遊びをせんとや生まれけり

全ての「面白がりやさん」へ――千歳より、愛をこめて。

あァ啓蟄の候の巻

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あれだけ分厚かった雪も、急速に溶け去っていき……

吹き行く風とともに、新たな季節の声が確かに聞こえている北海道。

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だが、それはまた同時に、長いあいだ冬眠していた怪獣たちが一斉に目を覚まして

再び地上へと攻め寄せてくる前兆でもある。

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そしてまた一匹、「冬眠休暇」を終えた怪獣が地の底で蠢き始めた。

果たして、今回の敵はいかなる脅威を北海道にもたらすのであろうか?

 

 

と言う前置きとともに、幕を開けた今回の『宙マン』。

さてさて、こちらは……

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そんな怪獣たちが集う荒くれどもの総本山、もはや言わずと知れた

暗黒星雲の奥深く、怪獣軍団の本拠地である。

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イフ「よーし、よしよし……

 皆、無事に冬眠休暇を終えて戻って来てくれたようだな!

 ワシもほっと一安心じゃ、何よりであるぞ!」

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イフ「で、さっそくだが、その元気パワーをだな……

 ワシら怪獣軍団の悲願である地球征服のために思う存分奮いまくってだ、

 新年度早々におお手柄を立てようという者はおらぬかなァ!?」

ゾネンゲ博士「季節も変わるこの自分、もうそろそろの頃合いで……

 そのお申し出が来ると思っておりました、魔王様!」

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ゾネンゲ博士「すでに「冬眠休暇」明けの怪獣が一匹……

 千歳の地底深くにて、魔王様のご命令を待ちわびております」

イフ「うむっ、流石はゾネンゲ博士……

 今ワシが何を望み、何を言うか、全てお見通しときおったわい!」

ゾネンゲ博士「(一礼して)それはもう、昨日今日のお仕えではございませんので」

イフ「わっはっはっはっ……結構結構、大いに結構!

 次なる使者の活躍、大いに期待させてもらおうではないか!」

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おお、今まさに……悪の野望は胎動から蠢動へ変わろうとしている。

危うし地球、危うし千歳!

 

だが、ひとまずそれはそれとして――。

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春の山道をのんびり歩いていくのは、これまたお馴染み・この三人。

「宙マンハウス」のピグモンと、みくるん・ながもんのコロポックル姉妹であった。

 

みくるん「う~ん、今年はほんとに雪融けが早いよねぇ~」

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ながもん「そもそも……例年に、なく……雪の、少ない……年だった」

ピグモン「はうはう~、お陽さまぽっかぽかなの~♪」

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そんなポカポカ陽気に誘われて、外へ出てきた仲良し三人組。

お目当ては、この季節ならではの大自然の恵み……

山肌のあちこちから顔を出した、このフキノトウに他ならなかった。

 

ピグモン「ピグちゃん、フキノトウのお料理だいすきなの~!」

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みくるん「天ぷらにしたり、味噌和えにしたりぃ……」

ながもん「今だけの、ものだから……貴重品。……じゅるりっ」

みくるん「(苦笑)もう、ながもんったらぁ、ヨダレヨダレ!」

ながもん「……(赤面)」

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雪溶け間もない山林へ、どんどん足を踏み入れていく子どもたち。

足取りもすこぶる快調、散歩としてもちょっと洒落たもの――

 

……だが、その途上で、不意にみくるんの足がぴたりと止まった。

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ピグモン「(首を傾げて)はう?」

ながもん「どうしたの……みくるん」

みくるん「(怯えて)み、見て、みんな……あ、あれ……っ!」

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おお、何と言うことだろう!?

山肌から沸き立つように、シュワシュワと立ち昇りはじめた異様な煙。


そして、それが何なのかを悟る暇さえ与えず……すぐさま第二の「衝撃波」が

山林を激しく揺さぶる局地地震という形で発現した!

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ゴゴゴゴ……グラグラグラグラッ!

 

みくるん「きゃ、きゃあああっ!?」

局地地震が千歳の山林に亀裂を走らせ、勢いよく引き裂く。

地面に生じた断層から、待ってましたとばかりに吹き上がってくる噴煙……

そのヴェールの中から、ゆっくり立ち上がった巨大な影は!?

「ギュル、ギルルルルぅぅ~っ!!」

 

ピグモン「きゃああんっ、何か出てきたの~!」

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みくるん「(怯えて)お、おっきな……カブトムシ……!?」

ながもん「怪獣、アゴ。……紀州、根来谷育ちの、鉄甲アゴン……!」

アゴン「ギルルルッ、その通り! 詳しいねェ、お嬢ちゃん!」

ながもん「(照れて)……それほどでも……」

みくるん「そのアゴンさんが、どうして千歳の山に出てくるんですかぁ?」

ながもん「まさか……また、何か……悪いこと、を?」

アゴン「いやいや、とんでもない、その逆だよ!」

アゴン「この一帯には、あっちこっちに戦時中の不発弾が埋まってるから……

 危ないからこれ以上立ち入らないように、みんなへ注意しようと思ってね」

みくるん「ふ、不発弾!?」

ながもん「オウ……それは……デンジャラス」

ピグモンアゴンさん、わざわざ親切にありがとうなの~」

アゴン「いえいえ、どう致しまして!」

アゴン「とにかく、そう言うワケだから、お嬢ちゃんたちは早くおうちへお帰り。

 ……その隙にオイラが、この山の中に秘密前線基地を建設しちゃうから!

 そう、ここを拠点にして、オイラたち怪獣軍団が一気に地球を征服……」

 

ピグモン「はう、秘密……?」

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みくるん「前線……基地?」

ながもん「(ジト目)……なるほど……そういう、こと」

アゴン「(ギクッとして)……ハッ!?」

アゴン「(涙目)……あ゛~、うっかり口が滑っちゃったぁ!

 ……魔王様、魔王様、オイラこれからどうしましょう~!?」

イフ「えぇい……この大たわけがっ!

 せっかくの秘密作戦を、自分から全部バラす間抜けがどこにいる!」

ゾネンゲ博士「(ボソッと)う~む、我が軍団の場合、割と珍しいことでもないような……

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ゾネンゲ博士「ま、まぁまぁ魔王様、お心をお鎮め下さい――

 ウソのつけない正直さが、アゴンの良いところでもございますれば」

イフ「む、むむっ、それは確かにそうだが……。

 ……とにかくバレてしまったものは仕方ない、こうなれば作戦変更だ!

 アゴンよ、千歳の山に立ち入るものは力づくで叩き出せ!」

 

アゴン「ギルルル~、それならオイラの大得意分野ですよ~!」

ピグモン「(蒼ざめて)……はわわっ!?」

ながもん「結局、こう……なっちゃう」

みくるん「(涙目)もう、ながもん、冷静に分析してる場合じゃないったらぁ!」

子どもたちめがけて、猛然と迫り来るアゴンの巨体!

だが、そこへ駆けつけたのは……

ピグモンらの帰りが遅いのを心配して、迎えに来た宙マンであった!

 

みくるん「(表情が輝き)あっ、宙マンさん!」

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ながもん「実は……かくかく、しかじかで……」

宙マン「……(ふんふん、と頷きながら話を聞き)」

ピグモン「お願い、宙マン、何とかしてなの~」

宙マン「ようし……それならば、私も!

 宙マン・ファイト・ゴー!!

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まばゆい閃光を放ちながら、みるみるうちに巨大化する宙マン。

さぁ、今日もまた、正義の味方のお出ましだ!

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宙マン「トゥアーッ! 宙マン、参上! 

 うちの子たちへの乱暴は、この私が許しておかないぞ!」

ズ、ズーンっ!

アゴン「ギルルルッ……出たなぁ、宙マンめ!」

宙マン「甲虫怪獣アゴン、千歳の山に侵略基地などは造らせんぞ!」

 

ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」

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みくるん「だ、大丈夫だよね、もし宙マンさんが負けたりしたら……」

ながもん「(頷き)信じよう。……私たちの、ご町内の……ヒーローを」

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ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マンーー

さぁ、今日もまた、ビッグファイトの開幕だ。

激突、宙マン対アゴン!

子どもたちが固唾を呑んで見守る中、巨人と巨獣の死闘が展開される。

分厚く、頑丈な外殻に身を包み、猛然と突進攻撃を仕掛けてくるアゴン!

逞しい角の猛アタックが、さしもの宙マンをも攻めあぐねさせる――

だが、我らのヒーローもまた、怯むことなく果敢な反撃を試みる。

パンチにチョップ、宙マンの打撃技が次々にヒット!

が、それらの攻撃を頑丈な外殻で無力化し、なお突進してくる甲虫怪獣。

「鉄甲アゴン」とは、よくも名づけたものである。

宙マン「むううっ、なかなかやるな!?」

アゴン「ギルルルッ、なんの、まだまだ……こいつを喰らえ!」

両者の体が離れた、ほんの一瞬の隙を突いて……

アゴンの口から宙マンめがけて、勢いよく吐き出される毒液!

ズッシィーンっ!

アゴン液の毒性が急速に全身へ回りこみ、たまらず倒れこんでしまう宙マン。

 

みくるん「ああっ、宙マンさんが!」

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ながもん「なかなかの、テクニシャン……

 ただ、力押しだけの、怪獣かと……思ったら……」

ピグモン「はわわわ、宙マン、まけないでなの~!」

宙マン「(苦悶)ぐううっ、体が……カラダが、しびれる……っ!」

アゴン「ギルルルッ!

 どうだァ宙マン、オイラのとっておきの奥の手は!?」

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ゾネンゲ博士「おおっ、これは……勝てる、今度こそ勝てますぞ!」

イフ「ううむっ、見事だ、先ほどの失態を帳消しにして余りある!

 さぁ、アゴンよ、今こそにっくき宙マンを捻り潰してしまえ!」

体の自由がきかない宙マンめがけて、猛然と突進してくるアゴン!

なんとかこれを、辛くも受け止めた宙マンであったが……

アゴンの猛パワーの前に、劣勢の色は隠しきれない。

ズザザザザ……ッ!

踏みしめた踵が地を削り、急速に押されていく宙マン。

このままでは押し倒され、踏み潰されてしまうのも時間の問題だ!

 

アゴン「ギルルルッ……このまま捻り潰してやっちゃるぜぇ!」

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「なんの……そうは、いくものかっ!!

宙マン、土壇場で気力を振り絞ってのパワー全開!

敵の巨体を抱え上げ、投げ飛ばして地に叩きつけたところへ――

 

宙マン「とどめだ!

 宙マン・エクシードフラッシュ!!

全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……

エクシードフラッシュの一閃が、鉄甲アゴンを直撃!!

アゴン「ギルルルッ……オイラの春は、まだ遠いみた~いっ!」

やったぞ宙マン、大勝利!

 

みくるん「わぁっ、やったぁ!」

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ながもん「さすが、宙マン……どんな敵にも、負けたり……しない」

ピグモン「はうはう~、宙マン、ありがとうなの~♪」

イフ「うぐぐぐっ……またも、またしてもやってくれたな!

 だが宙マンよ、ワシら怪獣軍団はこれしきのことで地球を諦めはせんぞ。

 この次こそは、きっとお前をギャフンと言わせてやるからな!」

 

……などと言う、いつも通りの負け惜しみはさて置いて。

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かくして、今回もまた宙マンの活躍により……

恐るべき甲虫怪獣アゴンは撃退され、千歳の山にのどかな平和が戻った。

 

みくるん「どうもお疲れ様でした、宙マンさん!」

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宙マン「はっはっはっはっ、みんなが無事で本当によかったよ。

 それはそうと、フキノトウ採りの成果はどうかな?」

みくるん「あの、それが、まだ……」

ながもん「とんだ、邪魔が……入ったから」

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宙マン「なぁるほど、フキノトウ採りはこれからが本番ってわけか。

 みんなで手分けして一杯採って帰ろう、私も手伝うよ!」

ながもん「おおっ、それは……頼もしい」

ピグモン「はうはう~、ピグちゃんもがんばるの~☆」

宙マン「今夜のビールのお供は、フキノトウの天ぷらできまりだね――

 う~ん、想像しただけでヨダレが出てきちゃうよ!」

みくるん「(苦笑)……もう、宙マンさんったらぁ♪」

 

北海道は、まさに春……

その平穏を乱す者は、許しちゃおけない正義の人。

我らが宙マン、次回もバッチリ頼んだぞ!