9月1日から3日にかけて催される、千歳神社の例大祭……
千歳っ子が待ちに待った、年に一度の楽しい恒例行事である。
街を歩けば、そこかしこから祭囃子の軽快な音色が響き渡って
自然に気分も高揚してこよう、と言うもの。
そんなわけで今、千歳の街はすっかりお祭りムードのまっただ中!
今回の『宙マン』はここ、活気溢れる千歳神社から物語を始めよう。
宙マン「おおっ、やってるやってる!」
ピグモン「はうはう~、とってもにぎやかさんなの~♪」
落合さん「千歳神社のお祭りは、毎年来るたび本当に楽しいですわねぇ」
ビーコン「っか~、いつ味わってもいいもんスよねぇ。
この熱気、この空気、このワクワク感……
それに何つってもね、規模が違うっスよ、規模が!」
ご町内規模のものと違い、千歳市全体のお祭りだけあって
長~く続く沿道には、楽しい屋台や見世物などが目白押し。
宙マンファミリーならずとも、自然と心が弾もうというもの。
ピグモン「あっ、りんご飴なの~、おいしそうなの~!
ん~、ピグちゃんもりんご飴食べたいの~♪」
落合さん「あらあら、いけませんよ、ピグモンちゃん。
今からそんなに食べて、肝心のお夕飯が入らなくなったら……」
宙マン「ん~、私もりんご飴食べたいなぁ♪」
落合さん「(きっぱり)屋台ごと買い占めましょうっ!」
ビーコン「ちょっ、落合さん、分かりやすすぎっス!(汗)」
ビーコン「しかしまぁ、何つーか……
神社のお祭りも、快調な滑り出しでよかったっスよねぇ。
お天気は良いし、風も気持ちいいし、実にのどかな……」
落合さん「えぇ、実にわかりやすい平和の光景ですわ」
と、一同の空気が程よく和んでいた時。
そんな平穏を破り、千歳市の上空にまで達したのは……
宇宙の彼方から飛来した、真っ赤に輝く光球であった。
ゴ ウ ン ッ !
ビーコン「(思わず呆然)……うひょっ?」
落合さん「(冷や汗)こ、これはまた……もしやもしや……!?」
ズゴゴゴグワーンっ!
地面に激突、大爆発を起こす赤い球体。
濛々と吹き上がる赤い噴煙の中から立ち上がったのは!?
「ゲボファハハ~っ!!」
ピグモン「あっ、なんか出て来たの!」
落合さん「鉄くずの塊……でしょうか?」
ビーコン「うんにゃ、ありゃもう怪獣そのものっス!(汗)」
宙マン「こいつは……かなり、でっかいぞ!」
そう、まさにこれこそは……
怪獣魔王の妻・サンドロスに見出され、怪獣軍団に加わった宇宙の暴れ者。
その名も怖ろしい磁力怪獣・ガルバンだ!
ガルバン「ゲボファハハ、いかにも我輩こそが怪獣ガルバン様だぁ。
怪獣軍団の一員として、地球征服の使命を果たしに来たんだ。
……どうよ、これ以上の追加説明、いるかな!?」
ビーコン「う~ん、分かりやすいのは分かりやすいんスけど……」
落合さん「出来ればもうちょっと、別の答えが……
温泉めぐりとか観光とか、穏便なのが聞きたかったですわね!」
イフ「う~む……サンドロスよ、あやつで本当に大丈夫なのか?
宇宙の暴れ者と言うには、いささかトボけた顔立ちだが……」
サンドロス「をほほほ、怪獣は見かけによらぬものドロスわよ、あ~た。
……さぁ、景気よくぶちかましてやるドロス、ガルバンちゃん!
アタクシの見込んだその力、うちの亭主にも見せてやるドロスっ!」
ガルバン「ゲボファハハ~、任しといて下さいや、奥方様!」
怪獣ガルバン、猛然と進撃開始!
迫り来る巨体を前に、悲鳴をあげて逃げまどう人々。
ガルバン「ゲボファハハ、火の祭り、闇の祭り、地獄の祭り……
今日がお祭りだってんなら、我輩がとことん盛り上げてやるぞなもし~っ!」
落合さん「あらまぁ、何て言う押しつけがましい方でしょう!?」
ビーコン「どひ~っ、これじゃ千歳が「後の祭り」っスよ~!」
ピグモン「はわわ、上手いコト言ってる場合じゃないの~!(涙目)」
おお……北海道千歳市、早くも絶体絶命の大ピンチ。
宇宙怪獣の暴虐、許すまじ!
千歳の平和を守るべく、航空防衛隊が直ちに出撃した。
ビーコン「おおっ、今日も今日とて航空防衛隊っス!」
落合さん「今度こそは大丈夫、そう信じておりますかたねっ!」
ピグモン「はうはう~、おじさんたち、しっかりなの~!」
「ようし……全機、一斉攻撃開始っ!」
攻撃、攻撃、また攻撃!
ガルバンめがけ、嵐の激しさで叩きこまれる一斉砲火。
……だが、金属質のガルバンの厚い皮膚には全く通用しない!
ガルバン「ゲボファハハ……子スズメちゃんたち、可愛いこった!」
「ど、どわぁぁぁ~っ!?」
ガルバンの目から迸る怪光線で、次々に撃墜されていく戦闘機。
その恐るべき光線は、続いて我々の街にも向けられ……
林立する高層建築が、次々に火を噴きながら倒壊していく。
爆発! 炎上!
ガルバンの威力の前に、千歳はもはや例大祭どころではない!
落合さん「あらあらまぁまぁ、何てことでしょう!?」
ビーコン「どひ~っ! もうダメっス、おしまいっス!(汗)」
ピグモン「はわわ……宙マン、なんとかしてなの~」
宙マン「(頷き)おのれ、もう許さんぞ! 宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、猛り狂うガルバンの前へ舞い降りる!
宙マン「トゥアーッ! 宙マン、参上!
怪獣ガルバン、これ以上お前の好き勝手にはさせないぞ!」
ズ、ズーンっ!!
落合さん「お殿様、今日も今日とて素敵です……♪(うっとり)」
ビーコン「おー、いつもながらこの安心感……っスよねぇ!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
ガルバン「ゲボファハハ~、お前が噂に聞いた宙マンだったのか!
なかなかやるらしいな、結構な評判だぜ?」
宙マン「果たして私の実力が、評判倒れかそうでないか。
カラダで直接知ってもらうのが、一番手っ取り早いな!」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ。
かくして真っ向激突、宙マン対ガルバン!
例大祭に沸いていた街を舞台に、正邪の攻防戦は早くもヒートアップ。
ガルバン「ゲボファハハ~、我輩が捻り潰してやるぞなもし!」
宙マン「簡単には、やられない!」
重量級のボディと怪力に物を言わせ、猛然と迫るガルバン。
その豪快な攻撃に怯まず、宙マンも果敢に肉薄していく。
ガルバン、パンチ攻撃の連続!
暴れ者の名に恥じない連撃に、さしもの宙マンもずずっと後退させられるが
それしきのことで、ヒーローの闘志が萎えることはない。
宙マン「そりゃッ!」
ガルバンの内懐に飛び込んで、宙マンも負けじとパンチの連打!
これまで幾多の怪獣を痛めつけてきた、宙マンの鉄拳ではあるが
堅牢なガルバンのボディ相手では、いささか心もとない。
手強しガルバン、負けるな宙マン!
ガルバン「ゲボファハハ~、お前の力はそんなものか!?」
宙マン「何をッ、見ていろ!」
一定のポーズを取り……
すかさず、必殺光線発射の態勢に入る宙マン。
宙マン「エクシードフラッシュを受けてみろ!」
ガルバン「(ニヤリ)――馬鹿がッ!」
おお、何ということであろう!
ガルバンの全身に張り巡らされた磁力の壁、マグネフィールドが
宙マンの必殺光線を無力化してしまったではないか!?
宙マン「(我が目を疑い)な、何っ!?」
ガルバン「ゲボファハハ、我輩ガルバン……
「磁石怪獣」と異名をとるのは、伊達じゃないぞ!
磁力を応用すれば、こんなことだって出来るのさね!」
勝ち誇り、目から怪光線を放つガルバン。
だが宙マンもさるもの、これをひらりとかわして大ジャンプ!
宙マン「なんの、まだまだ――行くぞガルバン!」
ガルバン「ゲボファハハ、甘いぞな!」
ガルバンの怪光線が、空中の宙マンを直撃!
凄まじい早撃ちにやられ、バランスを崩して墜落する宙マン。
落合さん「ああっ……お、お殿様!?」
ビーコン「アイツ……トボけた顔して、とんだ食わせモンっスよ!」
ピグモン「はわわわ……宙マン、まけないでなの~!」
ガルバン「ゲボファハハ、お次はマグネ衝撃波ぞなもし!」
「う、うわぁぁぁぁ……っ!!」
イフ「ううむっ……認めるぞサンドロス、確かにお前の言う通りじゃ!
磁石怪獣ガルバン、実に素晴らしい奴ではないか――
流石は我が妻、よくぞこの逸材を見出したものよ!」
サンドロス「をほほほ、ざましょざましょ、そうざましょ、あ~た。
……さぁガルバンちゃん、ここからはアタクシたちもお祭りドロスわよ。
宙マンなんてサッサと片付けて、パ~ッと派手に祝勝会ドロス!」
ガルバン「ゲボファハハ、そりゃナイスな提案でございますねぇ!」
宙マン「(苦悶)うう……うっ……!」
ガルバン「そぅれ、とどめだ宙マン! 死んでもらうぜぇ!」
宙マン「なんの……やられて、たまるかッ!」
「怒れ稲妻! 宙マン・ボルトサンダー!!」
ピカッ、ゴロゴロドドーンっ!
宙マンの気合とともに、念動力で発生させる正義の稲妻!
眩い閃光とともに、ガルバンの急所を直撃したボルトサンダーが
磁石怪獣の全身を猛然と駆け巡り、容赦なく痛めつけて――
ズ、ズーンっ!!
ガルバン「ひゃらりらりぃぃ~、こいつぁ効いたぜェェ……」
稲妻の高圧電流で磁力を失い、最早フラフラのガルバン。
その隙を逃さず、再び大ジャンプで空に舞う宙マンの巨体。
正義のヒーロー、華麗なる空中一回転。
地上へと舞い降りざま、怪獣めがけて繰り出すその技の名は!
宙マン「エイヤァァーっ!
宙マン・ミラクル・キック!!」
出た、電光石火の必殺技!
エネルギーを集中させ、真っ赤に燃え上がった宙マンの足先が
ガルバンの眉間を叩き割るかのように炸裂!!
ガルバン「きょ、強烈……痛烈……まいったぁぁ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
ビーコン「やったやった! やってくれたっスねぇ、アニキ!」
ピグモン「はうはう~、やっぱり宙マン、にじゅうまるなの~♪」
落合さん「えぇ、本当に……お見事の一言に尽きますわ、お殿様!」
イフ「ぐぬぬぬっ、あと一歩のところだったものを!」
サンドロス「おにょれ、おにょれ宙マン……よくもやってくれたドロスわね!
この屈辱、アタクシは決して忘れはしないドロス……
次こそは、必ずお前様をギャフンと言わせてあげるドロス~っ!!」
……などと言う、毎度お馴染みの負け惜しみはさて置いて。
我らが宙マンの活躍によって、磁石怪獣ガルバンは撃退され……
千歳市内には再び、楽しげな祭囃子の音色が戻ってきたのであった。
ピグモン「はうはう~、宙マン、おつかれさまなの~♪」
宙マン「やぁやぁ、みんな、お待たせ!
それじゃ改めて、お祭りを楽しむとしようじゃないか」
落合さん「は~、お殿様の大勝利で一安心しましたら、何かこう
清々しい感じで小腹が減ってきちゃいましたわね~。
ちょっと出店で、チョコバナナでも買って参りましょうか?」
ビーコン「や、落合さん、そんなんに金使うなんて勿体ないっスよ!
チョコバナナなら、ちゃんとオイラのココにあるじゃないっスか。
もれなくおいなりさんとのワンセットで……♪」
落合さん「……( ぷ ち っ ! )」
げ し っ !
落合さん「ねーい、空の藻屑とおなりあそばせっ!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、九月の青空が目に沁みるっスぅぅ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
みんなが待ってた、年に一度の一大イベント……
祭囃子が勇者を讃える、今日からは千歳神社の例大祭!
神輿だワッショイ、祭りだワッショイ。
みんなの元気で、憂いも涙もぶっとばせ――
何はともあれ、めでたし、めでたしっ!
※(この物語はフィクションであり、現実における千歳神社の例大祭は
新型コロナウイルスのまん延に鑑み、開催を見合わせています。
その旨お断りさせて頂くとともに、再びの開催を心より祈念する次第です)