木々の草も生い茂り、溢れる生命力を充満させる季節――
北海道は今や、生命の輝く夏の息吹に包まれつつあった。
そんな大前提のもと……
今回の『宙マン』もまた、毎度おなじみの舞台である
千歳市ほんわか町5丁目の「宙マンハウス」から幕を開けよう。
落合さん「あら、お殿様、もうお風呂はよろしいんですの?」
宙マン「いやー、おかげさんでね、さっぱりしたよ!」
宙マン「はっはっはっはっ、本当に……
庭の畑仕事でひと汗かいたあとの風呂は、極楽気分だね!」
落合さん「お疲れ様です、お殿様♪」
ビーコン「ヤーコンに落花生、ニンニクに長葱……
家で野菜が採れるってなぁ、有難いもんスねぇ」
ピグモン「はうはう~、おうちの御野菜、ピグちゃん大好きなの~♪」
落合さん「手塩にかけて育てた野菜が、しっかり実ってくれた時。
あの瞬間は、筆舌に尽くしがたいものがありますし……」
落合さん「それに、正味な話ですけど。
家で食べる分の野菜を、ほそぼそと自宅の菜園で賄えるだけで
家計的には、かなり大助かりだったりもしますのよ」
ビーコン「いや~、その手間暇にゃ、ホント頭が下がるっス!」
落合さん「いえいえ、ビーコンさん、どうぞご遠慮なく……
あなたもね、手伝って下さって一向に構いませんのよ?」
ビーコン「ヒヒヒ、落合さんこそご心配なくっス。
アッチの頭はね、もう上がりっぱなしっスから!」
落合さん「(赤面)んーまっ……昼間っから、お下品なっ!」
と、そんな軽口の叩き合いも、平和な日常ならではのもの。
だが、そんな楽しい時間を破るかのように……!
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラッ!
ピグモン「(慌てて)は、はわわわっ!?」
落合さん「この揺れ方……只事じゃございませんわね!」
ビーコン「どひ~っ……ってコトはぁ、まさか!?」
そう――残念ながら、そのまさか!
大量の土砂を天高く柱のように撒き上げ、舗装道路をも引き裂いて
地の底から新たに、その姿を現わさんとしている邪悪な影。
……果たして、それは!?
「ぐもぐも、ぐぐんも~っ!」
宙マン「おおっ、あれは!?」
ピグモン「あの怪獣……まるで、おっきな虫さんみたいなの~!」
そう! 怪獣軍団の一員、宇虫怪獣グモーズ。
地球のそれとは全く異なる進化を遂げた、宇宙昆虫類の一種が
巨大怪獣化し、怪獣魔王の命を受けて千歳に姿を現したのだ!
宙マン「ううむっ……全くもって、性懲りもなく!」
落合さん「あの、怪獣さん、つかぬことをお伺いしますけど……」
ビーコン「ご来道は観光目的……じゃ、ないスよねぇ!?」
グモーズ「ぐぐんも~、なんだ、分かってンじゃねぇか!」
グモーズ「ぐぐんも~、俺が来たのは千歳征圧のため。
と言うわけで、今日もテキパキと進めようかぁ!」
ビーコン「どひ~っ、やっぱりそう来たっスか~!(汗)」
落合さん「せめて儚い、一縷の望みを託したかったのですが……」
ピグモン「えう~、何でもいいけど、とにかく怖いの~!(涙目)」
宙マン「……うぬっ!」
イフ「わははは! さぁ行け、思い切り暴れろグモーズよ!
千歳を制圧し、地球侵略の前線基地を築くために!」
グモーズ「ぐぐんも~、お任せ下さい、魔王様!」
怪獣魔王の命を受け、進撃開始するグモーズ!
迫る巨体を前に、悲鳴をあげて逃げまどう人々。
ビーコン「どひ~っ、やっぱりやりやがったっスよ、やっぱり~!」
落合さん「毎度とは言え、本当にハタ迷惑ですわねぇ!(汗)」
宙マン「みんな、逃げるんだ――早く安全な場所へ!」
ピグモン「きゃあぁぁんっ、おっかないの~!」
おお、何ということであろう――
またまた北海道千歳市が、洒落にならない大ピンチ。
宇虫怪獣の暴虐、許すまじ!
千歳の平和を守るべく、航空防衛隊が直ちに出撃した。
ピグモン「あ、防衛隊のおじさんたちなの!」
落合さん「どうか、どうか今回こそは頑張って下さいませ!」
ビーコン「くれぐれも、意気込みだけで終わらねーように……!」
「ようし……全機、一斉攻撃開始だッ!」
激しいアタックをかける戦闘機隊!
持てる火力の全てが、怒濤のごとくグモーズへ叩きこまれるが……。
グモーズ「ぐぐんも~、こそばゆいだけだってばよ!」
「う、うわぁぁぁぁ……っ!!」
グモーズの吐き出す怪光線で、次々に撃墜されていく戦闘機!
落合さん「(茫然と)……あらあら、まぁまぁ」
などと、人々が防衛隊の敗退に言葉を失っている間にも。
グモーズはますます猛り狂い、千歳の街を炎に包んでいく!
グモーズ「ぐぐんも~、千歳の征圧なんて楽勝だぜィ!」
ピグモン「えう~、あの怪獣、あんなこと言ってるの~」
落合さん「こうなると、もうお殿様だけが頼みの綱ですわ!」
ビーコン「アニキ~、ここは一発なんとかして欲しいっス!」
宙マン「ああ、やるとも! 宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、荒れ狂うグモーズの前へ舞い降りる!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
怪獣軍団のごろつきめ、粋がって暴れるのもそれまでだ!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「いえっふ~、出たっス、アニキの十八番!」
落合さん「ああ、やっぱり頼れるのはお殿様ですわねぇ!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
グモーズ「ぐももも~っ、出やがったな、宙マン!」
宙マン「宇虫怪獣グモーズ、正義の力で打ち砕いてやる!」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン。
さぁ、今こそ世紀のスーパーバトル開幕だ!
グモーズ「ぐももも~っ、シャシャシャシャ~っ!」
宙マン「さぁ来いグモーズ、勝負だ!」
激突、宙マン対グモーズ!
落合さんたちが見守る中、巨大戦がダイナミックに展開される。
複数の脚で仕掛ける、グモーズのトリッキーな攻撃は予測困難。
だが宙マンは、現役時代に培われた経験と勘で渡り合う。
グモーズ「宇宙怪獣の名誉にかけて、この手で倒してやるぜ!」
宙マン「いやいや、それを言うなら「脚」だろう……?(ニヤリ)」
グモーズ「ぐがーっ、何だその余裕! ムカツクーっ!」
怒り、さらに激しく迫ってくるグモーズ!
その猛攻をかわし、受け流しながら……
軽快なフットワークで、果敢に相手の隙を伺う宙マンである。
激しく取っ組み合い、お互いの立ち位置を入れ替えて……
ますますヒートアップしていく、宇宙の正邪の大バトル。
宙マン「えい、やぁっ! どうだ、これでもか!」
グモーズ「ぐぐんも~っ、ナメてんじゃねぇぞ、宙マンっ!」
パワー全開で、再び交錯するふたつの巨体。
そして、お互いが向き直ったその瞬間……!
グモーズ「ぐぐんも~っ! 死ね、宙マン!」
グモーズの吐き出す怪光線が、宙マンの周囲に炸裂!
グワーン! ズガガガガーンっ!
「う、うわあぁぁぁ……っ!!」
ピグモン「はわわわ……ちゅ、宙マンっ!?」
ビーコン「やばいっスよ、これは……」
落合さん「……いいえ、お殿様が負けるものですか!」
ジャタール「ひゅほほほ……おうおう、絶好調!」
グロッケン「いいぞいいぞ、やるじゃねぇかグモーズ!」
イフ「(頷き)そのまま一気に、宙マンへとどめを刺せ!」
宙マン「(苦悶)……ぐ、うう……うっ!」
グモーズ「ぐぐんも~、いよいよテメェの最期の時だぜ!」
「なんの……これしきで、負けはしないッ!」
宙マン、パワー全開!
グモーズの怪光線をジャンプでかわし、大空へ舞いあがる。
グモーズ「(驚き)ぐ、ぐももっ!?」
宙マン「グモーズよ、今度はこっちがお返しだ――」
宙マン「テリャァァーっ!
宙マン・南十字チョップ!!」
両腕を真っ赤に燃え上がらせて放つ、渾身のクロスライン!
南十字チョップの直撃に、グモーズがたまらず倒れたところへ――
宙マン「とどめだ!
宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、グモーズを直撃!!
グモーズ「ぐもももっ、こんなに強いなんてズルすぎるぅぅ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
ビーコン「いえっふ~、さっすがアニキっス!」
落合さん「今日もお見事でしたわ、お殿様!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、ありがとうなの~♪」
イフ「ううむっ、おのれおのれ……またしても宙マンめが!
だが、これしきで勝った気になるのはまだ早いぞ。
怪獣軍団の真の威力を、お前はまだ知らないのだ……!」
……などと言う、いつもの負け惜しみはさて置いて。
かくして我らが宙マンの活躍により、宇虫怪獣グモーズは撃退され
怪獣軍団の地球征服の野望は打ち砕かれたのであった。
落合さん「改めまして……お疲れ様でした、お殿様!」
宙マン「いやー、ひと勝負終わったらすっかり汗びっしょりだよ。
せっかくさっき、風呂でさっぱりしたばっかりなのに!」
落合さん「あぁ、でしたらもう一度お風呂を沸かしましょう。
ゆっくりなさって下さいませ、お殿様♪」
宙マン「ありがとう……いつも済まないね、落合さん!」
ビーコン「ヒヒヒ、昼風呂いいっスねぇ、最高の贅沢っスよ!
……でもまだまだ、風呂の奥深さはそんなもんじゃないんスよ」
落合さん「あら、他にまだ何か?」
ビーコン「いえっふ~、よくぞ聞いてくれましたっス!
オイラと落合さんが、泡のお風呂でしっぽりトロけるような……」
げ し っ !
落合さん「ねーいっ! 言うに事欠いて、このエロ怪獣はっ!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、落合さんは相変わらず手厳しいっスぅぅ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
今日も本当にありがとう、宙マン!
だが、未だ怪獣軍団の野望は尽きない……
さて、次回はどんな活躍を見せてくれるかな?