気候も穏やかになり、食べ物もまた美味しく……
この日の北海道千歳市は、抜けるように青い秋晴れであった。
宙マン「いやぁ~、いい天気になってくれたねぇ!」
ピグモン「はうはう~、風もすっごく気持ちいいの~」
落合さん「スポーツの秋、芸術の秋に食欲の秋……」
ビーコン「いろいろ満喫したくなるのも、今が平和だからこそっスね!」
みくるん「暑すぎず、寒からずで……」
ながもん「今が……いちばん、いい……季節かも、しれない」
宙マン「しかしまぁ、なんだね。……」
宙マン「みんなで遠出をするにせよ、家でゆったり過ごすにせよ……
こう気候が良いと、気持ちよくお腹はすくものだねぇ」
みくるん「うふふっ、まさに「食欲の秋」ですね~」
ピグモン「はうはう~、宙マンは悔いしんぼさんなの~♪」
落合さん「ええ、でも……
お殿様のそのお気持ち、非常に良く判る気が致しますわ!」
ビーコン「ホ~ントこの季節は、何食っても旨いっスもんねぇ!
おかげさまで毎日、食が進むこと、進むこと!」
落合さん「(ジト目)えぇ、えぇ、毎日気持ちの良い食べっぷりで。
あとはその分、家の手伝いでもしてくれればどんなに……!」
ビーコン「ひぇぇ、それは言いっこなしっスよ、落合さぁん!(汗)」
宙マン「はっはっはっはっ」
みくるん「うふふっ、そんなお話聞いてたら、私たちも……」
ながもん「(頷き)何だか、お腹が……減って……きた」
ピグモン「はうはう~、それじゃみんなでランチなの~!」
落合さん「いいですわねぇ、いろんな秋がありますけれど……」
宙マン「まずはやっぱり、“食欲の秋”を満喫するところからだね!」
ビーコン「ヒヒヒ、それがまたオイラたちらしいっスよね☆」
「うぉぉぉ~ンッ……
いいよな、最高だよなァ、食欲の秋!?」
落合さん「ちょっ、何ですのビーコンさん、急に変な声出して!」
ビーコン「お、オイラじゃないっスよ!」
みくるん「じゃあ、今の声は、一体……!?」
……と言う、一同の疑問に答えるかのように!
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラっ!
ビーコン「ど、どひ~っ、地震っス!(汗)」
ながもん「(無表情)おおっ、これは……かなりの、揺れ」
ピグモン「きゃああんっ、ピグちゃん怖いの~!(涙目)」
激しい震動、その煽りを受けて裂ける道路、崩壊していくビル。
平和な昼下がりの千歳を襲った、局地的大地震……
そして大地を引き裂き、地上にその姿を現した巨体とは!?
「うぉぉぉ~ん、俺だぁ~っ!!」
みくるん「ああっ、今日も今日とて怪獣さんですぅ!」
落合さん「毎度毎度、飽きもせずに……よくもまぁ!」
ながもん「おお、あれは……用心棒、怪獣……ブラック、キング」
「うおぉ~んっ、そう! その通り!」
かつてその猛パワーで、栄光のウルトラ兄弟のひとりを圧倒し
処刑寸前と言うところにまで追い詰めた怪獣界の実力者。
ナックル星育ちの用心棒怪獣・ブラックキングの出現だ!
落合さん「そのブラックキングさんが、今度は何をしにおいでですの!?」
ビーコン「どうせまた、ロクでもない事に決まってるっスけど……」
ブラックキング「うおぉ~んッ、会って早々、そいつァご挨拶だなぁ!」
ブラックキング「俺もまた、食欲の秋を満喫したいだけなのによ!」
宙マン「あれれっ……そうだったのかい、そりゃとんだ失礼を!」
みくるん「何事も偏見で見るの、よくないかもですぅ」
落合さん「(うなずいて)えぇ、そういう事なら、話は別ですわ。
北海道の秋の味覚、たっぷり楽しんでいって下さいましね!」
ブラックキング「うぉぉ~んッ、分かってもらえりゃそれでいいのさ!」
ブラックキング「そんじゃま、ご理解も得られたことですしィ……
心置きなく、満喫モード突入と行こうかねぇ!
まずは飯の前に、しっかり運動して腹減らして……っと!」
みくるん「……へっ!?」
ながもん「(ボソッと)けっきょく、今回も……こうなる……運命」
落合さん「だー、もうっ! 前言撤回ですわ、超撤回っ!」
ビーコン「どひ~っ、えらいこっちゃ、えらいこっちゃっス~!」
ブラックキングの出現により、千歳はしっちゃかめっちゃかの大騒動。
だが、その進撃を阻むべく……
航空防衛隊・千歳基地の精鋭たちが、戦闘機に乗って馳せ参じた!
落合さん「あらまぁ、銀の機体が秋晴れの空によく映えて!」
ピグモン「なんだかすっごく、かっこいいの~!」
ビーコン「あとはとにかく実績だけ……頼んだっスよ~、防衛隊!」
「ようし……全機、一斉攻撃開始っ!」
戦闘機体の一斉攻撃!
小回りを活かした軽快な飛行性能を活かし、ロケット砲攻撃を
的確にブラックキングめがけて叩きこんでいく。
ブラックキング「ちょこざいな~、くらえッ!」
「おおっと、危ない危ない!」
軽快な運動性によって、ブラックキングを大いに翻弄するも……
今一つ、攻撃面での決め手に欠けてしまっている戦闘機隊。
ブラックキング「うぉぉ~ん、それがお前らの命取りだぁ!」
「う、うわぁぁぁっ……!!」
ブラックキングが口から吐き出す強力熱線の直撃を受け……
戦闘機は勇戦空しく、一機、また一機と撃墜されていく
みくるん「ぜ、全滅ぅ……!?」
ながもん「これは、色々……ヤバげで……まずい」
イフ「うわはははは……
素晴らしいぞブラックキング、さすがは怪獣界でも屈指の強者よ!
千歳を攻め落とし、地球を征服せよ……
さすればそなたの名は、怪獣軍団の勇者として永遠に輝こう!」
ブラックキング「うぉぉ~んっ、勿論そのつもりですぜ、魔王様!」
落合さん「……あぁ、もうっ、何てこと仰るんでしょう!?」
ビーコン「食欲の秋どころか、一気に胸焼けしそうな宣言っス!(汗)」
ピグモン「はわわ……宙マン、宙マン、なんとかしてなの~」
宙マン「ああ、やるとも、任せておけ!
宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、荒れ狂うブラックキングの前に舞い降りる!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
怪獣ブラックキング、これ以上の乱暴狼藉は私が許さないぞ!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「おおっ、今日も出たっス、アニキの十八番!」
落合さん「お殿様、いつにも増して素敵です……♪(うっとり)」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
ブラックキング「うぉぉ~んっ、カッコつけやがって!
怪獣仲間の噂通りにいけ好かない野郎だぜ、宙マン!」
宙マン「ああ、悪党の眼鏡に叶う暮らしはしてないつもりさ!」
ファイティングポーズで敢然と身構える宙マン。
さぁ、今日もまた、世紀のビッグファイトの幕開けだ。
ブラックキング「飯の前の丁度いい腹ごしらえだ。
このブラックキング様が「料理」してやるぜ、宙マン!」
宙マン「御託は結構、いいから勝負だ!」
真っ向激突、宙マン対ブラックキング!
落合さんたちがハラハラと見守る中、攻防戦が火花を散らす。
全身にみなぎる怪力で、猛然と襲いかかってくるブラックキング。
その勢いに、さしもの宙マンも押され気味か。
だが、ここで簡単に怯むような宙マンではない。
ブラックキングとの間に、熾烈で互角の打撃戦が展開される。
宙マン「くっ……なかなかやるな!?」
ブラックキング「こんなのは序の口よ――おりゃあぁぁっ!」
頭部の一本角をひらめかせ、宙マンめがけて突進!
強烈無比な頭突きが、ヒーローの胸板をしっかりと捉えていた。
大きく吹っ飛び、倒れ伏すヒーローの巨体!
みくるん「ああっ、宙マンさんが!」
ビーコン「どひ~っ、大口叩くだけのことはあるっスね!?」
落合さん「……いけません、これはどうにもいけませんわね!」
ピグモン「えう~、宙マン、負けないでなの~!(涙目)」
ながもん「……(まっすぐに宙マンを凝視)」
ブラックキング「宙マン、お次はこいつを受けてみやがれ!」
「う、うわぁぁぁぁ……っ!!」
更にダメ押しとばかりに、ブラックキングの吐き出す熱線!
爆風と衝撃波に、再び吹っ飛ばされて地に叩きつけられる宙マン。
イフ「おおっ、いいぞ……これはいける、今度こそ勝てるぞ!」
「フレー、フレー、ブラックキング!」
「がんばれ、がんばれ、ブラックキング!」
宙マン「(苦悶)……う、うう……っ!」
ブラックキング「うぉぉ~っ、宙マン、とどめだ!」
宙マン、気力を振り絞ってパワー全開!
迫り来るブラックキングを前に、立ち上がって体勢を立て直し――
宙マン「なんの、勝負はここからだ!
くらえ――宙マン・閃光波!」
ピッキュイィィーンっ!
高らかな音とともに、宙マンの手にストロボ状の発光が生じ……
次の瞬間、ブラックキングのボディで激しい爆発が起こる。
ブラックキング「ぐ、ぐおおおっ!?」
ビーコン「いよっしゃ、これでアニキのペースっスよ!」
落合さん「この流れを逃す手はございませんわ、お殿様!」
ブラックキング「ぐぉぉぉ……な、なめるな~っ!」
怒りの咆哮とともに、熱線を吐き出すブラックキング。
だが宙マンは、その一閃をひらりとかわして大空へ!
宙マン「エイヤァァーッ!
宙マン・アサルトヒール!!」
右足にエネルギーを集中させ、正義の鉄槌のごとく振り下ろされた
踵落としの一閃が、ブラックキングの脳天を叩き割るように炸裂!!
ブラックキング「あ、頭の上……お星さま、き~らきら~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
みくるん「わぁっ、やりました、宙マンさんの勝ちですぅ!」
ピグモン「はうはう~、なの~!」
ビーコン「さっすがぁ! やっぱアニキはそうじゃなきゃっス!」
落合さん「ありがとうございました、お殿様!」
イフ「うぐ、ぬぬぬぬっ……またも、またしても宙マンめが!
だが、覚えておれ……いつまでも、呑気に構えていられると思うなよ!?」
かくして、ここに平和は蘇った――
千歳のヒーロー・宙マンの活躍によって、怪獣ブラックキングは
地球征服の野望もろとも、見事に撃退されたのであった。
ピグモン「はうはう~、宙マン、おつかれさまなの~♪」
宙マン「いやぁ、ひと汗かいたらお腹ペコペコだ――
早いトコお昼にしようじゃないか、お昼に!」
みくるん「うふふっ、ここから食欲の秋・本番ですね」
宙マン「あぁ、そういうコトさ。
はてさて、何を食べようかなぁ――」
ながもん「戦いの、あとは……やっぱり……肉料理?」
ピグモン「はうはう~、お肉を噛みしめればパワーがつくの~♪」
宙マン「う~ん、なるほど、魅力的な提案だね!」
ビーコン「チチチ、いやいやアニキ!
オイラ的には、敢えてそこで蕎麦とか、野菜フルコースなんかの
あっさり系をお勧めしたいとこっスよん」
宙マン「ほう、それはそれで美味しそうではあるけど……」
落合さん「何か特別の理由でもありますの、ビーコンさん?」
ビーコン「ヒヒヒ……理由も何も、決まってるじゃないスか!
大本命のお肉ちゃんは、ベッドルームでじっくり……っスよ。
これがホントの酒池肉林、な~んちゃってっス☆」
むにゅん、ふにふにっ
落合さん「(赤面)……きゃ、きゃあああああっ!?」
げ し っ !
落合さん「ねーい、上手いコト言ったおつもりですかっ!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、秋風がすきっ腹に沁みるっスぅぅ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
おいしい街の、おいしいヒーロー。
我らが宙マン、次回もおいしく大活躍だよ~!