「空の玄関口」である新千歳空港に対しての、「海の玄関口」……
北海道を代表する、港湾・工業都市のひとつ。
『宙マン』シリーズの舞台・千歳市の“おとなりさん”。
各種輸送船やフェリー等が数多く発着し、ホッキ漁をはじめとした
その地域条件ゆえに、大海原を根城としている海棲怪獣にとっては
千歳襲撃に際しての絶好の上陸ポイントでもあった。
と、それはひとまずさて置いて――
こんち、毎度お馴染みの宙マンファミリー。
家族揃って、この苫小牧まで遊びにやって来ていたのであった。
ピグモン「はうはう~、苫小牧にとうちゃく~、なの~!」
落合さん「歩いていると、潮の香りが仄かに漂ってきて……」
ビーコン「何かこう……いかにも港町、って感じっスよねぇ」
宙マン「あぁ、山あいの千歳じゃ味わえない情緒だね!」
宙マン「そんな海沿いの街に、こうして遊びにきたからには……
千歳じゃ味わえない、苫小牧ならではの旨いものっていうのも
しっかり満喫したいもんだよ」
落合さん「となると……やっぱり、海鮮ですかしら?」
落合さん「海沿いの街と言えば、美味しいのはやっぱり海のもの。
いささか安直だと言われてしまえばそれまでですけど……」
ビーコン「いやいや~、落合さん、結局はそこに落ちつくんスよ!」
ビーコン「丼飯の上を彩った、バラエティ豊かな生魚の切り身……
そこにワサビ醤油をかけて、ガーッと一気にかっこむ!
っかー、旨い! っかー、幸せっス!」
落合さん「えぇ、そうですわよね、そうですとも!」
宙マン「最近は、何かと気が滅入るニュースが続いてるだけに……
せめて個人レベルにおいては、思い切り旨いものを食べて
うんと元気をつけておかなくっちゃね!」
落合さん「ごもっともですわ、お殿様」
ビーコン「いえっふ~、オイラも異議なしっスよ、アニキ!」
ピグモン「よ~し、そんじゃ、まずはご飯食べにレッツ・ゴーなの~」
……と、宙マンたちが勇んで出かけようとしたその時!
ぎゃあ! ぎゃあ!
さながら飢えた嬰児のように、けたたましい啼き声をあげて……
港に集まっていたカモメたちが、一斉に空高く飛び立つ。
落合さん「何だか、やけにカモメが騒がしいですわねぇ。
……あら、どうしましたの? ピグモンちゃん」
ピグモン「……なんか、やな感じがするの。
背中がぞわぞわっとして、おっかないの……!」
落合さん「えっ!?」
ピグモンが指差した方向……
苫小牧港を間近に望む海面に生じた、不気味な白い航跡。
それこそは、怪獣軍団から送りこまれた新たなる使者が
海を泳いでやってきた証だ――
今、ブクブクと海面を異様に泡立たせて現れるのは!?
「びゃるるるぅぅ~んっ!!」
ピグモン「ああっ、やっぱり怪獣だったの!」
落合さん「……ウッ、何でしょう、この臭い!?」
ビーコン「腐った雑巾みてーな、ドブ板の裏側みてーな……」
宙マン「……そうだ、これはヘドロの臭いだよ!」
「びゃるるる……そして俺はヘドロ怪獣・ザザーン様だぁ!
偉大なる怪獣魔王・イフ様の命を受け……
この北海道を破壊し尽くすために、海からやってきたァ!」
ザザーン「この俺が本気になったら、マジで只じゃ済まねぇぞォ。
もう“何にもできない おひとよし”とは言わせねぇ!」
落合さん「へ?……あの、何のお話でしょう?」
ザザーン「ゴホン……あぁ、何でもない、こっちの話だよ(赤面)」
ザザーン「とにかく……まぁ、アレだよアレ。
とにかく、いつもみたいにやるんで、よろしくねぇ!」
ビーコン「どひ~っ、めっちゃ雑にまとめやがったっス~!」
ピグモン「えう~、全然よろしくしたくないの~」
宙マン「……うぬっ!」
イフ「さぁ、思い切り暴れろ、破壊するのだザザーン!
軍団の怪獣たちも、大いなる期待をこめて見守っておるぞ!」
ザザーン「びゃるる~ん、お任せ下さいませ、魔王様~!」
悪の命令を受け、猛然と進撃開始するザザーン!
迫り来る巨体を前に、人々は逃げ惑うより他に術がない。
ビーコン「どひ~っ、せっかく息抜きに来たってのに~!」
落合さん「苫小牧に着いた早々、これですものねぇ!?」
ピグモン「はわわ、とにかく逃げなきゃなの~!」
おお……苫小牧市、早くも絶体絶命の大ピンチ。
ヘドロ怪獣の暴虐、断じて許すまじ!
北海道の平和を守るべく、航空防衛隊が直ちに出撃した。
ビーコン「おおっ、今日も今日とて航空防衛隊っス!」
落合さん「あぁ、いいところへ来て下さいました!」
ピグモン「はうはう~、おじさんたち、しっかりなの~!」
「ようし……全機、一斉攻撃開始っ!」
攻撃、攻撃、また攻撃!
怪獣めがけ、嵐の激しさで叩きこまれる一斉砲火。
……だが、それもザザーンには全く通用しない!
「なっ……まさか!
効いてないって言うのか、これだけのミサイルの直撃が!」
ビーコン「えーと、それって毎度のことなんじゃ……?(汗)」
落合さん「(慌てて)……シーッ、お声が大きいですわよ、ビーコンさんっ!」
……などと、やっている間にも。
怪獣ザザーン、持ち前の怪力にものを言わせての大暴れ!
ザザーン「びゃるるる、どんなもんだぁ~!」
落合さん「あらあらまぁまぁ、どうしましょう!?」
ビーコン「このままじゃ、息抜きどころか……
苫小牧の街そのものが、地図から消えちまうっスよ!」
ピグモン「はわわ……宙マン、宙マン、なんとかしてなの~」
宙マン「ああ、やるとも! 宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、ザザーンの前へと舞い降りる!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
海の澱みの大悪党め、これ以上は好きにはさせんぞ!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「うおお! 出たっス、アニキの十八番!」
落合さん「お殿様、今日もますます素敵です……♪(うっとり)」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
ザザーン「びゃるる~んっ、出たな、宙マン!」
宙マン「ああ、出てきたともさ。
こんな悪事を見過ごせるほど「枯れて」はいないものでね!」
全身にみなぎる怒りを力に変え……
ファイティングポーズをとって、敢然と身構える宙マン。
ザザーン「びゃるる~っ、いい度胸だァ。
その減らず口ごと、ヘドロの汚濁に引きずりこんでやるぞ!」
宙マン「いいや、正義の光でお前を天日干しだ!」
真っ向激突、宙マン対ザザーン!
人々が見守る中、今日もまたまたスーパーバトルの幕が開く。
全身の海藻を蠢かせ、パンチ攻撃をしかけてくるザザーン。
単純だが、それだけに当たればダメージも大きい怪力殴打だ。
宙マン「(ニヤリ)……だが、当たらなければどうと言うことはない!」
ザザーン「……ぐぬっ、どっかで聞いたような台詞をっ!」
宙マンの挑発にカッとなり、更なる連打を繰り出すザザーン。
……そこに生じた相手の隙を、見逃すような宙マンではない。
宙マン「そぉりゃッ!」
おもむろに、ザザーンの足元で回転し……
そのバネと勢いに乗せ、両足で脳天に見舞うカンガルーキック!
意表を突いたこの攻撃に、ザザーンもたまらずよろめいた。
ザザーン「の、のわァァッ……!」
宙マン「どうだザザーン、これが正義の威力だ!」
ザザーン「びゃるるる、だ、だから何だってんだ……
悪の威力も、まだまだここからだぜ~っ! それっ!」
ザザーンの体内で、何百倍にもその毒性が濃縮されたヘドロガス。
口から吐き出されたどす黒い気体が、宙マンを包みこんでいく!
宙マン「ぐ、フッ……ゲホ、ゴホ……っ!」
ズ、ズーンッ!
ビーコン「どひ~っ……あ、アニキっ!?」
落合さん「いけませんわ、このままではお殿様が……!」
ピグモン「はわわ、宙マン、まけないでなの~っ!」
イフ「わはは……いいぞ、ザザーンよ、その調子だ!
お前のヘドロガスで、宙マンの胃の腑を腐らせてしまえ……
そしてお前の怪力で、奴めの五体を引きちぎってしまえ!」
宙マン「(苦悶)うう……うっ……!」
ザザーン「びゃるるる~、潔く死んでもらうぜ、宙マン!」
「なんの……負けて……たまるかッ……!
怒れ稲妻! 宙マン・ボルトサンダー!!」
ピカッ、ゴロゴロドドーンっ!
宙マンの気合とともに、念動力で発生させる正義の稲妻!
まばゆい閃光と共に、ザザーンの体を直撃したボルトサンダーが
怪獣の全身を猛然と駆け巡り、容赦なく痛めつけて――
ザザーン「ししししっ……しびっ、しびっ、しびびび~っ!」
宙マン「ようしっ、今だ!
宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、ザザーンを直撃!!
ザザーン「びゃるるる~、悔しくてモウ……泣きそぉぉ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
ピグモン「はうはう~、やったのやったの、宙マンの勝ちなの~!
落合さん「えぇ、こうでなくてはいけませんわねぇ!」
ビーコン「いえっふ~、宙マンのアニキ、流石っス!」
イフ「うぐぐっ! おのれ、おのれ、またしても!
だが、これしきで勝った気になるでないぞ――
次なる使者が、必ずお前の息の根を止めてくれるわ!」
……などと言う、怪獣魔王のいつもの負け惜しみはさて置いて。
我らが宙マンの活躍により、ヘドロ怪獣ザザーンは撃退され……
怪獣軍団の謀略は、今度も未然に防がれた。
ピグモン「はうはう~、宙マン、お疲れ様なの~」
宙マン「やぁやぁ、お待たせお待たせ!
怪獣騒ぎの方も片付いて、一件落着したことだし……」
落合さん「落ち着いたところで、改めて。
苫小牧ならではの美味しいもの、頂きに参りましょう!」
ビーコン「うっひょ~、オイラもう、お腹ペコペコっスよ~!」
ピグモン「はうはう~、ピグちゃんもなの~!」
宙マン「苫小牧と言えば港町、港町と言えば海鮮丼!
くぅぅ~っ、お腹が弾けるまで食べちゃうぞ~!」
落合さん「特にお殿様は、あれだけ激しく戦われた後ですものねぇ」
ピグモン「うん、宙マンにはそのケンリがあるの~」
ビーコン「ヒヒヒ、そしてそして……
メインディッシュの後は、スイーツも味わいたいっスねぇ」
落合さん「えぇ、えぇ、それもまたようございますわねぇ!
苫小牧と言えば、美味しいお菓子の名物も豊富ですし……」
ビーコン「や、それも確かに魅力的なんスけどね。
それよりも甘いもん、もっと身近にあるじゃないっスか」
落合さん「へ? そんなもの、どこにございますの?」
ビーコン「ほ~れほれ! ここっスよ、ココ、ココ。
オイラのためだけの、あったか・柔らかミルク饅~☆」
むにゅん、ふにふにっ
落合さん「(赤面)……きゃ、きゃああああっ!?」
げ し っ !
落合さん「ねーいっ! セクハラには厳罰あるのみですっ!!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、この一撃は超激辛っスぅぅ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
来るなら来てみろ、怪獣軍団!
北海道には、宙マンがいるんだぞ。
……さァて、次回はどうなるかな?