遥かなる宇宙の彼方、暗黒星雲の奥深くから……
美しい緑の星・地球を我が物にせんと狙い続けている怪獣軍団。
いつもならば、この辺で怪獣魔王が配下への檄を飛ばすところだが
こと今回に限っては、そうではない。
怪獣軍団の本拠を揺さぶる、凄まじいばかりの絶叫!
それこそが正に、この度の騒動の幕開けなのであった。
「……う、うぎゃあぁぁ~っ!?」
「ひぇぇぇ、なんだなんだ、今の悲鳴は!」
「事故か? 革命か? それとも反乱かぁ!?」
イフ「……おいおい、誰かと思えばヴィラニアスではないか!
幹部候補生ともあろう者が、あんな大声をあげて……
どうしたと言うのだ、訳を言ってみるがいい!」
幹部候補生・ダークネスファイブ中でも、トップの戦闘力を自負する
彼は怪獣魔王・イフの義兄弟であるテンペラー星人の実子にあたり
行儀見習いも含めて、怪獣軍団に預けられていたのであった。
ヴィラニアス「いやぁ……どうもこうもねぇやな、イフの叔父貴!」
ヴィラニアス「正月と言えば餅、正月と言えばゴロ寝と食っちゃ寝。
まず、そこんところは叔父貴にも異論ないよな?」
イフ「うむうむ、それこそ正月の醍醐味のひとつだからして」
ヴィラニアス「(頷き)だよなァ」
ヴィラニアス「だから、心置きなく正月気分を満喫してたらば……
満喫しすぎて、ちょっと笑えないコトになっちまってなぁ」
イフ「むむっ、古くなった餅で下痢でもしたか!?」
ヴィラニアス「ガハハハ、逆だよ、逆!
つい食べ過ぎて、体重が三トンばかり増えちまって……
……って叔父貴? どうしたよ叔父貴?」
イフ「(思わずズッコケ)お、お前と言うやつは……。
何かと思えば、そんな下らないことで……!」
ヴィラニアス「下らないたぁ何だよ、失礼しちゃうなぁ!
俺みたいな怪獣界のモテ男子、女子の憧れの的からしてみりゃ
体重の増減ってのはケッコー重要な問題なんだぜぇ!?」
ヴィラニアス「……で、それはそれとしてよ、叔父貴。
ダークネスファイブの一人として、ひとつ提案があるんだが」
イフ「……何だ? 言ってみろ」
ヴィラニアス「最新鋭のダイエット器具あれこれを、軍団の公費で
正式に導入してくんないかなぁ、って話でさ!
そうすりゃ俺は痩せられる上に、懐も痛まず一石二鳥……」
……ぶ ち っ!
「えぇい、この大馬鹿者めが~っ!
言うに事欠いて、よくもぬけぬけと……!!」
イフ「ダイエットしたければ体を動かさんか、カラダをっ。
運動がてら、ちょっと地球でも侵略して来いっ!!」
ヴィラニアス「(慌ててスタコラ)ひぇぇぇ、だよねぇぇ~っ!」
目指すその先は……もちろん、宙マンのいる我らの故郷・地球だ!
だが、ひとまずそれはそれとして――。
宙マン「ふぅ~、さっぱり、さっぱり、ぬっくぬく!
冬の風呂は、夏場とは別の意味で有難さが染み渡るねぇ~」
ピグモン「はうはう~、宙マン、ポッカポカたまご肌なの~」
ビーコン「でもアニキ、湯冷めにはくれぐれもご用心っスよ」
落合さん「いえいえ、そんな心配は決してございませんとも!
この落合が腕によりをかけて、暖かい夕食を用意しておりますからね」
宙マン「おおっ、そいつは楽しみだねぇ!
うんうん、絶品料理に舌鼓を打ちつつ過ごすとしようかな」
ピグモン「はうはう、でもその前におやつなの~」
落合さん「あら、そう言えば……もうそんな時間ですのね。
それでは……とりあえず、お餅でも焼きましょうか?」
ビーコン「うげ~っ、また餅っスかぁ?
ここ数日そればっかで、いい加減飽きてきたっスよ~」
落合さん「いいんですのよ、嫌ならお召し上がりにならなくとも。
えぇ、いっそビーコンさんは、昼も夜も全部抜きにしましょうか!」
ビーコン「っがー、ひどいっスよ落合さん、怪獣虐待っス!
そんな冗談、オイラにゃとっても笑えないっス!」
落合さん「いえいえ、ぜぇんぶ本気ですから!」
ビーコン「どひ~っ、なおヒデェっス~!」
宙マン「たっはっはっ……まぁまぁ、二人とも」
……と、苦笑交じりで宙マンが仲裁に入りかけた時。
そう、まさにその時であった!
「ガハハハ……
正月気分の名残も、ここまでだ!」
突如、天空から千歳市一帯に響き渡ってくる野太い哄笑。
すわ何事と、慌てて飛び出してきた宙マンたちの目の前で……!
「グフフフ……ガハハハハ……!」
空中に走った眩い閃光とともに、忽然と姿を顕す異形の巨体。
ダークネスファイブの一人、“極悪の”ヴィラニアス・その人だ!
落合さん「確かに以前、お殿様にとっちめられましたのに……」
ビーコン「あんにゃろ、また凝りもせず!」
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宙マン「(頷き)覚えているぞ。“極悪の”ヴィラニアス!」
ヴィラニアス「グフフ、どうやら挨拶の二度手間は省けたようだなァ。
そうとも、俺様は“極悪の”ヴィラニアス――
宙マンを倒し、地球を征服して怪獣軍団のものにする男よ!」
宙マン「……少なくとも、大言壮語はしっかり一人前のようだな!」
ヴィラニアス「ガハハハ、俺が口だけの男かどうか。
今からそれを、うぬらにたっぷり思い知らせてやるわ!」
落合さん「ンまぁっ、前においでになった時もでしたけど……」
ビーコン「今回もまた、はた迷惑なのは変わってないっスねぇ!」
ヴィラニアス「ガハハハ、そう褒めてくれるな、照れるぞ!」
ピグモン「えう~、全然ほめてないの~!(汗)」
イフ「よいかヴィラニアス、やるならとことんやれ、手抜きはするな!
お前の実力、このワシにしかと見せてみよ――
そして同時に、ダイエットの運動にもなればしめたものぞ!」
ヴィラニアス「あぁ、任せてくれ、叔父貴ィ!」
怪獣魔王の檄を受け、行動開始する“極悪の”ヴィラニアス!
迫り来る巨体を前に、悲鳴をあげて逃げ惑う人々。
ビーコン「どひ~っ、結局今回もこうなっちまうんスねぇぇ~っ!」
落合さん「おやつどころの騒ぎではございませんわ、これでは!」
だが、そんなヴィラニアスの進撃を阻むべく……
航空防衛隊の精鋭たちが、直ちにスクランブルをかけた。
ビーコン「おおっ、またまたいいタイミングで!」
落合さん「あとは、少しでも戦果がそれに伴ってくれますと……(汗)」
ピグモン「はうはう~、おじさんたち、がんばってなの~!」
「ようし……全機、一斉攻撃開始っ!」
戦闘機編隊、ロケット砲による一斉攻撃!
だが、その凄まじい弾着にも怯むことなく、猛然と進むヴィラニアス。
ヴィラニアス「えぇい……邪魔だ邪魔だ、失せろッ!」
「……ど、どわぁぁぁ~っ!?」
ヴィラニアスの火炎放射で、次々に撃墜されていく戦闘機!
そして、その洗礼は千歳の市街地にも容赦なく及び……
ビーコン「ど……ど、ど、どひ~っ!?(汗)」
ピグモン「きゃあああんっ、おっかないの~!(涙目)」
宙マン「ようし……こうなったら、やるしかないか!
宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、テンペラー星人の前へ舞い降りる!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
“極悪の”ヴィラニアス、望み通り私が相手になってやる!」
ズ、ズーンっ!!
ヴィラニアス「グフフフ……殺されに出てきたな、宙マン!」
宙マン「いいや、泣きを見るのは今度も貴様の方だ!」
ファイティングポーズをとり、敢然と身構える宙マン。
さぁ、今日もまたスーパーバトルの幕開けだ!
真っ向激突、宙マン対“極悪の”ヴィラニアス!
千歳の街のド真ん中で、巨大宇宙人どうしの死闘が展開される。
ビーコン「おおっ、アイツ、相変わらずやるっスね!?」
落合さん「お殿様応援団的には、あまり有難くないのですけどね……(汗)」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
持ち前のパワー全開で、攻めに攻めまくるヴィラニアス!
序盤の格闘戦、まずはテンペラー星人の方に分がありか。
ヴィラニアス「ガハハハ、宙マンよ、お前の力はそんなものか!」
宙マン「それはどうかな!
宙マン・エクシードフラッシュを受けてみろ!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、“極悪の”ヴィラニアスを直撃!!
バッシィィーンっ!
おお、何と言うことであろう!?
テンペラー星人ならではの頑健な肉体を活かしたヴィラニアスのガードによって
宙マンの光線技は難なく受け止められ、弾き飛ばされてしまったではないか!
宙マン「(驚愕)な、何っ!?」
ヴィラニアス「ガハハハ、俺には効かん! 少しは学習しろ!」
宙マンを嘲笑い、火炎放射を浴びせかけるヴィラニアス。
灼熱の一閃が、ヒーローの周囲に炸裂し、そして……!
グワーン! ズガガガガーンっ!
「う、うわぁぁぁぁ……っ!」
ピグモン「はわわわ……ちゅ、宙マンっ!?」
ビーコン「どひ~っ、悔しいけどやっぱ強いっス、アイツ!」
落合さん「このままでは、いかにお殿様と言えども……!(汗)」
宙マン「(苦悶)う……うう……っ!」
ヴィラニアス「ガハハハ、これで終わりだ、今度こそ死ねィ!」
「なんの、これしき……負けて、たまるかッ!!」
とどめとばかりに、破壊光線を放つヴィラニアス。
その一閃をジャンプでかわして、宙マンの巨体が大空に舞う。
ヴィラニアス「(狼狽)ぬ、ぬおっ!?」
宙マン「正義の刃、受けてみろ!
秘剣・スーパー滝落とし!!」
ザシュウッ!!
スーパー剣を抜き放ち、刀身にエネルギーを集中させ……
豪快な空中回転とともに、真っ向から振り降ろされる光の刃!
宙マンの「滝落とし」が、テンペラー星人を唐竹割りに切り裂いた。
ヴィラニアス「アバァァッ……み、身も細る思いだぜぇぇ~っっ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
イフ「おのれ、おのれ宙マン……ヴィラニアスを、よくも!
だが、これしきの事でワシら怪獣軍団が怯むと思ったら大間違いだぞ。
次なる恐怖の計略で、必ず貴様の息の根を止めてやる……!」
……などと言う、いつもの負け惜しみはさて置いて。
宙マンの活躍で、テンペラー星人“地獄の”ヴィラニアスは撃退され
千歳市には再び、午後の穏やかな時間が戻ってきたのであった。
ピグモン「はうはう~、宙マン、今日もありがとうなの~」
落合さん「お疲れもさることながら……
今の戦い、さぞやお腹がすきましたでしょう、お殿様!」
ビーコン「ささ、家に帰って、改めておやつの時間っスよ~☆」
落合さん「えぇ、お餅を焼いて、みんなで頂きましょう。
……あ、でも。
ビーコンさんは、確かお餅に飽きておいででしたのよね?(にんまり)」
ビーコン「ひぇぇぇ~、落合さん、意地悪言いっこなしっスよ~!
お餅大好きっス! お餅サイコーっス~!(涙目)」
宙マン「はっはっはっはっ、みんなで仲良く食べようじゃないか。
……さぁて、それじゃ帰るとしようかね!」
ピグモン「はうはう~、おもち、おもちなの~♪」
ひとつの危機は去った……
だが、怪獣軍団の野望は未だ尽きない。
くれぐれも油断は禁物だぞ、宙マン!