遊びをせんとや生まれけり

全ての「面白がりやさん」へ――千歳より、愛をこめて。

わざわざ食べたい「秘境アワビ」

以前にも何度かお話しております通り、ワタクシことさいとうひとし……

去る10月13日から一泊二日の日程で、道南の方へと小旅行に出かけておりまして。

で。

今回の小旅行で向かった先は、こちら……

渡島総合振興局内・八雲町熊石を流れる「見市(けんいち)川」の流域。

高く聳える山と峠、深い木々に囲まれた、ご覧の通りの秘境であります。

 

そして、そんな秘境の大自然に埋もれるようにしてひっそりと建つのが、

このたびお世話になった「見市温泉旅館」さん。

1868(明治初)年の創業以来

源泉かけ流しの温泉宿としてこの地にあり続ける老舗で、じんわり温まり

心身を癒してくれる天然温泉、外界の絶景を満喫できる露天風呂は特に絶品。

どのく らいの秘境かと申しますと、

現地まで向かう過程でカーラジオの番組も聞こえなくなり、

部屋のテレビもBS放送しか映らない、というぐらいの代物なんですが、

そこがまた良いんですよねーー

 

外界の煩わしさをシャットダウンしたうえで、

のんびり湯治とリラクゼーションに専念できますんで。

で、そんな「見市温泉旅館」さんを選んだ理由の一つであり、

大きな楽しみだったのが、夕飯時に供して下さるアワビ料理のフルコース。

 

さぁ、読者の皆様、どうか覚悟なさって下さいね?

こっからもう、クドいくらいにガッツリと語り倒しますから(爆笑)!!

 

 

八雲町と併合されるより以前、旧熊石町時代からの名物であった地元産のアワビ。

このアワビを、まずはこうして網の上で

踊り焼き」にしちゃおうと言うわけですよ――

火にかけられたアワビの身がウネウネと「踊る」様、

こちらの三枚の写真で何となく雰囲気はお判り頂けますでしょうか?

で、「踊り焼き」が完全に食べ頃になるまでには少し時間がかかるので、

その間に他の料理たちの攻略(笑)を開始。

 

まずはこちら、コリコリとした歯ごたえが楽しいアワビの刺身

舌の上でとろけ、深いコクが広がるアワビの肝と交互に食べることで

旨味の奥行きが更に広がります。

 

続いて、こちらはアワビと海鮮の釜めし

蓋を開けた瞬間、湯気と共にふんわりと立ち上る芳香が

それだけでもう「旨さ」を確信させてくれる本品。

生の状態ではコリコリと固かった(それが魅力でもある)アワビの身が

熱を加えることでふんわり柔らかくなり、心地よい弾力を維持しつつ

さっくりと嚙み切れる食感の変化……

 

そんなアワビから出た旨味は、海老やキノコとともに残らず飯粒の中に吸い込まれ

混然一体の旨味となって口中に広がります。

旅先のお供、しゅわーっと泡の出る喉越し良くし液(笑)を合いの手に、

楽しく美味しく食べ進めます。

天ぷら三種

かぼちゃ、シシトウ、そしてとろりととろける豊かなコクが堪らない鮭の白子!

こちらは調理担当の方から、宿泊者へのサービスとして供してもらった一皿。

行者ニンニクの醤油漬けを香ばしく焼かれた豚肉で巻くようにして食べると、

相乗効果で更に旨味が広がり、後口も爽やかです。

更にこちらは、アワビと野菜の小鍋立て

野菜類とアワビのみの旨味で、他のダシは一切加わっていない

すっきり仕立ての透明なスープ……

にも関わらず、一口すすった瞬間の旨味の豊かさときたら、どうだ!

 

……とかなんとかやっている間に、件の「踊り焼き」が待ってましたの食べ頃に。

熱の通ったアワビの身は心地良い弾力を伴いながら、

すんなりと歯で噛み切れる柔らかさで……

醤油も何もつけずとも、そのまんまで最高に滋味深かった!

 

更に更に、「焼き物」ついででもう一皿……

こちらはバターソースで頂くアワビのステーキ

 

包丁の切れ目が入れられ、香ばしく焼き色のついたアワビは、

さっくりした歯ごたえを保ちつつすんなり噛み切れ、アワビ本来の旨味と

バターのコクがお互いを引き立てあいつつ旨味を膨らませます。

で、このアワビのステーキにおいても、やっぱりアワビの肝が
実にいい仕事ぶりで存在感を発揮してくれてますね。
 
あ、そうそう。

滋味深さと言えば、この小鍋立ての汁もそうであることは
先にお話しした通りですが……これを啜りながらふと、僕のオツムに
ドデピンとグッド・アイディアが(笑)ひらめきまして。

てなわけで釜めしと小鍋立ての残り半分づつは、茶碗の上で両方を合流させ……
別添えのイクラともども、お茶漬け仕立てにする方向でのラストスパート。
 
……ほーら、正解ッ(笑)。

ごく小さな店構えの旅館とは言いながら、
アワビのフルコースにはいささかの手抜きもなく、手抜かりもなし――
 
アワビの中にはこんなにも豊かな旨味の可能性が広がっていたのかと
感服させられつつ、気持ちよくお腹いっぱいにさせてもらえた夕餉時。

ごちそうさまでした、本当に美味しかったです。