月1日から3日にかけて催される、千歳神社の例大祭……
千歳っ子が待ちに待った、年に一度の楽しい恒例行事である。
街を歩けば、そこかしこから祭囃子の軽快な音色が響き渡って
自然に気分も高揚してこよう、と言うもの。
そんなわけで今、千歳の街はすっかりお祭りムードのまっただ中!
今回の『宙マン』はここ、活気溢れる千歳神社から物語を始めよう。
ピグモン「はうはう~、おまつりなの、おまつりなの~!」
ビーコン「おっ、早くもハイテンションっスねぇ、ピグモンは!」
ピグモン「うんっ、ピグちゃん、おまつり大好きなの~」
落合さん「うふふっ……まぁまぁ、ピグモンちゃんったら。
お行儀よくしていないと、転んで泣いちゃっても知りませんわよ?」
宙マン「はっはっはっ……いやいや、ピグモンの気持ちもわかるよ。
この空気、この眺め、毎年来るたびにワクワクさせられちゃうよねぇ!」
ビーコン「しかしまぁ、何つーか……
神社のお祭りも、快調な滑り出しでよかったっスよねぇ。
お天気は良いし、風も気持ちいいし、実にのどかな……」
落合さん「えぇ、実にわかりやすい平和の光景ですわ」
と、一同の空気が程よく和んでいた時。
そう、まさにその時である!
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラッ!
落合さん「きゃ、きゃあああっ!?」
ビーコン「うわ、うわ、うわ~っス!」
市内が激しく揺さぶられ、大地が音を立てて割れ裂ける。
大量の土砂を天高く撒き上げ、舗装道路をもやすやすと引き裂いて
地の底から今また新たに、その姿を現わさんとしている邪悪な影。
……果たして、それは!?
「デュフフぁぁぁ~んっ!」
ピグモン「ああっ、怪獣なの!」
落合さん「う~ん、これはまた……何と申しましょうか……」
ビーコン「こっちはこっちで、判りやすい空気の読めなさっスねぇ!」
象のように長い鼻とギラつく複眼、黒光りする巨体。
怪獣軍団からの使者、大怪獣ドルゴだ!
ドルゴ「デュフフ、ありがとう諸君、早速のお褒め有難う!
我輩、何とも実に光栄の至りでござるダス!」
落合さん「いえ、別に褒めてませんから!(汗)」
ビーコン「あのっスねぇ、もっか千歳はお祭りの真っ最中で……」
宙マン「用事があるなら、また後日ってことでどうかな!?」
ドルゴ「デュフフ、あいや、いやいや、滅相もない!
我輩が来たのも、まさに千歳神社の例大祭目当て――
お祭りの盛り上がりに、一役買わせてもらいにきたでゴザル!」
宙マン「……何だって!?」
イフ「わははは! 火の祭り、闇の祭り、地獄の祭り……
ワシら怪獣がおればこそ、盛り上がりも最高潮というわけだ。
さぁドルゴよ、主役はお前だ、思い切りやるがよい!」
ドルゴ「デュフフ、我輩にお任せでござるよ、魔王様~っ!」
地鳴りのような足音を響かせ、進撃開始するドルゴ!
迫り来る巨体を前に、悲鳴をあげて逃げまどうばかりの人々。
ビーコン「どひ~っ、これも定番っちゃ定番の展開っスけど……」
落合さん「判りやすすぎて、ゲンナリしちゃいますわねェ!(汗)」
ピグモン「きゃああんっ、おっかないの~!(涙目)」
おお、千歳市が洒落にならない大ピンチ!
大怪獣ドルゴの暴虐、もはや断じて許すまじ。
千歳の平和を守るべく、航空防衛隊が直ちに出撃した。
ビーコン「おおっ、航空防衛隊のお歴々っスよ!」
落合さん「タイミング「は」、いつも良いんですけど……(汗)」
ピグモン「はうはう~、おじさんたち、しっかりなの~!」
「ようし……全機、一斉攻撃開始っ!」
ドルゴめがけて、雨あられと叩きこまれるロケット弾!
だが、黒光りする大怪獣のボディには全く通用しない。
ドルゴ「デュフフ、子ども騙しな攻撃ナリね!」
ドルゴの長い鼻から、勢いよく噴射された赤い気体……
それは、吸いこんだ者を麻痺・混乱させる恐怖の幻覚ガス。
……そして、その威力は!?
「ぅ、うう……がぁぁぁぁ~っ!」
おお、何ということであろう!?
幻覚ガスのせいで、ドライバーたちの正常な判断力が奪われ……
街のあちらこちらで巻き起こる、自動車の衝突事故!
ドルゴ「デュフフ、これが我輩の力でござるダスよ!」
ジャタール「ヒュホホホ、これでこそ怪獣祭り!」
グロッケン「ぬふははは、盛り上がってきやがったぜ~ッ!」
イフ「いいぞ、ドルゴよ! もっとだ、もっとやるのだ!」
ドルゴ「デュフフ、フィーバーしちゃうでござるよ!」
爆発! 炎上!
大混乱となった千歳の街を、我が物顔でのし歩くドルゴ!
落合さん「あぁ、これではとても、お祭りどころではございませんわ!」
ビーコン「こうなるともう、アニキしか頼れる人はいないっス!」
ピグモン「はわわ……宙マンお願い、なんとかしてなの~」
宙マン「(頷き)おのれ、もう許さんぞ! 宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、ドルゴの前へと舞い降りる!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
毒ガス怪獣ドルゴ、私が打ち倒してやる!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「いよっ! 出たっスよ、アニキの十八番!」
落合さん「いつもながら、この安心感ったらございませんわね!」
ピグモン「宙マン、頑張ってなのーっ!」
ドルゴ「デュフフフ、出たねェ宙マン!」
宙マン「ああ、もちろん出るともさ――
その無法な振る舞いを、黙って見逃せる私ではないからな!」
ファイティングポーズを取り、敢然と身構える宙マン。
さぁ、今こそ世紀のスーパーバトル開幕だ!
ドルゴ「デュフフフ、捻り潰してやるナリ!」
宙マン「悪党め、きついお灸を据えてやるぞ!」
激突、宙マン対ドルゴ!
落合さんたちや、千歳市民らが固唾を呑んで見守る中……
土煙を巻き上げ、二つの巨体のパワーがぶつかり合う。
重量級スタイルだけに動きの鈍いドルゴ。
スピードにおいて上回る宙マンが、矢継ぎ早やの技の連打で
一気にドルゴを圧倒してしまうかと思いきや……
だがしかし、ドルゴもさるもの。
持ち前の強靭なボディと怪力で、宙マンの攻撃を受け止めながらも
怯むことなく猛反撃へと転じていく。
ドルゴ「デュフフフ、そぉれ、それそれっ!」
宙マン「ムムッ、やるな!?」
怪力で、ぐいぐいと押すドルゴ!
宙マンとの間合いが大きく開いたところへ、すかさず――
ドルゴ「デュフ~、これを受けてみるダス!」
ブシューッ!
ドルゴの長い鼻先から、勢いよく空中へと放たれる赤い毒ガス!
不意を突かれた宙マンは、この洗礼をまともに受けてしまう。
落合さん「ああっ、お殿様……げほ、げほっ!」
ピグモン「えう~、けむいの~(涙目)」
ビーコン「これを、ガスを吸っちゃダメっスよ!(汗)」
宙マン「(苦悶)う……ぐ、ぐううう……っ!」
毒ガスの幻覚作用が、容赦なく彼の全身を責めさいなむが……
苦しみもがきながらも、何とかこらえているのは流石、宙マン。
イフ「わははは、だが……やせ我慢もそれまでだ。
そぉれ、ドルゴよ、もう一発食らわせてやるがよい!」
ドルゴ「合点承知でござる、魔王様~!」
二度目の毒ガスを吐きかけるドルゴ!
だが、同じ手を二度も食うような宙マンではない――
プロテクションで、見事にドルゴの毒ガスを受け止め、無効化!
ドルゴ「な、何とぉっ!?」
宙マン「さぁ、今度はこっちがお返しする番だな!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、ドルゴを直撃!!
ドルゴ「どわっ、デュフゥオォォッ!?」
ひるみ、よろめくドルゴの巨体――
その隙をついて、素早く空へと大ジャンプする宙マン。
スパークとともに、虹色の残像を描きながらの超速回転!
ドルゴ「(驚愕)……デュフハっ……こ、これはーっ!?」
宙マン「行くぞ、ドルゴ!」
「エイヤァァーっ!
宙マン・レインボーキック!!」
全身のエネルギーを瞬時に増幅させ、両足で蹴りこむ大技……
虹色の一撃、レインボーキックがドルゴめがけて炸裂!
ドルゴ「こ、これは何とも……痛烈に、ござったぁぁ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
ビーコン「やったやった! やってくれたっスねぇ、アニキ!」
落合さん「お見事の一言に尽きますわ、お殿様!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、ありがとうなの~♪」
イフ「ぐぬぬぬっ……おのれ、よくもやってくれたな、宙マン!
だが、お前は未だ怪獣軍団の真の怖ろしさを知らぬ……
次こそは、必ず貴様の息の根を止めてやる!」
……などと言う、毎度お馴染みの負け惜しみはさて置いて。
我らが宙マンの活躍によって、毒ガス怪獣ドルゴは撃退され……
千歳には再び、楽しげな祭囃子が戻ってきたのであった。
ピグモン「はうはう~、宙マン、お疲れ様なの~」
宙マン「やぁやぁ、みんな、お待たせ!
それじゃ改めて、お祭りを楽しむとしようじゃないか」
落合さん「は~、お殿様の大勝利で一安心しましたら、何かこう
清々しい感じで小腹がすいてきちゃいましたわね~。
ちょっと出店で、何か買って参りましょうか?」
ビーコン「ヒヒヒ、これもまたお祭りの楽しみっスよねぇ!」
屋台料理などあちこちでつまみながら、ぶらぶらそぞろ歩くのも
また、お祭りならではの何とも言えない楽しさ。
ビーコン「ヒヒヒ、とか言ってる間に……」
落合さん「いよいよ来ましたわね、お神輿の第一陣!」
宙マン「そーれ、わっしょい!」
落合さん「わっしょい!」
ビーコン「わっしょい、わっしょいっス!」
ピグモン「わっしょいなの~♪」
神輿だワッショイ、祭りだワッショイ。
みんなの元気で、怪獣も不景気風もぶっとばせ――
楽しく浮かれて、また次回!