「空の玄関口」である新千歳空港に対しての「海の玄関口」、
北海道を代表する、港湾・工業都市のひとつ。
それが、『宙マン』シリーズの舞台・千歳市の“おとなりさん”にあたる
各種輸送船やフェリー等が発着し、ホッキ漁をはじめとした水産業も盛んな
この苫小牧市は、また同時に……その地域条件ゆえに、大海原を根城とする
海棲怪獣らにとっては、千歳襲撃に際しての絶好の上陸ポイントでもあった。
そして、今また……
海面の不気味な泡立ちから、恐るべき大怪獣がその姿を見せた!
「あびゃびゃ~んっ!」
波しぶきをあげ、ゆっくりと苫小牧港から上陸してくる巨体。
怪獣軍団の一員・深海怪獣レイロンスの出現に、苫小牧市は早くも大混乱。
レイロンス「あびょびょっ~っ、怪獣レイロンス、只今推参でっす!
地球征服の邪魔者、ウチら怪獣軍団の目の上の瘤……
宙マンはどうしたでっすか、宙マンはどこにいる!?」
っ、なんか今日も怪獣さん!?」
ながもん「またまた……北海道の……大ピンチ」
みくるん「どうしよう、千歳の宙マンさんにもしもの事があったら……」
レイロンス「(耳ざとく聞きつけ)……千歳?
あびゃびゃびゃ、そうかそうか、宙マンは千歳にいるでっすねぇ!」
みくるん「(慌てて口を抑え)……きゃ、きゃあぁぁぁっ!?」
ながもん「あの、今のは……聞かなかったことに……して、もらえると」
レイロンス「(ニヤニヤ)あびゃびゃ~、もう遅いので~っす!」
イフ「ようし、いいぞレイロンス、またとないチャンスだぞ!
お前はただ粛々と、自分の使命を果たすのだ――
千歳へ向かえ、恨み重なる宙マンめを今度こそ抹殺するのだ!」
レイロンス「あびゃびゃ~んっ、承知の助でっす、魔王様~!」
苫小牧市を横切り、陸地を猛然と突き進んでいくレイロンス。
目指す先は、毎度おなじみの舞台……
そう、宙マンファミリーが暮らす北海道千歳市だ!
みくるん「ふぇぇ……どうしよう、どうしよう……!」
ながもん「仕方ない……あれは……不可、抗力。
宙マンたちを……信じよう……それしか、ないっ」
みくるん「ううっ……(涙目で頷いて)」
とか何とか言っている間にも、レイロンスは進撃を続け……
苫小牧から千歳へ、事態は一気に急展開。
レイロンス「あびゃびゃ~んっ!
と言うわけで、不肖レイロンス、来ちゃったでっす~!」
ピグモン「はわわわ、突然そんな風に来られても困るの~!(涙目)」
宙マン「全く、怪獣軍団のメンバーときたら……
そういう強引で身勝手なところは、本当に相変わらずだなぁ!」
レイロンス「あびゃびゃ、アポなし訪問と大規模破壊は怪獣の基本でっす!
これからまた、派手に暴れ回ってやるでっすよ~!」
ビーコン「ひぇぇ、そりゃないっス、メッチャ困るっスよ!
オイラにだって、オイラの都合ってものがあるんスから――
今から人生における、超大事な仕事をやりとげようとしてたのに!」
レイロンス「(ちょっと興味が沸いて)……ほほう?」
落合さん「あらあら、珍しいこともあるものですわねぇ!
ビーコンさんから、お仕事なんて言葉を聞ける日が来るなんて……」
ビーコン「いやいや~、“愛は心の仕事”って言うじゃないスか、昔から。
だからこそオイラは、落合さんとのベッドインとかセクハラとかに関して
日々、詳細かつたゆまぬ脳内シミュレートを……」
げ し っ !
落合さん「そんな使命感、ドブ川に叩き捨てておしまいなさいっ!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、人生はキビシイっスねぇぇ~」
レイロンス「(呆れ)聞いて損したでっす……く、く、くっだらねぇぇ~っ!」
イフ「これこれ、奴らのペースに巻き込まれるでない!
惑わされるな、レイロンス!」
イフ「お前はお前の使命を果たせ――粛々と、あくまでも粛々とな!」
レイロンス「あびゃびゃ~んっ! 承知の助でっす、魔王様!」
怪獣魔王の命を受け、奮い立つレイロンス!
重々しく進撃開始する巨体を前に、悲鳴をあげて逃げ惑う人々。
落合さん「ああ、もう……結局はこうなってしまうんですのねぇ!」
ビーコン「これだったらまだ、オイラのセクハラトークの方がよっぽど……」
落合さん「(ジト目)それとこれとは別問題ですっ」
ピグモン「ああん、もう二人とも、喧嘩してるばあいじゃないの~!」
……などとやっている間に、上空から轟然と響き渡るジェット音。
航空防衛隊の戦闘機が、レイロンス迎撃のスクランブルをかけたのだ。
雨あられと叩きこまれる、戦闘機のロケット弾!
相次ぐ激しい弾着、しかしレイロンスはびくともせず進み続ける。
レイロンス「あびゃびゃ~んっ、うるさい小蝿どもでっすねェ!」
「う、うわーっ!?」
レイロンスの頭部から放たれる怪光線!
その威力に、一機、また一機と撃墜されていく戦闘機である。
ビーコン「ああっ、やられた……
うひィ、また今回も全滅させられちまったっス!」
落合さん「“今度こそは”と、つい毎回期待してしまうのですけれど……」
ビーコン「頑張ってるのは分かるだけに、辛いっスよねぇ~!」
落合さん「……(しみじみと頷く)」
戦闘機隊を全滅させ、意気あがるレイロンス。
怪光線と怪力で、町の建造物を次から次に破壊していく!
落合さん「いけませんわ、このままでは千歳が大ピンチです!」
ピグモン「はわわ……お願い宙マン、何とかしてなの~」
宙マン「ようし、分かった、何とかしよう!
宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、猛るレイロンスの前に舞い降りる!
宙マン「トゥアーッ! 宙マン、参上!
深海怪獣レイロンス、私がいる限り千歳で好き勝手はさせないぞ!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「いよっしゃ、アニキの十八番が出たっスよ!」
落合さん「いつもながら、心強くも頼もしいお姿です……♪(うっとり)」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
レイロンス「あびゃびゃ~んっ、出たな宙マン!
仲間の分の恨みもこめて、百倍返しをしてやるでっす!」
宙マン「なんの、今回もまた返り討ちにしてやるさ!」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
今日もまたまた、世紀のスーパーバトル開幕だ!
レイロンス「あびゃびゃ~んっ!」
真っ向激突、宙マン対レイロンス!
落合さんたちが見守る中、怪獣と超人が戦いの火花を散らす。
レイロンス「あびゃびゃ~んっ、死ね死ね、宙マン!」
宙マン「いやいや、断固お断りだね!」
両腕の巨大な鰭を打ち振り、チョップ攻撃のレイロンス。
その打撃を躱しながら、宙マンは冷静に相手の隙を見極め――
ド ガ ァ ァ ッ !
レイロンス「……が、ガはぁぁぁっ!?」
宙マン「どうだレイロンス! 正義のキックに怖れをなしたか!?」
レイロンス「あびゃびゃ……な、ナメんなでっすぅぅ~っ!」
レイロンスの口から、プクプクと吐き出される無数のシャボン玉――
……が、周囲のビルなどに触れると同時に音を立てて爆発!
ファンシーな見た目とは裏腹の破壊力に、不意を突かれてよろめく宙マン。
更にダメ押しとばかり、レイロンスの頭頂部から放たれる怪光線。
ビルが、自動車が……
そして宙マンが、その威力に吹っ飛ばされる!
グワーン! ズガガガガーンっ!
「う、うわぁぁぁぁ……っ!!」
ピグモン「ああっ、ちゅ、宙マン!?」
ビーコン「やばいっスよ、アイツ案外やっかいっス!」
落合さん「冬のお魚さんだけに「脂が乗って」おりますのかしら!?」
ビーコン「……って、こんな時に上手いコト言ってる場合っスか!(汗)」
宙マン「(苦悶)……う、うう……っ!」
レイロンス「あびょびょ! ザマぁないでっすねェ、宙マン!?」
イフ「その調子だレイロンス、奴に再び立ち上がる隙を与えるな!
お前の重量級ボディで、そのまま宙マンを推し潰し……
ペシャンコの“のしヒーロー”にして、土産物屋に並べてしまうのだ!」
レイロンス「承知の助でっす、魔王様――
さぁ、これで最後でっすよ、潰れろ宙マン!」
宙マン「なんの……宙マン・サンブライト・スパーク!」
宙マンの胸から周囲に迸る、太陽光のごときまばゆい閃光!
強い光に弱い深海怪獣には、手痛いしっぺ返しである。
レイロンス「(怯んで)……あ、あびゃびゃびゃっ!?」
レイロンスが狼狽え、攻撃の手が緩んだ一瞬の隙を見逃さず……
遂に宙マンは伝家の宝刀、伝説のスーパー剣を抜き放った!
宙マン「正義の刃、受けてみろ!
秘剣・スーパー天翔斬り!!」
ビシュイィィィーンっ!
スーパー剣を大きく振るい……
刀身に蓄積したエネルギーを、鋭い光刃に変えて放つ大技!
宙マンの「天翔斬り」が、レイロンスを縦一文字に切り裂いた。
レイロンス「あびょびょびょっ……ざ、残念無念で~っす!」
やったぞ宙マン、大勝利!
ビーコン「いえっふ~! やったやった、さすがアニキっスね!」
落合さん「お見事でしたわ、お殿様!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、ありがとうなの~♪」
イフ「うぐぐぐっ……またしても、またしても宙マンめが!
いいか、この仕返しは必ずしてやるからな――
次は、お前の身も心も凍りつく怖ろしい作戦で攻めてやる!」
……などと言う、怪獣魔王のいつもの負け惜しみはさて置いて。
かくして、今回もまた宙マンの活躍によって……
深海怪獣レイロンスは撃退され、千歳の街に平和が蘇ったのであった。
落合さん「改めまして……お疲れ様でした、お殿様!」
ビーコン「アニキのおかげで、オイラたちもほっと一安心っスよ~。
ほっとしたところで、心おきなくさっきのエロ話の続きを……」
げ し っ !
落合さん「っがー、少しは懲りることを覚えなさいっ!!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、落合さんは最後の最後までキビシイっスねぇぇ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
お馴染み、千歳の宙マンファミリー。
寒さに負けず、今日も元気です!