新たな年、2023年を迎えて……
つい先日のお正月から、早くも一週間が過ぎていた。
北国らしく、毎日毎日マイナス気温の寒さが続く中……
それでも北海道の人々は、ぼちぼちとそれぞれの日常を暮らしていた。
そんな中、千歳市ほんわか町5丁目の「宙マンハウス」には……
馴染みの顔が揃い、穏やかな午後の談笑を楽しんでいたのであった。
落合さん「うふふっ、お正月から早や一週間が過ぎまして……
そろそろ年明けムードから日常へ、ですかしら?」
みくるん「名残惜しいことは、確かに名残惜しいんですけど……
でも、そうとばかりも言ってられませんもんね~」
ながもん「そうそう……特に……食べ物系。
おせちだったり……お雑煮だったり」
ピグモン「はうはう~、今年のお雑煮も美味しかったの~♪」
ビーコン「アレもまた、けっこう家ごとの個性って出るもんスよねぇ」
みくるん「宙マンさんのお宅は、どんなお雑煮なんですか?」
宙マン「うちのはね、鰹だしに合鴨肉を加えた鴨汁仕立てだよ。
合鴨からもじわーっと、旨味と脂が汁に溶けだして……
またそれを吸いこんで、餅が絶妙に旨くなるんだよ」
みくるん「わぁっ、本当に美味しそうですぅ!」
ながもん「言葉だけでも……なかなかの……飯テロ」
宙マン「はっはっはっ、よかったら食べていかないかい?」
ながもん「オウ、これはまた……渡りに……舟」
みくるん「わぁっ、いいんですかぁ?」
宙マン「あぁ、勿論だとも。
落合さん、雑煮の用意、すぐにでも出来るよね?」
落合さん「勿論です、問題ございませんわ!」
ビーコン「いえっふ~、みんなで食う雑煮も乙なもんスね~☆」
ピグモン「はうはう~、ピグちゃんもおてつだいするの~」
気の置けない面々が集って、楽しく美味しいお雑煮タイム。
……と思われた、正にその時である!
ゴゴゴゴ……グラグラグラグラッ!
落合さん「あらあらあら~!」
みくるん「きゃああっ!」
ビーコン「どひぇぇ、こ、これって、まさかまた……!?」
すわ何事と、慌てて家を飛び出した宙マンたちの目の前で!
突如として起こった局地地震が大地を揺さぶり……
街を震えおののかせ、ビルをも崩壊させる。
固い岩肌を引き裂いて、地上に巨大な姿を現したのは!?
「ヴぁるるるるぅぅ~っ!!」
みくるん「(怯えて)ふぇぇ、か、怪獣ですぅ~!」
ながもん「(首を振り)ううん……私の、記憶が……確かなら……
怪獣の、ようでいて……実は……ロボット、だった……はず」
ピグモン「はわわ、そ、そーなのぉ!?」
ながもん「(頷き)バンデル星人の……怪星獣・バンデラー」
宙マン「ああ、そうだった、そうだったよ。……
あのご面相、私も銀河連邦のデータファイルで見た事があるぞ!」
ビーコン「二人がそう言うなら、それで間違いないんでしょーけど……」
落合さん「今はとにかく、この事態そのものが深刻な問題ですわ!(汗)」
千歳にその巨大な姿を現した怪星獣・バンデラー!
バンデル星人「ヒュホホホ……世はまさに、全宇宙的コマーシャル時代!
怪星獣・バンデラーの威力を全宇宙に宣伝する……
千歳での大暴れは、そのデモンストレーションなのだよ!」
宙マン「何っ、宣伝だと……!?」
スライ「んー、ふふふ、いかにも宣伝っ!
怪星獣を量産し、宇宙のブラックマーケットに売りさばく。
それにはまず、バンデラーの威力を知ってもらいませんと!」
スライ「それに加えて……
先着10名限定の“おしゃれ小鉢”までも特典に用意。
んーふふふ、まさに完璧! 必勝ビジネスプランです!」
イフ「うむ、面白い! 見事な計画じゃ!」
イフ「だが、最後の決め手は怪星獣の威力のアピール如何よ。
……任せたぞ、バンデル星人。
此度のセールス、全てはお前の働きにかかっておる!」
バンデル星人「ヒュホホホ、任されました、魔王様!」
バンデル星人の操縦により、進撃開始するバンデラー!
迫り来る巨体を前に、悲鳴をあげて逃げまどう千歳の人々。
ピグモン「(怯えて)きゃああん、どんどんコッチ来てるの~!」
ビーコン「どひ~っ、怪獣軍団の連中ときたら……」
落合さん「通常営業、イコール相変わらずですわねぇ!」
またしても、千歳の街が大ピンチ。
怪星獣の暴虐、許すまじ!
千歳の平和を守るべく、航空防衛隊が直ちに出撃した。
ビーコン「おおっ、今日も今日とて航空防衛隊っス!」
ピグモン「三連休中でも、おじさんたち頑張ってるの~
落合さん「お願いしましたわよ~、どうか今年度こそは!」
「ようし……全機、一斉攻撃開始っ!」
激しいアタックをかける戦闘機隊!
持てる火力が怒濤のように、バンデラーへ叩きこまれる。
……が、怪星獣は平気な顔で進撃を続ける。
「何て奴だ……全然効いてないって言うのか!?」
バンデル星人「ヒュホホ、な~にを分かりきったコトを!」
「う、うわぁぁぁぁ……っ!!」
怪星獣の目から迸る怪光線!
その鋭い一閃が、戦闘機を次から次へと撃ち落としていく。
バンデル星人「ヒュホホホ、まぁだ、まだまだ。
怪星獣バンデラーの威力は、こんなものじゃないぞ!」
更に、口から破壊白煙を噴射しての大暴れ。
建物が次々に破壊され、街は今や炎の地獄と化しつつあった!
みくるん「ふぇぇ、ど、どうしましょう!?」
ながもん「ここは、一発……ヒーローの、出番」
ピグモン「はわわ……お願い宙マン、何とかしてなの~」
宙マン「ううむっ、もう許せんぞ――宙マン・ファイト・ゴー!!」
閃光の中で、みるみるうちに巨大化する宙マン。
華麗な空中回転とともに、バンデラーの前へと舞い降りる!
宙マン「トゥアーっ! 宙マン、参上!
怪獣軍団め、乱暴狼藉もそこまでにしておけ!」
ズ、ズーンっ!!
落合さん「ああっ、今日も今日とて……
お殿様のげにもゆかしき戦士ぶりときたら、本当に……♪(うっとり)」
ビーコン「こうなりゃもう、アニキだけが頼りっス!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
バンデル星人「ここでお前を倒せば、なおのこと好都合……
バンデラーの威力、全宇宙に見せつける格好の宣伝だ!」
宙マン「さぁて、思惑通りにいくものかな……!?(ニヤリ)」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日も世紀のビッグファイト開幕だ!
バンデル星人「行くぞ宙マン、バンデラーの力を思い知れ!」
宙マン「どこからでもかかって来い!」
激突、宙マン対バンデラー!
千歳の街を揺るがし、ふたつの巨体が鎬を削りあう。
ロボット怪獣の怖さとは、疲れを知らない怒濤の進撃と猛パワー。
このバンデラーもまた、その例外ではなく……
そのパワフルな進撃には、宙マンも手を焼かされてしまう。
バンデル星人「ヒュホ! 押し潰せバンデラー! 潰れろ宙マンッ!」
宙マン「なんの、簡単に潰れてたまるかッ!」
宙マンの鋭い浴びせ蹴り!
鞭のようにしなやかで鋭い足先が、さしもの怪星獣をも怯ませ
メカの巨体をじりじりっと後退させた。
宙マン「どうだバンデル星人、これが正義の力だ!」
バンデル星人「ヒュホホホ……バンデラーをなめるなよ、宙マン!」
バンデラーの両目から迸る怪光線が、宙マンの足元に炸裂!
爆風の熱と衝撃に、宙マンがよろめいた隙を逃さず……
バンデラーの口から、猛烈な勢いの破壊白煙が噴射された!
「う、うわぁぁぁぁ……っ!!」
ズ、ズーンっ!
みくるん「(衝撃)ああっ……ちゅ、宙マンさんが!」
ながもん「あの、連撃は……相当……キテる」
ビーコン「どひ~っ、もうダメっス、おしまいっス!」
落合さん「少し落ち着いてくださいな、ビーコンさん!(汗)」
ピグモン「はわわ……宙マン、まけないでなの~!」
宙マン「(苦悶)うう……うっ……!」
バンデル星人「ヒュホ! とどめを刺せば、宣伝効果は最高潮よ!」
「なんの、これしき……負けて、たまるかッ!」
宙マン、気力を振り絞って大回転!
バンデラーの白煙を、華麗な身のこなしで回避していく。
ズガーン! グワーンっ!
バンデル星人「おにょれッ、チョコマカと!」
怪星獣、フルパワーでの破壊白煙噴射。
だが……その恐怖の一撃は、宙マン・プロテクションによって
ものの見事に受け止められ、無力化された!
バンデル星人「(目をパチクリ)な、何とぉっ!?」
バンデラー体内の星人が怯んだ隙に、大空へジャンプする宙マン。
空中回転とともに、怪星獣めがけて繰り出す技の名は!
宙マン「ハイヤぁぁーっ!
宙マン・雷光キック!」
出た、まばゆいばかりの超絶技!
雷光を纏った蹴りが、怪星獣のメカをショートさせたところへ――
「とどめだ!
宙マン・エクシードフラッシュ!!」
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、バンデラーを直撃!!
バンデル星人「ひ、ひぇぇぇっ……
これじゃ、宙マンのプロモじゃないかぁぁ~っ!?」
やったぞ宙マン、大勝利!
みくるん「わぁっ、やりました、宙マンさんの勝ちですぅ!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、かっこよかったの~♪」
ながもん「またまた……グッジョヴ」
イフ「うぐぐぐっ……またしても、またしても宙マンめが!
よいか、この仕返しは必ずしてやるからな――
次こそ必ず、お前をギャフンと言わせてやる!!」
……などと言う、怪獣魔王の負け惜しみはさて置いて。
かくして宙マンの活躍により、恐怖の怪星獣バンデラーは撃退され
千歳市はまたも壊滅の危機を免れたのであった。
みくるん「宙マンさん、どうもお疲れ様でした!」
ながもん「安心したら……おなか……すいたかも」
宙マン「まずは汁物で、体の芯まであったまりたいね!」
ピグモン「はうはう~、それならお雑煮が一番なの~♪」
ながもん「おお、何と、きれいな……オチの、着地点」
みくるん「うふふっ、有難く頂きますね~」
ビーコン「ヒヒヒ、そんでもって……
雑煮の後には、なんたって甘いデザートっスよ!」
落合さん「あら、あんころ餅ですかしら?」
ビーコン「な~にを今更カマトトぶってるんスか、落合さん!
オイラたちの甘いもんと言えば、そりゃもうエロス一択……」
げ し っ !
落合さん「ねーいっ、何重にも失礼すぎますっ!(怒)」
ビーコン「どひ~っ、雑煮の七味みてーに辛口の一撃っスぅぅ~」
宙マン「はっはっはっはっ」
寒さに負けず、元気いっぱい……
千歳のヒーロー、明日も行く!
さァて、次回はどんな活躍を見せてくれるかな?