暦の上では既に秋、とは言え汗ばむ暑さもまだまだしぶとい北海道。
こちらは千歳市ほんわか町5丁目、お馴染みの「宙マンハウス」である。
落合さん「(大きく伸びをして)う~ん……今日もまた、清々しいお天気ですわね!」
ビーコン「ヒヒヒ……
こんな日は、インドア派のオイラも外に出て色々したくなっちゃうっスよ。
青空アニメ鑑賞とか、女装コスプレとか、R-18な行為いろいろとか……」
落合さん「だーっ、のっけからなんです、お下品なっ!(汗)」
宙マン「はっはっはっはっ……ともかく、ここまで気持ちのよい晴れ模様だと
それだけで嬉しくて、思わず笑いが出てきちゃうのは確かだよ」
ピグモン「はうはう~、とびっきりゴキゲンな一日まちがいなしなの~♪」
……と、宙マンファミリーが明るく賑やかな会話を交わしていたそばから。
おお、それにしても、何というタイミングであろう?
それまでの9月の青空を遮るかのように、妖しげな霧が沸き立って
急速にほんわか町周辺へと広がり始めていったではないか。
落合さん「あら嫌だ……何やら、霧が濃くなってきましたわねぇ」
ビーコン「せっかく気分が盛り上がってのに、萎えさせてくれるっスね~」
ながもん「でも……おかしい」
みくるん「えっ、何が!?」
ながもん「天気予報じゃ……霧の、発生なんて……一言も、なかった」
みくるん「て、天気予報だって、たまには外れることくらい……(汗)」
ながもん「だと……いいけど」
ピグモン「(震えて)はわわ、ながもんちゃん、おっかないこと言わないでなの~」
宙マン「ふぅむ……そう言われてみると、単なる天気予報の外れではなくて
何かおかしな事の前触れ、と言うような気もしてくるねぇ」
ビーコン「おかしな事って、アニキ……まさか」
落合さん「まさかまさかの、怪獣軍団だったり致しますの!?(汗)」
宙マン「単なる考え過ぎなら、それに越したことはないんだけどね。
……論より証拠だ、ちょっとひとっ走り様子を見てくるよ!」
落合さん「あっ、お殿様……!」
現役時代から、いざと言う時の即断即決ぶりには定評のある宙マン。
落合さんたちが止める暇もあらばこそ、家を飛び出し猛ダッシュ!
……と、ここで場面は変わって。
深い霧の立ちこめている、千歳の原生林の中。
宙マンやながもんの懸念が、不幸にも的中しようとしていた!
「グオッホッホッホッ……!」
ドスのきいた低音の哄笑とともに、霧の中から忽然と姿を現したのは……
「影の国」惑星X出身の鋼鉄竜アイアン、もちろん怪獣軍団の一員だ!
アイアン「グオッホッホッホッ、ア~イア~ン……
さぁ、怪獣魔王様、このアイアンめになんなりとご命令下さい!」
イフ「おおっ、張り切っておるな、元気いっぱいで結構!
ではアイアン、怪獣魔王の名の下に命ずる――
北海道の自然をことごとく破壊し、草一本生えない死の荒野に変えよ」
イフ「北海道の代名詞たる、この豊かな自然がなくなってしまえば……
そこに暮らす道民のみならず、農産物の多くを北の大地に依存している
本州以南の者どもにとっても、大きな打撃となろう」
アイアン「そして人っ子ひとりいない荒野なら、前線基地の建設も容易いこと。
グオッホッホッ、一石二鳥とは正にこのことですなぁ!」
イフ「出来るか、アイアン!?」
アイアン「(頷き)勿論ですとも、汚し・壊しはお手の物です!
これだけ広く、美しい山林であれば、私も腕の奮い甲斐が――」
「おおっと、そうは問屋が卸さんぞ!?」
アイアン「(ギョッとして)グホオォっ! だ、誰だ!?」
不意に響いてきた凛たる声に、驚いて振り返る鋼鉄竜アイアン。
次の瞬間、空中回転とともに舞い降りてきたのは……もちろん、この男だ!
宙マン「トゥアーッ! 宙マン、参上!
もしやと思って来てみれば……やはりまた悪企みか、怪獣軍団!」
宙マン「少々、登場のパフォーマンスに凝り過ぎたようだな、鋼鉄竜アイアン。
町まで流れてきたあの霧が、私にお前の存在を気づかせてしまったんだ!」
アイアン「グオッホッホッ、むしろ思う壺よ。
いずれ、お前は倒しておかねばならない相手……訪ねる手間が省けたわ!」
宙マン「よく言う……その減らず口ごと、正義のパワーで打ち砕いてやる!」
ファイティングポーズをとり、颯爽と身構える宙マン。
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトルの幕開けだ!
アイアン「グオッホッホッ、行くぞ宙マン!」
宙マン「さぁ来い、怪獣軍団の手先め!」
真っ向激突、宙マン対鋼鉄竜アイアン!
雄大な北海道の山林の中で、ふたつの闘志が戦いの火花を散らす。
「鋼鉄竜」を名乗るだけはあり、ボディの堅さと力の強さは折り紙つき。
邪悪な知性により裏打ちされた野獣的パワーを全開にして、怜悧な技の冴えと
荒々しい突進戦法を両立させながら宙マンに迫るアイアン。
だが、磨き抜かれた格闘術ならば、宙マンも決して引けはとらない。
アイアンの繰り出す邪悪な秘技を冷静に、かつ巧妙に受け止め、受け流しながら
果敢に相手の内懐へと飛び込んでいく。
アイアン「グオッホッホッ、お主やるな!?」
宙マン「まだまだ、現役時代の勘と腕はなまっちゃいないさ!」
真正面から繰り出す宙マンのストレート・パンチ!
充分に勢いの乗った拳が、アイアンの頬桁に炸裂してよろめかせる。
アイアン「(苦悶)ぐ、ゴホオオッ……!」
宙マン「よし、今だ!」
アイアンに生じた隙を突いて、すかさず大空へとジャンプする宙マン。
そのまま空中回転し、ミラクル・キックの態勢に入らんとするが――
「グオッホッホッ……甘い、甘いわさ宙マン!」
「う、うわぁぁぁぁ……っ!!」
アイアンの両目から放たれた怪光線が、空中でヒーローを捉えた!
その威力にバランスを崩し、墜落して地面に叩きつけられてしまう宙マン。
宙マン「(苦悶)うう……うっ!」
アイアン「グオッホッホッ……どぅれ、私の手で捻り潰してやろうかね!」
宙マンに覆いかぶさり、猛然と掴みかかってくるアイアン!
そうはさせじと宙マンも抵抗し、地面を転がりながら激しく揉みあう両者である。
アイアン「(勝ち誇り)グホホッ、往生際が悪いぞ、宙マンよ!?」
宙マン「ああ、そりゃあ悪あがきだってしたくなるさ――」
「……ここでやられる気は、さらさらないのでね!」
バ キ ィ ッ !
宙マン、渾身の右足蹴り!
覆いかぶさっていたアイアンのボディを、勢いよく跳ねのけたところへ――
宙マン「とどめだ! 宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、鋼鉄竜アイアンを直撃!!
アイアン「ひぇぇぇっ……アイアンやられて、嗚呼いや~んっ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
宙マン「ふうっ……これでどうやら、今度の一件もやれやれか!」
イフ「えぇい、おのれおのれ、またしても宙マンめが!
だが覚えておれよ、怪獣軍団の力は無限なのだ。
この次こそは、必ずやお前にそれを思い知らせてやる……!!」
……などと言う、怪獣魔王の負け惜しみは例によってサラリと聞き流して。
今日も我らが宙マンの活躍により、鋼鉄竜アイアンは撃退され……
北海道の雄大なる大自然は、恐るべき侵略と破壊の魔手を免れたのであった。
宙マン「と、言う訳で……やぁやぁみんな、ただいま~!」
ビーコン「いえっふ~、アニキ、お帰んなさいっス!」
落合さん「それにしましても……
この大自然を完全破壊しようとは、怖ろしい事を考えるものですわねぇ」
宙マン「ああ、だから私も必死だったよ。
これから秋が深まって、どんどん食べ物がおいしくなってくるって言うのに
台無しにされちゃかなわないものねぇ!」
みくるん「(クスクス笑って)うふふ、宙マンさんったら!」
ながもん「(頷きつつ)だけど、真理……それ、ものすごく、真理」
宙マン「さぁ、これでまた、安心して山で遊び回れるよ――
……ッと、その前にまずは昼ごはん、昼ごはん♪」
ピグモン「はうはう~、宙マン、いつもありがとうなの~♪」
千歳に迫る悪の霧……
スカッと晴らすぞ、正義のヒーロー。
さぁて宙マン、次回もまたよろしく頼んだぜ!