地球から遠く離れた大宇宙、遥かなる暗黒星雲。
その奥深くで、地球征服を企む巨大な悪の一味が蠢いている。
彼ら怪獣軍団の辞書に「懲りる」と言う文字は無い。
はたしてそれが単なる落丁版か、故意に消したものかは定かではないが……
そんなわけで今日もまた、暗黒星雲から恐怖の魔手が地球に迫るのだ。
イフ「さぁ、いよいよお前の出番だ、我が怪獣軍団の誇る精鋭よ!
持てる力を存分に奮い、今度こそ地球をワシら怪獣軍団の物とするのだ。
行け! 行け! 行けーぃっ!!」
そう!
このとき既に……
怪獣軍団の使者は、北海道千歳市への潜入を果たしていたのだ。
そうとは知らず、平和のひとときを享受する千歳市民。
が、そんな穏やかな日常を嘲笑うかのように、突如として!
ゴゴゴゴ……ズゴゴゴゴゴッ!
バキバキバキッ! ガラガラガラッ!
おお! 見よ! 驚愕せよ!
突如、何の前触れもなく、不気味な震動とともに舗装道路へ荒々しい亀裂が走り
高層ビルが次から次へと、まるで蟻地獄に呑まれていくかのように轟音を立てて
地中へと沈み、崩壊していく、この恐るべき光景!
突如として起こったこの異変に、千歳の街は当然のごとく大混乱。
そして今……
この危機をヒーローに伝えるべく、みくるん・ながもんのコロポックル姉妹が
息せき切って「宙マンハウス」に駆けこんできたところであった。
みくるん「はわわわ、大変ですぅ……ちゅ、宙マンさん、宙マンさ~んっ!」
宙マン「ああ、私も大まかなところは把握してるよ。
……それにしても、これは一体どうしたことだろうねぇ!?」
ながもん「ビルが……どんどん……沈んでく、なんて」
ピグモン「はわわわ、絶対フツーじゃありえないの~」
落合さん「ですが……
そんな普通ではないことが、普通に起こっていると言うことは……」
ビーコン「こいつァ、またまた……怪獣軍団の仕業っスかぁ!?」
「ヒュギョギョギョ……その通りッ!」
市内の中心部が激しく揺さぶられ、大地がメキメキ音を立てて割れ裂ける。
大量の土砂を天高く撒き上げ、舗装道路をもやすやすと引き裂いて
地の底から今また新たに、その姿を現わさんとしている邪悪な影。
……果たして、それは!?
「ヒュギョギョ~っ!!」
おお、見よ! 驚愕せよ!
不気味な唸り声とともに、地上へその姿を現わした異形の巨体。
怪獣軍団の一員、紀州・根来谷(和歌山県)出身の大蟻怪獣ガバリだ!
みくるん「ああっ、大きな蟻のお化けですぅ!」
ながもん「あれは……大蟻怪獣、ガバリ」
ピグモン「はわわ、名前はともかく、おっかない顔なの~!」
落合さん「そのガバリさんが、今日はまたどんなご用向きですの!?」
宙マン「行楽シーズンを満喫したいなら、ちゃんとマナーを守りたまえっ!」
ビーコン「そーっス、そーっス、割り込み・乱入、許すまじっス!」
ガバリ「ヒュギョギョ……アホか、てめぇら!?」
ガバリ「怪獣軍団の怪獣が、この図体で出てくる理由ったらよ……
そりゃもう、手あたり次第の大暴れに決まってるだろうがよ!?」
ビーコン「あー、やっぱり……っスよねぇ……?(汗)」
みくるん「そうなのかな、とは、うすうす思ってたんですけどぉ……(汗)」
イフ「わははは、行け行け! 思い切り暴れろガバリ!
千歳市のビルも、家も、手当たり次第に叩き壊して……
怠惰な平和を貪る人間どもに、恐怖を教えてやるがよい!」
ガバリ「ヒュギョギョ~! 合点承知でさぁ、魔王様!」
ビーコン「どひ~っ、結局今回もこういう流れになっちゃうんスね~!?(汗)」
みくるん「ほにゃっ、そ、それじゃ私たちもいつも通りに……」
落合さん「例によって例のごとく、逃げましょうっ!(汗)」
怪獣魔王の命を受け、進撃開始するガバリ!
迫り来るその巨体を前に、悲鳴をあげて逃げまどう人々。
ガバリ「ヒュギョギョギョ、これでもくらえ~!」
大きく裂けた口から、勢いよく霧状の液体を吐き出すガバリ。
高層ビルをも一瞬で溶解してしまう、恐るべき高濃度の蟻酸である。
宙マン「……そうか、あの力で大陥没を引き起こしていたんだな!」
危うし千歳、危うし北海道!
だが、こんな緊急事態を、航空防衛隊は座して見ているだけではない。
直ちに空の精鋭たちが、最新鋭の戦闘機でスクランブル!
ピグモン「あっ、防衛隊のおじさんたちなの!」
落合さん「ほんと、今回こそは……お願いしますわね!?」
ビーコン「おお~、今回はなんか期待できそうな雰囲気っス!」
ながもん「(拳を握り)……ファイツっ」
対怪獣専用に導入された、航空防衛隊の最新型戦闘機。
高火力のロケット弾が、矢継ぎ早やに叩きこまれる――
果たして今回こそは、怪獣の猛威を阻止できるであろうか!?
ガバリ「ヒュギョギョ、こそばゆいわッ!」
「う、うわぁぁぁぁ~っ!?」
……阻止、できませんでした。
みくるん「……って、ちょ、ナレーターさぁん!?(涙目)」
ながもん「そんな、サラッと……言われても……困る」
宙マン「ううむっ、何て怖ろしい怪獣なんだ!」
煙の尾を引いて墜落し、大爆発を起こす戦闘機!
蟻酸を浴びせかけられて、みるみるうちに泡を吹き、溶け崩れていくビル群!
人々の混乱を尻目に、ガバリの傍若無人は早くもここに極まれりの感がある。
ビーコン「どひ~っ、これじゃまったり昼飯どころじゃないっスよ!」
落合さん「……ねーいっ、全くやって下さいますわねぇ!」
ガバリ「ヒュギョ~、我ながらいいペースだ、このままガンガンやったるぜ~!」
宙マン「(昂然と顔を上げ)おのれ、もう許さんぞ!
宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、荒れ狂うガバリの前に舞い降りる!
宙マン「トゥアーッ! 宙マン、参上!
怪獣軍団の小悪党、度が過ぎる悪ふざけはそこまでだ!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「いえっふ~、出たっス、アニキの十八番!」
落合さん「ああ、やっぱり頼れるのはお殿様ですわねぇ!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
ガバリ「ヒュギョギョ、死にに出てきたか宙マン!」
宙マン「いいや、お前を懲らしめに来たのさ!」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
今日もまたまた、空前絶後のビッグファイトの幕開けだ。
激突、宙マン対ガバリ!
落合さんたちがハラハラと見守る中、死闘が展開される。
ガバリ「ヒュギョギョギョッ! こんにゃろ、こんにゃろめっ!」
宙マン「なんのっ、負けるか!」
ガバリの爪の一撃を、クロスガード態勢で受け止める宙マン。
だが、敵の猛攻は、怒涛の勢いで次から次へ叩きつけられてくる――
持ち前のパワーとせっかちな性分の相乗効果が生む、遮二無二な猛攻には
さしもの宙マンも、じりじりと後退を余儀なくされてしまう。
宙マン「くっ……なかなかやるな!」
ガバリ「ヒュギョギョ、相手を褒めてる余裕なんてあるのかァ!?」
宙マンめがけて浴びせかけられる、ガバリの蟻酸攻撃!
強力な溶解液が、容赦なく宙マンの全身を覆い、侵していく。
みくるん「ああっ……ちゅ、宙マンさんが!」
ながもん「あの、蟻酸は……かなり、ヤバし」
ビーコン「そんな代物を、あんな一気に浴びせられた日にゃ……」
落合さん「いくらお殿様でも、只では済みませんわ!」
ピグモン「はわわわ……宙マン、まけないでなの~!」
宙マン「(苦悶)うう……う……っ!」
ガバリ「ヒュギョギョ、いいザマだぜ宙マン。
適度に溶けて柔らかくなったトコロを、頭からムシャムシャ食ってやる!」
宙マンにかぶりつかんものと、涎を垂らして迫り来るガバリ!
が、このままみすみす「食われる」ような宙マンではない――
「ぬうぅぅぅ……トゥアーッ!!」
宙マン、気力を振り絞ってパワー全開!
気合一閃、全身にまとわりつく蟻酸の泡を吹っ飛ばしてしまう。
ガバリ「(驚き)ひゅ、ヒュギョギョッ!?」
宙マン「見たかガバリ! これが正義の力だ!」
ながもん「(頷き)……よしゃっ」
ビーコン「いえっふ~、アニキ! 今がチャンスっスよ~!」
ガバリ「ち、チクショウ! そうはさせるかぁっ!」
再び口から蟻酸を吐き出すガバリ。
が、宙マンは、その奔流をひらりとかわして大ジャンプ!
宙マン「正義の刃、受けてみろ!
秘剣・スーパー滝落とし!!」
ザシュウッ!!
スーパー剣を抜き放ち、刀身にエネルギーを集中させ……
豪快な空中回転とともに、真っ向から振り降ろされる光の刃!
宙マンの「滝落とし」が、ガバリの巨体を唐竹割りに切り裂いた。
ガバリ「ひゅ、ヒュギョぉっ……
ああ、怪獣人生に……涙アリぃぃ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
みくるん「わぁっ、宙マンさんの勝ちですぅ!」
ながもん「おお、この……すばらしき……安心感」
ビーコン「やっぱねぇ、こうじゃなきゃっスよねぇ、このシリーズは!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、ありがとうなの~♪」
人々の笑顔と歓声が、宙マンの勝利を讃える――
千歳の街に立ちつくす巨体は、どこまでも雄々しく、逞しかった。
イフ「うぐぐぐっ……おのれ、おのれ、またしても宙マンめが!!
だが、この次こそ必ず、ワシらの恐ろしさを思い知らせてやる!」
……などと言う、怪獣魔王の負け惜しみはさて置いて。
かくして我らが宙マンの活躍により、大蟻怪獣ガバリは撃退され
怪獣軍団の地球征服の野望は打ち砕かれたのであった。
落合さん「改めまして……お疲れ様でした、お殿様!」
みくるん「このまま街が、地面の底に沈んじゃうんじゃないかって
正直、ヒヤヒヤもしましたけどぉ……」
ながもん「でも、それももう……心配ない」
宙マン「いやいや全く、危ないところだったけどねぇ。
私がどうにか勝てたのは、みんなが応援してくれたおかげだよ!」
ピグモン「はうはう~、ピグちゃんたちがついてるの~♪」
ビーコン「ヒヒヒ、そういう平和な日常があるからこそ……
オイラたちも安心して、ふかふかのベッドに「沈める」ってもんスよ。
……ね、落合さん?」
落合さん(……ぶ ち っ !)」
げ し っ !
落合さん「ねーいっ、そこで私に同意を求めるんじゃありませんッ!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、あーもう、落合さんのイケズぅぅ~っ」
宙マン「はっはっはっはっ」
おなじみ・宙マンファミリーの行くところ……
どこにも優しく、楽しい風が吹く。
さぁて、次はどんな活躍を見せてくれるかな?