遥かな宇宙の彼方、渦巻く暗黒星雲の奥深く……
そこには虎視眈々と地球を狙う、恐るべき「怪獣軍団」の本拠地がある。
千歳在住のプラネット星人・宙マンの活躍によって、一度ならず二度までも
自らの面子を潰される格好となり……怪獣魔王・イフの怒りと憤りもまた
前回以上のヒートアップぶりを見せていたのであった。
イフ「えぇい、二度ではない……これで三度だ、三度っ!!」
「あらあら、あ~た、どうしたドロス? そんなにカッカすると、また血圧が……」
怪獣魔王の激しい剣幕に、慌てて駆け寄ってきたのは……
他でもない怪獣魔王の妻であり、「破滅超魔獣」などと言う
これまた恐ろしい異名をとるサンドロス。
イフ「えぇい、サンドロス……どうもこうもあるかっ、我が妻よ!」
イフ「怪獣魔王たるこのワシが、まさかあれほどの侮辱を受けるとは……!」
サンドロス「をほほほ、はいはい……カッカしないドロスわよ~、あ~た。
まずは大きく息を吸って……吐いて……」
イフ「……すぅ、はぁ……すー、はーっ……
えぇい、思い返すだに腹立たしい話だわい。
怪獣魔王たるワシ自らが、真面目に宣戦布告に来たと言うに……」
イフ「……シカトだぞっ?
怪獣魔王の言葉を、存在を……
あの連中ときたら、全力でスルーして立ち去りおった!」
イフ「怪獣魔王たるこのワシが、何故にここまでの辱めを……
く、く、ククゥ~~っ!!(思わず男泣き)」
サンドロス「あらあら、可哀想なあ~た……。
を~、よしよし、良い子良い子ドロス~♪(なでなで)」
イフ「ぐすっ、ぐすっ、いくら悪党として名を馳せてきたからと言って……
あんな仕打ちはないであろう、あんな仕打ちは!(涙目)」
サンドロス「確かに……相手に舐められては、怪獣稼業もそれまでドロス。
……ゾネンゲちゃん! いるドロスか!?」
「ははっ、奥方様、私めはこれに!」
サンドロスの呼びかけに、そそくさと進み出てきたのは……
軍団内の幹部格、科学技術主任のゾネンゲ博士。
イフ「おお、ゾネンゲ博士、ワシの言いたいことは分かるな?」
ゾネンゲ博士「次なる使者の選抜……で、ございますな」
イフ「このままでは、ワシの腹の虫がおさまらん。
とびきり活きの良いヤツを、今すぐ地球へ送りこめ! 今すぐだぞ!」
ゾネンゲ博士「ははァーッ、直ちに手配をば!」
おお、今また我々の故郷、水と緑の惑星に……
怪獣軍団の、恐るべき魔手が迫り来ようとしている。
危うし地球、危うし宙マン!
が、ひとまずそれはそれとして。
うららかな日差しの中で、北海道千歳市は平和の中にあった。
そして、こちらは千歳市内・ほんわか町5丁目……
宙マンファミリーが暮らす「宙マンハウス」。
「どうも~、こんにちはですぅ、宙マンさん!」
ピグモンに連れられ、「宙マンハウス」の庭先に顔を出したのは……
同じほんわか町内に暮らしているコロポックルの双子の姉妹、
みくるん(姉)とながもん(妹)。
「宙マンハウス」の面々とは、親しい近所づきあいの間柄であり……
ピグモン「はうはう~、みくるんちゃんとながもんちゃんはねぇ……
ピグちゃんの、一番のおともだちなの~♪」
ながもん「(ボソッと)……ども」
宙マン「やぁ、いらっしゃい、みくるんちゃんたち。
いつも、うちのピグモンと仲良くしてくれてありがとうね!」
落合さん「今日もまた、遊びに来て下さいましたの?」
みくるん「あ、はい、それもあるんですけどぉ……」
みくるん「今日はですね、皆さんへのお裾分けにと思って……
うふふ、こんなの持ってきたんです~。 はいっ!」
宙マン「おおっ、これは……
「北の錦」さんの蔵元・小林酒造さんの酒粕じゃないか!」
ながもん「オウ、流石……グルメの……宙マン」
みくるん「これがあると、とびっきり美味しい甘酒が出来るんですよね~。
宙マンさんたちも、甘酒お好きでしたよね?」
宙マン「お好きも何も、私の大好物だよ!」
ピグモン「はうはう~、ピグちゃんも甘酒だ~いすきなの~♪」
落合さん「あらまぁ、いつもいつも……お心遣い、有難うございます。
みくるん様もながもん様も、どうぞゆっくり寛いで下さいましね?
今からお茶の支度を致しますので……」
ビーコン「ヒヒヒ、それからついでに布団の支度も……☆」
げ し っ !
ビーコン「ちょほほ……今のはかなり痛かったっスよ、落合さぁん」
落合さん「(しれっと)当然でしょう。痛くしてるんですもの!」
落合さん「大体ですわねぇ、ビーコンさんの生き方ときたら何なんですッ。
口さえ開けば場も弁えず、あんなタチの悪いご冗談ばかり……」
ビーコン「や、オイラ的には100パー本気だったっスよ!?」
落合さん「(呆れて)なおひどいですっ!!」
かくてまたまた始まった、「極楽コンビ」の実のない言葉の応酬。
……だが、その時である!
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラっ!
落合さん「……あらあら、まぁまぁ、何事でしょう!?」
ビーコン「どひ~っ、こいつァまたヤバげな揺れ方っスよぉ!?(汗)」
勘の良い読者諸賢は、既にお気づきのことであろう――
この時ならぬ局地地震こそ、大怪獣出現の前兆なのである。
みくるん「あッ! い、稲妻が!?」
そんな異変の極めつけとばかりに……
激しく土砂を噴き上げながら、「地上から天空へと向かって」
荒々しく迸る放電エネルギー。
……そして!
「ガンガオぉぉ~っ!!」
落合さん「あらあら……今、何か……出て来ましたかしら?」
ビーコン「声はすれども、姿は見えず……っスねぇ」
ピグモン「ううん、でもいるの――間違いなく、何かいるの。
ほら、みんな、見て……!」
ビーコン「……うン?」
……と、一同がピグモンの指差した方に目を向けてみれば!
「ガンガオ~、千歳の皆さん、おこんつわ!」
みくるん「ああっ、何かおっきいのが居たですぅ!」
ピグモン「おっきな怪獣なの、おっかないの~!(涙目)」
ながもん「あれは……透明、怪獣……ネロンガ」
ビーコン「知ってるんスか、ながもんちゃん!?」
ながもん「(コクリと頷き)怪獣、図鑑じゃ……わりと……常連」
宙マン「ああ、私も知っているよ、君のことは。
普段は透明だが、たらふく電気を食べると姿を現わすと言う……」
ネロンガ「(ニヤニヤ)ガンガオ~、おかげさんで北海道の電気は旨かったぜぇ!?」
落合さん「んーまっ、よっくも抜け抜けと仰いましたこと!」
サンドロス「をほほほ、いかがドロスか、あ~た。
好物の電気をたらふく食べた、今のネロンガちゃんの頼もしさと言ったら!」
イフ「うむっ、素晴らしいぞネロンガ!
思い切り暴れ、破壊して、ワシの気分をスカッとさせてくれィ!」
ネロンガ「ガンガオ~、俺はやりますぜェ、奥方様に魔王様~!」
怪獣魔王の命を受け、猛然と進撃を開始するネロンガ!
迫り来る巨体を前に、悲鳴をあげて逃げ惑う千歳の人々。
ビーコン「どひ~っ、ここ数日はこんなのばっかっスねぇ!?(汗)」
落合さん「全く、怪獣軍団の方々ときましたら……!」
みくるん「はわわ、いいから今は逃げなきゃですよ~!(涙目)」
大怪獣の暴虐、もはや断じて許すまじ。
千歳の平和を守るため、航空防衛隊が直ちに出撃した。
落合さん「あらまぁ、航空防衛隊の戦闘機ですわ!」
ビーコン「っしゃ、これで一安心っス!」
ピグモン「はうはう~、おじさんたち、しっかりなの~!」
「見てろよ、怪獣め……全機、一斉攻撃開始っ!」
攻撃、攻撃、また攻撃!
怪獣めがけ、嵐の激しさで叩きこまれる一斉砲火。
……だが、ネロンガには全く通用しない!
ネロンガ「ガンガオ~、小うるせぇってんだよ!」
「……にょ、にょわぁぁぁ~っ!?」
左右の触角と角をスパークさせ、天空へと放たれる放電光線!
怪獣ネロンガの得意技により、次々に撃墜されていく戦闘機。
ネロンガ「そ~ら、ソラソラ、どんどん行くぜぇ!?」
勢いと調子に乗り、手当たり次第のブッ壊し!
ネロンガの大暴れによって、千歳は絶対の危機に瀕していた!
ピグモン「はわわ、街が大変なことになっちゃったの~!」
ながもん「ここは、一発……ヒーローの……出番?」
みくるん「宙マンさんが、もう現役を引退してるのは知ってますけど……
でも、、この前みたいに……お願いできませんかぁ!?」
宙マン「(にっこり)大丈夫、あとは私に任せて。
さぁて、やろうかね! 宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、荒れ狂うネロンガの前に舞い降りる!
宙マン「トゥアーッ! 宙マン、参上!
透明怪獣ネロンガよ、ヤンチャもそこまでだ!」
ネロンガ「ゲゲェーッ! ちゅ、宙マンだってぇ!?」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「っしゃあ! これでもう、いろいろと一安心っス!」
落合さん「地域の平和は、今やお殿様の双肩にかかっておりますわ!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、しっかりなの~!」
ネロンガ「ガンガオ~ッ、いい度胸してんじゃねぇか。
引退したロートル風情が、俺様相手にどんだけやれるってんだ!?」
宙マン「いい機会だ、その身で直接確かめてもらおうじゃないか!」
全身にみなぎる怒りを力に変え……
ファイティング・ポーズをとって、敢然と身構える宙マン。
ネロンガ「ガンガオ~、潰れろ宙マン!」
宙マン「来い、ネロンガ!」
激突、宙マン対ネロンガ!
人々が見守る中、今日もまたまたスーパーバトルの幕が開く。
持てるパワーを全開にして、がっぷり四つに組むふたつの巨体。
重量級のボディを震わせ、真っ向から突進してくるネロンガに
これまた真っ向勝負で挑んでいく宙マン。
こうなると、物を言うのは純粋なパワーそのもの。
押し合い、へし合い、小細工抜きの力比べが展開される。
張り手、押し出しなどの相撲技を駆使し……
千歳の街狭しと、宙マン対ネロンガの攻防が続く。
宙マン「ううむっ……なかなかやるじゃないか!」
ネロンガ「たりめーだろが、俺様は強いんだ――そぉりゃっ!」
ズ、ズーンっ!
強烈無比、ネロンガのメガトン体当たりが炸裂!
その威力に大きく吹っ飛び、地に叩きつけられる宙マンの巨体。
みくるん「ああっ……ちゅ、宙マンさんが!」
ビーコン「どひ~っ、単純な力押しのクセしといて……」
ながもん「そういう、攻撃ほど……当たれば……痛い」
落合さん「甚だ遺憾ながら、ながもん様の仰る通りですわッ(汗)」
ピグモン「はわわわ、宙マン、まけないでなの~!」
宙マン「(よろめきつつも立ち上がり)……くぅっ……!」
ネロンガ「ガンガオー! それそれ、狙い撃ちだぁ!」
ネロンガ、角からの放電光線を発射!
激しいスパークを、側転で辛くも回避していく宙マン――
だが、そうはさせじと怪獣も、放電攻撃の手を緩めはしない。
凶暴な破壊衝動そのもののように、周囲に炸裂する光線!
右へ、左へ、大蛇のように荒れ狂う破壊エネルギーの奔流を
しかし宙マンは、華麗な回転戦法で回避していく。
ズガーン! グワーンっ!
ネロンガ「(苛立って)ガンガオ、野郎っ……ぜぇぜぇ、これでもかァ!?」
怒り狂い、放電光線を乱射するネロンガ。
その恐怖の一閃を、宙マンはひらりと躱して大ジャンプ!
ネロンガ「(驚き)う、うぉぉっ!?」
宙マン「くらえネロンガ――宙マン・閃光波!」
ピッキュイィィーンっ!
高らかな音とともに、宙マンの手にストロボ状の発光が生じ……
次の瞬間、ネロンガのボディで激しい爆発が起こる。
宙マン「そぉれっ、お次はこれだ! 宙マン・回転フルキック!」
閃光波、更にダメ押しの回転フルキック!
連続攻撃に目を回し、ネロンガがブッ倒れたところへ――
宙マン「とどめだ! 宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、ネロンガを直撃!!
ネロンガ「ちょ……その強さ、反則的でな~いっ!?」
やったぞ宙マン、大勝利!
みくるん「わぁっ、やりました、宙マンさんの勝ちですぅ!」
ながもん「宙マン……グッジョヴ」
ビーコン「今日も今日とて流石っスねぇ、アニキは!」
落合さん「それはそうですわ、何と言っても我が家のお殿様ですもの!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、ありがとうなの~♪」
サンドロス「……む、、ムキ~ッ! おにょれおにょれ、宙マンめぇっ……
よっくも、このアテクシの顔にまで泥を塗ってくれたドロスわね!
でも見てるドロス、次こそは必ず仕返ししてやるドロス~っ!」
イフ「……こ、これこれサンドロス……そりゃ、ワシの言うべき台詞じゃよ?(汗)」
かくして、ここにまた、ひとつの危機は去った。
我らが宙マンの活躍により、透明怪獣ネロンガは撃退され……
怪獣軍団の謀略は、今度も未然に防がれたのであった。
みくるん「宙マンさん、どうもお疲れ様でした!」
ながもん「(ボソッと)……おつ」
宙マン「いやいや、なんのなんの……
……それより本当によかったよ、みんなが無事でいてくれて!」
ピグモン「はうはう~、それもみ~んな、宙マンのおかげなの~♪」
落合さん「えぇ、ピグモンちゃんの仰る通りですわ」
ビーコン「いやもう全く、宙マンのアニキ様々っスね!
さーてと、平和が戻ってホッとしたところで……」
落合さん「(ジト目)……お布団の支度、とかは言いっこなしですわよ?」
ビーコン「ヒヒヒ、オイラがそんなコト言うわけないじゃないっスか!
この展開・この流れで用意すべきもんは、まさにズバリと避妊具……」
げ し っ !
落合さん「ねーいっ、余計ひどくなってるじゃありませんのッ!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、オチもついたところでまた次回っスぅぅ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
大怪獣もなんのその……
元気はつらつ、宙マンファミリー。
さて、次回はどんな活躍を見せてくれるかな?