遥かなる宇宙の彼方、暗黒星雲の奥深くから……
美しい緑の星・地球を我が物にせんと狙い続ける、恐怖の怪獣軍団。
今日も配下の怪獣たちへと向けて、怪獣魔王・イフの檄が飛ぶ。
またしても恐るべき侵略の魔手が、我らの故郷へ向けて伸びるのだ！
イフ「既に年末だと言うのに、我らが悲願……
地球征服も宙マン打倒も、未だ成し遂げられぬままだとは！
そしてこのまま、年を越すことになろうとは！」
イフ「えぇい、これでよいのか、怪獣どもよ？
……いいや、断じて良いわけがあるまい！！
なれば、そのために成すべきはひとつ――」
「ああ、皆まで言うなよ、イフの叔父貴！」
みなぎる自身と血気に溢れたその声の主は、勿論……
怪獣軍団の幹部候補生「ダークネスファイブ」でも屈指の武闘派、
イフ「おおっ、ヴィラニアスか、その口ぶりは既に……」
ヴィラニアス「ああ、俺の見込んだ活きのいいヤツが、既に一頭……
千歳の地下に潜伏して、行動を開始してるところさァ」
イフ「ううむっ、ますますもって良い傾向だぞ、頼もしい限りだわい！
今に見ておれ地球人ども、地球はワシら怪獣軍団のものだ！」
ヴィラニアス「おうさ、今度こそはバッチリだぜ！」
イフ「わっはっはっはっ……！」
おお、今まさに……
悪の野望は胎動を続け、恐怖の蠢動へと変わろうとしている。
危うし地球、危うし宙マン！
だが、ひとまずそれはそれとして。
「空の玄関口」である新千歳空港に対しての「海の玄関口」……
北海道を代表する、港湾･工業都市のひとつ。
こんち、お馴染み宙マンファミリー。
ビーコン「いえっふ～！
もうすぐ冬のまんが祭り、エッチと美少女が花盛り！
オイラことビーコンちゃんも、皆さん同様ワクテカっスよ～！」
落合さん「ねーいっ、開幕早々なんです、その下品な挨拶はっ！
お殿様の名誉にも関わりますから、そう言うのはくれぐれも自重……
……って言うか、何をセンターとってるんです、図々しいッ！」
ビーコン「ヒヒヒ、開幕早々、落合さんこそ大胆っスねぇ。
センターがだめなら、オイラが下になったほうがいいっスか！？」
落合さん「っがー、そう言う問題でもございませんっ！！（赤面）」
宙マン「はっはっはっ……まぁまぁ、二人とも♪」
宙マン「さてと、それはさておき！
こうして苫小牧まで来た……となれば、やっぱり」
ピグモン「はうはう～、何か美味しいもの食べたいの～♪」
宙マン「そう、私も正にそれが言いたかったんだ♪」
ビーコン「うん、オイラもそいつにゃ異論なしっスけど……
今日はいったい、何を食うっスか？」
ビーコン「ちょっと思いついただけでも、海鮮丼に刺身に……
海のモンだけでも、旨いもん盛りだくさんっスよ」
ピグモン「はうはう～、ピグちゃんはねぇ、ホッキカレーも大好きなの」
宙マン「うんうん、どれも良いよねぇ、実に素晴らしい！」
宙マン「ただ、ちょっと私の我儘を許してもらえるなら……
今日はするするっと麺、いきたいねぇ。麺類！」
ビーコン「麺類っスか、確かにそれも王道っスよねぇ」
落合さん「と言いますか、お殿様……
どこか、お目当ての一杯でもございますの？」
宙マン「それそれ、よくぞ聞いてくれました――
何でもダシ文化の本場たる京都から移住してきたって言うご店主さんが
本格的な和風ダシで食わせるラーメン、って言うのが評判らしいんだよ」
宙マン「雑誌やフリーペーパーで、そういう話を見たり読んだりすると……
どうにもこうにも、辛抱堪らなくなってしまうのが私でねぇ！」
ビーコン「ヒヒヒ、その辺はよーっく存じ上げてるっスよ☆」
宙マン「どうだろうね、みんな？」
落合さん「どうもこうも……
お殿様のお申し出となれば、落合的には是非もございませんわ」
ビーコン「つーか、アニキの熱弁聞いてたら……
オイラもその、和風ダシで食わせるラーメンに興味津々っスよ」
ピグモン「はうはう～、ピグちゃんも食べてみたいの～♪」
ビーコン「っしゃ、そんじゃ今日の昼飯はソコで決まりっスね！」
落合さん「では善は急げ、お昼になって混み合う前にですね……」
と言う流れで、宙マンファミリーが件のお店に向かおうとしたその時！
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラっ！
落合さん「（驚いて）……は、はぁっ！？」
ビーコン「どひ～っ、どひ～っ、なんスか何スか、地震っスかぁ！？」
宙マン「どうにも嫌な揺れ方だね、これはまさか……」
ピグモン「はわわ、もしかして……」
落合さん「もしかしたら……もしかしちゃいますのかしら！？」
そう、残念ながら……
嫌な予感に限って、ぴたりと的中してしまうのも世の中の常。
激しく大地を揺さぶる局地地震とともに……
天高く土砂を吹き上げながら、地上に姿を現した者とは！？
「ギョロゴゴゴぉぉ～ンっ！！」
ピグモン「ああっ、やっぱりなの、やっぱりぃ！」
ビーコン「だーっ、これから昼飯にラーメンって時に……」
落合さん「狙いすましたみたいに来るのが、また厭らしいですわねぇ！」
「ギョロゴゴ～ンっ、何とでもほざけってんだ！
年内に何がなんでも、地球を怪獣軍団の手中におさめる……
むしろこっからが本番、怪獣総進撃だってーの！」
「ま、とは言うものの……
残念ながら、他の怪獣たちの出番はないんだけど、な。
何せこの湿原怪獣・ジメラ様が、ただ一頭の力だけで
軽～く侵略完了しちまうんでなぁ！ ギョロゴゴ……！」
落合さん「……って、何ですの、その自信の根拠は！？（汗）」
ビーコン「いろんな意味で、悪い予感しかしないっス！（汗）」
イフ「わはは！ さぁ行け、暴れろ、猛り狂うのだ怪獣ジメラよ！
怠惰な平和を貪る地球人に、お前の威力を見せてやれ！」
ジメラ「ギョロゴゴ～ンっ、お任せ下さい、魔王様！」
怪獣魔王の命を受け、進撃開始するジメラ！
迫り来るその巨体を前に、悲鳴をあげて逃げまどう人々。
ビーコン「どひ～っ、えらいこっちゃ、えらいこっちゃっス！」
落合さん「美味しい一杯に舌鼓……な時に限って、コレですもの！」
宙マン「いいからとにかく逃げるんだ――さぁ、こっちへ！」
大怪獣ジメラの出現により、たちまち大パニックの千歳市！
だが、こんな緊急事態を、航空防衛隊は放置などしない。
直ちに空の精鋭たちが、最新鋭の戦闘機でスクランブル！
ビーコン「おお～っ、待ってたっスよ、お歴々！」
ピグモン「防衛隊のおじさんたち、しっかりなの～！」
落合さん「今回こそは……大丈夫ですわよね、いろいろと！？」
「ええ、勿論ですとも、万事我々にお任せ下さい――
それっ、怪獣への一斉攻撃開始だッ！」
ジメラめがけて、一斉に攻撃をかける戦闘機！
ロケット弾が次々に、その皮膚めがけて炸裂するのだが……
怪獣へのダメージどころか、動きを止める事にさえ至らない。
ジメラ「ギョロゴゴ～ンっ、シャラくせぇやいっ！」
「……の、のわぁぁぁ～っ！？」
ピンと高く反り返った尻尾の先から、勢いよく放たれる閃光。
これぞジメラの得意技……
あらゆる物質を一撃で破砕せしめる「分子構造破壊光線」だ！
ビーコン「……あちゃ～っ、またまた今回も……」
落合さん「毎度わりと、本気で期待はしているのですが……」
ピグモン「えう～、ぼやいてる場合じゃないの～！（汗）」
ジメラ「そうともさ、次はお前らの番だぜ――そりゃっ！」
ビーコン「（戦慄）……ど、ど、どひ～っ！」
落合さん「これは洒落では済みませんわねぇ、色々と！」
爆発！ 炎上！
人々の悲鳴が幾重にもこだまする中、勝ち誇り我が物顔でのし歩く
大怪獣ジメラの何と憎らしいことよ。
ジメラ「ギョロゴゴ～ンっ、俺の強さ、思い知ったかァ！」
ビーコン「ひえぇ、あんなコトまで言ってるっスよ！」
落合さん「甚だ遺憾ですが、このままでは本当に苫小牧が……」
ピグモン「はわわわ……宙マン、宙マン、何とかしてなの～」
宙マン「（頷き）おのれ、もう許さんぞ！
宙マン・ファイト・ゴー！！」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
荒れ狂うジメラの前へ、敢然と立ちはだかるこの雄姿！
ビーコン「っしゃ！ 出たっス、アニキの十八番！」
落合さん「今となっては、もうお殿様だけが頼りですわ！」
ピグモン「はうはう～、宙マン、しっかりなの～！」
ジメラ「ギョロゴゴ……やっぱり出てきたな、宙マン。
まぁいい、どうせ戦わにゃならん邪魔者だ――
軽～く倒して、このジメラ様の名を上げてやるぜ！」
宙マン「おっと、軽く倒されるのは、果たしてどちらかな……！？」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
今日もまたまた、世紀のスーパーバトル開幕だ！
同時に駆け寄り、一気に距離を詰めていく両者。
ぶつかり合ったなら、もはや激闘待ったなしの流れである。
ヴィラニアス「先手必勝だ、ジメラ――分子構造破壊光線、発射！」
ジメラ「ギョロゴゴゴ、おうさ――死ねや宙マン！」
先制攻撃で、いきなりジメラの放った分子構造破壊光線。
その恐るべき一閃を、宙マンはひらりとかわして大空へとジャンプ！
ジメラ「む、ムムッ！？」
宙マン「トゥアーッ！ 行くぞ、湿原怪獣ジメラ！」
空から舞い降り、ジメラめがけて躍りかかっていく宙マン。
組んずほぐれつ、凄絶な肉弾戦が展開されていく。
破壊光線を使わせまいと、接近戦で勝負を決めようとする宙マン。
だが、ジメラの突進攻撃の前には、それも思うに任せない。
突進、突進、また突進！
野生の本能全開の猛撃に、さしもの宙マンも大きく後退する。
宙マン「――ぐうっ！」
ジメラ「終わりだ！ 跡形もなく消え去っちまいな！」
勝ち誇り、尻尾の先から破壊光線を発射するジメラ。
宙マン「なんの！」
だが、宙マンもさるもの――
慌てず体勢を立て直すや、プロテクションで光線を無力化！
ジメラ「（目を白黒させ）な、ナンダトッ！？」
宙マン「はっはっはっ、どうやらそろそろこっちの番だな！」
「怒れ稲妻！ 宙マン・ボルトサンダー！」
ピカッ、ゴロゴロドドーンっ！
宙マンの気合とともに、空が一転して黒雲に覆われ……
一条の稲妻がジメラを直撃、その全身にダメージを与えた！
雷撃の手痛い洗礼に、ジメラがもんどりうって倒れたところへーー
宙マン「とどめだ！
宙マン・フラッシュボンバー！！」
シ ュ ッ パ ァ ァ ー ン ッ ！！
右手に集中させた闘気を、裏拳とともに勢いよく解き放ち……
赤いエネルギー弾として、怪獣めがけて叩きこむ荒技。
フラッシュボンバーの一撃が、ジメラを直撃！！
ジメラ「ギョロゴゴ……さ、最悪の寝覚めだぜぇぇ～っ！」
やったぞ宙マン、大勝利！
落合さん「ああ……今日もお見事でしたわ、お殿様！」
ビーコン「いえっふ～、やったっスね、アニキ！」
ピグモン「はうはう～、宙マン、ありがとうなの～」
イフ「ぐがががっ……おのれ、またしても宙マンめが！
だが、これしきで諦めるワシらではないからな！
今に見ておれ、次こそは必ず……！」
……などと言う、毎度の負け惜しみはさて置いて。
かくして宙マンの活躍により、湿原怪獣ジメラは撃退され
苫小牧市には再び、元の平穏と活気が戻ったのであった。
そして当初の予定通り、宙マンファミリーが向かった先は……
上品な和風ダシを巧みに用いた、類例のない味のハイレベルさで
評判を呼んでいる、と言うラーメン屋さん。
店の構えこそ、小じんまりとはしているものの……。
ビーコン「うほっ！ 待ってたっスよ、評判の一杯！」
落合さん「ああ、この美しいスープの澄み具合ときましたら……」
ピグモン「はうはう～、それにこの匂いがたまんないの～」
レンゲでスープを一口、箸で麺をひとすすり。
何気なく始めたその動きを繰り返していくうちに、奥深い味に魅入られて
箸も、レンゲもとまらなくなり……。
宙マン「いやぁ、素晴らしいねぇ、期待以上の一杯だよ！」
落合さん「えぇ、これならば評判になるのも道理ですわ」
ピグモン「はうはう～、とっても美味しいの～♪」
ビーコン「いやぁ旨かったっスねぇ、すっかり夢中になっちまって……
オイラとしたことが、つい下ネタも忘れちまうほどだったっス！」
落合さん「（ジト目）……ずうっと、忘れて下さって構いませんでしたのよ？」
ビーコン「ヒヒヒ、でもねぇ、そいつがないとファンが納得しないんスよ！」
ビーコン「と、いうわけで！
その分の埋め合わせは、帰ってからベッドルームでたっぷりと……
だから心配ないっスよ、落合さん。ねっ！？」
むにゅんっ、ふにふにっ
落合さん「（悲鳴）……きゃ、きゃああああっ！？」
げ し っ ！
落合さん「ねーい、な～にが”ねっ”ですか、何がッ！（怒）」
ビーコン「どひ～っ、それじゃ皆さん、また次回っスぅぅ～」
宙マン「はっはっはっはっ」
真冬の雪にも、寒波にも……
決して消せない、我らが宙マンの燃える闘志。
さァて、次回はどんな活躍を見せてくれるかな？
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