平和を愛する千歳市民の一人、正義の味方・宙マンの活躍によって
北海道千歳市は、今日ものどかな平和の中にあった。
だが、決して油断はできない。
暗黒星雲に巣食う怪獣軍団は、次にいかなる凶悪怪獣を送りこみ
再びどんな侵略計画を実行に移すか、誰にも分からないのだから。
「侵略者」は……あなたの、隣にいる。
おお、今また……
新たなる侵略の魔手が、我々の平和に牙を剥こうとしている！
「ぬぅぅぅ……はァァーッ！！」
凄まじい裂帛の気合とともに、みるみる巨大化するその体。
その好戦的な性格で悪名を馳せた、名にしおう宇宙の暴れ者……
もちろん彼もまた、怪獣軍団の一員だ！
みくるん「ああっ、また何か出てきたですぅ！」
熊澤夫人「ちょ、ちょっとお父ちゃん、アレ……！？」
熊澤さん「怪獣……いやいや、ありゃ宇宙人かな！？」
ながもん「（頷き）サーベル暴君……マグマ、星人」
マグマ星人「ハッハッハァー、よくご存じだ！」
一瞬の閃光とともに、両腕に戦闘アタッチメントを装着。
彼らマグマ星人が「サーベル暴君」の異名をとる所以である。
マグマ星人「さーて、いっちょ……おっぱじめるか！」
みくるん「な、何を始めるんですかぁっ！？（汗）」
ながもん「（無表情に）たぶん……知らない方が、幸せな……こと」
イフ「わははは！ よしよし、ワシが許すぞマグマ星人。
今日は思い切り暴れまくり、力を存分に奮うがよい！」
マグマ星人「うぉぉ～、やらせてもらいますぜ、魔王様ァ！」
怪獣魔王のお墨付きを得て、張り切って進撃開始！
迫るマグマ星人の巨体を前に、なすすべもなく逃げ惑う人々。
熊澤夫人「あらまぁ、大変なことになっちゃったわよ～！？」
みくるん「せっかくの日曜日が、これじゃ台無しですぅ！（涙目）」
ながもん「（一方を見やり）おおっ。……あれは」
熊澤さん「よかった、航空防衛隊が来てくれたぞぉ！」
「ようし……全機、一斉攻撃開始っ！」
戦闘機隊から、嵐のように叩きこまれるロケット弾！
だが、それさえも、マグマ星人の凶暴な猛りを鎮められない。
マグマ星人「そんな攻撃……笑わせるなっ！」
「……ど、どわぁぁぁ～っ！？」
両腕のサーベルをクロスさせ、マグマ星人が放つ破壊光線！
その鋭い一閃により、戦闘機隊は次々に撃墜されていく。
「あー、こらこら……ちょ～っと、待ったッ！」
危機迫る状況の中、マグマ星人の凶行を止めに入ったのは……
もはやお馴染みの宙マンと、その「家族」たちであった。
落合さん「毎度ながら……本当に困った方たちですわねぇ！」
ピグモン「えう～、乱暴するのはよくないの～」
ビーコン「とにかくアレっス、いったん落ち着くっス！」
宙マン「（頷き）そして、その上で……
そこまでメチャクチャに暴れまくる、納得のいく理由があるなら
是非とも説明してもらいたいものだねぇ！」
マグマ星人「……説明？」
マグマ星人「してもいいが……長くなるぞ？」
ビーコン「えーっと、出来れば要点だけかいつまんで……」
落合さん「的確、かつ簡潔にお願いしたいものですわ」
マグマ星人「判った、それじゃ一番重要なコトだけ言うぞ――」
「……女に、フラれた」
落合さん「……はぁ！？」
ビーコン「な～る、そいつァ納得のいく理由っス！」
落合さん「……ちょ、ビーコンさんっ！（汗）」
宙マン「しかし、そこまで大荒れに荒れるからには……
かなり脈ありと言うか、熱い恋愛だったんだろうねぇ」
マグマ星人「おおっ、判ってくれるかい！？」
マグマ星人「たまたま入った喫茶店のウェイトレスなんだけどな。
店に入って、席に着いた俺に向かって――」
「いらっしゃいませ～。
お客様、ご注文はお決まりでしょうか？」
マグマ星人「……と、こう声をかけてきたわけよ！
あぁ、これはもう俺様に気がある証拠に違いない――
……その筈だったのに、それなのにッ！！」
ビーコン「（ドタこけ）ああ、ダメっス……
この宇宙人（ひと）、色んな意味でダメダメっス～！（汗）」
落合さん「（呆れ）……脳みそまで海綿体ですか、貴方っ！」
マグマ星人「ねーいっ、うるへェ、うるへェッ！！」
マグマ星人、完全なる逆ギレ！
両手のサーベルを振り回し、当たるを幸い大暴れ。
マグマ星人「ぬおぉぉっ、この俺の純情ブロークン・ハートはなぁ……
千歳の街がブロークンするまで、どうにも止まらないぜ！」
ビーコン「どひ～っ、アイツ、あんなこと言ってるっスよぉ！」
落合さん「全くもって、堪ったものじゃございませんわ！（汗）」
ピグモン「はわわ……宙マン、宙マン、なんとかしてなの～」
宙マン「（頷き）おのれ、もう許さんぞ！
宙マン・ファイト・ゴー！！」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、マグマ星人の前へと舞い降りる！
宙マン「トゥアーっ！ 宙マン、参上！
理不尽な八つ当たりも、そのくらいにしておくがいい！」
ズ、ズーンっ！！
ビーコン「っしゃ！ アニキの十八番っスよ！」
落合さん「ああ、やはり素敵です、お殿様！（うっとり）」
ピグモン「宙マン、よろしくお願いなの～！」
マグマ星人「えぇいっ、どいてろ！ 邪魔をするな！ 宙マン！」
宙マン「いいや、とことん邪魔させてもらうッ！」
マグマ星人の二刀流に対抗し、宙マンもまた抜刀！
黄金に輝くその刃は、もちろん伝説のスーパー剣である。
マグマ星人「うぉぉぉぉっ！ 叩っ斬ってやる！」
激突、宙マン対マグマ星人！
落合さんたちが見守る中、巨大な両者の剣戟が展開されていく。
マグマサーベルと、スーパー剣……
正邪の刃が幾度となく渡り合い、激しいスパークが飛び散る。
マグマサーベルの二刀流で迫る星人！
暴風雨のような激しさで、右から左から繰り出される切っ先に
宙マンも持ち前の剣技で必死に渡り合っていく。
マグマ星人「はははは、そぉれ！ それそれそれっ！」
宙マン「なんの！」
マグマサーベルの突きを、ひらりとジャンプでかわす宙マン。
着地と同時に、繰り出す技は――
宙マン「くらえ！ スーパー剣、スーパースパーク！」
スーパー剣の刃から放たれる正義の光線、スーパースパーク！
だが、その一閃を、これまたジャンプでかわすマグマ星人。
宙マン「（驚き）何っ！？」
マグマ星人「はははは……そぉれ、死ね死ねっ！」
ズガーン！ グワーンッ！
宙マン「（よろめき）くッ！」
マグマ星人「宙マン！ その首もらった、覚悟しろッ！」
上空からの光線で宙マンが怯んだ隙を突き、上空から荒鷲のように
マグマサーベルで斬りかかってくる星人！
辛くもそれを受け止める宙マンだが、その体が大きく後退する。
落合さん「あぁっ、お殿様！」
ビーコン「どひ～っ、アホみたいな理由で暴れてるクセに……
しっかり強かったりするから、いろいろ困りもんっス！」
ピグモン「はわわわ……宙マン、まけないでなの～！」
マグマ星人「はははは……これでとどめだ、宙マン！」
左右のサーベルを交差させ、必殺光線を発射するマグマ星人！
だが、その恐るべき一閃は……スーパー剣の刃で受け止められ、
見事に弾き飛ばされた！
マグマ星人「（驚愕）な、何だとっ！？」
宙マン「マグマ星人よ、覚悟するのは貴様の方だ！」
「くらえ、一閃！
スーパー剣、スーパークラッシュ！！」
伝説のスーパー剣で、必殺の剣技を炸裂させる宙マン。
悪のサーベル暴君をも、みごと袈裟がけに切り裂くこの威力！
マグマ星人「こ、これは……悔しすぎるぅぅ～っ！」
やったぞ宙マン、大勝利！
イフ「ぐぬぬぬっ……よくも、よくもやってくれたな宙マン！
だが覚えておれよ、今度こそ、今度こそは……！」
落合さん「お見事でした、お殿様！」
ビーコン「や～っぱアニキっスよねぇ、いざって時は！」
ピグモン「はうはう～、宙マン、ありがとうなの～♪」
人々の歓声が、ヒーローの勝利を讃える――
青空の下、すっくと立つ巨体は、どこまでも逞しかった。
と、言うわけで。
今回もまた宙マンの活躍で、荒れに荒れまくっていたマグマ星人は
見事に撃退され、千歳の平和は守り抜かれたのであった。
そして、その夜。
こちらは道内某所の、とある飲み屋街。
どこか懐かしい風景の中に建つ、一件の居酒屋では……。
「あ～、チキショウ……あぁチキショオ……
もうね、今夜は……飲んで酔わなきゃ、やってらんねーよォ！」
いろんなツッコミどころは、ひとまずさて置いて……
敢えてここでは「気持ちは分かる」とだけ、言わせていただいて
今回のエピソードは、ここで幕を下ろすことにしよう。
……深酒は、体に毒だぞ！
