今や既に、あの春の穏やかさはどこへやら。
すっかり汗ばむくらいの日々が続いている、ここ北海道千歳市。
陽の光を受けて、山々の木々もすくすく元気に生い茂り……
まさしく名実ともに、行楽にはもってこいの日和である。
落合さん「えぇ、そんなわけで、私たちも……」
ビーコン「じっとしてなんて、いらんないっスよねぇ！」
ピグモン「はうはう～、おでかけ、おでかけなの～♪」
宙マン「さてと、みんなで行くなら……どこがいいかねぇ？」
「オウ……むかわの……恐竜展」
ながもん「……どう？」
みくるん「ふふ、恐竜好きだものねぇ、ながもん」
ビーコン「つーか評判いいみたいっスねぇ、恐竜展！」
日本国内で発見された、大型恐竜の全身骨格としては最大の
「ほべつ竜」とも「むかわ竜」とも称されるハドロサウルス化石。
その化石展示を通じて、むかわ町の「町おこし」の一環とすべく
町の博物館にて「恐竜展」が開催されていたのである。
宙マン「貴重な学術資料だし、あの近辺は美味しいものも多いし……
私としても実に興味深いところだよ、うん」
落合さん「ああ、ですが、お殿様……」
宙マン「ん？」
落合さん「恐竜だの、化石だのと言えば……
この間、熊澤さまとそんな話題で盛り上がっていた時に
古代怪獣が出現したばかりですので。……ねぇ？（苦笑）」
千歳を蹂躙した怪獣ペンタザウルスと、我らが宙マンとの死闘。
読者諸氏も、記憶に新しいのではないだろうか。
ビーコン「たはは……気持ちは分かるっスけどね、落合さん」
ビーコン「いくら怪獣軍団が間抜けだからって、一度失敗したテで
二度目もバカ正直にくるほどじゃないっスよ～。
考え過ぎ、考え過ぎっス！」
落合さん「ですわよね、言われてみれば確かに……」
「ガロロロ、馬鹿めぇ……
そう思うのが、素人の浅はかさよ！」
落合さん「（ビクッとして）ちょっ、ビーコンさん……
あなた、何をふざけた作り声を出してらっしゃいますの？」
ビーコン「お、オイラじゃないっスよ！？（汗）」
落合さん「ええっ！？ では、いったい誰が――」
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラっ！
落合さん「あ……あらあら、まぁまぁっ！？」
ビーコン「ど、ど、どっひ～っ！」
市内の中心部が激しく揺さぶられ、大地が音を立てて割れ裂ける。
大量の土砂を天高く撒き上げ、舗装道路をもやすやすと引き裂いて
地の底から今また新たに、その姿を現わさんとしている邪悪な影。
……果たして、それは！？
「ガッガッ……ガオオーッ！！」
みくるん「ああっ、なんか出て来たですぅ！」
ピグモン「きょ、恐竜なの～！」
ながもん「それとも……ロボット？」
宙マン「ううむっ……どうも、そのどちらでもなさそうだぞ！？」
おお、見よ！ 驚愕せよ、この異形！
雷竜アパトザウルスに似ているが、体の各所にメカが組みこまれた
異様なスタイルは、「サイボーグ恐竜」と呼ぶのが相応しい。
「ガオオーッ！ そう！ その通り！
俺様は最強の怪獣、サイボーグ恐竜･タンギラー様だ～！」
ビーコン「ああっ、そうだったっス、思いだしたっスよ！」
落合さん「以前、南極にも現れたことのある怪獣さんでしたわね！」
タンギラー「それだけ覚えててくれりゃ充分、話が早いぜ。
南極の仲間同様、俺もハデにやらかしますんで、ひとつヨロシクぅ！」
みくるん「ふぇぇん、全然よろしくしたくないですぅ～！」
落合さん「もう……
怪獣軍団の方たちは、相変わらず身勝手でらっしゃるんですから！」
宙マン「……うぬっ！」
ジャタール「ヒュホホホ……どうです魔王様、タンギラーの張り切りよう！
エネルギーの充填を滞りなく終え、全身に力がみなぎっております」
イフ「うむっ、いい傾向だぞ、頑張れタンギラー！
お前の力を、地球の者どもに今こそ見せてやれ！」
タンギラー「ガオオーッ！ お任せ下さい、魔王様！」
タンギラー、進撃開始！
迫り来る巨体を前に、悲鳴をあげて右往左往し、逃げ惑う人々。
ビーコン「どひ～っ、前回がアレで、今回がコレ……」
落合さん「あまり嬉しくありませんわねぇ、こんな恐竜推しは！」
ピグモン「はわわ、とにかく逃げなきゃなの～！」
街の平穏を脅かす、サイボーグ恐竜の猛威！
この恐るべき異変は、直ちに防衛隊基地へと通報がなされ……
航空防衛隊の空の精鋭たちが、タンギラー迎撃のために発進した。
ピグモン「あっ、防衛隊のおじさんたちなの！」
ビーコン「期待してるっスよ～、毎度かなりマジで！」
落合さん「なんだかんだで、やはり安心感ありますものねぇ！」
「これ以上の好き勝手を許すな――全機、攻撃開始っ！」
荒れ狂うタンギラーめがけて、矢継ぎ早やに叩きこまれるロケット弾！
だが、宇宙金属製のタンギラーのボディには通用しない。
タンギラー「ガオオーッ！ 俺様にそんなもんが通じるかぁ！」
「う、うわぁぁぁぁ……っ！！」
タンギラーの口がグワッと開くや、吐き出される火炎熱線！
その威力の前に、防衛隊の戦闘機などはひとたまりもない。
みくるん「ああっ、またやられちゃったぁ！」
ながもん「（ボソッと）みくるん……「また」は……余計」
ビーコン「そうそう、気持ちは分かるっスけどね！？」
みくるん「……（バツが悪そうに俯いて）」
などと、やっている間にも。
重量級のボディで建物を破壊し、火炎熱線を吐き散らし……
猛威を奮うタンギラーの前に、千歳は絶体の危機に瀕していた！
みくるん「ああんっ、どうしましょう、このままじゃ……」
ビーコン「ひぇぇ、もうダメっス、おしまいっス！（汗）」
落合さん「ビーコンさん、貴方は少し落ち着きなさいなっ！（汗）」
ピグモン「宙マン、宙マン、なんとかしてなの～」
宙マン「おのれ、もう許さんぞ！ 宙マン・ファイト・ゴー！！」
閃光！
みるみる巨大化し、タンギラーの前に立ちはだかる宙マン。
タンギラー「ガオオーッ、宙マン、やはり出てきたな！」
宙マン「ああ、出てきたとも。
この状況を、黙って見てられる性分じゃないんでね！」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日もまた、世紀のビッグファイト開幕だ！
タンギラー「宙マン、一気に踏み潰してやろうか！？」
宙マン「簡単には、やられはしない！」
激突、宙マン対タンギラー！
人々が固唾を呑んで見守る中、巨大バトルが展開される。
原始の膂力と、超科学メカニズムとの融合。
全身のメカで増幅された、サイボーグ恐竜のスーパーパワーに
手こずらされながらも、必死に反撃のチャンスを伺う宙マン。
タンギラー「どうしたどうした、お前の力はそんなモンかぁ！？」
宙マン「おのれっ、ならばコレを受けてみるか！」
腕をＬ字型に組み、得意のエクシードフラッシュを放つ宙マン。
だが、サイボーグ化された強化ボディは、フラッシュの直撃をも
ものともせずに突き進んでくるではないか！？
宙マン「……なっ……！？」
タンギラー「ガオオーッ、俺様をなめるなよ！？」
グロッケン「おおっ！ やりやがるじゃねぇか、タンギラーの奴！」
ジャタール「ヒュホホホ……当たり前！ 当然！ そして常識！
この“地獄の”ジャタールが見込んだ怪獣ですぞ――
さぁ、タンギラー、遠慮せずにガンガン攻めまくれィッ！」
タンギラー「ガオオーッ、今度は俺様からのお返しだぜ！」
タンギラーの猛烈頭突き！
宙マンの胸板にヒットし、ヒーローの巨体を大きく吹っ飛ばす。
ズ、ズーンっ！
さらにダメ押しとばかりに、火炎熱線を吐くタンギラー！
「う、うわぁぁぁぁ……っ！！」
みくるん「ああっ……ちゅ、宙マンさんが！」
ながもん「サイボーグ、恐竜……やっぱり、強いっ」
ビーコン「って、その一言で納得できるもんでもないっスよ！」
落合さん「そうですとも、ここでお殿様が倒れてしまわれては……
それこそ本当に、千歳の最期ですわ！」
ピグモン「はわわわ、宙マン、まけないでなの～！」
宙マン「（苦悶）ぐう……ううっ……！」
タンギラー「消し炭にでも、ぺしゃんこにでもしてやるぜ！」
「悪いが……どちらも、お断りだッ！」
宙マン、パワー全開！
タンギラーの吐き出した火炎を、ジャンプでかわして大空へ。
タンギラー「……あんがっ、ガロォォォーッ！？」
「エイヤぁぁーっ！」
「宙マン、反動……」
「三段……」
「キィーック！！」
怪獣を蹴りつけた勢いで空中反転し、計三発のキックを見舞う猛烈技！
「反動三段キック」の威力に、たまらず倒れるタンギラー。
ながもん「（ガッツポーズで）……おしゃっ」
ビーコン「さっすがアニキ、上手いっスねぇ！」
落合さん「えぇ……そして、それだけじゃありませんわ！」
落合さんの指差した方向――
堅牢なタンギラーのボディに、ざっくりとついた傷。
怪獣の一点だけを集中的に狙い、ボディに傷をつけること。
そう、まさに宙マンの狙いはそこにあったのだ！
宙マン「とどめだ！
宙マン・エクシードフラッシュ！！」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、タンギラーの傷口を直撃！！
タンギラー「ガオォアアアッ、こ、光線が沁みるぅぅっ……
き、キクキクッ、効きすぎるぅぅ～っ！」
やったぞ宙マン、大勝利！
みくるん「わぁっ……やりましたよ、宙マンさんの勝ちですぅ！」
ながもん「おおっ。……さすが」
ビーコン「やっぱアニキの威力は、いつ見ても凄まじいっスね～！」
ピグモン「はうはう～、宙マン、ありがとうなの～♪」
人々の賞賛と拍手喝采を受け、青空の下に立つ巨体。
まさに宙マンこそは、千歳における平和の守護者であった。
イフ「うぐぐぐぐ……おのれ宙マン、またしてもやってくれたな！
だが、怪獣軍団のある限り、お前に安息の時はないのだ。
もっと強い怪獣で、次こそは必ず……！」
かくして、宙マンの活躍により……
サイボーグ恐竜タンギラーは撃退され、街は救われたのであった。
みくるん「サイボーグの恐竜なんて、ホントに怖くてびっくりでしたけど……」
ながもん「でも……恐竜展は……別腹」
宙マン「あぁ、そうだとも。みんなで行こうじゃないか！」
ピグモン「はうはう～、ピグちゃん楽しみなの～♪」
落合さん「えぇ、私もワクワクしてきましたわ！」
ビーコン「ヒヒヒ、落合さん……
そのワクワクが爆発しそうになったら、ちゃんと言うっスよ？
そんときゃすぐさま、オイラの自慢の制御棒で……」
げ し っ ！
落合さん「ねーいっ、何たる御下劣な例えっ！！（怒）」
ビーコン「どひ～っ、こうなるって判ってても……
それでもやっぱり、言わずにゃおれんビーコンちゃんっスぅぅ～」
宙マン「はっはっはっはっ」
みんなの笑顔、みんなとの絆……
天下無敵のヒーローに、更なる「力」をくれる源。
さァて宙マン、次回はどんな活躍を見せるのかな？
