季節は8月、ここ・北海道も夏まっさかり!
照りつける太陽と青空、豊かな大自然が、ここへ来て思い切り遊ぶがいいと
道内外の人々を優しく、かつ情熱的に誘いつづけている季節。
そんな無言の「お誘い」を受けては、どうにもこうにも家でじっとしていられない
お馴染み・宙マンファミリーとほんわか町の人々である。
そんなわけで、今回の『宙マン』は……
かくのごとき盛夏にふさわしい舞台、新ひだか町の海岸沿いから物語を始めよう。
落合さん「うふふ、夏ですわ! 海ですわ!」
ビーコン「いえっふ~! 太陽ギラギラ、ウィンクゴックンっス~☆」
宙マン「千歳は山ばかりだから、たまに海に来ると新鮮な気分でいいねぇ!」
ピグモン「はうはう~、潮風が気持ちいいの~♪」
ながもん「海沿いの、場所だからこそ……海産物も……おいしい」
みくるん「うふふっ、やっぱり新鮮さが段違いだもんね~。
……でも、まだだよながもん?
まずはお昼ご飯の前に、いっぱい遊んでお腹をすかせなきゃ」
落合さん「海水浴に、ビーチバレーに、貝殻集めにスイカ割り……」
ピグモン「いろんなたのしいこと、い~っぱいなの~」
宙マン「せっかくここまで来たんだ、みんなで思いっきり楽しもうじゃないか。
ええと、まずはね――」
「おお~ぃっ!
宙マンさん、宙マンさん、大変だよ~!」
落合さん「あら、お帰りなさいませ、熊澤様!」
ビーコン「道の駅で、何かいい掘り出しもんでもあったっスか?」
熊澤さん「いやいや、それどころじゃないんだってば。事件だよ、事件!」
宙マン「(表情が引き締まり)何があったんです!?」
熊澤さん「このあたりの海で、怪物の目撃情報が相次いでるんだってさぁ。
おかげで、ここら辺の人らはその話題で大騒ぎだよ――
このままじゃ、海辺への進入禁止や遊泳禁止もあり得る、ってさぁ!」
落合さん「ええっ、何ですのソレ!?」
みくるん「せっかくここまで来たのに、遊泳禁止なんてないですぅ~」
ながもん「これは、なかなか……テンション、下がる」
ピグモン「えう~、ピグちゃんもがっかりなの~。
せっかくみんなと、海で遊ぶの楽しみにしてたのにぃ……(しょんぼり)」
落合さん「お殿様……」
宙マン「(頷き)……どうにもこれは、穏やかならざる気配だね!」
おお、何と言うことであろう――
レジャー気分で浮かれていた人々に、冷水をぶっかけるかのごときニュース!
そして、その噂は残念ながら事実であった。
新ひだかの海が激しく泡立ち、波しぶきとともに姿を現した者、それは……!
「グェグググゥ~、ゲスラちゃんでゲ~スっ!」
海中からのっそりと上陸してくる怪獣軍団の一員、ゲスラ。
「海獣」と言う異名のごとく、容貌怪異な文字通りの“海のけだもの”である。
ゲスラ「グェググゥ~、俺ちゃんは今、サイコーに乗りまくっているでゲス!
全身にみなぎる、このワイルドな海賊魂を見ろでゲス!」
イフ「おお、実に気合が入っておるな、素晴らしいぞゲスラよ!」
ゲスラ「グェグググ、ま~かせてでゲスよ、魔王様!」
イフ「うんうん、ますますもって頼もしい限りだわい!
して、その海賊魂をもって……お前は、どんな作戦を遂行するのだ?」
ゲスラ「作戦?」
イフ「ああ、そうだとも。遠慮なくワシに聞かせてみるがいい!」
ゲスラ「(しばし考えて)……えーっとぉ……(汗)」
イフ「……な、なんだ、その気の抜けたような答えはっ!
張り切って地球に向かったのは、何か考えあってのことではなかったのか!?」
ゲスラ「え~っと、何ていうんでゲしょう……
なんつーか、読んだ漫画に影響受けて、そのまま勢いで……ってカンジ?
ごめんちゃいでゲス、てへぺろっ☆」
イフ「(イラッ)……てへぺろで済ますな、この大バカ者めが~!!」
イフ「海賊魂だの何だのと息巻いて、ワシにさんざん期待させおって……
挙句がそのザマとは何だっ、恥を知れ、恥をっ!」
ゲスラ「(恐縮)ひぇぇぇ、ご、ごめんなさいでゲス~」
「はっはっはっ……とんだ茶番だったな!」
凛として響いてきたその声に、慌てて振り返るゲスラ。
華麗なる空中回転とともに現れたのは、もちろんこの男・我らの宙マンだ!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
怪獣軍団の悪企みは決して許さん、と言いたいところだが……」
宙マン「話を聞かせてもらった限りじゃ、どうやら君と戦う理由はなさそうだ。
悪いことは言わん、おとなしく暗黒星雲に帰りたまえ」
ゲスラ「……って、言ってくれてるでゲスけど。
この場合、俺ちゃんはどうすればいいでゲスかねぇ、魔王様?」
イフ「えぇい、バカ者、何を言っておるか!
このまま帰って来たのでは、ワシら怪獣軍団がひたすら赤っ恥ではないか――
よいか、この上は宙マンを倒し、この不始末の埋め合わせとするがよい!」
ゲスラ「(平伏)は、ははぁーっ!」
ゲスラ「(顔を上げ)グェグググ、そういうことなんで……
お前にはこの場で死んでもらうでゲスよ、宙マン!」
宙マン「結局はこうなるのか……ならば、やむを得ん!」
ファイティングポーズを取り、敢然と身構える宙マン。
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトルの幕開けだ!
全身のウロコをぬめらせながら、猛然と襲いかかってくるゲスラ!
卓越した技の冴えで、宙マンも怯むことなく立ち上がっていく。
激突、宙マン対ゲスラ!
新ひだかの海岸に、波の音さえかき消す勢いで響き渡る打撃音。
ドスドスと無遠慮な足音を響かせて、突進してくるゲスラ。
迎え撃つ宙マン、力と力のぶつかり合いである。
宙マン「くうっ……や、やるな!?」
ゲスラ「当たり前でゲス、相撲の強さにはちょっと自信あるでゲスよ!」
炸裂、ゲスラのメガトン頭突き!
充分以上に勢いの乗った「重い」一撃が、宙マンを大きくよろめかす。
そこへすかさず、ゲスラの前足による叩き込み!
「自信がある」と豪語するだけはあるゲスラの相撲技に、宙マンもたじたじだ。
岸壁に激しく波が叩きつける中、更にヒートアップしていく戦い!
倒れた宙マンの上にのしかかり、パンチの連打を食らわせていくゲスラ。
ゲスラ「グェグググ、天下の宙マンも今日が命日でゲスよ!」
宙マン「ぐうっ! お、おのれ――」
「これしきの事で……負けて、たまるかッ!」
宙マン、パワー全開!
覆いかぶさるゲスラの体を、渾身の蹴りで押し返す。
たまらず吹っ飛んだゲスラが、砂浜に倒れこんだところへ――
宙マン「どりゃあーっ! 宙マン・ショット!!」
気合とともに、不可視の破壊衝撃波を放つ宙マン!
腹部めがけて炸裂したその一閃が、海獣ゲスラへの決定打となった。
ゲスラ「グェグググ、この一撃は痛烈でゲした~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
イフ「う、うがぁぁぁっ……またしても、またしても宙マンめが!!
だが、怪獣軍団にはまだまだ怖ろしい怪獣がいくらでもいるのだ。
次々に新手を送りこみ、今度こそは必ず貴様の息の根を止めてやる!
よいか、覚えておれよ宙マン!」
新ひだか一帯の海岸には、再び平和と笑顔が戻ってきたのであった。
熊澤さん「やぁやぁ……どうもお疲れ様、流石は宙マンさん!」
落合さん「お疲れ様でした、お殿様!」
ピグモン「これでまた、安心して海で遊べるの~」
宙マン「いやいや、それもいいけど……まずは昼ご飯にしたいね、私は」
みくるん「うふふっ、あれだけの激しい戦いの後ですもんね~」
ながもん「お腹が、減るのも……いたしかた、なし」
宙マン「うん、わかってもらえて嬉しいよ~。
やっぱりここは、当地の名物をお腹いっぱい食べたいもんだね」
熊澤さん「となると……やっぱり、海産物かねぇ」
ビーコン「いえっふ~! そうっス、海産物っスよ、お刺身一択っス!
と言うわけで落合さん、今すぐ服脱いでスッポンポンになるっスよ!」
落合さん「……はぁ、なんでそうなりますの!?」
ビーコン「ヒヒヒ、皆まで言わなくても分かってるクセにぃ!
海と来て、刺身とくれば、導き出される答えは当然「女体盛り」……」
げ し っ !
落合さん「ねーいっ! お黙りんこっ、このエロ怪獣っ!(怒)」
ビーコン「ひぇぇ~っ、8月の潮風が身に沁みるっスぅぅ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
今日も本当にありがとう、宙マン。
だが未だ、怪獣軍団の野望は尽きない……
さぁ、次回はどんな冒険が待っているのかな?