爽やかな陽気に暖められている北海道の大地。
ここ・千歳市も、清々しい青空の下で平和を満喫中である。
慌しくもどこか呑気な、千歳の街をそぞろ歩くのは……
毎度お馴染み「宙マンハウス」の住人、落合さん&ビーコンの極楽コンビ。
と言うわけで今回は、まずこの二人にスポットを当ててみるとしよう。
落合さん「さて、と……これで挨拶回りも一段落ですわね!
山菜料理も先方の皆様方に喜んで頂けて、本当にようございました」
落合さん「それと、はなはだ不本意ではありますが……
ビーコンさんにも一応、お礼を言っておきませんとね」
落合さん「あなたが荷物持ちを引き受けて下さったおかげで、
正直私もずいぶん助かりましたから……本当に不本意ですけれど!」
ビーコン「ヒヒヒ、相変わらず毒舌っスね~、落合さん
ま、その分オイラも、しっかり「報酬」は貰うっスけどね!」
落合さん「(ジト目)ほーら、案の定きましたわね……。
で、何がお望みですの? ビーコンさんは」
ビーコン「んー、そっスねぇ、とりあえず……
これからラーメンどうスか? 勿論、落合さんのおごりで!」
落合さん「はぁ、ラーメン……ですか?」
ビーコン「っス、そこの店はなんたって葱味噌ラーメンが絶品で!
濃厚なコクとたっぷりの旨味を湛えた、秘伝ダレがベースの
アッツアツの激旨スープ……」
落合さん「……(ごくりと唾を呑みこんで)」
ビーコン「で、それと真っ向から渡り合うのは自家製のタマゴ麺!
ぷりぷり、シコシコ、噛みしめるごとに旨味が溢れる麺は
コクあるスープの旨味の洪水にも押し流されず……」
落合さん「(慌てて)ステイ! ビーコンさん、ステイっ!
……なるほど、魅力的なお話ではありますけど。
ですが、家でお殿様とピグモンちゃんがお留守番している手前
私たちだけで外食を楽しむのはメイドの職業倫理に……」
ビーコン「ヒヒヒ、だ~からこそっスよ、落合さんっ!!
誰かに内緒でコッソリ食べるからこそ、旨いものは余計に旨い。
これ、宇宙開闢以来の絶対の真理っスからね!」
落合さん「うう、分かります……
ものすごく分かってしまう自分が、何だかすごく嫌ですわ(汗)」
ビーコン「ヒヒヒ、それじゃ決まりっスね!
これも平和な日常ならでは、日々是口実っス~☆」
落合さん「……もう(苦笑)」
だが、賢明なる読者諸氏は既にお気づきのことであろう。
こういう日常が営まれているときに限って、『宙マン』ワールドでは
往々にしてロクでもない事件が起きるものである、ということを――
そして残念ながら、今回もまたその例外ではなかったのである!
ゴ ウ ン ッ !
落合さん「!!(ハッと空を見上げる)」
ビーコン「(冷や汗)な……なんスか、今の!?」
ズゴゴゴグワーンっ!
耳をつんざく大音響とともに、上空から猛スピードで飛来し……
一直線に落下、大地に激突して大爆発を起こす赤い光玉。
濛々と吹き上がる、赤い噴煙の中から立ち上がったのは!?
「ウリリィィ~っ!!」
落合さん「か……怪獣!?」
ビーコン「や……あのルックス、ありゃ宇宙人っスよ!」
落合さん「厄介の度合いで言えば、どちらも変わりありませんわ!」
ビーコン「……んー、ごもっともっス」
のっし、のっしと大地を踏み鳴らし……
千歳市のド真ん中に現れた巨体は、超能力星人・ウリンガ。
有り余るパワーの暴れん坊、もちろん怪獣軍団の一員だ!
ウリンガ「ウリリィ~、じっとしてるなんてのは俺の性に合わないぜ!
これから思い切り、大暴れしてストレス解消ってワケさ。
てなわけで、そこんとこヨロシクぅ!」
ビーコン「どひ~っ、そんなの全然よろしくしたくないっス!(汗)」
落合さん「毎度のことながら、何て身勝手な……(呆)」
イフ「わははは……身勝手結構、大いに結構!
無理を通して道理を叩き壊す、それこそ怪獣軍団にとっての
“期待される怪獣・宇宙人像”と言うものよ」
イフ「遠慮はいらんぞ、思い切り暴れろウリンガ!
地球侵略の前線基地を、この地に築きあげる為にも……
まずは目につく全てのものを、徹底的にブチ壊すのだ!」
ウリンガ「ウリリィ~、やらせてもらいますぜ、魔王様!」
怪獣魔王の命を受け、進撃開始するウリンガ!
迫り来る白銀の巨体を前に、悲鳴をあげて逃げまどう人々。
ああ、またまた千歳市の大ピンチ!
だが、そんなウリンガの傍若無人に歯止めをかけるべく……
ビーコン「おおっ、いつもながら出前迅速っスねぇ!」
落合さん「頼みましたわよ、航空防衛隊の皆様!」
「ようし……全機、攻撃開始っ!」
ウリンガめがけて、雨あられと叩きこまれるロケット弾!
だが、鎧のような白銀のボディには全く通用しない。
ウリンガ「ウリウリィ~、無駄よ、無駄無駄!」
「う、うわぁぁぁぁ……っ!?」
ウリンガの目から放たれる破壊光線!
その威力の前に、戦闘機隊は次々に撃墜されていく。
ビーコン「……ど、どひ~っ!
華奢なナリして、アイツ、とんでもないパワーっスよ!(汗)」
落合さん「(頷いて)そして……とてつもない暴れん坊さんですわ!」
サンドロス「をほほほ、まぁだ、まだまだ!
ウリンガちゃんの強さは、こんなものじゃないドロスわよ!」
イフ「さぁウリンガ、お前の自慢の超能力を見せてやれ!」
ウリンガ「(頷き)ウリリリ……ウリンガぁぁ~っ!!」
おお、見よ! 驚愕せよ!
ウリンガの雄叫びとともに念動力が発動し、ビルディングを粉砕し
瓦礫や車を嵐のごとく翻弄する様を!
と、そこへようやく姿を現してくれたのは、毎度お馴染み――
ビーコン「おおうっ、宙マンのアニキ!」
落合さん「お殿様、いいところへおいで下さいました!」
宙マン「あんまり帰りが遅いから、心配になって来てみたんだが……
コレはいったい、何の騒ぎだね?」
落合さん「えぇと、何と申しましょうか……」
ビーコン「アレ見てもらうのが、一番手っ取り早いっス!」
そう言って、ビーコンが指差した先には……
持ち前の超能力で、我が物顔に暴れ回るウリンガの姿が!
宙マン「ううむっ、これは色々納得せざるを得ないな!」
ビーコン「よかった、話が早くて助かるっス!」
落合さん「ご出座頂きましたところ、早速ではありますが……
お殿様、今日もひと仕事、お願いできません!?」
宙マン「(頷き)……やむを得ん、それしかないね!
宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、ウリンガの前へと舞い降りていく!
宙マン「トゥアーッ! 宙マン、参上!
おいたが過ぎる無法星人め、きついお灸を据えてやる!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「ああっ……毎度ながらの、この安心感っスよねぇ!」
落合さん「当然ですわ、私たちのお殿様ですもの!」
ウリンガ「ウリリィ~、そうか、お前が宙マン……
軍団の仲間たちが手を焼く、噂のプラネット星人か!」
宙マン「ああ、そうとも、宙マンだ。
現役は引退したけれど、技はまだまだ鈍っていないぞ!」
全身にみなぎる怒りを力に変え……
ファイティングポーズをとって、敢然と身構える宙マン。
ウリンガ「ウリリィ~っ! 行くぞ、宙マン!」
宙マン「来い、ウリンガ!」
激突、宙マン対ウリンガ!
落合さんたちが見守る中、今日もスーパーバトルの幕が開く。
左右の拳を固く握り、軽快なフットワークとも相まって……
旺盛な闘志の赴くまま、ボクシング・スタイルで襲い来るウリンガ。
右に左に、激しく繰り出されるウリンガのパンチ!
その打撃をかわし、受け止めながら……
宙マンもまた、敵に負けず劣らずの闘志で果敢に肉薄していく。
宙マン「そうれっ、こいつを受けてみろ!」
一瞬の隙を突き、宙マンの繰り出したストレート・キック!
鋭い一撃を腹に受け、じりじりと後退させられたウリンガである。
宙マン「どうだ、参ったか!」
ウリンガ「(激怒)……ウウウ……ウリィィィ~っ!!」
怒りの雄叫びとともに、目から破壊光線を放つウリンガ!
爆発の衝撃と熱に、宙マンが大きくよろめいた隙を逃さず……
ウリンガの奥の手、破壊的規模の念動力が発動した。
宙マン「(苦悶)ぐ……うぉぉぉ……っ!?」
ウリンガ「ウ~リ、ウリウリ……ウリンガぁぁ~っ!!」
宇宙屈指とも噂される、ウリンガの念動力!
不可視の「力」に、全身の自由を奪われて翻弄される宙マン。
そして、遂に……!
ズ、ズーンっ!
落合さん「……お、お殿様っ!?」
ビーコン「どひ~っ、や、ヤベェっスよ!
これじゃ……このまんまじゃ、マジでアニキが……!」
宙マン「う、ううっ……」
ウリンガ「ウリウリィ~、俺の勝ちだぜ! とどめだ宙マン!」
宙マン「なんの……なんの、これしきっ!
それっ! 宙マン・サンブライト・スパーク!」
宙マンの胸から周囲に迸る、太陽光のごときまばゆい閃光!
その正義の光に、思わず目がくらむウリンガ。
ウリンガ「ウ、うおおおっ!?」
ビーコン「よっしゃ、上手いっス、さすがアニキ!」
落合さん「こうなればしめたもの、後はお殿様のペースですわ!」
ウリンガ「ニャロォォっ……こけ脅しをっ!」
苛立って、目からの破壊光線を放つウリンガ。
だが宙マンは冷静にそれを見切り、ひらりとかわして大ジャンプ!
宙マン「エイヤァァーっ! 宙マン・ミラクル・キック!」
出た! 伝家の宝刀、ミラクルキック!
強烈無比の足先を受け、たまらずドドーッと倒れるウリンガ。
ウリンガ「(悶絶)ぐ、ぐふぅおおっ……」
宙マン「ようし、とどめだ――これで決めてやる!」
ウリンガめがけ、真っ向から突っ込んでいく宙マン。
その全身が、体内から溢れ出すエネルギーによってみるみる赤く染まる!
「ドゥリャアぁぁぁーっ!
宙マン・エネルギッシュ・ボンバー!!」
出た! 宙マンの肉弾戦法、エネルギッシュ・ボンバー!
真紅のエネルギーで全身を包んで、自らを巨大な光の弾丸と化し……
そのまま一気にウリンガの懐へ飛びこみ、ボディを貫通してしまう。
宙マン「―どうだっ!」
ウリンガ「ウリ、リリリっ……ま、参ったぁぁ~っ!」
エネルギッシュ・ボンバーの威力に崩れ落ち、大爆発するウリンガ。
やったぞ宙マン、大勝利!
必殺の肉弾戦法で、ウリンガを見事に打ち倒し……
華麗な空中回転とともに、かっこよく着地を決める我らが宙マン。
青空に映えるその雄姿は、どこまでも逞しく、頼もしかった。
サンドロス「あらあら、何てことドロしょ……
まさか、まさか、ウリンガちゃんのあの超能力までが!」
イフ「うぬぬぬっ、またしてもか……またしても宙マンめが!
だが、覚えておれよ……
次なる怪獣が、この恨みを必ず晴らしてやるからな!」
……などと言う、怪獣魔王の負け惜しみはさて置いて。
我らが宙マンの活躍によって、暴れ者の星人ウリンガは撃退され
千歳の街には再び平和が蘇ったのであった。
落合さん「どうもお疲れ様でした、お殿様!」
ビーコン「アニキのおかげで、今日も一件落着っス~」
宙マン「や、私もね、二人が無事で安心したよ。
さ、そろそろ帰ろうか。家でピグモンが待ってるよ!」
落合さん「はい、お殿様♪」
ビーコン「(ひそひそ)……って、ちょっとちょっと、落合さん」
ビーコン「内緒で飯食いに行く話、アレはどうなるんスか?」
落合さん「(苦笑)そう言うムードじゃなくなっちゃいましたものねぇ。
ま、この件はなかったことに、って事で……」
ビーコン「ヒヒヒ、今回ばかりはしゃーないっスね!
でも落合さん、別の「内緒」があるからご心配なくっスよ。
そう、オイラと落合さんの、目くるめくような情熱の一夜……」
げ し っ !
落合さん「ねーい、そんなものは永久に大却下ですっ!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、念力いらずの空中浮揚っスぅぅ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
今日もありがとう、宙マン!
さて、次はどんな活躍と……
そして、どんな冒険が待っているのかな?