月日が過ぎ、季節が流れ行くのは本当に早いもので……
今年・2023年も、残すところあとわずか。
今年最後のエピソードとなる『飛び出せ!! 宙マン』。
年末だからと言って、特に何も変わることはなく……
師走ならではの慌ただしい空気の中にある北海道千歳市から
例によって物語を始めることとしよう。
宙マン「おお~、やってる、やってる!」
落合さん「予想はしてましたけど、やはり混んでますわねぇ」
ビーコン「何だかんだで、年に一度のことっスからね~」
ピグモン「はうはう~、なんだかお祭りみたいなの~」
この年末シーズンに相応しく、お正月用のお飾りや注連縄を売る
「年の市」が賑わいをみせている千歳市内。
こんちお馴染み宙マンファミリーも、新年用のあれこれを求めて
その賑わいの中に足を運んでいたのであった。
落合さん「何でしょう、こうして歩いておりますと……
今年も終わりなんだ、あっという間だなぁ……なんて
しみじみ実感が湧いてきますわよね~」
ビーコン「今年も話題盛りだくさんな年だったっスもんねぇ。
怪獣軍団絡みで、ドタバタした思い出も多かったっスけど……」
ピグモン「でも、それよりいっぱい、楽しい思い出も多かったの~」
宙マン「(微笑)あぁ、本当にね。……」
宙マン「今年も本当にいろいろあったけど……
年始用の買い物も済んだことだし、そのあたりの思い出話は
どこかでゆっくり腰を据えてからにしようじゃないか」
ビーコン「んー、要は飯食いながら、ってことっスね」
落合さん「となると……やはり今年も「来々軒」さんで?」
宙マン「(頷き)アギラさんのところの炒麺は、本当に絶品だからね。
毎年今ぐらいの時期になるとね、一度はあれを食べておかないことには
安心して年を越せる気がしないよ」
ピグモン「はうはう~、ピグちゃんも炒麺だいすきなの~♪」
ビーコン「やー、それにしても、アレっスねぇ。
年内最後になるエピソードでまで、結局オイラたちときたら
飯の話から逃れられないんスねぇ~」
落合さん「うふふ、まぁまぁ……それも日常、平和な証拠ですわ」
ビーコン「っスよね、食欲大事、チョー大事っスよね!
そして食欲と言えば、その次に来るのはトーゼン色欲……」
落合さん「(ジト目)……そうはいきませんからねっ!?」
そんな「いつも通り」のやり取りの中……
年末の平穏を破るかのように、突然「それ」はやって来た!
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラっ!
ビーコン「(驚き)お、おろろろろろっ!?」
落合さん「こ、これは一体……!?」
市内が激しく揺さぶられ、大地がメキメキ割れ裂ける。
激しく揺れる大地、割れ裂ける舗装道路。
土砂を撒きあげながら、地中よりその姿を現した巨体とは!?
「シュガガガガ~っ!!」
ピグモン「ああっ、今度もやっぱり怪獣なの!」
落合さん「本当にもう、怪獣軍団の方々ときましたら……」
宙マン「年末年始くらい、大人しくしてくれればいいものを!」
年の瀬だろうとお構いなしに、怪獣軍団の使者はやって来る。
今度の敵は白神山出身の音波怪獣・シュガロンだ!
シュガロン「シュガガガ~、年の終わりの締めくくり……
だからこそバッチリ地球を征服しないことにゃ、俺ら怪獣としちゃ
清々しい気持ちで新年が迎えられない、ってわけよ!」
シュガロン「今年最後の大仕事、綺麗に決めてラストを飾っちゃるぜィ。
この音波怪獣・シュガロン様がな!」
ビーコン「どひ~、ヤな方向にやる気全開っスよ!(汗)」
落合さん「年末ならば年末らしく……
綺麗と言うなら、お部屋の大掃除でもなさっていればよろしいのに!」
イフ「わはは……年末大掃除は、本部居残り組に任せておけ。
お前はお前の使命、年内最後の大仕事をしかと果たせ!
さぁ、突き進め! 破壊せよシュガロン!」
シュガロン「シュガガガ~、やってやりますぜ、魔王様~!
咆哮とともに、猛然と進撃開始のシュガロン!
迫り来る巨体を前に、悲鳴をあげて逃げまどう千歳の人々。
ビーコン「どひ~っ、ただでさえ忙しい年の瀬だってのに……」
落合さん「またまた面倒なことになってしまいましたわねぇ!」
宙マン「いいから、逃げるんだ――さぁ、早くこっちへ!」
おお――北海道千歳市、早くも大ピンチ!
だが、しかし。
怪獣のこれ以上の進撃を阻むべく、直ちに千歳基地の駐屯所から
陸の精鋭たちが出動したのであった。
「GO! GO! GO! GO!!」
勇ましい号令一下……
タクティカル・スーツに身を固め、おのおの得意の武器を携えて
続々と車両から飛び出してくる防衛隊員たち。
ピグモン「あっ、防衛隊のおじさんたちなの!」
落合さん「年末でも変わらぬお仕事ぶり、頭の下がる思いです!」
ビーコン「あとはねぇ、色々バッチリ決めて欲しいっス~!」
怪獣相手に一歩も退かず、勇敢に立ち向かっていく地上部隊。
専用のレーザーガンが、シュガロンを牽制し……
更に別の一方から、バズーカ砲撃をシュガロンへと叩きこむ。
勇猛そのものの地上戦、であったが……
ビーコン「ぶっちゃけ、あんま効いてない……っスよね?(汗)」
落合さん「シーッ、それは言わないお約束ですわよっ!(汗)」
ビーコン「毎度、頑張ってくれてんのは伝わるんスけど……」
落合さん「……どうしてこうも、攻撃が通用しないんでしょう?」
シュガロン「シュガガガ~、それはこの俺が無敵だからだぜ~っ!」
落合さん「あらあら、まぁまぁ、これはいけません!」
ビーコン「どひ~、こっちにお鉢が回って来ちまったっス~!」
ピグモン「はわわ、いいから早く逃げなきゃなの~!(汗)」
爆発! 炎上!
シュガロンの大暴れで、平和の街は今や地獄と化しつつあった!
シュガロン「シュガガガ、この調子なら……
千歳壊滅も前線基地建設も、アッという間だぜ!」
ビーコン「どひ~っ、完全に調子乗っちまってるっスよ、アイツ!」
落合さん「これでは、年越しの支度どころではございませんわ!」
ピグモン「はわわ……宙マン、宙マン、なんとかしてなの~」
宙マン「(頷き)仕方ない……こうなったら、やるしかないか!
宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、荒れ狂うシュガロンの前に舞い降りる!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
怪獣シュガロン、乱暴狼藉はそこまでにしてもらおうか!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「いえっふ~、アニキ最高、千両役者っス!」
落合さん「今年も一年、お殿様にはお世話になりました!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
シュガロン「シュガガガ~、やっぱり出たな、宙マン!
今年の汚れは、今年のうちに……
地球侵略の手始めに、まずは手前ェを片付けてやる!」
宙マン「さぁて、綺麗に片されるのはどっちかな……!?」
全身にみなぎる怒りを力に変え……
ファイティングポーズをとって、敢然と身構える宙マン。
シュガロン「シュガガ~、どこからでもかかって来やがれ!」
宙マン「ならば遠慮なく行くぞ、シュガロン!」
激突、宙マン対シュガロン!
人々が固唾を呑んで見守る中、巨大なる攻防戦が火花を散らす。
マシュマロが寄り集まったような、ふわふわした容姿に反し……
その実は怪獣界でも屈指のスタミナと、パンチ力とを売りにした
ボクサー・スタイルの暴れ者としてその名を轟かせる大怪獣。
右から、左から、それはもう嵐の勢いで。
宙マンめがけて繰り出される、シュガロンの連続パンチ攻撃。
だが、宙マンもさるもの。
軽快なフットワークと身のこなしで、パンチ攻撃を回避しつつ
冷静な判断力で敵の隙を伺い、その懐に飛びこんでいく。
シュガロン「シュガガ~、やりやがるなッ!」
宙マン「まだまだ、どんどん行かせてもらうぞ!」
シュガロンの足元で回転し……
逆立ちとともに、両足で敵の脳天に見舞うカンガルーキック!
シュガロン「(目を回して)……き、効いたぁぁ~っ!」
意表を突かれ、見事に直撃を受けてしまった音波怪獣。
眩暈とともに、その巨体がドドーッと崩れ落ちた。
ピグモン「はうはう~、宙マンすごいの~!」
落合さん「お見事ですわ、お殿様!」
ビーコン「こうなりゃもう、完全にアニキのペースっス!」
シュガロン「このォォ……なめやがって、なめやがって!」
怒り、口から熱線を吐くシュガロン。
だが宙マンは、大ジャンプでひらりと躱して大空に舞う!
シュガロン「(驚愕)……う、うおぉぉっ!?」
宙マン「受けてみろ!
宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、空中からシュガロンを直撃!!
シュガロン「とほほ、勝ちたかったのに、負けちゃったぁぁ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
イフ「おのれおのれ、またしても……宙マンめ、よくも!
だが、覚えておれよ、この借りはきっと返してやるぞ。
更に怖ろしい怪獣を送りこみ、来年こそは必ず!」
……などという、怪獣魔王・年内最後の負け惜しみはさて置いて。
我らが宙マンの活躍で、怪獣シュガロンは撃退され……
千歳市には再び、せわしなくも平和な年末が戻ったのであった。
宙マン「ふぅ~、食べた食べた、お腹いっぱいだぁ!」
ピグモン「はうはう~、炒麺おいしかったの~♪」
落合さん「やはり、「来々軒」さんの炒麺は安定しておりますわね~。
美味しさと言い、その安心感と言い、もはや貫禄ですわ」
宙マン「ああ、アギラさんのはいつ頂いても「外さない」よ!」
ピグモン「はうはう、これで安心して年が越せるの~」
宙マン「来年もよろしくお願いするよ、ピグモン」
ピグモン「うんっ! もっちろんなの~、宙マン!」
ビーコン「ヒヒヒ、変わらぬ味の安心感……
オイラもまた、その心意気を忘れずに頑張るっスよ~!
よっしゃ、まずは食後に落合さんへのセクハラから……」
落合さん「…………(ぶ ち っ !)」
げ し っ !
落合さん「ねーい、その悪い癖は今すぐ改めて下さいっ!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、この容赦なさも変わらぬ味わいっスぅぅ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
今年一年のご愛顧に……
宙マンファミリーから、心からの感謝を。
皆様、どうか良いお年をお迎え下さい!