この町は、開墾間もない明治9年頃に初めてリンゴの木が植えられ、それ以来
長い歴史を経て、今では道内でも有数の果物生産地として名を知られている。
そして、季節はちょうど実りの秋。
「くだものの町」壮瞥町では、あちこちのリンゴ園の木々において、美しく熟した
赤いリンゴが、枝いっぱいにその実をつけていた。
勿論それは、今の季節・くだものの町に相応しいイベントが催されているからで
そのイベントの名は、ズバリ――
ビーコン「いえっふ~、ズバリおっぱい祭りに決まってるじゃないっスか!
ほら、あっちでも、こっちでも、たわわな果実がブルンブルン揺れながら
オイラのこの手で揉みしだかれる瞬間を心待ちに……」
げ し っ !
ビーコン「どひ~っ、今回はのっけからこう来ちゃうっスか~!?」
落合さん「あなたこそ何ですっ、のっけからエロい上に下らないっ!(怒)」
落合さん「全くもう、誤解のないよう改めてちゃんとご説明しておきませんと。
ええ、そうです、そうなんですのよ、読者の皆様方――
本日は年に一度の、“壮瞥りんごまつり”の日なんです!」
ピグモン「はうはう~、ピグちゃんたちもみんなで遊びにきたの~♪」
ビーコン「ヒヒヒ、だったらオイラの言葉だってあながち的外れじゃないっスね。
あっちにも、こっちにも、たわわに実った豊かな果実が……」
落合さん「ねーい、まだ言いますかっ!(怒)」
そう!
10月のとある日曜日……
この日は秋の壮瞥町を彩る一大イベント、“りんごまつり”の日。
毎度おなじみ宙マンファミリー、やはりおなじみのコロポックル姉妹と連れ立ち
この日は朝早くから千歳を発って、ここ・壮瞥町におけるりんごまつり会場まで
足を運んできていたのであった。
宙マン「いや~、それにしても……
こんな朝早くからなのに、早くもすごい賑わいっぷりだねぇ!」
落合さん「ええ、思わず圧倒されてしまいますわ」
みくるん「ふふふっ、そりゃそうですよ~。
なんたって年に一度、これを逃したらまた一年お預けですもんね~」
朝9時からの開場と同時に、早くもテンション急上昇といった感じのまつり会場。
秋の屋外イベントの定番である数々の出店が軒を連ね、メインステージにおいて
大道芸やブラスバンド演奏などの各種催し物が賑やかに行われ……
そして、“りんごまつり”における最大のウリといえばやはり、町の名産品たる
リンゴをはじめとした農産物やその加工品が、市価より大幅に安いということ!
落合さん「あっ! ほらほら皆様、見て下さいな!
壮瞥産ブランドのリンゴジュースがあんなにお安くッ!(興奮)」
宙マン「おお、あっちも凄いよ!
一回100円で、ニンジンを袋に詰め放題ってホントかね!?」
ピグモン「はわわ、すっごい行列ができてるの~」
みくるん「みんな、やっぱりコレが目当てなんですよね~……私たちもですけど♪」
宙マン「なァるほど、だからあんなに朝早くから千歳を出なきゃいけなかったわけか」
ながもん「(ボソッと)おかげで、今朝の……
『リバイス』と『ゼンカイジャー』を……見逃しちゃった、けど」
ビーコン「あと、ついでに『プリキュア』もっス~」
みくるん「でも、そうするだけの価値は絶対ありますもんね~、コレ。
さぁ、私たちも急いで列に並びましょうっ!」
ビーコン「(刮目)おおっ、今日のみくるんちゃんは燃えてるっスねぇ!」
落合さん「なんの、メイドとしてこの私も負けずに燃えますわよ!
さぁ気合入れて参りましょう、いざ行列へ!」
ピグモン「はうはう~、ピグちゃんもお並びするの~♪」
宙マン「何たって、そのためにわざわざ来たんだものねぇ」
ビーコン「いよっしゃ! みんなのその気合、頼もしくて嬉しい限りっス!
そんなみんなの決意を胸に、オイラも気合入れて会場でのナンパ三昧を……」
落合さん「な~にを仰ってるんです、ビーコンさんにも並んで頂きますわよ!?」
ビーコン「ちょ! オイラが何のためにここまで来たと思ってるんスか!?」
落合さん「だーっ、何を真顔でおバカなことをっ!(汗)」
そんな軽口の応酬もまた楽しい、りんごまつり会場のひととき。
だが、そんなイベントの盛り上がりに横槍を入れてくるかのごとく――
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラっ!
みくるん「きゃ、きゃあああっ!」
落合さん「あらっ、あらあらまぁまぁ、何ですの!?」
ビーコン「こ、この流れは、例によってまた……!(汗)」
ビーコンのメタ発言は、残念なことに正しかった――
激しい局地地震によって壮瞥町の山々が鳴動し、メリメリ地面が割れ裂ける。
そして、巨大な地割れの中からその巨体を現したのは!?
「シャギョギョォォ~ンっ!!」
不気味な咆哮とともに、地上に這い出てくる昆虫型のシルエット。
背中のドクロ状の紋様がいかにも凶々しい、地底怪獣テラガイヤーだ!
ピグモン「はわわわ、怪獣なの!」
ビーコン「どひ~っ、やっぱ今回もこうなっちまうんスね~!(汗)」
みくるん「ふぇぇん、よりによってこんな日に来なくていいのにぃ!(涙目)」
場違いなテラガイヤーの巨体を目にして、りんごまつり会場は大パニック!
そんな人々のうろたえっぷりなど、まるで眼中にないかのように……
大地を揺るがし、テラガイヤーはのっしのっしと会場へ突き進んでくる。
落合さん「ちょっと、そこのあなた、何です!?
会場にいらしてる皆様が、びっくりなさってるじゃないですの!」
ピグモン「えう~、脅かしちゃイヤ~んなの~」
宙マン「今度はまた、いったい何が目的だね!?」
テラガイヤー「シャギョギョ、アホかいっ、今日はりんごまつりの日だろうが!
だったら会場に来る目的なんて、たった一つっきゃねぇだろうが!」
落合さん「と、いうことは……」
みくるん「あなたも、壮瞥のりんごが欲しくて来たんですかぁ?」
テラガイヤー「ま、そう言うこった!
なんせ今は、何を食べてもメチャメチャ旨い“食欲の秋”……
中でもウチの魔王様は、最近はすっかり焼きリンゴに凝っておられる」
宙マン「ほう、焼きリンゴねぇ!」
ながもん「実は、私も……大好物。……ジュルリッ」
みくるん「ほにゃっ、ながもん、ヨダレヨダレ!(汗)」
テラガイヤー「で、その焼きリンゴ……
どうせ作って食うなら、いい材料を使うに限る。そのリクツは判るよな?」
落合さん「ああ、なるほど、そういう事でしたのね」
宙マン「いやぁ、済まない、そうとは知らずに失礼をしてしまって!
さ、リンゴ即売の行列はこっちだから、君も早く並んで……」
テラガイヤー「シャギョギョ、いやいや、俺のやる事ァもうちょっと派手だよ!」
みくるん「(キョトンとして)へっ?」
テラガイヤー「シャギョギョ、つまりだな……
この壮瞥町の山ごと、まつり会場のリンゴというリンゴを残らず焼き払って
そこから、頃合いに焼けた焼きリンゴを魔王様に献上しようって寸法さ。
どうよ、豪快だろうが!?」
落合さん「んまぁっ、いかにも楽しそうになんてことを!(驚愕)」
みくるん「そ、そりゃ、豪快には違いないですけど~っ!(涙目)」
ビーコン「そんなコトしたら、会場のお客まで焼けちまうじゃないっスか!?」
テラガイヤー「シャギョギョ、だからいいんだよ!
知っての通り焼きリンゴと言えば、肉料理の付け合せの定番……
動物性の脂の香ばしさが、また絶妙の隠し味になるってもんさね!」
ビーコン「ど、どひ~っ!!(汗)」
イフ「ええい、テラガイヤー、余計なお喋りはその辺にしておけ!
……それより早く焼きリンゴをこれへ、ワシゃもう待ちきれんぞっ!」
テラガイヤー「お任せ下さい、魔王様――少々お待ちを!」
怪獣魔王に急かされて、行動開始するテラガイヤー!
口から吐き出す塩酸ガスが、まつり会場のテントや建物、資材運搬の車両などを
片っ端から吹き飛ばし、周囲を炎に包んでいく。
急激な勢いで、周囲に燃え広がっていく炎!
来場客らは右往左往して逃げ惑い、りんごまつり会場は大パニックに陥る。
ピグモン「はわわ、大変なの、こっちまで炎が来てるの~!(泣)」
落合さん「このままですと、私たちまで丸焼きにされてしまいますわ!」
みくるん「ちょっ、そんなのイヤですぅ!(泣)」
テラガイヤー「シャギョギョ、燃えろよ燃えろ、炎よ燃えろ!
怪獣軍団流のリンゴクッキング、魔王様、とくと御照覧あれ!」
ビーコン「どひ~っ、アイツ、あんなこと言ってるっスよ!(汗)」
ながもん「ここは、宙マン……あなたの……出番」
ピグモン「おねがい、宙マン、なんとかしてなの~」
宙マン「ああ、やるとも、やらいでか! 宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
さぁ、今日もまた正義の味方のお出ましだ!
宙マン「トゥワーッ! 宙マン、参上!」
テラガイヤー「シャギョギョ、おのれ宙マン、また俺らの邪魔をする気か!?」
宙マン「ああ、そうとも! この私がいる限り……」
落合さん「お殿様、それよりもまず消火が先ですわ、消火っ!」
宙マン「よし、判った! 宙マン・ミラクル・ディスチャージャー!」
宙マンの指先から迸る消火ビーム……
“ミラクル・ディスチャージャー”の一閃が、燃え盛っていた壮瞥町の山火事を
たちまちのうちに消し止めてしまう。
ビーコン「いえっふ~、さっすがアニキっスねぇ!」
ながもん「これで、山火事は……ひと安心」
ピグモン「はうはう~、宙マン、ありがとうなの~♪」
みくるん「(ハッとして)危ない!――宙マンさん、うしろですっ!」
宙マン「(素早く振り返り)!?」
テラガイヤー「シャギョ~ッ、何よそ見してやがる!? お前の相手は俺だ!」
宙マン「なんの、どこからでもかかって来い!」
激突、宙マン対テラガイヤー!
“壮瞥りんごまつり”の会場を舞台に、世紀の巨大バトルの幕が開く。
頭の角を振り回し、持ち前の怪力で猛然と攻め立ててくるテラガイヤー。
負けじと宙マンも真っ向から渡り合い、パワーとパワーが激しい火花を散らす。
宙マン「それっ――どうだ、参ったか!?」
テラガイヤー「シャギョギョギョ、この俺をナメるなよ!?」
怒りのテラガイヤー、パワー全開!
一本角のかち上げで、宙マンの巨体を軽々と持ち上げ、跳ね飛ばす。
宙マンが地面に叩きつけられ、立ち上がりかけたところへ……
そうはさせじとばかり、更に角からの破壊閃光によって攻めるテラガイヤー。
宙マンの周囲に、次々と巻き起こる激しい爆発!
「う、うわぁぁぁぁ……っ!?」
みくるん「ああっ、宙マンさんが!」
ビーコン「ア、アイツ、なんかべらぼうに強くないっスかぁ!?(汗)」
落合さん「う~ん……
流石にお子様人気ナンバーワン昆虫だけありますわねぇ、カブト虫は!」
ピグモン「えう~、全然そういう問題じゃないと思うの~(涙目)」
ながもん「(じっと前を見据えて)……宙マン……!」
ゾネンゲ博士「おおっ! ご覧下さい魔王様、テラガイヤーのあの善戦っぷりを!」
イフ「わははは、悲願の宙マン打倒と焼きリンゴ……
今日という日はまさに、一度で二度美味しい最高の記念日だわい!」
宙マン「(苦悶)うう……うっ……!」
テラガイヤー「シャギョギョ、これで終わりだ宙マン――くらえっ!」
とどめとばかり、テラガイヤーが口から吐き出す塩酸ガス!
だが、宙マンもさるもの……
気力を振り絞って立ち上がるや、プロテクションで塩酸ガスを無力化する。
ながもん「おお……さすがっ」
ビーコン「いよっしゃ、やっぱアニキはそうじゃなきゃっス!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、今がチャンスなの~!」
仲間たちの歓声を受け、大ジャンプで勢いよく空へ舞い上がる宙マン。
驚き、うろたえるテラガイヤーの眼前で、華麗なる空中回転を決めて――
宙マン「エイヤァァーっ!
宙マン・ミラクル・キック!!」
電光石火の必殺キックが、テラガイヤーの鼻っ面に炸裂!
たまらず吹っ飛んだ怪獣に駆け寄り、その巨体を軽々と持ち上げて……
更に、ダメ押しとばかりに宙マン・リフター。
勢いよく地面に叩きつけられて、テラガイヤーが目を回したところへ!
宙マン「とどめだ! 宙マン・ヘッドビーム!!」
宙マンの闘志そのもののような、真っ赤に輝く破壊光線……
ヘッドビームの一閃が、テラガイヤーを直撃!!
テラガイヤー「うぎゃあああっ……秋の日の、この一撃……
み、身に染みて、うら悲し~っ!!」
やったぞ宙マン、大勝利!
ピグモン「はうはう~! よかったの、今日も宙マンの勝ちなの~!」
ながもん「さすが、宙マン……グッジョヴ」
みくるん「宙マンさん、今日も本当にありがとうですぅ!」
かくして宙マンの活躍により、“壮瞥りんごまつり”の平和は守られ……
人々の拍手と歓声が、秋晴れの空の下でヒーローの勝利を讃えたのであった。
ビーコン「……って、ちょっと、アニキアニキっ!」
宙マン「……うン?」
ビーコン「うん? じゃないっスよ、うん? じゃ。
いつまでもそんなトコで、ドヤ顔でポーズ決める場合じゃないっしょ!?」
落合さん「リンゴですわ、リ・ン・ゴ。私たちの本番はこれからです、お殿様!」
落合さん「……とか言ってるあいだに、あらやだっ!
いつの間にか、もうあんなに行列が長く伸びちゃってますわ!(汗)」
ピグモン「はわわわ! 早くしないと、リンゴもニンジンもなくなっちゃうの~!」
宙マン「おっとっと……いかんいかん、すっかり忘れてたよ!(汗)」
みくるん「こっちの戦いは、さっきの怪獣より手ごわいかもしれませんけど……
でも、頑張っていきましょうね、皆さん!」
ビーコン「(刮目)おお、またまたみくるんちゃんが燃えてるっス!」
宙マン「はっはっはっはっ、ああ、勿論だとも!」
ながもん「これを、逃したら……壮瞥まで、来た……甲斐がない」
ピグモン「はうはう~、果物めがけてトツゲキなの~☆」
途中、大怪獣テラガイヤーの乱入騒ぎもあったりしたものの……
総体的には例年同様の大盛況だった、今年の“壮瞥りんごまつり”。
宙マンたちもその安値の恩恵に与って、リンゴやニンジン、長ねぎにジュースなど
しっかり、どっさり買いこんでホクホク顔だったのは言うまでもないだろう。
実りの秋に、食欲の秋……
それに加えて、ヒーローの秋。
我らが宙マン、次回の活躍にもご期待あれ!