8月、ギラギラと眩しく照りつける太陽……
日本列島津々浦々、今まさに夏・まっさかり!
それは列島の最北端に当たる、ここ・北海道とて例外ではなく
千歳市もまた、「暑い!」の二文字で全ての説明がついてしまう
そんな高気温の中にあった。
そんな真夏の日差しの中を、てくてく歩いてくるのは
お馴染みコロポックル姉妹の「妹の方」、ながもん。
市内の図書館に、借りた本を返却し終えての帰り道――
「もしもぉ~し……そこ行くお嬢ちゃん♪」
ながもん「……?」
いつもの調子で至極クールに、無言でくるりと振り返るながもん。
と、そこには……!?
「ぐばばばばぁ~……
は~い、こんにちはァ~♪」
……ぴ し っ !
ながもんの背後に、ぬうっと姿を現した巨大な「何か」のシルエット。
それを見た瞬間……ながもんと周囲の空気が、音まで聞こえるかのごとく
まさに「凍りつい」た!
ながもん「~~~~っ!!……」
もはや声にもならない、その悲鳴――。
みくるん「ふぇぇ……ながもん、ながもん、どうしたの~?」
ながもん「ガクガク、ブルブル……うぁぁ……くる、アレが……ガタガタ……」
家に帰ってくるなりベッドに潜りこみ、頭から布団を被って震えだすながもん。
その只ならぬ様子を心配して、姉のみくるんが声をかけてはみたものの……
この通り、満足いくまともな答えは得られない様子。
みくるん「……と、言うわけなんです~」
場面は変わって、こちら「宙マンハウス」。
宙マン「ふーむ……なるほど、ながもんちゃんがねェ」
ピグモン「ながもんちゃん、可哀想なの~」
ビーコン「でも、ながもんちゃんはクールなようでいて……
あれで案外、怖がりなところもある女の子っスからね~。
ま、思春期によくあるアレとかナニじゃないっスか?」
みくるん「ぅう、でも……あの子があそこまで怯えて取り乱すなんて
やっぱり普通じゃないと思うんです~」
ビーコン「いやぁ、オイラはむしろみくるんちゃんの方が心配っスよ~。
……そこまで思いつめると、マジ体に毒っスよ?」
みくるん「……ビーコンさぁん……」
ビーコン「さぁ、今は何もかも忘れて、オイラの胸に飛び込んでくるっスよ。
オイラがたっぷり可愛がってあげるっス~……
……あ、もちろん性的な意味で♪」
げ し っ !
ビーコン「ハンニャラ、ヒ~っ……や、やっぱこうなっちゃうっスね~」
落合さん「当たり前ですっ!(怒)」
と、そこへ、更なる騒動と厄介の上乗せをするかのように――
「おーい、宙マンさん、宙マンさ~んっ!」
宙マン「おや、熊澤さん、こんにちは」
落合さん「一体どうなさいましたの、そんなに慌てて」
ビーコン「ヒヒヒ、まさか得体のしれない怪物でも見たっスか?」
熊澤さん「えっ、何で知ってんです!?」
ビーコン「……ずげっ、マジっスか!?」
熊澤さん曰く――
夫婦揃っての買い物帰りに、近くの林からぬうっと立ち上がった
得体のしれない「何か」を見たのだ、という。
熊澤さん「おかげで女房のやつ、すっかりショック受けて
今日は朝から寝込んじまって……」
落合さん「まぁ……それはお気の毒に」
宙マン「それで熊澤さん、お二人が見たって言う「何か」というのは?」
熊澤さん「うー、そう言われても、何て言ったらいいのか……。
とにかく今まで見たこともない、恐ろしい物だとしか言えないよ~」
ながもんに続き、熊澤夫妻までが見たという「何か」。
でもって更に後日、第三番目の目撃証言が……!
宙マン「えぇっ、宇佐美さんも見たんですか!?」
宇佐美さん「ええ、そうなんですよ宙マンさん!
お得意さんに頼まれてた、ガス警報器の修理と点検に出かけた時……
ちょうど、その途中の道でばったり!」
ビーコン「……また、「何か」っスか(汗)」
ピグモン「はう、よっぽど怖いお化けさんだったのね~」
落合さん「……どう思われます、お殿様?」
宙マン「得体のしれない目撃談も、こうも立て続けで……
しかも共通点が多いとなれば、ただの偶然とは思えないかな」
ピグモン「はわわ、まさか……オバケなの~!?」
落合さん「そんな、怪談シリーズは先月で終わったはずですのに!」
ビーコン「……っかー、何たるメタ台詞っスか!(汗)」
宙マンのご近所さんたちのみならず、他の千歳市民の皆さん方までもが口々に
その目撃証言を語る、得体のしれない「何か」。
今やその噂は、千歳市全域はもとより、近隣の恵庭市や苫小牧市においてまで
恐怖とともに語られるようになっていた――
……といったところで、答えを明かそう。
そう! 今回のこの一件も、またまた怪獣軍団の陰謀だったのだ!
イフ「わははは! 千歳の奴らめ、すっかり怯えきっておるわい!」
スライ「んー、ふふふ……
我が「G作戦」の第一段階は、見事に大成功でありますよ!」
イフ「うむっ、見事だぞ、”魔導の”スライ。
さすがはダークネスファイブ筆頭、目の付け所が違うわい!」
スライ「まぁ見ていて下さい、魔王様……いよいよ「G作戦」、最後の大仕上げ。
千歳市民の恐怖が頂点に達した今こそ、地球に放った怪獣軍団・屈強の戦士を
大々的に暴れさせる絶好の機会です!
さぁ、頼みましたよ、ゴキノザウルス君!!」
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラッ!
暗黒星雲からの、”魔導の”スライからの号令一下……
千歳を襲う、激しい大地震。
荒々しく大地を引き裂き、ついに地中からその姿を現したのは!
「チャギ、チャギャギャ~っ!!」
ギラギラと黒光りする外骨格に全身を包んだ、巨大害虫。
怪獣軍団の一員、ゴキブリ怪獣ゴキノザウルスである。
ピグモン「はわわわ、なんか出たの~!」
ながもん「……こ、怖い……っ!」
みくるん「きゃああああっ、いや、いやです~!」
ビーコン「……ちょ、みくるんちゃんもながもんちゃんも……
いくらなんでも、そりゃオーバーリアクションすぎないっスか!?」
みくるん「(取り乱して)ふぇぇん、だって、だってぇ……!」
そして異様な過剰反応をみせたのは、コロポックル姉妹だけではなかった。
ゴキノザウルスを見た瞬間――怪獣にはある程度慣れているはずの千歳市民が
これ以上はない、というほどの大仰な大パニックに陥ったではないか!
宙マン「……これは、いったい……!?」
落合さん「(ハッと)そうか……そういうことだったんですのね!」
宙マン「何か分かったのかね、落合さん?」
落合さん「(頷き)みくるん様たちをはじめ……
北海道生まれの皆様が、ここまで取り乱されるのも道理ですわ」
落合さん「……北海道には、本来ゴキブリなどいないはずなんですもの!!」
ゴキノザウルス「チャギャ~、そう言うこった、それが狙いよ!」
そう! 本州生まれの人間でさえ、ゴキブリの出現は心臓に悪いものなのだ。
ましてゴキブリなどに縁がなく、したがって免疫もない北海道の住人たちが
ゴキブリとの接近遭遇を果たした際、その恐怖と戦慄はいかばかりのものか……!?
スライ「んー、ふふふ、私のその狙いはみごとに大的中でありますぞ!
ここまでくれば、我が「G作戦」は成功したも同然……
……さぁ、あとは思う存分暴れちゃって下さい、、ゴキノザウルス君!」
ゴキノザウルス「チャギャ~、お任せオッケーだぜ、魔導の!」
もはや我が前に敵なしとばかり、猛然と進撃開始するゴキノザウルス!
迫り来る巨体を前に、右往左往して逃げ惑う人々。
ビーコン「どひ~っ、またまたこの有様っスか~!?」
落合さん「せっかくの快晴、絶好の行楽日和ですのに……」
みくるん「ふぇぇん、もうそれどころじゃないです~!(涙目)」
おお、北海道千歳市に迫り来る「黒の恐怖」!
だが、そんなゴキノザウルスの暴虐を阻まんものと……
ピグモン「あ、防衛隊が来てくれたの!」
ビーコン「頑張ってくれっス、頼むっスよ~!」
落合さん「これ以上、悪い怪獣さんの好きにさせないで下さいませ!」
「我々の底力、見せてやれ――全機、攻撃開始っ!」
戦闘機編隊から、雨あられと叩きこまれるロケット弾!
だが、公害怪獣はそれらの猛攻撃をものともしない。
ゴキノザウルス「チャギャギャ~、雑魚は引っ込んでろィッ!」
「……う、うわぁぁぁっ!?」
ゴキノザウルスが額から放つ破壊光線!
その直撃を受け、戦闘機は一機、また一機と撃墜されていく。
そこに、ゴキブリの恐怖に怯えきった人々のパニックが加わることによって
事態はどんどん悪い方向へと加速していく。
ピグモン「あぁん、みんな、落ち着いてなの~!(汗)」
ビーコン「ダメっス、もう生半可な説得じゃ手におえないっスよ!」
落合さん「この混乱を鎮めるには……」
ビーコン「……みんなの目の前で、あのゴキブリ怪獣をやっつけるしかないっス!」
宙マン「(頷き)ようし! そう言う事なら、やろうじゃないか――
宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、ゴキノザウルスの前に舞い降りる!
宙マン「トゥアーッ! 宙マン、参上!
平和を乱す者には容赦せんぞ、思い知らせてやる!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「いよっしゃ、アニキの十八番ス!」
落合さん「ここはもう、お殿様だけが頼みの綱ですわ!」
ピグモン「宙マ~ン、よろしくお願いなの~!」
ゴキノザウルス「チャギャギャギャ、出てきたなぁ~、宙マン。
言っとくが、俺はハッキリ言って強いぜぇ!?」
宙マン「なんの、私はそれより更に上手(うわて)さ!」
ゴキノザウルス「(ムカッときて)……何ィ!?」
全身にみなぎる怒りを力に変え……
ファイティングポーズをとって、敢然と身構える我らが宙マン。
ゴキノザウルス「面白ェ! だったらやるかぁ、宙マンよぉ!?」
宙マン「無論、もとよりそのつもりだよ!」
ついに訪れた、スーパーバトルの時……
怪獣勝つか? それとも宙マン勝つか!?
疾風怒濤の後編を待て!!