北海道の空の玄関口、千歳市……
この平和で自然豊かな街は、地球征服を狙う怪獣軍団の魔手から
常に狙われ続けている。
今日もまた、千歳への侵入を果たした悪の使者。
恐るべき悪の尖兵は、今まさに行動を開始しようとしていた。
おお、君よ!
あの建物の上に立つ、西洋甲冑を思わせる怪人の姿を見るがいい!
そう、あれこそは怪獣軍団の新たなる悪の使者。
かつて同族が、地球防衛軍極東基地の爆破を企てたボーグ星人である。
西洋甲冑を彷彿させる無骨なスタイルと、無表情なマスク。
その表面からだけでは、彼の内面を窺い知ることはできないが……
だが、この時、ボーグ星人は静かに、かつ激しく怒っていた。
「うううっ……ぐ、うぬぬぬぬっ……!!」
おお、今まさに――
突き上げる怒りのまま、悪の甲冑星人が行動を起こそうとしている!
と、ここでいったん場面は変わって。
ボーグ星人の魔手が迫っているとは露知らず、平和で呑気な千歳市。
ちょうどこの中心部を、落合さんとビーコンが訪れていた。
落合さん「全くもう、ビーコンさんったら……
市役所へ書類提出を済ませるだけなんですから、何もアナタが
一緒についてくることなんてないんですのよ!?」
ビーコン「ヒヒヒ、またまたぁ、そんなコト言ってぇ……
落合さんのことだから、街まで出てきたついでに、自分だけこっそり
何か旨いもん食ってくる気マンマンなんじゃないっスかぁ!?」
落合さん「う……ぐっ(詰まり)」
ビーコン「ほ~ら、ねっ。図星だぁ!」
落合さん「ぐぬぬっ……な、なにが望みです、ビーコンさん」
ビーコン「ヒヒヒ、チャーシューメン一杯おごりで手ェ打つっスよ~☆」
落合さん「ンもうっ……
あなたが一緒だと、色々高くついて困りますわねぇ!(汗)」
……と、そんなやりとりのさなか、突如!
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラっ!
ビーコン「お、おろろろろっ!?」
落合さん「こ、これは……一体!?」
だが、ここまでお読み下さった読者諸氏は、既にお気づきであろう。
まさにこれこそ、ボーグ星人が巨大化を遂げた際の衝撃なのだ!
「うわはははは……!!」
落合さん「あらあらまぁまぁ、アレは確か……」
ビーコン「甲冑星人・ボーグ星人っス!」
「うわははは、いかにも私はボーグ星人!
私は今から大暴れをして、この千歳を徹底的に破壊する――
その理由に関しては、本エピソードの冒頭部をご参照頂きたいっ!」
落合さん「いえ、ご丁寧に仰っていただけるのは結構なのですけど……
要はアナタ、単なる八つ当たりじゃございませんの!(汗)」
ビーコン「しかも、アイスのくじが外れたからって……!」
落合さん「冬場のアイス云々はさておき、あまりにも理不尽でしょう!」
ボーグ星人「うわはは、何とでも言ってくれたまえ!
どんな些細なことでも怒りに変え、破壊のための力に変える……
そんなしたたかさこそ、怪獣軍団の怪獣軍団たる所以であるよ!」
ビーコン「どひ~っ、しかも思いっきり開き直ってるっス!(汗)」
イフ「わははは……それでよい、それでよいのだボーグ星人よ!
地球侵略の手始めに、千歳の街を徹底破壊せよ――
成功の暁には、アイスが何万本も買える特別賞与をとらすぞ!」
ボーグ星人「うわはは、魔王様、有難き幸せ!」
怪獣魔王の命を受け、進撃開始するボーグ星人!
迫り来るその巨体を前に、悲鳴をあげて散り散りに逃げ惑う人々。
千歳の平和、今まさに風雲急を告げる!
だが、その一大事を、ただ黙って見ているような防衛隊ではない――
落合さん「ああっ、いつもながら良いタイミングですこと!」
ビーコン「いえっふ~、頼んだっスよ~、航空防衛隊!」
「ようし――全機、攻撃開始っ!」
甲冑星人めがけて、雨あられと叩きこまれるロケット弾!
だが、戦闘機隊のそんな猛攻にも、宇宙人の巨体はびくともしない。
ボーグ星人「うわはは……そんな攻撃、こそばゆいだけですぞ!」
「う、うわぁぁぁぁ……っ!?」
星人の額から放たれる破壊光線・ボーグショット!
その掃射を受けて、戦闘機隊は次々に撃ち落とされて行き……
平和な千歳の街は火の海に呑まれ、今やその運命は風前の灯であった。
と、そこへやって来たのは……。
宙マン「お~い、落合さん、ビーコぉ~ン!」
ピグモン「あんまり帰りが遅いから、心配になって来ちゃったの~」
ビーコン「ああっ、アニキにピグモン! こりゃまたいいトコロへ!」
宙マン「一体どうしたって言うんだね?」
落合さん「ああっ、お殿様、実はかくかくしかじかで……」
ビーコン「……それで、まぁ、ご覧の通りってなワケっス~」
宙マン「なるほど……また、怪獣軍団のちょっかいか」
ビーコン「このままじゃ、千歳の街がマジでヤバいっス!」
落合さん「ここはやはり、正義の味方に御出動願いたいところですわっ」
ピグモン「はうはう~、宙マンの出番なの~!」
宙マン「(頷き)ようし、それならば!
宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、ボーグ星人の前に舞い降りる!
宙マン「トゥアーッ! 宙マン、参上!
ボーグ星人、これ以上の乱暴狼藉はこの私が許さんぞ!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「いよっしゃ! 今日も出たっス、アニキの十八番!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、かっこいいの~☆」
落合さん「どうか頑張って下さいませ、お殿様!」
宙マン「どんな怖ろしいことを企んでいるか、それは知らないが……
この私がいる限り、怪獣軍団の野望は必ず打ち砕いてやる!」
ボーグ星人「ぐ、ぬうっ……小癪な!」
まさか「外れくじの八つ当たり」とは、鉄面皮なボーグ星人であっても
流石に、この流れではちょっと言えない。
それはそれとして、全身にみなぎる怒りを力に変え……
ファイティングポーズをとって、敢然と身構える我らが宙マン。
激突、宙マン対ボーグ星人!
木枯らしの吹く中、今日も凄絶なるスーパーバトルの幕が開く。
今、真っ向からぶつかりあって火花を散らす二つの巨体。
さあ行け宙マン、ボーグ星人をやっつけろ!
巨体が唸り、甲冑がきしむ。
大地をゆるがし、千歳市狭しと繰り広げられる格闘戦である。
ボーグ星人「ぬううっ、なかなかやりますな!?」
宙マン「まだまだ、こんなものじゃないさ――そりゃっ!」
渾身の力をこめて、真正面から繰り出す宙マンのストレート・パンチ!
充分に勢いの乗った鉄拳を受けて、たまらず後退するボーグ星人。
ボーグ星人「ぬううっ……おのれ、おのれーっ!」
怒りの叫びとともに、星人の額から放たれるボーグショット!
だが宙マンは、体操選手もかくやの華麗な連続回転でこれをかわす。
ボーグ星人「(驚愕)な、何ですとっ!?」
ボーグ星人が狼狽え、攻撃の手が緩んだ一瞬の隙を見逃さず……
遂に宙マンは伝家の宝刀、伝説のスーパー剣を抜き放った!
宙マン「正義の刃、受けてみろ!
秘剣・スーパー天翔斬り!!」
ビシュイィィィーンっ!
スーパー剣を大きく振るい……
刀身に蓄積したエネルギーを、鋭い光刃に変えて放つ大技!
宙マンの「天翔斬り」が、ボーグ星人を縦一文字に切り裂いた。
ボーグ星人「ぎゃああんっ……人を呪わば、穴二つぅぅ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
ビーコン「やったぁ! 今日もアニキがやってくれたっス!」
落合さん「さすがはお殿様……やはり、こうじゃありませんとね!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、どうもありがとうなの~♪」
千歳の人々が口々に、宙マンの勝利を讃える――
歓声を受けて佇む巨体は、どこまでも雄々しく、逞しかった。
イフ「うぐぐぐっ……またしても、またしても宙マンめが!
だが、この次こそ貴様に目にもの見せてくれるわ!
覚えておれ、覚えておれ~っ!!」
……などと言う、怪獣魔王のいつもの負け惜しみはさて置いて。
我らが宙マンの活躍で、ボーグ星人の恐るべき「八つ当たり」は
見事に撃退され、千歳の街に再び平和が蘇ったのであった。
落合さん「お殿様……今日も本当にお疲れさまでした!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、かっこよかったの~」
宙マン「いやぁ、なになに、みんなの応援のおかげで勝てたようなものさ。
……しかし、アレだね、アレ。
宇宙人と一戦交えたら、例によってお腹がすいてきちゃったな」
落合さん「えぇ、どこかのお店で、みんなでお食事をして帰りましょうか」
ビーコン「ヒヒヒ、そしてお食事と言えばっスねぇ……」
落合さん「(呆れ)ええ、ええ、分かってますともビーコンさん。
……チャーシューメンのおごり、ですわよね?」
ビーコン「いやいや、敢えてそこにもう一声!」
落合さん「(怪訝そうに)もう……一声?」
ビーコン「イエ~ス♪……(落合さんの胸元を凝視)」
落合さん「(視線の意味に気づいて、赤面)……ン、なっ……!?」
げ し っ !
落合さん「ねーいっ! 結局はそれですか、このエロ怪獣っ!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、今回こそはイケると思ったのにっスぅぅ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
平和を愛する、ご存じ宙マンと仲間たち。
さぁて、次回はどんな活躍を見せてくれるかな?