あの凄絶な猛暑が、まるで夢物語だったかのように……
屋外の気温もぐーんと下がり、木々の葉も目に見えて鮮やかな赤に彩られて
日本列島津々浦々、季節は今まさに秋まっさかり。
そんな秋の穏やかな日々をどのように過ごすか、その辺は人それぞれであるが
ひとつ、長く静かな夜を「読書の秋」と洒落込んでみるのはどうだろう?
と、言うわけで。
今回の『宙マン』は、そんな「読書の秋」に相応しい場所――
北海道千歳市の「お隣さん」、恵庭市の市立図書館から物語を始めよう。
宙マン「「おお~、やってるやってる!」
落合さん「規模といい、出品された本のラインナップといい……
こちらの古本市は、いつ来てもワクワクさせられますわねぇ!」
ビーコン「だからこそ、わざわざ千歳から出張してくる甲斐があるんスよ!」
ピグモン「はうはう~、あっちにも、こっちにも、御本がいっぱいなの~♪」
10月某日・日曜日、恵庭市立図書館の正門前スペースにおいて……
市内のボランティア団体“黄色いエプロンの会”主催で、「本のリサイクル市」が
華々しく催されることになっていた。
春と秋の二回開催で、今回で30回目以上を迎えるという図書館の恒例行事。
恵庭市民の方々から寄せられた古本、市立図書館の除籍本などなど、合わせて
約1万5千冊もの本が、一冊10円からという超安値で販売され、それらの中には
無料で配られる本さえあったりするとのことで……会場の恵庭市立図書館前は、
自分にとっての「思わぬ掘り出しもの」を求めてやってきた恵庭市内外の人々で
毎年おおいに賑わいを見せることとなる。
てなわけで、毎度おなじみ宙マンファミリーとコロポックル姉妹。
今日はみんなで連れ立って、「本のリサイクル市」へ顔を出していたのであった。
ビーコン「いや~、果たして今年はどんなイイ本に出会えるか……
考えただけで、体中の血がドックンドックン滾ってくるっスよ!」
みくるん「わぁっ、張り切ってますねぇ、ビーコンさん!」
宙マン「ちなみにビーコンは、どんな本がお目当てなのかな?」
ビーコン「ヒヒヒ、よくぞ聞いてくれたっス、アニキ!
オイラ的大本命は、なんつってもエロゲ雑誌のバックナンバーっスけど
フランス書院、マドンナメイト、富士見ロマンの文庫本あたりも捨て難いものが……」
げ し っ !
落合さん「ねーいっ、せめてレーベル名は伏字になさいっ!!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、今回はいきなりキタっスね~!?(汗)」
宙マン「……やれやれ、二人とも朝から元気だねぇ(苦笑)」
みくるん「でも、ああやって会場の準備が進んでいくのを見てると……
やっぱり私も、自然とテンション上がってきちゃいますよ~」
みくるん「すっごい掘り出し物がタダで貰えたりして、そこがまた楽しいんですよね!」
ながもん「貴重な、SF小説の……絶版本とか……
模型雑誌の、バックナンバー……その他、もろもろ……エトセトラ」
落合さん「私の狙いはズバリ、料理関係の実用書やレシピ・オンリーですわ。
創作意欲に刺激を受け、新たな知識も仕入れまして、またお殿様のために
今まで以上の美味しいご飯を作って差し上げるつもりですの!」
落合さん「ですので、お殿様。
どうぞその「成果」に、ご期待下さいませ!」
宙マン「おおっ、頼もしいねぇ、流石は我が家の敏腕メイドさんだ!
これは「読書の秋」に加えて、「食欲の秋」まで堪能できそうな感じかな?」
「フォッフォッフォッフォッ……
そこに加えて、もう一つ。
とびっきりの秋ってやつを、楽しませてやろうかァ?」
みくるん「ほにゃっ、もう一つの秋って言うと……スポーツの秋、ですかぁ?」
ながもん「……もしくは、芸術の秋?」
「フォッフォッフォッ、どっちも違うな――」
「ズバリ、正解は「焚書の秋」だァ~っ!!」
そう言って、宙マンたちの前にその姿を現したのは……
昆虫を思わせる姿に両手の巨大な鋏、宇宙人の中でも屈指のメジャーな存在。
ビーコン「おりょりょ、なんか見覚えのある姿っスねぇ!」
落合さん「えぇ、怪獣マニアならぬ身の私でさえ、よく存じておりますわ」
宙マン「……バルタン星人!」
ながもん「(頷き)宇宙忍者、バルタン星人。
身長、ミクロ~50メートル……体重、ゼロ~1万5,000トン」
ビーコン「おおっ、さすがは歩く怪獣図鑑っス!」
ピグモン「はうはう~、ながもんちゃん、詳しいの~」
ながもん「そんな、バルタン星人の中でも……
大きな、鼻が、特徴的なのが……ここにいる、このタイプ。
通称………………豚っ鼻バルタン」
みくるん「(思わず噴き出し)……ぶ、豚っ鼻っ!?」
落合さん「ひ、酷い別名ですけど……くすくす、い、イメージぴったりですわね!」
ビーコン「(笑いを堪えて)ぶぶっ、くくくく……
ヒヒヒヒ、言い得て妙とはこのことっスね! ぶっはははは……」
バルタン星人「うがーっ、失敬な奴らだな! 笑うなーっ!!」
バルタン星人「って言うか、その渾名で呼ぶのはやめてくれ、頼むから!
俺だってその辺、密かに気にしてたりするんだからさぁ!(涙目)」
ながもん「おう、それは……配慮が、足りなかった。謝罪します(ぺこり)」
みくるん「わ、笑ったりしてごめんなさいですぅ。く、くくくくっ……」
バルタン星人「(憮然としつつも)……まァ、判りゃいいんだよ、判ればっ」
宙マン「まぁ、どうにかこうにか丸く収まったところで……
リサイクル市はもうすぐですよ、今日はお互い楽しもうじゃないですか!」
バルタン星人「フォッフォッフォッ、いやいや、それには及ばんよ。
そもそも、さっき言っておいたはずじゃないか――
俺にとっての秋は「焚書の秋」だってなァ!」
ピグモン「(キョトンとして)……フンショ、ってなんなの~?」
ながもん「本を……まとめて、燃やしちゃう……ってこと」
みくるん「(慌てて)ほにゃっ、なんでそんなヒドいことするんですかぁ~!?」
バルタン星人「フォッフォッフォッ……いいだろう、教えてやろう」
豚っ鼻バルタン「そもそも、この図書館の児童書コーナー、一般映画の書籍棚……
そこに並んでいる本と言えば、どれもこれもヒーローばかり贔屓して
俺たち怪獣や宇宙人は刺身のツマ扱いなものばっかりだ!」
宙マン「それは、確かにそうなんだろうが……」
落合さん「仕方ないじゃありませんの、ハナからそう言う編集方針なんですもの!」
バルタン星人「ああ、そうだろうとも、そういう事なんだろうな。
だが、俺達の首魁・怪獣魔王イフ様は、それが全く気に食わない――」
バルタン星人「だからこそ俺たちは、まず恵庭図書館に抗議文を送ったんだ。
“偏向思想に根ざした有害図書の、書架からの即時撤去を望む”ってな。
……なのに恵庭図書館の奴ら、それをガン無視しやがった!
なぁ、この態度をどう思う!?」
落合さん「いえ、あの、どう思うもこう思うも……(困)」
ビーコン「……ジョーシキ的な対応、としか言いようがないっスよねぇ(汗)」
バルタン星人「交渉は決裂した、あとはもう実力行使あるのみだ。
ヒーローばかりを贔屓し、怪獣の存在を不当に軽視する恵庭図書館……
偏向思想教育の巣窟は、蔵書もろとも残らず黒焦げの塵に変えてやる!」
みくるん「はわわっ、そ、そんなの乱暴すぎますぅ!(涙目)」
宙マン「そうとも、話せば判る、まァ座りたまえ!」
バルタン星人「えぇい、問答無用ッ!!」
宙マンたちの目の前で、伸縮自在の超能力が発動!
みるみる巨大化し、ビルよりも高く聳え立つ巨人となるバルタン星人。
みくるん「ふぇぇん、なんでいつもこういう事になっちゃうんですか~!?(泣)」
ながもん「みくるん。……これは、『宙マン』シリーズだから……仕方ない」
ビーコン「……って悟ってる場合じゃないっスよ、ながもんちゃん!(汗)」
ピグモン「きゃああんっ、おっかないの~!(涙目)」
バルタン星人「フォッフォッフォッ、見ィたかァ、この俺の偉大なる姿を!
怪獣軍団に対して、ナメた真似をしてくれた恵庭市立図書館よ……
今こそバルタン星人の力で、お前らをギャフンと言わせてやる」
バルタン星人「フォッフォッ、それからな……
宙マンよ、お前にはもうひとつ恨みがあるんだぜ」
宙マン「何だって、私に?」
バルタン星人「ああ、そうとも!
俺の可愛い甥っ子……幹部候補生・バルタン星人Jrに二度も恥をかかせて
バルタン一族の栄えある名前に泥を塗ってくれた恨みさ!
あれもこれもひっくるめて、まとめて思い知らせてやる!」
宙マン「うぬっ……そう来たか!」
ピグモン「……た、大変なことになっちゃったの~」
落合さん「甚だ遺憾ながら……どこからどう見ても、天下の一大事ですわ!」
宙マン「う~ん、参ったなぁ……これは色々と参ったよ!」
イフ「わははは! さぁ行け、バルタン星人よ!
ワシら怪獣軍団を侮った報いだ、そんな図書館など叩き壊せ!」
イフ「お前の同胞・バルタン星人Jrの雪辱も、この際ついでに上乗せして……
ヒーローを応援する胸糞悪い本など、残らず焼き尽くしてしまうのだ!」
バルタン星人「フォッフォッフォッ……そのご命令を待っておりました、魔王様!」
バルタン星人「フォッフォッフォッ……そうら、地球人ども、逃げろ逃げろ!
お前たちが楽しみにしていた「本のリサイクル市」は中止、そして今から
も~っと楽しい、「秋の焚書まつり」が華やかに始まるんだ!」
ビーコン「うげげっ、これはかなりマジでヤバい状況っスよ!?」
落合さん「ああ、もうっ……なんてはた迷惑な!」
ピグモン「はわわ、ピグちゃんたちも早く逃げなきゃなの~!(汗)」
ああ、またしても……危うし地球、危うし恵庭!
宇宙忍者の暴虐、許すまじ!
千歳の平和を守るべく、航空防衛隊が直ちに出撃した。
ビーコン「おおっ、航空防衛隊が来てくれたっス!」
落合さん「何度でも言わせて頂きますわ、“待ってました”と!」
ピグモン「はうはう~、おじさんたち、しっかりなの~!」
「ようし……全機、星人への一斉攻撃だ!」
攻撃、攻撃、また攻撃!
バルタン星人めがけて、嵐の激しさで叩きこまれる一斉砲火。
いつも以上の発奮っぷりで、バルタン星人を攻撃する戦闘機隊。
果たして今回こそは、その努力と意気ごみが正しく報われ……
星人を撃退して、千歳を守り抜くことが出来るであろうか!?
バルタン星人「フォッフォッ、無駄なことを!」
「……ど、どわぁぁぁ~っ!?」
……出来ませんでした。
ピグモン「ああっ、防衛隊のおじさんたちが!」
ビーコン「惜しかったっス……今回、めっちゃ気合入ってたのに!(汗)」
バルタン星人の鋏から放たれる熱線“バルタン・ファイヤー”!
その恐るべき威力が、図書館周囲の建造物を次々破壊し、炎に包んでいく。
燃え盛る炎の中で勝ち誇り、更に猛り狂うバルタン……恵庭の危機だ!
落合さん「ああ、やはり……
この事態が収まらない限り、古本市どころではなさそうですわッ」
ながもん「ここは、やっぱり……ヒーローの、出番」
みくるん「ふぇぇん、お願いします宙マンさん、何とかなりませんかぁ!?」
宙マン「(笑顔で頷き)ああ……お願いされちゃうし、何とかしてみよう!
宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、バルタン星人の前へ颯爽と舞い降りる!
宙マン「トゥアーッ! 宙マン、参上!
宇宙忍者バルタン星人、悪ふざけもそのくらいにしておけ!」
ズ、ズーンっ!!
落合さん「お殿様の大変さとご苦労、察するに余りありますけれど……」
ビーコン「でも、もうこの際、頼りになるのはアニキだけなんス!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
バルタン星人「チィッ……お邪魔虫め、やっぱりしゃしゃり出て来たか!」
宙マン「重ねて言う、これ以上の無法な真似は許さんぞ!」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ。
バルタン星人「ほざくな宙マン、宇宙忍法の餌食になるがいい!」
宙マン「上等だ、さぁ来いっ!」
ながもん「おお……始まった」
みくるん「お願いです宙マンさん、恵庭の街と図書館を守って下さいですぅ!」
ビーコン「ファイトっス、アニキ! オイラたちがついてるっスよ~!」
宙マン「ああ、任せてくれ――楽勝さ!」
バルタン星人「うぐぐぐっ! ムカつく野郎だぜ、なんだその余裕!?(怒)」
宙マン「正義は決して悪には負けない、ただそれだけの事さ」
バルタン星人「おのれィ、その減らず口ごと地獄に叩き落してやる!」
言葉と言葉……そして、それ以上に激しい力と技!
両者、一歩も退かない打撃の応酬。
落合さんたちが固唾を呑んで見守る中、激闘は際限なしにヒートアップ!
ビーコン「うむむっ……バルタン星人の方も、なかなかやるっスね!」
ピグモン「大丈夫なの、ぜったい宙マンは負けたりしないの~」
ながもん「(ボソッと)宙マン……ファイツっ」
バルタン星人「フォッフォッフォッフォッ、くらえ!」
バルタンの鋏から連射される破壊ロケット弾!
その恐るべき攻撃をジャンプでかわして、大空へと舞い上がる宙マンの巨体。
バルタン星人「うぬっ!?」
宙マン「はっはっはっはっ……どこを見ている、私はこっちだぞ!」
バルタンの頭上を回転ジャンプで飛び越し、更に積極的な攻撃を仕掛ける宙マン。
その体を側面からがっちりと押さえこみ、宇宙忍者・バルタン族の身上と言うべき
トリッキーなスピード戦法を事前に封じてしまおうという作戦だ。
宙マン「さぁどうだ! これでもう、お得意の忍法は使えまい!」
バルタン星人「なめるな! お前の思い通りになると思ったら大間違いだぞ!」
このままやられっぱなしでは、バルタン星人の男がすたる。
怪獣軍団メンバーとしての意地を見せ、宙マンの押さえこみ技を振りほどき……
お返しとばかりに、宙マンめがけて鋏からのショック閃光を叩きつけた!
宙マン「う、うわぁぁぁぁっ……!!」
バルタン星人「フォッフォッフォッ……見たか宙マン、宇宙忍者の底力!」
みくるん「ああっ、宙マンさん!」
ビーコン「こりゃちょっと、アニキもヤバいんじゃないっスか!?(汗)」
落合さん「(祈るように)いいえっ、大丈夫ですわ、お殿様なら……
まだまだ全然いけるはずです、頑張って下さいませ!」
ピグモン「宙マン、しっかり、負けないでなの~!」
バルタン星人「フォッフォッフォッ……いいねェ、ギャラリー諸君の勝手な希望。
……今からそいつを、とびっきりの絶望に変えてやる!」
宙マン「……何っ!?」
バルタン星人「フォッフォッ、見ろ――バルタン忍法・分身の術!」
おお……見よ! 驚愕せよ!
宇宙忍者・バルタン星人の一族が身につけた数々の怪忍法でも特に有名な、
彼らの技の代表格とも言うべき「分身の術」!
宙マン「こ……これはっ!?」
バルタン星人「俺の分身術は、一族の中でもトップクラスの成績なんだ――
お前の透視光線なんかで、簡単に見破れると思うなよ!?」
みくるん「(狼狽)ど、どれが本物なの!?」
ながもん「さすが、バルタン忍法……豪語、するだけの……ことはある」
ビーコン「っがー、感心してどうすんスか、ながもんちゃん!(汗)」
ゾネンゲ博士「おおっ! ついに出ましたな、バルタン星人の分身の術!」
イフ「わははは、これで勝ったも同然だわい!」
バルタン星人「フォッフォッフォッ……
どうだ、見破れまい! 見破れるはずがないんだよ!
手も足も出せないまま、徒にエネルギーを消耗させていくがいいさ。
……そうして弱ったところを、ジワジワ嬲り殺しにしてやるからな!」
宙マン「……(無言)」
虚像と見れば虚像、実像と見れば実像。
無数に現れてはうごめき、宙マンを包囲したバルタン分身に対して……
宙マンはその場で身構えたまま動きを止め、静かにその目を閉じたのであった。
ピグモン「はわっ! ちゅ、宙マン、どうしちゃったの!?」
ビーコン「アニキ、何してるっスか! このままじゃやられちま(う)……」
落合さん「(鋭く)シッ!……皆様、どうかお静かに!」
そう、落合さんは気づいていたのだ。
……このとき宙マンが、バルタン分身術に幻惑されず、その実体を見破るために
敢えて自らの視覚を封印したのだ、ということを。
嗅覚、聴覚、触覚……
精神統一とともに五感を研ぎ澄まし、バルタンの居場所を探る宙マン。
そして、宙マンは遂に見破った。
……バルタン星人のたてた足音から、実体の位置を見事に掴んだのだ!
宙マン「(カッと目を見開き)――そこだッ!」
宙マン「バルタン忍法、敗れたり――宙マン・閃光波!」
ピッキュイィィーンっ!
高らかな音とともに、宙マンの手にストロボ状の発光が生じ……
虚空に走った爆発とともに、星人の本体が暴き出された。
バルタン星人「(苦悶)ぐ、グオォォォォっ……」
宙マン「とどめだ! 宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、バルタン星人を直撃!!
バルタン星人「ぐはぁぁっ……ま、負けちゃった~っ!!」
やったぞ宙マン、大勝利!
ピグモン「はうはう~、やったのやったの、宙マンがやったの~!」
ながもん「お見事……グッジョヴ」
ビーコン「アニキ、今日もバッチシ・チョー最高っした!」
みくるん「宙マンさん、どうもありがとうですぅ!」
イフ「ぐぬぬぬっ……おのれ、おのれおのれ、おのれぇぇっ!
またしても宙マンめが、ワシらの邪魔をしおってからに!
覚えておれ……覚えておれよ、この仕返しは次こそ必ずっ!」
……などと言う、怪獣魔王の負け惜しみはさて置いて。
かくして宙マンの活躍により、バルタンの眷属・通称“豚っ鼻”は撃退され……
恵庭市立図書館の蔵書と「本のリサイクル市」は、無事に守られたのであった。
ピグモン「はうはう~、宙マン、おつかれさまなの~♪」
宙マン「いやぁ、はっはっはっはっ……
なんかこう、ひと勝負終えたら無性にお腹がすいてきちゃったよ」
みくるん「ふふっ、あれだけの戦いの後ですもん、無理ないですよね~。
それじゃ今から、どこかのレストランでお食事でも……」
「いいえっ、その前にやるべき事がありますわ!」
ビーコン「だーっ、アニキ! 呑気にメシなんか食ってる場合じゃないっスよ!」
落合さん「ほら、あそこをご覧になってみて下さいませ!」
宙マン「……うン?」
と、落合さんたちの指差した方を見てみれば……
恵庭市立図書館の入口前では、「本のリサイクル市」が予定通り開始されていた。
そしてこの通り、本を求めてやって来た人、人、人の大盛況!
宙マン「おっとっと、いけないいけない。コレを忘れるところだったよ!」
ビーコン「全くアニキぃ、しっかりしてくんなきゃ困るっスよぉ!(苦笑)」
ながもん「まずは、こっちのひと仕事……ごはんの、前に……御本だぜ。ヴイッ」
ピグモン「はうはう~、ながもんちゃん、上手~いの~♪」
落合さん「さぁさぁ、皆様――ひとつ、大いに張り切って参りましょうッ!」
全社会的な「読書離れ」の傾向が、危惧されて久しい昨今ではあるものの……
それでもこういった催しを開けば、こんなに多くの人たちが詰め掛ける。
……そう、「本を愛する気持ち」は、それだけ根強く我々の中に息づいているのだ。
よりよい本との出会いと、手にした一冊との「逢瀬」のために費やす時間。
それらのひとつひとつが、読書人すべてにとっての宝物となりますように!
秋深し、隣りは何をする人ぞ。
……はてさて、貴方にとってはどんな「秋」?
※(この物語はフィクションであり、現実における「本のリサイクル市」は
新型コロナウイルスのまん延に鑑み、開催を見合わせています。
その旨お断りさせて頂くとともに、再びの開催を心より祈念する次第です)