うららか陽気に暖められた、ほんわか平和な空気……
お馴染み宙マンファミリーが暮らす街、ここは北海道千歳市。
そして、そんな良いお天気であるからには……
冬の反動もあり、じっとしていられないのがこの人々である。
と言う訳で、幕を開けた『飛び出せ!! 宙マン』のお話。
宙マンファミリーと一緒に、まずは賑やかな千歳の街に出てみよう。
「ようようよう、宙マンさんじゃないですか~!」
宙マン「や、こりゃどうも!」
落合さん「こんにちは、いつもお世話になっております。
私どもの良き知人にして、千歳市内で農業を営んでおられる
熊澤農場の経営者たる熊澤さま!」
熊澤さん「親切な説明台詞、こちらこそありがとうだよ(苦笑)!」
ビーコン「熊澤さん、今日は一体どうしたんスか?」
熊澤さん「一体も何も……仕事だよぉ、シ・ゴ・ト!
ちょうど今さっきねぇ、「道の駅」の直売所に、年間契約の更新がてら
ウチの農場で採れた野菜を卸してきたところなんだよ」
ビーコン「へー、なるほど。
熊澤さんとこの野菜、すっげー評判いいスもんねぇ!」
ピグモン「はうはう~、ピグちゃんも大好きなの~♪」
落合さん「おかげさまで、毎日の食卓が華やいでおりますわ」
熊澤さん「わはは、そう言ってもらえると嬉しいねぇ!」
熊澤さん「近いうち、宙マンさんちにも差し入れすっからね~。
へへへっ、まぁ、今年のも期待しててチョーダイよ!」
宙マン「えぇ、えぇ、それはもう!」
落合さん「野菜が良いと、私も腕の奮い甲斐がありますわっ」
ビーコン「ヒヒヒ、いいっスねぇ、こういう会話は平和の証っス!」
ビーコン「ただ、いつもみてーに、怪獣・宇宙人だの何だの……が
空気読まずに出てこなきゃいいんスけど……」
……と、ビーコンが言ったその矢先。
おお、これはどうしたことだろう?
それまでの春らしい青空を遮るかのように、妖しげな霧が沸き立って
急速に千歳の周囲へと広がり始めていったではないか。
宙マン「おや、おかしいな……急にこんな霧が出てくるなんて……」
落合さん「(ジト目)もう、ビーコンさんが余計なこと仰るから!」
ビーコン「(憤慨)……ちょ、オイラのせいっスかぁ!?」
熊澤さん「って言うか……この霧、なんかヘンじゃねーかなぁ!?
妙にケモノ臭くて、生暖かくて……ねぇ!?」
あまりにも不穏、あまりにも気味の悪い謎の霧。
しかも、よく耳を澄ませてみれば……
「ビュルル……ビュイイ~ンっ……」
熊澤さん「……唸り、声……?」
落合さん「まさか……本当に、怪獣さん……!?(汗)」
ビーコン「い、いやいやまさかっス!
怪獣なんかじゃないっスよ、きっとタダの風の音……(汗)」
……だが、そんなビーコンの一縷の望みを打ち砕くように!
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラっ!
宙マンたちの眼前で、めきめきと音を立てて割れ裂ける大地。
土砂を激しく巻き上げ、地上にその姿を現したのは!?
「ビュイイ~ンっ!!」
熊澤さん「どひゃ~っ! で、出た、出たァ!」
ビーコン「んんんー、あの顔、アニキから話に聞いた覚えが……?」
ピグモン「ピグちゃん知ってるの。岩石怪獣・サドラなの!」
落合さん「全く……毎度毎度、ほんとに全く!(汗)」
怪獣軍団の一員として、幾度となく地球を襲い……
そして我らが宙マンとも、幾度となく激闘を繰り広げてきた
霧吹山出身の暴れ者、岩石怪獣サドラの眷属。
サドラ「ビュイイ~ンッ、そしてだな……
この俺ちゃんの強さは、一族中でも折り紙つきだぜ!」
サドラ「どぉれ、今からそれを証明してやるかぁ!」
落合さん「いえいえ結構です、本気でお断りしますからっ!(汗)」
ビーコン「っても、どうせ聞いてくんないんスよねぇ!?(汗)」
サドラ「ご同意ありがとう、それじゃサクサク進めようかぁ!」
ピグモン「えう~、なんだかとってもすっごく嫌~んなの~」
宙マン「……うぬっ!」
スライ「んー、ふふふ、いかがですか魔王様……
春を迎え、冬眠から覚めたサドラ君のあの張り切りよう」
スライ「この勢いとパッションですよ、怪獣に必要なのはッ。
そしてそれを、地球侵略に活かさぬテはありますまい!」
イフ「うむっ、ワシも賛成するぞ、“魔導の”スライ。
さぁ行けサドラ、千歳の街を徹底的に破壊せよ!」
サドラ「ビュイイ~ンっ、お任せ下さい、魔王様!
ケンカとぶっ壊しなら、俺ちゃんのお手のモンでさぁ!」
高らかな咆哮とともに、進撃を開始するサドラ!
迫り来る巨体を前に、右往左往しながら逃げ惑う人々。
ビーコン「どひ~っ、やっぱこうなっちまうんスね~!」
落合さん「毎度とは言え、ゲンナリさせられますわ!(汗)」
宙マン「みんな、早く逃げるんだ――熊澤さんも早く!」
熊澤さん「あわっ、あわわわわわ……!」
おお、今まさに千歳の危機!
怪獣サドラの出現により、千歳の街はたちまち大パニック!
だが、こんな緊急事態に黙っている航空防衛隊ではない。
熊澤さん「(空を見上げて)おおっ、あれは!」
ビーコン「(ガッツポーズ)来てくれたっスね、航空防衛隊!」
落合さん「怪獣の進攻、なんとか食い止めて下さいませ!」
ピグモン「はうはう~、防衛隊のおじさんたち、頑張ってなの~!」
「怪獣め、これ以上は好き勝手にのさばらせるものか!
それっ、全機、攻撃開始っ!」
戦闘機編隊から叩きこまれる、ロケット砲の一斉攻撃!
人間相手の戦争ならば、絶大な威力を発揮するであろう通常兵器……
だが、サドラのしなやかで、かつ強靭な皮膚には全く通用しない。
サドラ「ビュイイ~ンっ、ヘナチョコ過ぎて笑えてくるぜ!」
「……ど、どわぁぁぁ~っ!?」
サドラの口から、勢いよく吐き出される高圧の霧!
その威力の前に、次々と撃墜されていく戦闘機隊である。
ピグモン「ああっ、やられちゃったの!」
ビーコン「っかー、やっぱりっスか、やっぱりぃ!」
落合さん「シーッ、やっぱりとか仰らない!(汗)」
……などと、人々が嘆いたりボヤいたりしている間にも。
怪獣サドラの威力によって、今や千歳の平和は風前の灯であった!
落合さん「どうしましょう、このままでは本当に街が……」
ビーコン「どひ~っ、もうダメっス、おしまいっス!」
ピグモン「宙マン、宙マン、今日もたよりにしてるの~」
宙マン「(頷き)ああ、やるとも! 宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、敢然とサドラの前に舞い降りる!
宙マン「トゥアーッ! 宙マン、参上!
これ以上の乱暴は私が許さないぞ、岩石怪獣サドラ!」
ズ、ズーンっ!!
落合さん「お殿様、今日もまたまた素敵です……♪(うっとり)」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
ビーコン「こうなったらもう、アニキだけが頼みの綱っスよ!」
サドラ「ビュイイ~ンっ、出たなァ宙マン!
サドラ一族を代表して、俺ちゃんが仲間の恨みを晴らすぜ!」
宙マン「さぁて、そう上手くいくかな……!?」
全身にみなぎる怒りを力に変え……
ファイティングポーズをとって、敢然と身構える宙マン。
サドラ「ビュイイ~ンっ、ナメやがって! 気に食わねぇぜ!」
宙マン「どこからでも来るがいい!」
激突、宙マン対サドラ!
人々がハラハラと見守る中、巨大な正邪の死闘が展開される。
両手の鋏を振り回して迫るサドラ!
その打撃をかいくぐりながら、宙マンも果敢に相手へ肉薄していく。
相手の腕をとっての、押さえこみ戦法!
サドラ最大の武器たる鋏を、容易に使わせまいと言う判断だ。
サドラ「ビュイイ~ンっ、こ、こん畜生……!」
宙マン「まだまだ、お次はこれだ――それっ!」
バキィィィッ!
一閃炸裂、宙マン得意のストレートパンチ!
顔へまともに鉄拳を食らい、さしものサドラも大きくよろめく。
宙マン「どうだ、恐れ入ったと詫びを入れる気になったかね!?」
サドラ「ビュイイ~ンっ、ナメやがって、ナメやがって~!」
逆上したサドラの鋏が、宙マンへと炸裂!
胸を鋭く切り裂かれ、大きく吹っ飛ぶヒーローの巨体。
ズ、ズーンっ!
落合さん「あぁっ……お、お殿様が!」
熊澤さん「まずい、まずいよ、これはかなり!」
ビーコン「どひ~っ、アニキ、アニキぃ~!」
ピグモン「はわわ、宙マン、負けないでなの~!」
スライ「んー、ふふふ!
どうです魔王様、期待を裏切らぬサドラ君の戦いぶりは!」
イフ「よぉし、イケる! これは今度こそイケるはずだぞ!?」
宙マン「(苦悶)……うう……うっ!」
サドラ「とどめだ、跡形もなく吹き飛ばしちゃるぜィ!」
「なんの……やられて、たまるかッ!!」
宙マン、パワー全開!
サドラの吐き出した高圧霧を、ジャンプでかわして大空へ。
サドラ「(驚愕)びゅ、ビュイィィっ!?」
宙マン「エイヤァァーっ!
宙マン・アサルトヒール!!」
右足にエネルギーを集中させ、正義の鉄槌のごとく振り下ろされた
踵落としの一閃が、サドラの脳天を叩き割るように炸裂!!
サドラ「びゅ、ビュイイ~ンッ、こりゃタマラ~ンっ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
ビーコン「いえっふ~、今回も見事にアニキの勝ちっス!」
落合さん「やりましたわ、お殿様! 流石です!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、ありがとうなの~♪」
イフ「うぐぐぐっ……またしても、またしても宙マンめが!
だが、この次こそは必ずお前に赤っ恥をかかせてやるからな!
よいか宙マン、忘れるでないぞ!?」
……な~んて言う、いつもの負け惜しみはさて置いて。
かくして、今回もまた宙マンの活躍により……
獰猛な岩石怪獣サドラは倒され、千歳に平和が蘇ったのであった。
熊澤さん「やぁやぁ、ありがとありがと! 流石だねぇ、やっぱり!
宙マンさんのおかげで、ほっと一安心だよ~」
宙マン「はっはっはっ、熊澤さんたちもご無事で何より!」
熊澤さん「仕事も済んだことだし、怪獣も退治されて……
ほっとしたところで、急に腹が減って来たねぇ」
宙マン「ん、それじゃ我が家でご一緒に……昼飯、いかがですか?
もちろん、熊澤さんの大好きな例の飲み物も……」
熊澤さん「っかー、嬉しいなあ宙マンさん、判ってるねぇ!」
落合さん「では、急ぎ支度を致しませんとね」
ピグモン「はうはう~、みんなでお食事、楽しいの~♪」
ビーコン「ヒヒヒ、これから春から夏になっていくにつけ……
アウトドアでの色んなことが、楽しくなってくっスよねぇ。
いろいろ食ったり、いろいろしたり!」
落合さん「(ジト目)……いろいろ……したり?」
ビーコン「(頷き)具体的にはまず、落合さんがパンツを脱いで……」
げ し っ !
落合さん「だーっ、そんな説明いりませんからっ!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、こっちの一撃は問答無用っスぅぅ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
魔の挑戦もなんのその……
悪い奴には、キツーイ仕置きの宙マン流。
さァて、次回はどんな活躍を見せてくれるかな?