平和を愛する千歳市民の一人、正義の味方・宙マンの活躍によって
北海道千歳市は、今日ものどかな平和の中にあった。
だが、決して油断はできない。
暗黒星雲に巣食う怪獣軍団は、次にいかなる凶悪怪獣を送りこみ
再びどんな侵略計画を実行に移すか、誰にも分からないのだから。
「侵略者」は……あなたの、隣にいる。
そう、そんなわけで。
怪獣軍団からの新たなる使者は、既に北海道千歳市に降り立って
自らの使命を果たすため……まずは、そのために必要不可欠な
「エネルギー補給」を、しっかり済ませていたのであった。
ほら、よーく目を凝らして、見てみて欲しい――
「ふぃぃ~、食った、食った!」
膨れた腹を抱え、上機嫌でラーメン屋を出てきたのが今回の敵。
地球より50億光年の彼方、マクア星雲系出身のバンデル星人だ。
バンデル星人「いやぁ、流石はスライの旦那だ……いい店知ってるねぇ!」
スライ「んーふふふ、そうでしょう、そうでしょう!
そのお店はね、評判の良い老舗なんですよ。
何となく、懐かしい感じの味わい……しましたでしょ?」
バンデル星人「うんうん、奇をてらわない、って言うか……
それこそ「昔ながらのラーメン」って感じだったねぇ」
スライ「そういうお店がね、今となっては貴重ですよねぇ」
スライ「で、そういう昔ながらの一杯だからこそ……
シンプルなだけに、決してごまかしも効かないわけでしてな」
バンデル星人「おう、それよ、それそれ!」
バンデル星人「すっきりスープに、気持ち良いコシの麺。
派手さはないけど、食べ飽きない味ってやつだよねぇ」
スライ「ですです、だからこそ仕事の丁寧さも光るんですよッ。
そしてそして、忘れてはいけないのが……」
バンデル星人「おうよ、挽き肉ともやしね!
これがまた、気持ちいい歯ごたえとスープのコクを加えて……」
スライ「うんうん、そこまで分かってもらえるとはッ!
私としても、お勧めした甲斐があったってものです♪」
バンデル星人「おうっ、本当に旨かったよ!」
バンデル星人「あー、でも、こんな旨いラーメン食った後だと……
……ぶっちゃけ、シゴトすんの、かったりィなぁ?」
スライ「んーふふふ、そういう時はサボっておしまいなさいっ!
大丈夫、大丈夫、魔王様も気づいてらっしゃらないんで……」
「えぇい、さっきから丸聞こえだぞ!
この……この馬鹿者どもが~っ!!」
バンデル星人「(慌てて)ま、魔王様っ!?」
イフ「黙って聞いていれば何だ、特にスライっ!
幹部候補生たる者が、配下にサボりを勧めて何とする!?」
スライ「(慌てて逃げ出し)ひぇぇっ、ですよねぇ~っ!」
イフ「お前もお前だ、バンデル星人。
道楽者の困ったトコロまで、何も真似する必要はないのだ――
遊びは遊び、仕事は仕事、メリハリをつけるのは大事だぞ!」
バンデル星人「ははぁっ、かしこまりましたぁ~!(汗)
バンデルマシン、起動ッ!」
怪獣魔王のお叱りを受け……
これ以上機嫌を損ねては大変と、慌てて巨大化するバンデル星人。
巨大な吸盤の中に彼が携帯している「巨人にする装置」こと
バンデルマシンのはたらきが、それを可能とするのだ。
そして、その様子は……
千歳市内を往く、宙マンファミリーの視界にもしっかり入っていた。
ピグモン「あっ、宇宙人がおっきくなったの!」
落合さん「あらあらまぁまぁ、何てことでしょう!」
ビーコン「カーッ、こちとらこれから昼飯だってのに!」
バンデル星人「ヒュホホホ……そうか、そっちは昼飯前か。
こっちは既に、昼飯をしっかり済ませて元気モリモリよ。
……特製塩ラーメン、めっちゃめちゃ旨かったぜぇ~!」
落合さん「ちょ……何ですの、そのマウントの取り方!?」
ビーコン「そんな話聞いたら、ハラ減ってくるじゃないっスか!」
ピグモン「えう~、ランチのお邪魔しないで欲しいの~」
宙マン「ああ、全くだよ……全く!」
イフ「わはは、よしよし……まずは宙マンに一点先取だぞ、でかしたッ。
遠慮はいらん、思い切り暴れろ、バンデル星人!」
バンデル星人「ヒュホホホ、私ゃやりますよ~、魔王様!」
怪獣魔王の命を受け、進撃開始するバンデル星人!
迫り来る巨体を前に、なすすべもなく逃げ惑う人々。
落合さん「あらやだ、今回もこうなっちゃいますのね!?」
ビーコン「どひ~っ、すきっ腹には堪えるハナシっス!」
宙マン「いいから、安全な場所へ! みんな早く!」
バンデル星人の出現により、早くも大混乱の千歳市!
なればこそ、航空防衛隊の空の精鋭たちは直ちに出動だ。
ピグモン「あ、防衛隊が来てくれたの!」
ビーコン「頑張ってくれっス、頼むっスよ~!」
落合さん「これ以上、悪い宇宙人の好きにさせないで下さいませ!」
「我々の腕の見せ所だぞ――全機、攻撃開始!」
戦闘機隊の一斉攻撃!
雨あられと叩きこまれるロケット弾にも、全く動じない軟体宇宙人。
バンデル星人「ヒュホホホ、無駄なあがきよ!」
「う、うわぁぁぁぁ……っ!?」
バンデル星人の吸盤から放たれる高熱火炎!
その直撃を受け、戦闘機は一機、また一機と撃墜されていく。
ビーコン「……あちゃ~」
落合さん「今回も……「こう」なってしまいましたのねぇ」
バンデル星人「ヒュホホホ、次はお前たちの番だ!」
ビーコン「どひ~っ、あんなコト言ってるっスよ~!(汗)」
ピグモン「はわわ……宙マン、宙マン、なんとかしてなの~」
宙マン「おのれ、もう許さんぞ!
宙マン・ファイト・ゴー!!」
キラリ、正義のスパーク!
みるみる巨大化して、バンデル星人の前に立ちはだかる宙マン。
バンデル星人「ヒュホホホ、出おったな宙マンめ!」
宙マン「正義の力で、今すぐ打ち砕いてやる!」
ファイティングポーズとともに、敢然と身構える宙マン――
さぁ、今日も世紀のビッグファイト開幕だ!
バンデル星人「死ねィッ、宙マン!」
バンデル星人の火炎噴射!
その悪魔の洗礼を、すかさずプロテクションで無力化する宙マン。
ビーコン「おおっ、上手いっス、アニキ!」
落合さん「お殿様にかかれば、悪の宇宙人も敵ではございませんわ!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、がんばってなの~!」
バンデル星人「むむぅぅっ、味な真似を!」
宙マン「さぁ来い、勝負だバンデル星人!」
激突、宙マン対バンデル星人!
千歳の街を揺るがし、ふたつの巨体が鎬を削る。
軟体を不気味にくねらせ、宙マンへとのしかかってくる星人。
自らの体で押し潰し、そのまま窒息させる腹積もりだ――
だが、やすやすとそんな手には乗らないのがヒーロー。
迫り来るバンデル星人に怯むことなく、逆に猛然と立ち向かって
敵のボディに鋭い打撃技を見舞っていく。
ビシッ! バシッ!
高らかに響き渡る打撃音は、宙マンの的確なポイント攻撃によって
バンデル星人がしっかりダメージを受けている証拠だ。
宙マン「どうだ、これに懲りて逃げ帰る気になったかね?」
バンデル星人「うぐぐぐっ! その余裕、猛烈にムカちゅく~っ!」
怒り、右手の吸盤から速射銃を連射するバンデル星人!
だが宙マンは、冷静にその弾道を見切ってかわし、大ジャンプ!
バンデル星人「(驚き)な、何とっ!?」
バンデル星人めがけて急降下していく宙マン。
激しい空中きりもみ回転とともに、繰り出すその技の名は!
「エイヤぁぁぁーっ!
宙マン・回転フルキック!!」
高速回転の勢いを加え、両足で蹴り込む正義のキック!
燃える足先を食らって、バンデル星人がブッ倒れたところへ――
全身のエネルギーを極限まで凝縮して放つ、虹色の必殺光線……
エクシードフラッシュの一閃が、バンデル星人を直撃!!
バンデル星人「グハァァっ、ナンタルチヤ……
せっかくの旨いラーメンの余韻が、台無しだぁぁ~っ!」
やったぞ宙マン、大勝利!
落合さん「やりましたわ、流石お殿様です!」
ビーコン「いえっふ~、やっぱアニキはこうじゃなくちゃっス!」
ピグモン「はうはう~、宙マン、ありがとうなの~♪」
イフ「おのれ、またしても……にっくき宙マンめ、よくも!
全く、あぁ全く、悔しいったらありはしないぞ……
今に見ておれ、覚えておれ~っ!!」
……という、怪獣魔王のいつもの負け惜しみはさて置いて。
怪獣軍団の恐怖の使者、バンデル星人を撃退し……
かくてまたまた、見事に北海道の平和を守りぬいた宙マン。
そんな彼を讃えるように、降り注ぐ陽の光もひときわ眩しかった。
ピグモン「はうはう~、宙マン、おつかれさまなの~」
宙マン「ふぅ~、やれやれ……
一戦交えちゃったおかげで、すっかり腹ペコだよ、私ゃ」
ピグモン「はうはう~、無理もないの~」
落合さん「でしたら、今すぐお昼ご飯に致しましょう。
何か家で作りましょうか、それとも外食の方が……」
宙マン「う~ん、さっきの星人が、あんなこと言ってたからなぁ。
おかげで胃も心も、すっかりラーメン・モードだよ」
落合さん「分かりました、では今から参りましょう!」
ビーコン「ヒヒヒ、ラーメンもいいスけどね、落合さん。
白濁してて濃厚ってことなら、オイラ特製のザーm……」
落合さん「(ジト目)あのですね、ビーコンさん。
……それ以上言ったら、お 仕 置 き ですわよ!?」
ビーコン「(ビクッとして)あ、アイエェェェェッ!?」
宙マン「はっはっはっはっ」
美味しいランチで、メリハリつけて……
次回もまた頼んだぞ、宙マン!