その一言で納得できるもんでもないっスよ!」
落合さん「そうですとも、ここでお殿様が倒れてしまわれては……
それこそ本当に、千歳の最期ですわ!」
ピグモン「はわわわ……宙マン、まけないでなの~!」
宙マン「(苦悶)うう……うっ……!」
アントラーⅡ「ギギ~ッ、宙マン、次で息の根を止めてやるぜェ!」
「いいや、まだまだ……やられは、しないッ!」
アントラーⅡ「死ねィ、宙マン!」
アントラーⅡが放つ磁力光線。
その虹色の一閃を、宙マンは大ジャンプでかわして大空へ!
アントラーⅡ「(驚き)ぎ、ギギギッ!?」
宙マン「くらえ――宙マン・閃光波!」
ピッキュイィィーン!
高らかな音とともに、宙マンの手にストロボ状の発光が生じ……
次の瞬間、アントラーⅡのボディで激しい爆発が起こる。
宙マン「――どうだッ!」
アントラーⅡ「ギひィィィッ、こ、こりゃたまらん~っ!」
閃光波の連続攻撃に、アントラーⅡがたまらず倒れたところへ――
宙マン「とどめだ!
宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、アントラーⅡを直撃!!
アントラーⅡ「ぎ、ギギギっ……や、やられたぁぁ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
ピグモン「はうはう~、やったのやったの、宙マンの勝ちなの~!
落合さん「流石はお殿様、何て素晴らしいんでしょう!」
ながもん「さすが、宙マン……任せて、安心」
みくるん「よかった、ホントによかったですぅ!」
ビーコン「いえっふ~、アニキ、ありがとやんス~っ!」
イフ「うぐぐっ! おのれ、またしても宙マンめが!
だが覚えていろよ、このワシの目の黒い……もとい、赤いうちは……
怪獣軍団は不滅だ、次は必ずやってやるからな!」
……などと言う、怪獣魔王のいつもの負け惜しみはさて置いて。
我らが宙マンの活躍で、大陥没を引き起こした怪獣アントラーⅡは
見事に撃退され、今日も平和は守られたのであった。
落合さん「改めまして……どうもお疲れ様でした、お殿様!」
みくるん「平和が戻ったのも、宙マンさんのおかげですぅ!」
ながもん「我がまち、千歳の……守り神」
ピグモン「宙マン、ほんとにありがとなの~♪」
宙マン「いやぁ、なんの、なんの!」」
落合さん「お殿様のおかげで、一件落着はしましたけれど……
本当にもう、蟻地獄なんて懲り懲りですわねぇ(苦笑)」
ビーコン「や、そんな悪いもんでもないスよ、蟻地獄!」
落合さん「へ?……何を仰いますの、やぶから棒に」
ビーコン「己の心と書いて、忌まわしいと読むとか読まないとか。
男と女、求め合うお互いが生み出す「愛」の蟻地獄……
オイラと一緒に堕ちてくなら、落合さんも本望っしょ!?」
む ぎ ゅ っ
(ビーコンが、落合さんの腰を抱いた音)
落合さん「(驚き)!?」
ビーコン「んー、アレ?
こないだと感触が違うっスねぇ、さてはまた太ったんじゃ……」
げ し っ !
落合さん「ねーいっ、全く、このエロ怪獣!
二重にも三重にも、仰ることと行為が失礼すぎですっ!!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、つい口が滑っちまったっスぅぅ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
命の限り、体の限り……
守り抜きます、みんなの笑顔。
宙マン、次回もばっちり頼んだぞ!