ピチピチ跳ね回って活きの良い海の幸、清冽で味わいの深い山の幸……
北海道の豊かな自然は、厳しい冬の寒さの見返りに、そこに暮らす人々へ
四季折々の様々な恵みをもたらしてくれる。
季節は6月、北海道の山々の木々も本格的に色づき生い茂り出した頃。
一面の緑色は、大地を彩る装いであるのみならず、この時期ならではの
様々な山菜が芽吹き始めたことを告げる目印でもある。
こんち、お馴染み宙マンファミリーとそのご近所さんたち。
そんな「山の幸」を求め、千歳の山に足を踏み入れていたのであった。
さてさて、今回の宙マンたちのお目当ては、と言えば――
みくるん「うふふっ……当然フキですよ、フ・キ!」
ながもん「やっぱり……この季節は、これに……尽きる」
宙マン「はっはっはっはっ、ホントだよねぇ!」
そう――
宙マンファミリーとコロポックル姉妹のお目当ては「フキ」。
北海道の山の中、至るところに自生しているフキをたっぷりと採って帰り
春先から初夏にかけての美味を堪能しよう、という目論見なのである。
落合さん「今年もまた、電気屋の宇佐美さんが大張り切りで……
今日も朝早くから、山の中に入って行ったそうですわよ」
宙マン「さすがは町内有数のフキ採り名人、気合入ってるねぇ!」
ピグモン「はうはう~、宇佐美のおじさんに全部採られちゃう前に……」
ビーコン「オイラたちも張り切ってレッツ・ラ・フキ採りっス!」
宙マン「はっはっはっ、大丈夫、大丈夫。
千歳の山は、今年もう~んと気前が良いに決まっているさ!」
落合さん「えぇ、そうですとも♪」
うきうき弾む心と足取りで、元気にフキの自生地へ向かっていく一同。
だが、その直後に彼らを待っていたのは……驚くべき光景であった!
「……ああっ!!」
おお、何ということであろう!?
宙マンたちより一足早く、フキを求めて原生林へと入って行った宇佐美さんが
かくのごとく、生々しくも無残なブロンズ像と化してしまっているではないか。
みくるん「(表情が引きつり)う、宇佐美さん……!?」
ながもん「おお……カチカチに……なっちゃってる」
ビーコン「ひぇぇ、こりゃヤバいスよ、シャレんなってないっス!(汗)」
落合さん「お殿様、これはもしや――」
宙マン「(頷き)ああ、私の知る限り……
こんなえげつないやり方を好むのは、宇宙広しと言えども彼らだけだ」
「(鋭く)――さァ、出てこい! ヒッポリト星人!!」
「クククク……さすが宙マン、よく判ったな!」
宙マンの鋭い一喝が、千歳の山の中に響き渡ると同時に……
原生林の一角から突如噴き出し、膨れ上がっていく不気味な噴煙。
その濛々たる中から、不気味な巨体を現したのは!?
「ヒョーホホホホ……!!」
みくるん「ああっ、あれは!?」
ながもん「どこから、どう見ても……ヒッポリト、星人」
ピグモン「(涙目)はわわわ、宙マンの言った通りだったの~!」
宙マン「お前は確か、ダークネスファイブの……!」
「ヒョホホホ、如何にも私はヒッポリト星人、人呼んで“地獄の”ジャタールである。
覚えていてくれたとは光栄だよ、宙マン!」
宙マン「ああ、いくら呑気な私でも、流石に「覚える」さ。
……それだけ、お前さん方との腐れ縁が続いてる証拠だよ!」
ビーコン「で、そのジャタールさんとやらが……」
落合さん「どうしてこんな、惨たらしい事をなさるんです!?」
ジャタール「ヒョホホホ、知れたこと!」
ジャタール「北海道の山の恵みたるフキ……
その豊かな味わい深さは、地球の支配者たる怪獣軍団にこそ相応しい。
だからこそ、地球人たちには一本たりとてやらん――
山でフキを採ろうとする連中は、私がブロンズ像に変えてやるのさ!」
落合さん「そんな、勝手な……!」
ジャタール「わはは、ほざけ、ほざけ、愚かな下等動物どもが!
お前たちの、その泣きっ面と恨み節こそ……
これから私たちが味わうフキ料理の、絶妙の調味料というものよ!」
みくるん「ふぇぇん、そんなの酷いですぅ~!(泣)」
ジャタール「さぁ、判ったら大人しく山から立ち去るがいい……
北海道のフキは、一本残らず“地獄の”ジャタールが頂戴する!」
宙マン「そんな事は断じて許さん!
宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
空中回転とともに、不敵に息巻くジャタールの前へ舞い降りる!
宙マン「トゥアーッ! 宙マン、参上!
ヒッポリト星人ジャタール、山の恵みを独り占めなどさせんぞ!」
ズ、ズーンっ!!
イフ「ぐぬぬぬっ! おのれ宙マンめが、またしても邪魔だてを……
構わんジャタール、叩きのめしてしまえ!」
ジャタール「ヒョーホホホ……お任せを、魔王様!」
宙マン「はっはっはっ……果たして、思い通りに事が運ぶかな!?」
全身にみなぎる怒りを力に変え……
ファイティングポーズをとって、決然と身構える我らが宙マン。
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトルの幕開けだ!
戦闘開始、宙マン対“地獄の”ジャタール!
皆がハラハラと見守る中、正邪の巨人が真っ向から激突する。
ジャタール「ヒョホホホ、叩きのめしてやるぞ!」
宙マン「なんの、今日もまた返り討ちだ!」
ずる賢さだけかと思えば、格闘技にも秀でているのがヒッポリト星人。
だからこそ……
以前に一度戦って倒した相手とは言え、宙マンも決して油断はできない。
ビーコン「ううっ、今ン所は互角の勝負……っスかね!?」
落合さん「だからこそ厄介ですし、気も抜けませんわ」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
一進一退、お互いに相譲らぬ熾烈な攻防。
そして、肉弾戦の間合いが再び大きく開いた時……
すかさず攻勢に転じたのは、ジャタールの方であった。
ジャタール「忘れもせんあの日、第81話でお前に受けた屈辱……
今日こそまとめて叩き返してやるぞ、宙マン。
ヒョホホホ、これでもくらえ――そりゃっ!」
頭部からの破壊光線を放つジャタール!
宙マンの巨体がよろめいたところへ、更に胸からの光線がダメ押し!
「う、うわぁぁぁぁ……っ!」
みくるん「ああっ、ちゅ、宙マンさんが!」
ビーコン「(息を呑み)さすが、怪獣軍団のエリート……」
落合さん「……少々シャクですが、おやりになりますわね!」
ピグモン「はわわわ、このままじゃ宙マンやられちゃうの~(涙目)」
ながもん「(口の中で)……宙マン……がんばれ……!」
宙マン「(苦悶)うう……うっ……!」
ジャタール「ヒョホホホ、ざまぁないな宙マン!
ギャラリーの目の前で、お前も芸術的なブロンズ像に変えてやろう!」
「なんの、これしき……負けて、たまるかッ!」
宙マンめがけて、口吻からタールガスを噴射するジャタール!
だが、その恐るべき緑色のガスは、宙マンが張り巡らせた次元の防御壁、
プロテクションによって完全に受け止められ、無力化されている。
ジャタール「(目をパチクリ)な、何ィッ!?」
宙マン「今度はこっちからのお返しだ――そりゃっ!」
宙マン、気合一閃――
タールガスを増幅・反転させ、逆にジャタールめがけて叩き返した!
ジャタール「ぶ、ぶハァァっ……か、体が、体が……固まるぅぅ~っ!」
自らの武器によって、逆にブロンズ像と化してしまうジャタール。
その動きが止まったところで、すかさず――
宙マンは伝家の宝刀、伝説のスーパー剣を抜き放った!
宙マン「よし、今だッ――正義の刃、受けてみろ!
秘剣・スーパー大波崩し!!」
ズバァァッ!
スーパー剣の刀身にエネルギーを集中させ……
怒涛のような突進の勢いに乗り、斜め一文字にひるがえる光の刃!
宙マンの「大波崩し」が、ジャタールを見事に切り払った。
ジャタール「ぐひゃあぁぁっ……
こ、こんなヤラレ方、受け入れがた~いっ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
ピグモン「はうはう~、やったのやったの、宙マンの勝ちなの~!」
かくして我らが宙マンの活躍により、千歳の原生林から人々を追い出して
山の恵みたるフキの独占を図ったヒッポリト星人“地獄の”ジャタールは倒され、
その悪しき野望は打ち砕かれた――
と同時に、ブロンズ像にされていた宇佐美さんも呪縛から解き放たれ
元の姿に戻ったことは言うまでもないだろう。
宇佐美さん「……おおっ、おほほっ、動ける動ける!
やー、一時はどうなることかと思ったよぉ」
みくるん「よかったですね、宇佐美さん!」
ビーコン「さてと、安心したとこでっスね、みんなで山を降りて――」
宇佐美さん「わっはっはっはっ、な~に言っちゃってんの、ビーコン君」
宇佐美さん「こんな“宝の山”に、足を踏み入れておいて……
一本のフキも採らずに、手ぶらで家まで帰れますかって~の!」
ビーコン「あ、そう言えば……
そもそもそのために山まで来たんスよね、オイラたち(苦笑)」
ピグモン「はうはう~、あぶなく肝心なご用を忘れるとこだったの~」
宙マン「はっはっはっ、フキ採り名人の宇佐美さんに負けないように……
ひとつ我々も張り切って、たっぷりフキを採って帰ろうじゃないか!」
落合さん「はいっ、お殿様♪」
ひとつの面倒事が片付き、今日も今日とて和気藹々の宙マンたち。
その一方、暗黒星雲の怪獣軍団・本拠地においては……。
イフ「ぐぬぬぬっ、おのれ宙マンめ、またしても邪魔立てしおって!
せっかくフキ料理を堪能できると思って、楽しみに待っていたものを!」
スライ「仕方がありません、ここは宇宙通信販売を利用すると致しましょう。
……でも、フキって、店で買うとなると凄くお高いんですよねぇ~(汗)」
イフ「がるるるっ、おのれおのれ……この屈辱忘れんぞ、宙マン!!」
平和を願い、旬の食材を愛し……
いつもニコニコ、太陽みたいな眩しい笑顔。
さァて宙マン、次回の活躍や……いかに?