「ウルトラマンが……帰って来た……!」
(『帰ってきたウルトラマン』第18話より、加藤勝一郎隊長の台詞)
『ウルトラ』ファンには説明不要と言ってよい、この名台詞。
その引用で幕を開けたのは、本日よりTV放映がスタートしたシリーズの現行最新作
『ウルトラマンアーク』の中に充満している数々の『帰マン』愛……例えば本作の
タイトルロゴのデザインであったり、きらきらち光が万華鏡のように乱反射している
サブタイトル・バックの映像表現であったり、新ヒーロー・ウルトラマンアークの
殺陣におけるポーズや動きであったり……と言うオマージュ要素もさることながら
決して少なくない情報量を歯切れよく、淀みなく説明しきる「交通整理」の巧みさが
これから半年に渡る長丁場の開幕においては完璧に近いかたちで舌を巻いたからこそ
冒頭のようなベタな引用をさせていただいた、と言う次第。
[バンダイ(BANDAI)] ウルトラヒーローシリーズ 97 ウルトラマンアーク
何しろ……
●「星元市」と言う一地方都市をメインの舞台として展開することから醸し出される
番組としてのどこか牧歌的な空気感。
● 世界各地で怪獣が同時に出現した「K-DAY」と呼ばれる事件を境にし
怪獣出現が台風や地震などとほぼ同レベルで起こり得る「日常」と化した
作品世界の大前提。
●未だ様々な謎を有し、地球防衛隊らの重要な監視対象として位置づけられている
巨大な宇宙怪獣の一本角”モノホーンン”の存在。
●そんな「モノホーンのある街」星元市に設置されたと言うことで
小規模ながらも今後の展開で重要な位置を占めて来るであろうし、
またそれが期待されもする怪獣防災科学調査所・
通称「SKIP(スキップ/Scientific Kaiju Investigation and Prevention center)」。
●そんなSKIP星元市分室に所属する主人公・飛瀬ユウマをはじめとした職員たち、
および地球防衛隊からSKIP星元市分室に出向してきた特別調査員・石堂シュウら
メインキャラクター陣の人物像の明快な打ち出しによる作品カラーのアピール。
●あくまで調査・分析をメインの職務としながらも、市民の避難誘導などなど
怪獣災害において柔軟な対処を旨とし、常にその最前線に立たざるを得ないと言う
組織としての「SKIPI」のありかたの明確化。
●怪獣対策においては武力部門を担当する地球防衛隊との協力体制が敷かれながらも
宇宙怪獣など重要情報の開示と共有などの面において、SKIPとの間には微妙で高い
「壁」があると言う双方の関係。
●そしてもちろん、番組のウリとして前面に押し出される怪獣たちの存在と生態、
謎の巨人たる新ヒーロー、ウルトラマンアークの存在感!!
これらの要素が的確に整理整頓・交通整理され、劇中の描写や登場人物の台詞で
淀みなく語られ、スーッと体に入って来る気持ちよさはやっぱり特筆ものでして、
シリーズの立ち上げに際しては、メイン監督たる辻本貴則氏の中でじっくりと
温められ続け、かつ寝られてきたであろう「ウルトラでやりたいこと、
やるべきこと」への明確なビジョンがあったんだろうな……と。
前作『ウルトラマンブレーザー』1話がその開幕、いきなり池袋上空からの
特殊部隊降下のシーンから始まって、あれよあれよと状況が進んでいく中で
視聴者を(半ば意識的に)置いてけぼり状態にしておろおろさせる……と言う
徹底的なハード&ミリタリーテイストでのパンチが強烈でしたので、その後を受け
スタートした本作がそれとの差別化を図り、明確に打ち出すのはむしろ当然のことで
その辺の「変え方」もまた心地よいところでしたね~。
[バンダイ(BANDAI)] ウルトラマンアーク ウルトラマンアーク DX最強なりきりセット(特典:ニュージェネキューブ付)
で、そんな「すんなりと入り込みやすい」切り口の明快さ、滑り出しの快調さが
揺るぎないものとしてあるからこそ、本作ならではのディテールの楽しさ……
例えば主人公のユウマをはじめとしたSKIP職員たちの要請のキャラクター付けや
組織としての風通しの良さと明朗さ、そこに加わって来る石堂シュウが早くも
お堅い仕事一辺倒ではない、極端なまでのコーヒー好きと言う要素を見せて
早くも視聴者の心を捉えにきていたり(1980年の東映作品『電子戦隊デンジマン』の
デンジブルー・青梅大五郎の”アンパン好き”と言う設定同様、これからどんな形でも
「弄って」膨らませることが可能な美味しい設定かと)、もちろんそれらキャラ群の
会話のキャッチボールの中で自然に示される本作ならではの独自の世界観や設定、
あるいはそれぞれの立ち位置の違いから自然に生まれて来るであろうドラマなど
様々なものや物語の広がりを素直に期待させてくれて余りあります。
[バンダイ(BANDAI)] ウルトラ怪獣シリーズ 216 シャゴン
で、勿論、忘れてはならない新怪獣と新ヒーロー。
「時に敵対し、時に友好的な交渉の余地をも有する、脅威であり驚異でもある
自然界の一サイクル」と言う、前作『ブレーザー』が明確に打ち出してくれた
”怪獣重視”と”怪獣主体のストーリー展開”と言う『ウルトラ』本来の根源的魅力を
本作『アーク』でも明確に、かつ発展的に継承してくれているのがまず嬉しいですし
そのトップバッターとしてマウンドに立ったこのシャゴン君……
可愛げあるルックスに反して、強酸性の液体は吐くは背中から光弾を飛ばしてくるわ
まぁタチの悪い暴れっぷりだこと(爆笑・最大限の賛辞)!!
そう、怪獣派怪獣で彼らならではの世界や独自の生態をちゃんと持っていますし
得てしてそれは、我々人類にとって都合の良い物ばかりではあり得ない……
牧歌的ムードながらもそう言うシビアさはしっかり押さえてビシッと一線を引き
単純なマスコットにも傀儡にも出さない、その匙加減がまずは本当に絶妙で。
そんな魅力的な怪獣を相手取るからこそ、謎の巨人ことウルトラマンアークも
またヒーローたり得るのは自明のことで、ほぼワンカットで対決を見せ切る
緻密なコンテ割りとミニチュアワークに裏打ちされたアクションも良いですし
何たってね、今作のメインテーマが「想像力」ということで発揮される
変身者・ユウマの想像力(物理)!!
いやぁー、まさかねぇ、ウルトラマン伝統のバリヤーを鈍器に見立てる形で
直接シャゴンを殴りつけてみたり、あまつさえ煎餅のごとく二つに割って
シャゴンの体に突き刺してみたり……
いやはや、光子力研究所の光子力バリヤーもびっくり(爆笑)!!
ウルトラマンアーク & 全ウルトラヒーロー ひみつ大図鑑 (講談社MOOK)
既に1話の段階で「怪獣と戦ってこれを倒していく謎の巨人」の存在が
劇中人物や世界観における「既知のもの」として描かれているのが
『ウルトラ』としてはまた斬新だった『アーク』第1話、
いずれ訪れるかもしれない「アーク誕生編」の物語にも素直に期待できるのは
とりも直さず、今日の第1話の滑り出しが快調だったからこそなんですよね。
『ウルトラマンアーク』。
2024年のこれからもまた、土曜の朝が本当に楽しみなものになってくれそうです!