8月も終盤、9月がもう間近とは言え……
まだまだ厳しい暑さが続くのは、北海道もまた例外ではない。
というわけで今回の『宙マン』は、そんな残暑にうだり気味の
千歳市ほんわか町、「宙マンハウス」から幕を開けよう。
熊澤さん「やぁやぁ、宙マンさん、こんにちは~!」
宙マン「やぁ、こりゃどうも、いらっしゃい!」
落合さん「ようこそ、いらっしゃいませ。
私どもの良き知人にして、千歳市内で農業を営んでおられる
熊澤農場の経営者たる熊澤さま!」
熊澤さん「その説明台詞も、もはや恒例って感じだねぇ。
有難がっていいんだか、苦笑いすりゃいいんだか!」
ビーコン「どーしたっスか、今日はまた?」
熊澤さん「やー、特に用事ってほどでもないんだけどね。
ただ、毎日毎日うだるみてぇに暑いじゃない?」
宙マン「うん、流石に我々も辟易気味ですよ、この猛暑のしぶとさは」
ピグモン「えう~、そろそろ涼しくなってほしいの~」
熊澤さん「うんうん、だからだよ、だからさ。
さっぱり冷たい麺でも食って、暑気払いなんてどうかなって」
宙マン「ほう、冷たい麺……と言いますと?」
落合さん「もしかして、いま評判の“ホッキムチ冷麺”ですか?」
熊澤さん「うんうん、それそれ、それなんだよ!
すっきり味のスープに、キムチの酸味と辛さ……
そこへ、北寄貝の歯ごたえが絶妙にマッチする、と!」
ビーコン「うひょ~、熱弁っスねぇ、熊澤さん!」
落合さん「音声情報だけでも、充分以上の飯テロ行為ですわ!」
熊澤さん「……で、一人で食いに行くのも何だと思ってさ。
そこで宙マンさんたち、誘いに来たわけよ!」
宙マン「なるほど、そいつは有難い!」
宙マン「お気遣い痛み入ります、熊澤さん。
みんなでその“涼麺”、頂いてみようじゃないですか!」
熊澤さん「よっしゃ、そうこなくっちゃね!」
ビーコン「おー、今の話だけで……
オイラもう、居てもたってもいられねーっス!」
ピグモン「はうはう~、ピグちゃんも早く食べたいの~」
落合さん「(微笑)では、早速お出かけの支度を……」
……と、その時である!
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラっ!
落合さん「……あっ、あらあらまぁまぁ!?(汗)」
ビーコン「うわ、うわ、うわ~っス!」
市内が激しく揺さぶられ、大地が音を立てて割れ裂ける。
大量の土砂を天高く撒き上げ、舗装道路をもやすやすと引き裂いて
地の底から今また新たに、その姿を現わさんとしている邪悪な影。
……果たして、それは!?
「グワッガッガァァ~ッ!!」
熊澤さん「どひゃ~っ、か、怪獣じゃないか!?」
ビーコン「今からメシ食いに行こう、って時に!」
落合さん「毎度ながら、最悪のタイミングですわねぇ!」
「グワッガッガ~、すっきり味だの、さっぱり味だの……
黙って聞いてりゃ、な~に寝ぼけたコト言ってやがる!?」
宙マン「おや、何か問題でもあったかね?」
「グワッガッガ~、大アリよぉ!」
「今の季節に必要なのは、激辛の刺激と濃厚な旨味……
こいつで暑さを吹っ飛ばすのが最高なんだよ、違うかィ!?」
ビーコン「ふむ、それも確かにひとつの答えっスけど……」
「グワッガァ~、有難う、ご理解いただき有難うっ!
そんじゃ、そう言うワケなんで――」
「ここからは、この電気怪獣・エレキザウルス様のターンってことで。
激辛スパイシーかつ、濃厚に暴れまくるんでヨロシクぅ!」
ビーコン「ひぇぇ、この流れでそう来るっスか!?(汗)」
ピグモン「えう~、そんなのよろしくしたくないの~(涙目)」
イフ「わははは……さぁ行け、怪獣エレキザウルス!
地球の者どもに、お前の力を見せてやれ!」
エレキザウルス「グワッガッガ~、お任せ下さい、魔王様!」
怪獣魔王の命を受け、進撃開始するエレキザウルス!
迫り来る巨体に、慌てて逃げ出す人々。
落合さん「だーっ、もう、ビーコンさんが余計なこと仰るから!」
ビーコン「……ちょ、オイラのせいっスかぁ!?」
熊澤さん「どうにもこうにも、旨くない展開だねィ!」
おお、またしても……危うし地球、危うし千歳。
電気怪獣の暴虐、許すまじ!
千歳の平和を守るべく、航空防衛隊が直ちに出撃した。
ビーコン「おおっ、今日も今日とて航空防衛隊っス!」
落合さん「お願いしましたわよ~、どうか今度こそは!」
熊澤さん「バッチリ頼むぜ、応援してるよ~んっ!」
「ようし……全機、一斉攻撃開始っ!」
攻撃、攻撃、また攻撃!
エレキザウルスへと、嵐の激しさで叩きこまれる一斉砲火。
エレキザウルス「グワッガ~、テメェらの出る幕じゃねぇっての!」
「……う、うわぁぁぁぁ~っ!?」
激しいスパークが走り、怪獣の角から迸る電撃光線!
その直撃を受け、次から次に撃墜されていく戦闘機。
熊澤さん「(頭を抱え)あぁっ、やられちゃったぁ!」
落合さん「今日も今日とて……でしたわねぇ(汗)」
ビーコン「努力は認め……たいんスけどねぇ!?(汗)」
……などと、人々が嘆いたりボヤいたりしている間にも。
爆発! 炎上!
エレキザウルスの大暴れによって、平和の中にあった千歳市は
一転、破壊と混乱の渦巻く地獄と化しつつあった!
エレキザウルス「グワッガッガ~、どんなもんだい、俺の強さ!
千歳は……地球は、間もなく怪獣軍団の物になるんだ!」
ビーコン「どひ~っ、あんなコト言ってるっスよ、アイツ!」
落合さん「ですが、あの暴れぶりでは……そうなりかねませんわ!」
ピグモン「はわわ……宙マン、宙マン、なんとかしてなの~」
宙マン「仕方ない、やるしかないか! 宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
荒れ狂うエレキザウルスの前へ、敢然と立ちはだかるこの雄姿!
ビーコン「っしゃ! アニキの十八番っスよ!」
落合さん「ああ、やはり素敵です、お殿様っ!(うっとり)
熊澤さん「宙マンさん、よろしく頼んだよぉ……!」
エレキザウルス「グワッガッガ~、出やがったなァ、宙マン。
さっきも言った通り、俺の攻撃は辛口だぜェ!?」
宙マン「(ニヤリ)……さぁて、ね。
辛口の反撃で、逆に涙目になるのはどちらかな……!?」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ。
エレキザウルス「抜かしやがったな、叩きのめしてやるぜ!」
宙マン「さぁ来い、エレキザウルス!」
真っ向激突、宙マン対エレキザウルス!
人々が見守る中、巨大サイズの攻防は早くもヒートアップ。
鋭利なハサミ状の両腕で、猛然と襲いかかってくる電気怪獣!
暴風のように畳み掛ける猛攻をかわしつつ、宙マンも怯むことなく
相手の隙を伺い、果敢に接近戦を挑んでいく。
エレキザウルス「グワッガッガ~、なかなかやりやがるな!」
宙マン「なんの、お楽しみはここからさ!」
エレキザウルスの足元で回転し……
逆立ちとともに、両足で敵の脳天に見舞うカンガルーキック!
エレキザウルス「ぐぁっ、ハァァァッ……!」
意表を突かれ、見事に直撃を受けてしまった電気怪獣。
眩暈とともに、その巨体がふらふらと後退した。
落合さん「これはお見事ですわ、お殿様!」
ビーコン「っしゃー、こうなりゃ完全にアニキのペースっス!」
熊澤さん「それ行けー、宙マンさん! GOGOだよ~!」
宙マン「ようし……それじゃ、決めさせてもらおうか!」
エレキザウルス「グワッガッガ~、なめるなよォ、宙マン!?」
「う、うわぁぁぁぁ……っ!?」
エレキザウルス怒りの放電光線が、宙マンのボディを直撃!
超高圧の電流に、全身を舐め回されるがごとく痛めつけられ……
さしもの宙マンもたまらず、ドドーッと大地に倒れ伏してしまう。
落合さん「……お、お殿様っ!?」
ビーコン「や、やべーっスよ、このままじゃアニキが……!」
ピグモン「はわわ、宙マン、まけないでなの~!」
「おおっ、いいじゃん、押してる押してる!」
「エレキザウルスの野郎、やりやがるなぁ!」
イフ「そうだ、それでよい……その調子だ、エレキザウルスよ。
お前の力で、今度こそにっくき宙マンに引導を渡せ!」
宙マン「(苦悶)……う、うう……っ!」
エレキザウルス「(ニヤニヤ)グワッガッガッ……悪ィな、宙マン。
魔王様のご命令だ、ここで死んでもらうぜェッ!」
「なんの、これしき……負けて、たまるかッ!」
宙マン、パワー全開!
エレキザウルスが放った電撃光線を、ひらりとジャンプでかわし
大空高く舞い上がる。
宙マン「くらえ――宙マン・閃光波!」
ピッキュイィィーン!
高らかな音とともに、宙マンの手にストロボ状の発光が生じ……
次の瞬間、怪獣の眉間で激しい爆発が起こる。
エレキザウルス「(よろめいて)が、ガロロォォッ……」
宙マン「行くぞ、エレキザウルス!」
宙マン「ダァァーッ! 宙マン・回転フルキック!」
高速回転の勢いを加え、両足で蹴り込む正義のキック!
鋭い足先を食らって、怪獣がブッ倒れたところへ――
宙マン「とどめだ!
宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、エレキザウルスを直撃!!
エレキザウルス「グワガァァッ、またまた今度も……負けちゃったぁぁ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
熊澤さん「おおっ、やったやった、さすがは宙マンさんだねぇ!」
ビーコン「そりゃそうっスよ、なんたってウチのアニキっスもん!」
落合さん「お殿様のこの雄姿、いつもながら惚れ惚れ致します……♪」
ピグモン「はうはう~、宙マン、ありがとうなの~♪」
人々の笑顔と歓声が、宙マンの勝利を讃える――
青空の下に立ちつくす巨体は、どこまでも雄々しく、逞しかった。
イフ「「うぐぐぐっ、おのれ……またしても、またしても宙マンめが!
だが、勝った気になるでないぞ。
この次こそ、お前をギャフンと言わせてやる……!」
……などという、怪獣魔王のいつもの負け惜しみはさて置いて。
我らが宙マンの大活躍によって、怪獣エレキザウルスは撃退され
千歳の街には、再び元の蒸し暑い平穏が戻ってきたのであった。
熊澤さん「やぁやぁ、宙マンさん、ありがと!」
熊澤さん「それにしても、今回はどうなるかと思ったねぇ。
熱中しすぎて、私ゃもう喉カラカラさ!」
宙マン「それに加えて、お腹もぺこぺこ……ですよね?」
熊澤さん「(頷き)ははは、違いない」
宙マン「さぁて、一件落着したところで改めて……」
熊澤さん「ホッキムチ冷麺で暑気払い、行ってみよっかぁ!」
落合さん「えぇ、まったくもって異議なしですわ!」
ピグモン「はうはう~、ピグちゃんもそれを待ってたの~♪」
ビーコン「ひんやり、つるつる、滑らかな喉越し……
冷たい麺類はたまんないっスよねぇ、やっぱ。
……でも、オイラ、ちょ~っとばかし悩み事が……」
落合さん「あら、どうなさいましたの?」
ビーコン「や、これから冷麺食いに行くわけっしょ?
だとしたら、そこからどうやって、いつも通りのノリと勢いで
華麗な下ネタに持っていこうかと……」
げ し っ !
落合さん「そんな悩みごと、貴方を綺麗に消し去ってあげますっ!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、それは全くシャレになんないっスぅぅ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
残暑にも、怪獣にも負けぬあの雄姿。
次回もまたまた、宙マン大活躍だよ~!