日に日に、秋の気配も深まりを見せ……
耳を澄ませば、冬の足音がすぐそこから聞こえてくるかのような。
毎度おなじみの北海道千歳市、ほんわか町5丁目の周辺も
今やすっかり、この通りの美しい紅葉に彩られていた。
と言うわけで、今日もスタートする『宙マン』のお話。
千歳市ほんわか町5丁目、「宙マンハウス」から物語を始めよう。
宙マン「いやぁ~、それにしても。
例年にも増して一段と素晴らしいよねぇ、今年の紅葉は!」
落合さん「えぇ、仰るとおりですわね、お殿様……
毎朝カーテンを開けて外を見るだけで、良い命の洗濯になりますわ」
ピグモン「はうはう~、とってもきれいなの~♪」
ビーコン「普通の年だったら、11月にもなればとっくの昔に散り落ちちゃって
山の木が丸裸になっててもおかしくないんスけどね~。
……うほ、丸裸! 何度口にしてもイイ響きっスよねぇ!?」
落合さん「(ジト目)うるさいですわよ、ビーコンさんっ」
宙マン「今年の夏は、ことのほか暑くって……
果たして本当に秋が来るのか、本気で疑わしかったりしたものだけど。
……それだけに秋風の心地よさと、紅葉の美しさに癒されるよねぇ」
ビーコン「なんのかんの、オイラたちが騒いでみても……
自然のバランスってやつは、どっかで上手く辻褄あうものなんスねぇ~」
ピグモン「ねーねー、みんな。
ピグちゃんね~、またお山へ紅葉を見に行きたいの~」
落合さん「あら、いいですわねぇ紅葉狩り!」
ビーコン「せっかくイイ感じで色づいてるんスから、堪能しなきゃ損っスよね~」
ピグモン「はうはう~、それじゃ決まりなの!」
落合さん「それでは腕によりをかけて、お弁当を用意しませんとね」
宙マン「(頷き)うんうん、そういう事ならね。
我が家だけでなく、ご近所付き合いのあるみんなにも声をかけて……」
と、楽しく話がまとまりかけていた時。
「ふぇぇん……宙マンさん、宙マンさ~んっ!」
息せき切って「宙マンハウス」の庭に駆けこんできたのは……
これまたお馴染み、みくるん&ながもんのコロポックル姉妹。
宙マン「やぁ、二人ともよく来たね、いらっしゃい!」
落合さん「今ちょうど、そちらへ伺おうかと思っておりましたのよ」
ピグモン「みんなで、山へ紅葉見物なの~」
ビーコン「ヒヒヒ、みくるんちゃんたちも一緒にどうっスか?」
みくるん「山?……
あ、あの、今は……山は止したほうがいいと思いますぅ(汗)」
ながもん「実は、その件で……ここに、来た」
宙マン「……ふむ、何か山で変わったことでもあったのかね?」
みくるん「実はさっき、「来々軒」のアギラさんから……
ラーメンの具に使うキクラゲを採りに山へ入った時、森の奥深くで
何かがピカピカって光ってた、ってお話を聞いたんです」
ビーコン「光ってた……何がっスか?」
ながもん「それは、判らない……でも……明らかに、怪しい」
みくるん「ほら、前のキノコ狩りの時だって……
怪獣さんに出くわして、大変だったことあったじゃないですかぁ。
だから、もしかしたら今度のピカピカも……」
ビーコン「な~る……ありえない話じゃないっスね~」
落合さん「どう思われますか? お殿様は……」
宙マン「う~む……難しいところだねぇ」
コロポックル姉妹の話を聞いて、思案顔になった宙マンファミリー。
そして、そんな彼らの様子を……
宙マンたちに気取られぬよう一定の距離をとりながら、空中に浮かびつつ
撮影・中継している、不気味な小型監視メカの存在があった。
その監視メカからの映像に目を光らせている、事件の黒幕とはいかに!?
?「ンヴフフフ……さぁ、来い来い、早く来るんだ宙マン。
こうして騒ぎを起こせば、お前は必ず食いついて現場までくる……
既にこの一帯に、私が必殺の罠を張り巡らせてるとも知らずにな」
?「一歩足を踏み入れたが最後、宇宙トラバサミがお前の足にガブリと食いこみ
そこに塗られた宇宙トリカブトの猛毒が、みるみるお前の体に回り……
すかさずそこへ宇宙ミサイルを叩きこめば、さすがの宙マンもお陀仏よ」
?「さあ、この罠の中に飛びこんでくるがいい、宙マン!
バラバラに消し飛んだお前の肉片こそ、魔王様への最高の手土産だ!」
おお、何と言うことだろう――
千歳の山で起こった「光る目」の騒動は、野次馬根性では人一倍の宙マンを
仕掛けた罠の渦中へ誘い出すためのものだったとは!
だが、そうとは知らない宙マンたちは……。
みくるん「えーっと……宙マンさん、どうしましょう?」
宙マン「ありがとう、みくるんちゃんたち。よく知らせてくれたね。
そういうことなら、私のとるべき行動はたったひとつ――」
「紅葉見物はやめて、うちでのんびりしよう!!」
?「……ちょ、おまっ……そんなのありかよ~!?(汗)」
ヒーローらしく事件に首を突っ込むかと思いきや……
今回に限って、まさかの完全スルー宣言。
事件の黒幕も、これには思わずズッコケた。
宙マン「昔から“君子、危うきに近寄らず”と言ってね。
何か危険な予感がするときに、みすみす首を突っ込むことはないさ」
ビーコン「うひゃ~、まるっきりヒーローらしくない台詞っスねぇ!?」
宙マン「はっはっはっ。
いいんだよ、私はとっくに現役引退してるんだから♪」
ながもん「オウ、そう言えば……そうだった」
落合さん「そういう次第ですので……
聞き分けて下さいますわね、ピグモンちゃん?」
ピグモン「うんっ、ピグちゃん了解したの~」
みくるん「うふふ、私たちもお知らせした甲斐があったですぅ~」
ながもん「これにて、一件……落着」
「っがー、んなわけにいくかっ!!」
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラッ!
突如として起こった局地地震が、千歳の街を激しく揺さぶる。
ガラガラとビルが崩れ落ち、大地が割れ裂け……
その裂け目から、不気味な赤い煙がもうもうと立ち昇る。
そして……
赤い煙の中から、忽然と巨大な姿を現したのは!?
「んくくく……ンヴフフフゥ~ッ!」
異形の巨体は怪獣軍団の一員、「宇宙蝦人間」ことビラ星人。
言うまでもなく、今回の一件を企てた悪の黒幕そのものだ!
みくるん「ふぇぇん、また何か出て来たですぅ!」
ピグモン「悪い怪獣なの、怖いの~!」
ながもん「少し違う……あれは、あくまで……悪い、宇宙人」
ビーコン「や、その辺は割とどうでもいいっスよ!?(汗)」
宙マン「こらっ、そこの君!
いきなり乱暴な出方をして、何のつもりだね!?」
落合さん「皆様のご迷惑というものも、少しはお考えになって下さいませ!」
ビラ星人「んぐぐ~、うるさい、黙れ黙れっ!
せっかく私が、軍団の作戦予算に加えてポケットマネーからも持ち出しして
苦労して、苦労して仕掛けた、宙マン打倒の必殺の罠……
お前がシカトしやがったせいで、ぜぇんぶ無駄になっちまったじゃないか!
やいやい宙マン、一体どうしてくれる!?」
宙マン「いや、急にそんなこと言われても……(困)」
イフ「予定の狂いなどよくあることだ、ポジティブ・シンキングでいけ!
ビラ星人よ、こうなったら実力行使だ――
お前のパワーと超能力で、千歳の街をメチャクチャに破壊しろ!」
怪獣魔王の命を受け、進撃開始するビラ星人!
逃げ惑う人々を、巨体の猛威で四方に追い散らしていく。
ビーコン「え~らいこっちゃ、えらいこっちゃっス!」
落合さん「ああっ、もう、毎度毎度こんな展開……!」
ピグモン「はわわ、ピグちゃん怖いの~!」
おお、早くも千歳は絶体絶命の大ピンチ!
だが、宇宙蝦人間の暴虐を、防衛隊が見過ごすはずもなく……
危機的状況を前に、空の精鋭らが直ちにスクランブルをかけた。
ビーコン「おおっ、また例によって来てくれたっスよ!」
落合さん「具体的な成果はともかく……
とりあえず来て下さると、何となく嬉しいものですわねぇぇ」」
ピグモン「はうはう~、おじさんたち、がんばってなの~♪」
「ようし、気合入れて行くぞ――一斉攻撃、開始っ!」
戦闘機の機首砲座から、鋭く迸るレーザー光線!
だが、半ばやけくその勢いもあるビラ星人の進撃は止まらない。
ビラ星人「ンヴフフゥ~、すっこんでろ、雑魚がっ!」
「う、うわぁぁぁ~っ!?」
ビラ星人の両目が閃光を放つや、上空に発射される破壊光線!
その威力の前に、戦闘機隊は次々に撃墜されていく。
みくるん「ああっ、やられちゃったですぅ!」
ピグモン「どうしよう、これじゃ千歳がメチャクチャなの!」
ながもん「これは、色々……シャレに……ならない」
ビラ星人「ンビュフフフ……見たか、私ことビラ星人の威力を!」
ズガーン! グワーンっ!
連鎖反応的に爆発が巻き起こり、みるみる炎に包まれていく街。
千歳市の平和は、もはや風前の灯であった!
ビラ星人「ンヴフフゥ~!
ご覧になっていますか魔王様、ビラ星人めの働きぶりを!」
ビーコン「だ~っ、せっかく平和な開幕部だったのにぃ!(汗)」
落合さん「何てことでしょう、これはどうにもいけませんわ!」
ピグモン「はわわわ、宙マン、なんとかしてなの~」
宙マン「ようし、やるぞ!
宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
荒れ狂うビラ星人の前へ、敢然と立ちはだかるこの雄姿!
ビラ星人「ンヴウウ~ッ、宙マン、貴様!
現役引退したんだろう、今更なにしに出てきやがった!?」
宙マン「おっと、誤解してもらっては困るな、ビラ星人」
宙マン「私は確かに、気楽な現役引退の身の上だ……
でも、だからって、無法な振る舞いでみんなを苦しめる手合いを
みすみす放っておくこともありえないって事さ!」
ファイティングポーズを取り、敢然と身構える宙マンーー
バトルのテンションは、一気にヒートアップ!
ビラ星人「えぇい、そんな理屈はいいんだ、リクツはっ!」
宙マン「そういう事なら……腕ずく上等、受けて立つぞっ!」
おお! ついに始まった、世紀の大激突!
正義の味方と奇怪な宇宙蝦人間、ふたつの巨体がからぶつかって
激しい戦いの火花を散らす。
胴体を形成する無数の「節」をぐねぐね動かしながら迫るビラ星人。
そのトリッキーな挙動は、さしもの宙マンにとっても厄介だ。
果敢にビラ星人の間合いへ飛びこみ、接近戦を仕掛ける宙マン。
敵の顔面へパンチの連打を浴びせ、優勢かと思われたが……。
宙マン「ううむ、なかなかしぶといな、君!?」
ビラ星人「ンヴフフ~、これでもくらえ、宙マンっ!」
ビラ星人の口から吐き出される黄色の猛毒ガス!
不意を突かれた宙マンは、ガスをまともに浴びてしまった。
宙マン「(苦悶)ぐうう……ううっ!」
毒ガスの作用で体が一時的に麻痺し、ドドーッと倒れ伏す宙マン。
みくるん「ああっ、このままじゃ宙マンさんが!」
ビーコン「マジでヤバいっス、結構効いてるっスよアレ!」
落合さん「(ハラハラと)……あああ……お殿様っ!」
ピグモン「はわわわ、宙マン負けないで、がんばってなの~!」
ながもん「……根性……!」
イフ「おおっ! いいぞいいぞ、真っ向勝負でもイケるではないか!」
サンドロス「をほほほ、そのまま決めちゃうドロス、ビラ星人ちゃん!」
ビラ星人「ンヴフフフ~……思い知ったか、宙マンめ!」
だが――
どんな攻撃に晒されても、宙マンには決して消えない不屈の闘志がある。
突進してきたビラ星人の巨体を、辛うじて側転でかわしたぞ。
ビラ星人「チィィーッ、小癪な!」
怒り、破壊光線を放って攻撃するビラ星人。
素早く立ち上がった宙マンは、その一閃を華麗な回転戦法によって
ひらり、ひらりと軽快にかわしていく。
宙マン「どうしたどうした、お前の力はそんなものか!?」
ビラ星人「むぎぎぎ……こいつムカつく~っ!」
更なる破壊光線の乱射も、宙マン・プロテクションが見事に無力化。
ビラ星人「(狼狽)な、何ですとっ!?」
宙マン「とどめだ!
宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、ビラ星人を直撃!!
ビラ星人「ンヴァワッ、落ち葉のようにヒ~ラヒラぁぁ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
みくるん「わぁっ、宙マンの勝ちですぅ!」
ながもん「(ボソッと)任せて、安心……信頼の、宙マン」
ピグモン「はうはう~、宙マン、ありがとうなの~☆」
落合さん「ああ、お殿様……今日も素敵です……♪(うっとり)」
イフ「う、うぐぐぐっ……宙マンめが、よくもやってくれたな!
だが、勝利の美酒に酔っていられるのも今のうちだけだ――
次の強力怪獣が、必ずお前を地獄に叩き込んでやるわ!」
……などと言う、いつもの負け惜しみはさて置いて。
かくて宙マンの活躍により、怪獣軍団の使者・ビラ星人の野望は挫かれ
千歳の平和は、今日もまた無事に守り抜かれたのであった。
みくるん「宙マンさん、どうもありがとうございました!」
ながもん「(ボソッと)……おつかれ」
ピグモン「これでみんなで、安心して紅葉見物に行けるの~」
宙マン「うん、確かにそれはそうなんだけど……
まずはお腹がペコペコだから、しっかりご飯を食べたい気分かな。
山へ紅葉狩りに行くのは、また日を改めて……ってことで、どうだい?」
ピグモン「うんっ、ピグちゃん了解したの~」
ビーコン「ヒヒヒ、ピグモン、それにみんな……
わざわざ山まで行かなくても、自宅でいつでも紅葉狩りは楽しめるっスよ。
落合さんの背後から忍び寄って、おもむろに……はいっ、モミモミジっス~☆」
むにゅん、ふにふにっ
落合さん「(赤面)……きゃ、きゃあああああっ!?」
げ し っ !
落合さん「ねーい、上手いこと言ったおつもりですかっ!!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、散り行く落ち葉とともに去りぬっスぅぅ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
春夏秋冬、駆け抜けて……
今日も活躍、我らが宙マン。
次回もバリバリ、元気に大活躍だよ~!