街を吹きすぎる風の冷たさも、いよいよもって冬本番……
何しろ既に12月なのだから、それもやむなしか。
せかせかと慌ただしい中にも、どこか寂寥感が漂っているのも
また、今のこの時期ならではの独特な空気。
だが、そんな師走の空気の中においても……
怪獣軍団の悪企みは、しぶとく続いていたのであった!
おお……
読者諸氏よ、どうぞ耳を澄ませて頂きたい。
ガサガサッ、ガサガサッ……
不気味な目玉をギョロギョロ動かし、絶えず周囲に気を配りながら
草を掻き分け、落ち葉を踏みしめながら歩いてくる異形の影。
宇宙屈指の治安の悪さで知られる、コスモポリタス第8惑星出身。
キュラソ星人の彼もまた、怪獣軍団の恐るべき一員なのだ!
イフ「よーしよし、ご苦労……
キュラソ星人よ、無事に地球へ到着したようだな!」
イフ「では、早速だが、お前の力を存分に奮ってもらうぞ。
分かっていような、お前の使命は……」
キュラソ星人「ふしゅるるっ、分かっておりますとも、魔王様。
私の力で、千歳の街を焼け野原にすることですな!」
イフ「よろしい、まさしくその通り!
何もかも焼け落ち、何もなくなってしまった千歳の街こそは
我ら怪獣軍団の前線基地たるに相応しい場所なのだ!」
キュラソ星人「ふしゅるる、お任せを!
恋愛遊戯以外の「火遊び」ならばお手のものです。
まずは、そのために、ちょいと腹ごしらえを――」
と、言うわけで。
山を抜け、街に出たキュラソ星人が足を向けたのは……
一角にある、とあるガソリンスタンド。
店員「あ、ハイハイ、いらっしゃいませ……
(怪訝そうに)……あの、お客様、お車は……?」
キュラソ星人「ふしゅるる、お気遣いなくぅ~!」
シュバッ!
キュラソ星人の頭頂部から、目もくらむような催眠閃光が迸る!
店員「(全身の力が抜け)あ、あぁうっ……っ!?」
おお、何と言うことであろう――
今、この瞬間にも密かなる侵略が進行中であったとは!
が、ひとまずそれはそれとして……
こちらは毎度おなじみの舞台、北海道千歳市。
宙マン「さて、何か掘り出し物はあったかな、落合さん?」
落合さん「う~ん、それが残念ながら……。
焼肉用の無煙ロースター、いろいろ探してはみたのですけど
なかなか「これは!」と言うものがなくって……」
ピグモン「はう~、落合さんの目ききはキビシイの~」
宙マン「暮らしの中で使うものだからこそ……
こだわれる部分は、やはり可能な限りこだわらないとねぇ。
うん、そこは落合さんを信じるし、任せるよ」
落合さん「ありがとうございます、お殿様♪」
ビーコン「ヒヒヒ、昔から安物買いの銭失いって言うっスもんねぇ。
ところで落合さん、これから行く店にすっげー堀り出しもんが、
ものすごく可愛くてエロいフィギュアが……」
落合さん「却 下です!」
ビーコン「どわっ、早やっ!(汗)
そんな、品物をチェックもしないでその言い草ってのは……」
落合さん「そんなに欲しければ、ご自分のポケットマネーでどうぞ。
毎月のお小遣い、ちゃんとあげてますでしょ?」
ビーコン「やー、それが、競馬で全部スッちまって……」
落合さん「だーっ、あなたって怪獣(ひと)は!(呆れ)」
……などと言う実のない会話も、それはそれで平和な証拠。
が、そんなのんびりムードの中で、不意にピグモンが……。
ピグモン「(一方を指さし)あっ、あれ、何!?」
宙マン「えっ!?」
ピグモンが指差した先は、件のガソリンスタンド……
油ノズルを掴んで直接おのれの口に含み、そのままジュルジュルと
旨そうにガソリンを呑みほしていくキュラソ星人の姿であった。
しかも、彼の足もとには……
催眠閃光によって気を失い、倒れ伏したスタンド店員の姿が。
コレはもはや、何の言い訳もきかない「犯行現場」であった。
宙マン「コラコラ、そこの君っ!」
キュラソ星人「(ニヤリ)……やっぱり来たか、宙マンめ。
だが、残念だが、ひと足遅かったようだな――」
ビーコン「……へっ!?」
落合さん「な、何を仰ってますの!?」
キュラソ星人「大好物のガソリンを、たらふく堪能させてもらい……
ひと暴れするためのパワーは、しっかり溜まったぜ」
宙マン「その口ぶり……さては、怪獣軍団か!」
ピグモン「はわわ、しかも悪いコトする気まんまんなの~!」
「コレ見てたまげろ、ふしゅるるる~っ!!」
大好物のガソリンを、心行くまで堪能し……
テンションが上がったところで、宙マンたちの目の前で巨大化。
天を衝くばかりの巨人と化すキュラソ星人!
宙マン「ううむっ、何てことだ!」
ビーコン「今日も今日とて、この流れで来ちまったっスよ!」
落合さん「あー、もう、一番イヤな流れですわっ!(汗)」
ピグモン「はわわ、何でもいいけど怖いの~!(涙目)」
キュラソ星人「ふしゅるるる!
よく聞け宙マン、俺は怪獣軍団の一員……
その名も高き宇宙の放火魔、キュラソ星人だっ!」
宙マン「……自慢げに言うことかっ!」
キュラソ星人「ふしゅるるる、何とでもほざけ!
今の俺は、ガソリンを体に蓄えて最高潮なんだ――
この勢いで、千歳の街を焼け野原に変えてやる!」
ビーコン「どひ~っ、最悪の宣誓いただきましたっス~!(汗)」
スライ「んー、ふふふ、ご覧下さい魔王様!
気持ちのよい仕事は、気持ちのよい食事から……
私の正しさ、改めてお分かり頂けましたでしょう!?」
イフ「(眉を顰め)……お前の場合は、ちと道楽が過ぎる!」
イフ「まぁよい、気分が高揚しているのは良きことじゃ――
遠慮はいらんぞキュラソ星人、思う存分に暴れ回れ!」
キュラソ星人「ふしゅるるる、魔王様、有難き幸せ~っ!」
怪獣魔王の命を受け、進撃開始するキュラソ星人!
迫り来る巨体を前に、悲鳴をあげて逃げ惑う千歳の人々。
ビーコン「どひ~っ、毎度毎度のこの流れ……」
落合さん「えぇ、宇宙の悪意すら感じますわねぇ!(汗)」
ピグモン「はわわ、今はぼやいてる場合じゃないの~!」
早くも意気あがる、キュラソ星人の大暴れ!
だが、その暴挙に対して、地球人も見て見ぬふりはしない。
ビーコン「おおっ、航空防衛隊の戦闘機っスよ!」
落合さん「ああ、毎度いいタイミングで来て下さいますこと!」
ピグモン「はうはう~、とにかくがんばってなの、おじさんたち~!」
「よし、目標を確認――全機、攻撃開始っ!」
猛攻撃をまともに受けてなお、火炎怪人の勢いは止まらない。
キュラソ星人「ふしゅるる~っ、邪魔だ邪魔だ7!」
「う、うわぁぁぁぁ……っ!?」
キュラソ星人の口から、勢いよく吐き出される火炎!
戦闘機編隊は、勇戦空しく次から次へと撃墜されていく。
キュラソ星人「ふしゅるる、最高の気分だぜ~っ!」
いよいよ図に乗って、火炎を吐き散らすキュラソ星人!
その洗礼が街を舐め回し、紅蓮の焦熱地獄を現出させていく。
落合さん「あらあらまぁまぁ、何てことでしょう……
この寒空の下に、着の身着のままで放り出されるなんてご勘弁ですわ!」
ピグモン「それより前に、ピグちゃんたちも焼かれちゃいそうなの~」
ビーコン「とにかくこのままじゃ、街が大ピンチっス!」
ピグモン「はわわ……宙マン、宙マン、なんとかしてなの~」
宙マン「ううむ、どうにも許せんぞ!
宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、キュラソ星人の前へと舞い降りる!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
キュラソ星人、千歳の街を灰になどはさせないぞ!」
ズ、ズーンっ!!
ビーコン「アニキ~、頼んだっスよ~!」
落合さん「そんな悪者宇宙人、やっつけちゃって下さいませ!」
ピグモン「宙マン、頑張ってなの~!」
キュラソ星人「ふしゅるるっ、出たな宙マン――
ウェルダンどころか、骨も残らぬほどこんがり焼いてやる!」
宙マン「いいや、大火傷で逃げ帰るのは貴様の方さ!」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日もまた、世紀のスーパーバトル開幕だ。
キュラソ星人「これでもくらえ、宙マン!」
キュラソ星人が放った催眠閃光!
もちろんそんな不意討ちなど、我らが宙マンには通用しない。
キュラソ星人「ふりゅる~っ、おのれおのれ、どこまでも小癪な!」
宙マン「さぁ、来るなら来てみろ!」
激突、宙マン対キュラソ星人!
人々の見守る前で、ふたつの巨体が大地を揺るがす。
両手の爪をひらめかせ、猛然と掴みかかってくる星人!
「宇宙囚人303号」と呼ばれた、彼の同族に当たる宇宙殺人鬼が
この爪と握力で、無辜の一般市民を数多く手にかけてきただけに
単純ながらも、決して侮れない攻撃なのである。
キュラソ星人「ふしゅるる~、どうだ、どうだっ!」
だが、それしきのことで宙マンは怯まない。
一瞬の隙を突いて、キュラソ星人の胸板へチョップ一閃!
更に、キュラソ星人の脇腹へと叩きこまれる浴びせ蹴り!
宙マンの連続攻撃に、さしもの火炎怪人も後退を余儀なくされる。
宙マン「はっはっはっ、どうだキュラソ星人……
悪でのぼせた頭が、少しは冷えたかね!?」
キュラソ星人「ふしゅるる~、チョーシこくなよ、宙マンめっ!」
「う、うわぁぁぁぁ……っ!?」
落合さん「お、お殿様っ!?」
ビーコン「どひ~っ、アニキは大丈夫っスかねぇ!?」
ピグモン「宙マンが……宙マンが、負けるはずないの!」
怒り、火炎を吐き出すキュラソ星人!
その灼熱の洗礼を受け、街に次々と巻き起こる凄まじい爆発。
キュラソ星人「ふしゅるる、予告通り黒焦げになっちまえ!」
宙マン「なんの……これしきで倒れる私かっ!」
火炎を吐き散らすキュラソ星人!
その灼熱の尖端を、華麗な回転戦法でかわしていく宙マン。
ズガーン! グワーンっ!
キュラソ星人「ふしゅるる、どこまでも癪に障る奴め!」
宙マンの防御技、プロテクション発動!
キュラソ星人の火炎は、完全に受け止められ無力化された。
キュラソ星人「(狼狽)……な、何っ!?」
宙マン「とどめだ!
宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、キュラソ星人を直撃!!
キュラソ星人「ふしゅるぅ~、何かとってもヤな感じぃぃ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
ビーコン「いえっふ~! やったやった、アニキの勝ちっス!」
落合さん「素敵ですわ、お殿様……♪(うっとり)」
ピグモン「はうはう~、宙マン、ありがとうなの~!」
イフ「うぐぐぐっ……またしても、またしても宙マンめが!
だが覚えておれよ、この借りはきっと返してやる。
更に怖ろしい怪獣を送りこみ、次こそは必ず……!」
……などと言う、いつもの負け惜しみはさて置いて。
かくして、今回もまた宙マンの活躍により……
キュラソ星人の野望は、ここに敢えなく潰え去ったのであった。
ピグモン「はうはう~、宙マン、お疲れ様なの~」
ビーコン「それにしても、なかなか厄介な相手だったっスねぇ」
落合さん「えぇ、ですがそれも、お殿様の活躍で倒されましたわ」
宙マン「正義は必ず勝つ、敢えてそう断言させて欲しいね」
ビーコン「ヒヒヒ、さっすがアニキ、いいコト言うっスね。
そんじゃオイラもまた、己の性戯を熱く貫く方向で……♪」
げ し っ !
落合さん「ねーいっ、貴方はいちいち一言多いですっ!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、スパイシーな拳がメッチャ効くっスぅぅ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
大怪獣も星人も何のその……
我らが宙マン、大活躍。
次回もバッチリ応援してくれよ、ナッ!